バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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散々出し惜しみしていた蒼介の召喚獣と点数が今回ようやく明かされます。


因果応報

翔子「……雄二……!」

和真「無事勝ったみてぇだな!」

 

終戦後、生き残っていた生徒も戦死していた生徒もBクラス教室に集合した。

 

明久「うぅ……。痛いよう、痛いよう……」

和真「……なあ秀吉、明久が痛がってんのはそこのぶっ壊れた壁と関係があんのか?」

秀吉「まさにその通りじゃ。明久、随分と思い切った行動にでたのう」

 

素手でコンクリートの壁を壊したのだ、痛みが100%跳ね返るわけじゃないとは言え、痛いに決まっている。

 

秀吉「なんともお主らしい作戦じゃったな」

明久「で、でしょ?もっと褒めてもいいと思うよ?」

秀吉「後のことを何も考えず、自分の立場を追い詰める、男気溢れる素晴らしい作戦じゃな」

明久「……遠まわしに馬鹿って言ってない?」

和真「まぁどう考えてもバカの所業だな」

明久「失礼な!?そもそもこの作戦の発案者は和真でしょ!?」

和真「確かに前そんなこと言ったがサンドバック案と並んでいる時点でろくな案じゃねぇだろ…」

 

校舎の壁を破壊。問題にならないわけがない。これで明久の放課後の予定は職員室でのhurtful communicationで埋まってしまった。初犯でなければ留年や退学になっていたかもしれない。

 

雄二「ま、それが明久の強みだからな」

明久「馬鹿が強み!?なんて不名誉な!」

雄二「さて、それじゃ嬉し恥ずかし戦後対談といくか。な、負け組み代表?」

根本「……」

 

床に座り込み黙り込んでいる根本。負けたことが余程信じられないことなのだろう。

 

雄二「本来なら設備を明け渡してもらい、お前らには素敵な卓袱台をプレゼントするところだが、特別に免除してやらんでもない」

 

そんな雄二の発言に、周囲の連中が騒ぎ出す。

 

雄二「落ち着け、お前ら。前にも言ったが俺達の目標はAクラスだ。Bクラスを手に入れる必要はない」

秀吉「うむ。確かに」

雄二「ここはあくまで通過点だ。だから、Bクラスが条件を呑めば解放してやろうかと思う」

 

その言葉でFクラスの皆は納得したような表情になる。Dクラス戦のときにも言った事だし、雄二の性格を理解してきたのだろう。

 

和真(さて、次はいよいよAクラスか。やっとここまで来たぜ……ソウスケ!)

 

ちなみに和真はもう次の戦争のことを考えていてBクラスなどすでに眼中に無いのか毛ほども意識を向けていなかったりする。

 

根本「……条件は何だ」

雄二「条件?それはお前だよ、負け組み代表さん」

根本「俺、だと?」

雄二「ああ。お前には散々好き勝手やってもらったし、正直去年から目障りだったんだよな」

 

すごい言われ様だか否定できないので、周りの人間は誰もフォローしない。本人もわかってるみたいだ。

 

雄二「そこで、お前らBクラスに特別チャンスだ。Aクラスに言って、試召戦争の準備ができていると宣言して来い。そうすれば今回は設備については見逃してやってもいい。ただし、宣戦布告はするな。すると戦争は避けられないからな。あくまでも戦争の意思と準備があるとだけ伝えるんだ」

根本「……それだけでいいのか?」

 

疑うような根本の視線。雄二の当初の計画ではそれだけのはずだったのだが。

 

雄二「ああ。Bクラス代表がコレを着て、言ったとおりにしたら見逃そう」 

 

そう言って雄二が取り出したのは、先程秀吉が来ていた制服。これは明久が制服を手に入れるための手段だが、恐らく雄二の個人的恨みも含まれてるだろう。

 

根本「ば、馬鹿なことを言うな!この俺がそんなふざけたことを……!」

 

予想外の要求に根本が慌てふためく。

 

和真(そりゃ嫌だよな。あれを抵抗なく着れる男なんざいねぇ……と思う)

秀吉(なぜじゃろう……何か心に重いものが…)

 

『Bクラス生徒全員で必ず実行させよう!』

『任せて!必ずやらせるから!』

『それだけで教室を守れるなら、やらない手ないな!』

 

突如、アゲアゲになるBクラス一同。この光景を見ると根本の人望のなさが窺える。

 

雄二「んじゃ、決定だな」

根本「くっ!よ、寄るな!変態ぐふぅっ!」

源太「とりあえず黙らせといたぜ。あースッキリした」

雄二「お、おう。ありがとう」

 

散々気に食わない作戦に付き合わされた恨み+鉄人の補修&和真の罵詈雑言で蓄積したストレスを込めた源太の一撃が根本のボディに直撃する。

 

源太「そういうわけで和真、俺様は今日行けねぇわ」

和真「ああ了解。ソウスケ達もこの後Cクラスとの試召戦争があるから無理らしいし、ラクロス部に殴り込みはまた今度か…」

 

やっぱり忘れていなかったようであるが、優先順位としてそこまで高くはないので先送りにする。

 

秀吉「では、着付けに移るとするか。明久、任せたぞ」

明久「了解っ」

 

明久が倒れている根本に近づき、制服を脱がせる。その表情は当然、不愉快そうな顔である。

 

根本「う、うぅ……」

 

気色悪いうめき声をあげる根本。このままだと目を覚ましてしまいそうだ。

 

明久「ていっ!」

根本「がふっ!」 

 

そこで明久が追加攻撃。その後男子制服を剥ぎ、女子の制服をあてがうが、やり方がわからず手が止まる。

 

「私がやってあげるよ」

 

するとBクラスの女子の一人がそう提案した。

 

明久「そう?悪いね。それじゃ、折角だし可愛くしてあげて」

「それは無理。土台が腐ってるから」

 

笑顔で容赦ない評価を下すBクラス女子。

根本には一片の慈悲もないらしい。

 

明久「じゃ、よろしく」

 

明久はそう言い。根本の制服を持ってその場を離れた。

ごそごそと根本の制服を探る。

 

和真「なにやってんだ明久?いくら金欠で相手が根本だからって財布盗むのはよせ」

明久「違うよ!?…………って、あぁ!」

和真「?」

明久「違うからね!?姫路さんの大切なもの探してるとかじゃないからね!」

 

語るに落ちるとはこのことだ。この男は本当に誤魔化そうという意思はあるのだろうか。

 

和真「……そうかい」

 

しかし事情を察したのか気を聞かせて明久から離れる和真。

 

明久(よし、なんとか誤魔化せた…)

 

本当にこいつはおめでたい頭である。

 

明久「……あったあった」

 

姫路の封筒を取り出し、ポケットに入れる。

 

明久(さて、この制服はどうしよう?……よし、捨てちゃおう。折角だから根本君には女子の制服の着心地を家まで楽しんでもらおう)

 

それを楽しめるのはよほど業の深い人間だろう。当然明久もそれは理解している。理解しているからこそ実行するのだ。

 

明久「落とし物は持ち主に、っと」

 

取り戻したブツを姫路の鞄に入れておく。これでミッションコンプリートだ。

 

「吉井君!」

明久「ふぇっ!?」

 

背後から急に声をかけられて間の抜けた悲鳴をあげる明久。慌てて振り向くと、そこにはなにやら申し訳なさそうな姫路が立っていた。

 

姫路「吉井君……!」

明久「ど、どうかした?」

 

鞄をいじっている姿を見られ、慌てる明久。すると、そんな明久に姫路は涙を浮かべて正面から抱きついてきた。

 

明久「ほわぁぁっっと!?」

 

ほわっと=what + why(訳)なに!?なんで!?

 

姫路「あ、ありがとう、ございます……!わ、私、ずっと、どうしていいか、わかんなくて……!」

 

今どうしていいかわからないのは間違いなく明久の方であると思う。

 

明久「と、とにかく落ち着いて。泣かれると僕も困るよ」

姫路「は、はい……」

 

精神の安定を図るため姫路を引き離す明久。

 

明久(……ってしまった!引き離してどうする!こんなチャンスは二度とないだろうが)

 

後の祭りである。

 

姫路「いきなりすみません……」

明久(ああっ言いたい!もう一度抱きついてってお願いしたい!)

明久「も、もう一度…」

姫路「はい?」

明久(げっ!思わず口に出てた!なんとか誤魔化さないと!)

明久「もう一度壁を壊したい!」(って馬鹿ぁっ!僕の馬鹿ぁっ!お前はどこのテロリストだよ!)

 

壁があったら殴って壊すと言っても流石に限度というものがある。

 

姫路「あの、更に壊したら留年させられちゃうと思いますよ……」

 

姫路はとても気の毒そうな目で明久を見る。先程までの不安定な表情はより不安定な明久を見ていたお陰で安定したようだ。

 

明久「……それじゃ、皆のところに行こうか」

姫路「あ、待ってください!」

 

いたたまれない気持ちで逃げようとする明久の袖を握って引き留める姫路。

 

明久「な、なに?」

姫路「あの……手紙、ありがとうございました」

 

うつむきがちに小さな声で言う姫路。

 

明久「別に、ただ根本君の制服から姫路さんの手紙が出てきたから戻しただけだよ」

姫路「それってウソ、ですよね?」

明久「いや、そんなことは」

姫路「やっぱり吉井君は優しいです。振り分け試験で途中退席した時だって『具合が悪くて退席するだけでFクラス行きはおかしい』って、私の為にあんなに先生と言い合いをしてくれていたし……」

明久(そういえばそんなこともあったなぁ。あのときは先生に冷たくあしらわれたから、逆に熱くなっちゃったっけ)

姫路「それに、この戦争って……私の為にやってくれてるんですよね?」

明久「え!?い、いや!そんなことは!」

姫路「ふふっ。誤魔化してもダメです。柊君に全部聞いちゃいましたから」

明久(和真ァァァ!?なんでばらしちゃったの!?ねえ!?)

 

『わりぃ、全部ばらしちゃった♪』

 

全く悪いと思っていなさそうな満面の笑みを浮かべた和真が明久の脳裏に浮かんだ。思わずぶん殴りたくなるような笑顔だ。

 

姫路「凄く嬉しかったです。吉井君は優しくて、小学校の時から変わっていなくて…」

明久「そ、その手紙、うまくいくといいね!」

 

妙な空気にむずがゆくなり、強引に話題を変える。

 

姫路「あ……。はいっ!頑張りますっ!」

 

満面の笑みで姫路は応える。

 

明久(この子は本当に和真のことが好きなんだな。わかっていたことだし、僕が和真に敵わないことも自覚している。悔しいけどしょうがない)

明久「で、いつ告白するの?」

姫路「え、ええと……全部が終わったら……」

明久「そっか。けど、それなら直接言った方がいいかもね」

姫路「そ、そうですか?吉井君はその方が好きですか?」

明久「うん。少なくとも僕なら顔を合わせて行ってもらう方が嬉しいよ」

姫路「本当ですか?今言ったこと、忘れないで下さいね?」

明久「え?あ、うん」(まあ和真も多分直接言ってもらうほうが好きだよね、あの性格的に)

 

『こ、この服、ヤケにスカートが短いぞ!』

『いいからキリキリ歩け』

『さ、坂本め!よくも俺にこんなことを』

「無駄口を叩くんじゃねぇよ!これから撮影会もあるから時間がねぇんだぞ!』

『き、聞いてないぞ五十嵐!』

『当たり前だ!今思い付いたからな!』

『OK、採用!』

『貴様等ァァァ!』

 

いつの間にか源太が撮影会までスケジュールに入れていた。これからの出来事は根本には一生忘れられないトラウマになるに違いない。

 

明久「…とにかく、頑張ってね」

姫路「はいっ!ありがとうございます!」

 

元気よく返事をして、姫路はとても軽やかな足取りで教室を出て行った。

 

明久「………………さてと」

 

和真の席に歩み寄り、鞄を取り出す。

 

明久「とりあえず、和真の教科書に卑猥な落書きでもしておこう」(僕がそう簡単に人の幸せを祝ってやる人間だと思うなよ!)

 

お前は小学生か。

 

和真「随分愉快なことしようとしてるじゃねぇか」

明久「そうでし………………ょ…………」

 

悪が栄えた試しなしとは良くいったもので、いつの間にか明久の隣に和真がいた。

 

和真「で?誰が誰の何に何をするって?」

 

バキボキと腕を鳴らしながら明久に問う。気のせいか、和真の後ろにライオンらしき動物が浮き出ている。

 

明久「スミマセンごめんなさい僕が悪かったです許してください心からお詫びしますアイムソーリー」

 

自らが補食される側であると痛感させられた明久はそれはもう見事な平謝り。

 

和真「ったく。何くだらねぇこと企んでんだよ……んじゃ俺テニス部に用があるからもう行くぞ」

明久「今日も?……ちょっとはスポーツもほどほどにできないかな?」(姫路さんのために少し自重してもらおう)

 

体が弱い姫路のために、和真の運動部巡りを減らそうとする明久。だが、

 

和真「死んでもやだ」

明久「そこまで!?」

 

そんな提案をこのアウトドア派筆頭が聞き入れるはずがない。

 

和真「当たり前だろ。何もせずおとなしくしているだけなんざ御免だ。つか、そんな奴もう俺じゃねぇよ」

明久「…そっか……そうだよね……和真だもんね……」(姫路さん、君の恋路は思ったより険しいらしい)

 

確かに明久がこの様子だと、姫路の恋が実を結ぶのはまだまだ先のようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

BクラスとFクラスの試召戦争修了直後、すぐさまCクラス対Aクラスの試召戦争が始まった。

 

小山(見てなさいよ木下!ギッタギタにしてやるわ!)

 

Cクラス代表の小山 優香は怒りに燃えていた。

そんななか、教室前で待機させていたはずの生徒が教室に駆け込んできた

『だ、代表!』

小山「なによ!持ち場を離れるんじゃないわよ!」

『それどころじゃないんです!』

小山「?いったいどういう…」

直後、Cクラスのドアが勢いよく開かれ、一人の生徒が入ってきた。

 

「正直、手応えのあるアイテとは言えないな…」

 

小山「…なっ!?あ…あんたは!?」

 

 

 

 

蒼介「さて、この戦争を終わらせよう」

 

学年主任高橋先生を連れたAクラス学年代表、鳳 蒼介であった。

AクラスとCクラスは教室が隣同士であり、どうやったって短期決戦になる。

雄二達Fクラスは戦力不足が否めないので後半は代表である雄二自らが戦線に出ることもある。

 

だがAクラス代表が開始早々自ら敵地に乗り込んで来るなんて誰が予想できよう。

 

小山「…はっ!何を血迷ったかしらないけど探す手間が省けたわ!あんた達、こいつを仕留めなさい!」

 

小山に命令され、近衛兵達が前に出る。

 

蒼介「高橋先生、Aクラス鳳が総合科目勝負を申し込みます。試獣召喚(サモン)!」

『試獣召喚!』

 

それぞれの召喚獣が出現する。蒼介の召喚獣は蒼を基調とした武者鎧に和服、武器は草薙の剣だ。続けて点数が表示される。

 

 

『Aクラス 鳳 蒼介 5833点

VS

Cクラス生徒×10 平均1700点』

 

 

表示された蒼介の点数は、教師すらも凌駕しかねない反則的なまでの数値であった。

 

『うっ…』

『覚悟はしていたが、なんて点数だ…』

『あんなのいったいどうすれば…』

 

あまりの点数差にCクラス生徒一同の闘争心はどんどん削がれていく。急激にへたれていく近衛兵達に小山は鼻息荒く激を飛ばす。

 

小山「なにびびってるのよアンタ達!全員で囲めば倒せない相手じゃないでしょ!早く殺りなさい!」

 

小山の鶴の一声を受け、覚悟を決め〈蒼介〉を取り囲む近衛兵達。

 

『やあぁぁぁぁぁ!』

 

〈蒼介〉に一斉に攻撃を仕掛ける。〈蒼介〉の武器では和真のように巨大でなく薙ぎ払うことはできないため、そのまま攻撃を受けてしまう。

 

しかし、

 

蒼介「無駄だ」

 

〈蒼介〉はそれらの攻撃に動じることなく近衛兵達を一人残らず切り裂いた。点数差もあり一撃で全員戦死した。

 

 

『Aクラス 鳳 蒼介 5833点

VS

Cクラス生徒×10 戦死』

 

 

小山「どういうこと……なんであんたは傷ひとつついてないのよ!?」

 

小山の言った通り、蒼介の召喚獣は近衛兵達の攻撃を受けたのにもかかわらず一切ダメージを受けていなかった。

 

蒼介「お前が知る必要などない。さぁ決着だ、その首貰い受ける」

 

 

 

 

 

 

 

飛鳥「改めて見ると…えげつないわね、蒼介の腕輪」

優子「そうね…というか、ほとんど代表一人で片付けちゃったわね…」

飛鳥「試召戦争のセオリーをガン無視した作戦だったしね…」

 

念のため教室の外で待機していた二人は驚き半分、呆れ半分

といった様子で代表の一人舞台を見届けた。

 

優子「というか秀吉のやつ…後で覚えてなさいよ…」

飛鳥「優子、禍々しいオーラが出てるわよ…」

 

どうやら秀吉の寿命は長くはもたないらしい。




というわけで蒼介君無双でした。
二位の翔子さんですら千点差以上……
大人数で闘うと敗北する法則。
彼の武者鎧のモチーフは神羅万象シリーズの『聖龍王サイガ』をイメージしています。

鳳 蒼介
・性質……バランス型
・総合科目……5800点前後 (学年1位)
・400点以上……全科目
・ステータス
(総合科目)
攻撃力……A+
機動力……A+
防御力……A+
・腕輪……まだ不明

全能力が最高レベルの完璧なオールラウンダー。
Cクラスの猛攻が通用しなかったのはどうやら彼の腕輪能力が関係しているらしい。

では。

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