バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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【アクティブ古今東西ランキング(人心掌握)】

①優子……()()和真を虜にした偉業を考慮して見事トップの座に。

②蒼介……人心掌握は帝王学の基礎である。

③和真……メンタルケアの達人。それと良い意味でも悪い意味でも火に油を注ぐのが上手い。

④愛子……女子達を誘導して明久達を何度もピンチに追い込んだ実績を持つ。

⑤源太……根本を「卑怯」から「狡猾」に改善(?)させた。

⑥飛鳥……上の五人に比べて凡庸と言わざるを得ない。

⑦徹……他者に影響を与えることは無いが、反対に自身も他者から影響を受けない。どこまでもゴーイングマイウェイな男。




開会式

優子にお許しを貰った和真が教室に戻るといつものメンバー達に詳細を聞かれたが、弄るのは大好きだが弄られるのは大嫌いという割と最低なことを平然と口にできる和真が教えるはずもなく、お得意の舌先三寸でのらりくらりとはぐらかした(雄二だけはしつこく食い下がったが「翔子にとんでもないこと吹き込むぞ」と脅して無理矢理黙らせた)。時間もちょうど良い頃合いだったのでFクラス一同は体育館に向かう。和真達を含む全学年計18クラスの生徒達が整列し終えたことを確認した学園長は、大会実行委員長に抜擢された綾倉先生からマイクを受け取り開会式の挨拶を始める。

 

『よく集まったねクソジャリ共』

 

流石は「横柄が服を来て歩いている」と揶揄される学園長と言うべきか、スポンサーである四大企業のトップ達や試験召喚システムに興味がある他校の教育関係者なども出席しているというのに、一切ぶれることのない出だしである。

 

『いやいよ試験召喚戦争の祭典、【サモン・ビースト・フェスティバル】の開催さね。アンタ達がどうしようもないうすのろなのか、それとも多少は小利口なガキなのか、……今日全世界に知らしめることになるさね』

 

その後もおおよそ聖職についている者とは思えないような内容が続く。あまりの酷さに出席している各地から集った教育関係者達のこめかみに青筋が浮かび出したと言えば、どれほどアレな内容かお察しであろう。

 

『この召喚大会は学園の体裁どころか今後の試験召喚システムの有り様にもかかわる極めて重大なイベントだから、ルールと常識を守って参加することだね。前もって釘差しておくが、大会最中に学園の設備や校舎に破壊するような行為をした場合は即失格の上停学や退学といった処置をとるからね』

 

二年Fクラスの方向……具体的には明久と雄二をチラ見どころかガン見しながら学園長が釘を刺すが、当の彼らはまるで悪びれた様子のない。学園長は呆れたように溜め息をつきつつ挨拶を締めくくる。

 

『……時間の関係もあってあんまり長くは話せないから、あたしの話はここまでにするさね。続いてこの学園のスポンサー達の挨拶だよ。正直カットしても良いんだけど日頃金を落としてもらっている手前無下にもできないんだよ。文月学園が存続できるのもこの金づる達のお陰でもあるから、せめて話だけでも聞いてやるんだね』

 

学園長の横柄さは留まるところを知らない。しかし絶対強者故の余裕か、四大企業のトップ達は意に介することなく生徒達の前に並ぶ。その内の二人……“桐谷グループ”の宮阪桃里と“御門エンタープライズ”の桐生舞はさらっと無難に挨拶を済ませた。その様子に小さくない違和感を覚えた副実行委員長の御門は、“橘社”の橘大悟の前二人に比べてやたらと長い挨拶を華麗に聞き流しつつ隣の綾倉先生に話しかける。

 

御門(…………なあ綾倉)

綾倉(おや、どうしました御門君?というかダメじゃないですか。ちゃんと橘社長の話に耳を傾けないと)

御門(別に良いだろ聞かなくてもよー、もうウンザリなんだよアイツのクソ長い話は。…というかさっさと誰かが止めねーと延々しゃべるぞあのバカ)

綾倉(橘社長はお話好きですからね……それで御門君、私に何を聞きたいのですか?と言っても、おおよその見当は付きますが)

御門(…………アイツ、誰だ?)

 

そう言って指を刺した先にいたのは、先ほど挨拶を終えたばかりの女性……綾倉のかつての教え子であり御門の後輩でもある幸薄系キャリアウーマン・桐生舞であった。

 

綾倉(誰も何も……面倒になったあなたに気の毒にも承認なしで社長の座を押し付けられた桐生さんじゃないですか)

御門(事実だから否定はしねーけどよ……誰よりも何よりもオメーだけには言われたくねーよ!)

綾倉(まあまあ、もう終わった話じゃないですか)

御門(終わってんのはオメーの性格の悪さだっつの……つかそうじゃなくて、俺が言いたいのはな……)

綾倉(桐生さんにしてはやけに落ち着き過ぎている……でしょう?)

御門(わかってんなら余計な茶々入れんじゃねーよ……)

 

急に真剣な表情(と言っても相変わらず真意を読み取りにくい糸目フェイスなのだが、それなりに親交のある御門にはフザけてはいないと判断したらしい)になった綾倉先生に御門は嘆息しつつ、自信も真剣な表情になりつつ話を進める。

 

御門(俺達の知ってるキュウリは優秀だが極度のアガリ症で、在学中ゼミでの発表の際は面白いくらいテンパってたし台詞もひたすら噛み倒していた。そんな奴が初対面の生徒900人その他十数名に囲まれた状況でそつなく挨拶をこなせる筈がねぇ。いったいどうしちまったんだ、アイツ……?)

綾倉(気になるなら直接聞けば良いじゃないですか。彼女はあなたを慕っていたと記憶していますが?)

御門(てめーホント性格悪いな……俺がアイツとの関係絶ち切ったと知っててそれを言うかよ)

綾倉(心外ですねぇ、仲違いした教え子の関係を修復して差し上げようとしただけですのに)

御門(そういうとこが性格悪いっつってんだよ……)

 

二人が仲違いした理由……もっと言えば御門が桐生を突き放した理由は、桐生を危険から遠ざけるためだ。まだ断定はできないが、おそらく御門はアドラメレクに目をつけられている。肝試しの裏での激闘の際、アドラメレクは御門の素性を知ると不自然なほど歓喜を露にした。全ての生物を死に追いやるために生まれたと真面目にのたまうような奴にそんな反応されるなど不吉この上なく、御門の生存率は著しく下がったと言えよう。そしてその御門に近しい者もまた然りある。それらの事情を察しているくせにあんなことをいけしゃあしゃあと言える綾倉先生は、御門の言う通りかなり性格が悪いと言えよう。

 

 

『-つまり試験召喚システムとは慢性化が進む日本教育を根底から覆す実に新し-むぉっ!?なんだ学園長まだ話の途中だ邪魔をしないでいただきたい-』

『アンタの話長いんだよ!さっき時間無いって言ったはずさね!』

 

 

綾倉(……橘社長の長い話も終わるようですし、この話は後日にしましょう。藍華さんの怒りを買うのはおっかないでしょう?)

御門(………同感だけどよ、なんであの人が挨拶するんだよ?あの天然ボケいったいどこで油売ってやがる……)

綾倉(鳳さんのことですからおそらくは……)

御門(…………また迷子かよ)

 

綾倉先生や御門だけでなく、実の息子を含む秀介と面識のある者全員が思わず頭を抱える。“鳳財閥”トップ・鳳秀介は極めて優秀な人間であるが、同時に常識では有り得ないレベルの方向音痴である。今回のような重要な式典や会議などを彼が欠席する理由はほぼ100%がその場まで辿り着けないからであり、今回もそうであると嫌でも確信してしまったようだ。そして今回もその例に漏れず、藍華が心底申し訳そうな表情で口を開く。

 

 

『…………大変申し訳ございませんが、“鳳財閥”トップ・鳳秀介は手違いでアンティグア・バーブーダにいるらしく……妻である私、鳳藍華が代役で挨拶を行います』

 

 

その後藍華は名家『赤羽家』な名にふさわしい毅然とした振る舞いで挨拶をやりきったがちゃんと聞いていた人間はごく少数だった。何故なら…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(((アンティグア・バーブーダって何処だよ!?どこをどう手違えたらそうなる!?)))

 

彼らの心は秀介の有り得ないレベルの迷子っぷりに対するツッコミで一つになっていたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、綾倉先生は強すぎるという理由で予選を免除された和真、蒼介、梓、リンネ以外の生徒に手の平サイズのPDAを配布し(その際、和真達が予選を免除されることに徹がせっかくだからと綾倉先生に特に意味もなく因縁をつけにかかったが、和真達を特別扱いしているわけではなく、和真達を予選に参加させれば運ゲー要素を著しく上昇させてしまうから……要は予選に参加するメンバーに配慮した措置だと丁寧に説明されおとなしく引き下がった)終えると、生徒達の注意を自身に集める。

 

綾倉「それでは予選の内容、及びルールを説明していきます。と言っても内容は至極シンプル、君達には試験召喚戦争を通して……これを奪い合ってもらいます」

 

そこで一旦言葉を切り、綾倉先生はポケットからあるものを取り出す。さほど珍しい物ではなく、始めて見る人は日本中探したとしても極少数、所持している人も少なくないであろうありふれたもの。王・女王・城・僧侶・騎士・兵士で構成される世界的に有名なボードゲームのアイテム…

 

 

 

 

 

 

雄二「……チェスの駒?」

綾倉「その通り。名付けて駒争奪戦(チェスナッチ)…全学年によるバトルロワイヤルです」

 

 

 

 




御門のおっちゃんが桐生さんに抱いた些細な疑問を解決しなかったことが後々あんな事態を招くなんて、このときは誰も思っても見なかった……


と、意味もなく不吉なフラグを建てておきます。

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