バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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長らく放置してた一年生生徒会役員がついにベールを脱ぎます。

和真「ぶっちゃけどういうキャラにしようか迷っているうちに放置され-」

蒼介「や め ろ」


大会直前

次の日の放課後、生徒会長・鳳蒼介は生徒会室で役員達と定例会議を開いていた。その内容は特にこれといって言及すべきことのない、いたって普通の通常業務。文月学園生徒会の業務には学園の経営への参加が含まれているが今回に限っては役員達も参加者、故に公平を期すために『S・B・F』関係にはノータッチである。

 

蒼介「-以上で今回の会議は終了だ。……それはそうと、『S・B・F』開催まであと五日となった。私は予選を免除されている身だが、諸君らの健闘を祈っている」

飛鳥「らしくないわね蒼介、気持ちは嬉しいけど駄目よ。貴方は生徒会長、相手が役員とはいえ一部の生徒に肩入れするような発言はよくないわ」

蒼介「見解の相違だな飛鳥。私はお前達に肩入れしているわけでも、お前達以外を軽んじているわけでもない。……それに、誰が勝ち上がろうとも私は負けるつもりはない」

飛鳥「……前言撤回、ものすごく貴方らしかったわ」

沢渡(相変わらず甘酸っぱさゼロの会話ね……)

二宮(こいつらホントに婚約者同士なのか?)

 

和真曰く脳みそがオリハルコンでできている堅物二人は相も変わらず色気の欠片もないトークを繰り広げる様子を、クラスメイトである会計の二宮悠太と書記の沢渡晴香は呆れたように見守る。彼らにとって二人のやり取りなど見慣れた…否、見飽きた光景なのだろう。一方、一年生役員達はそもそも彼等との接点が希薄なのでさして興味を引く光景ではない。よって興味は本命の『S・B・F』へと移るわけで…

 

鉄平「ククククク……。ついに…ついにやってきた!

日頃培った努力と!忍耐と!鍛練の成果を競う一大イベントが!うォォおおお熱血だァァあああ!!!」

 

地球温暖化の元凶こと庶務の黒木鉄平が内に抑えられていた熱意を爆発させ、室内の温度を一瞬で上昇させる。入った当初は会議中にもしばしば暴走して蒼介に制裁を喰らったりもしていたが、学習したのか暑苦しさを発揮するのは会議終了後に限定したようだ。ぶっちゃけ非情に鬱陶しいのだが精神的にはともかく物理的には迷惑をかけているわけではないので二年生サイドはぐっと我慢、一年生サイドは慣れているのかノーリアクション…そもそも三人ともいちいちツッコむタイプではない。

 

例えば…

 

千莉「あいわかった。この学園総て…否、天下中に拙者の名を刻み付ける良き機會でござる」

 

書記の宗方千莉……あの秀吉も一目置いている演劇部員である。彼女は秀吉ほどオールマイティーの役者ではなく、時代劇系の役しかできないが、恐るべきことに彼女には芝居の中と普段の区別が無い。

いついかなる場合でも、宗方千莉の心と魂は正しく武士そのもの。

……大層に言ってはみたものの分かりやすく言えば、要は一種の中二病である。ツッコむタイプじゃないことなど当たり前、むしろ彼女が四人の中でツッコミどころ満載な人間だ。

 

詩織「………」

泰山「鉄平と千莉はいつも元気だなぁ」

 

残りの二人も彼等の奇行を諌めなどしない。

まず一年の学年次席、会計の志村泰山。見るからに優男といった顔立ちで、外見に違わず穏やかでおおらかな性格である。他者の警戒心を解く声音と口調に無条件で人を安心させる柔和な微笑みをたたえており、また彼が怒った姿を見た生徒及び教師は一人もいないという。それ故泰山は他人が暴走しようと堕落しようとそれら全てを肯定し許容してしまうため、人をどんどん堕落させてしまう悪癖がある。通称『駄目人間生産マシーン』。

最後の一人、三年学年主任・綾倉慶の娘にして一年の学年首席、副会長の綾倉詩織は我関せずと言わんばかりに静観している。別に機嫌が悪いわけでもなく鉄平や千莉と仲が悪くもない。むしろ彼女にとってはこれが自然体だ。とにかく無口な少女で、話しかけられて無視するようなことは無いものの自発的に口を開くことはほとんどなく、いざ話し出しても会話量は必要最小限。二年生にも無口な生徒はムッツリーニや(雄二関係を除く)翔子などがいるものの、二人と比べてもそのコミュ障具合は抜きん出ている。

総じて一癖も二癖もある個性派揃いの連中だがどういうわけかこの四人、クラスも部活動も主義も価値観もてんでバラバラにもかかわらず仲が良いらしい。

蒼介は彼ら四人を意味深に一瞥しつつ、Aクラス教室で抗議を開く予定があるため飛鳥達を引き連れて生徒会室をあとにする。その様子を詩織は静かに見届ける。

 

詩織「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして大会開始までの五日間、多くの生徒達は栄光をその手に掴むため研鑽に研鑽を積んだ。 

刻苦勉励を徹底する者、操作技術の向上にいそしむ者、事前に不可侵協定を結ぼうとする者、有力生徒と協力関係を結ぶ者…アプローチの仕方はさまざまだが、それぞれの勝利への執念は皆生半可なものではない。それを証明する下のように登校義務の無い日曜日でさえ、ほとんどの生徒が学校に集結し振り分け試験に臨んだ。

 

雄二「さて、俺の点数は………っ……」

 

Bクラス教室にて、採点が終わった自分の成績を確認した

雄二は、思わず絶句する。

 

 

『二年Fクラス 坂本雄二

 

 国語      429点

 ①現代文    406点

 ②古典     452点 

 

 数学      535点

 ①数学Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ  532点

 ②数学A・B・C  539点 

  

 理化      507点

 ①物理     521点

 ②科学     494点

 

 社会      487点  

 ①地理     460点

 ②日本史    515点

 

 外国語     466点

 ①英語W    462点

 ②英語R     471点

 

 保健体育     483点

 

 

 総合     5331点』

 

 

雄二「…………ふぅ……ま、まあ流石に1週間じゃランクアップはいくらなんでも無理があるよな」

翔子「……雄二、そう落ち込まない。十分すごい点数」

雄二「いや落ち込んでねぇよ。落ち込んでねぇけど……なあ」

 

胸の内の雄二の感想は、悔しさ二割、羞恥八割。前回とは比べ物にならない恐るべき点数ではあるももの、それでもランクアップの条件……全教科500点以上を満たすことはできなかったようだ。たった一週間でここまで成績を向上させたことを考えると、その才能は和真や蒼介を凌駕していると言えなくもないが、「俺は神童、誰よりも頭が良い」的な大言壮語をのたまった手前、流石に蒼介はともかく和真の点数は越えておきたかったというのが雄二の本音だ。

 

雄二「………まあ仕方ねぇ、この成績で勝ち抜くしかないか……ところで翔子、お前はどうだった」

翔子「……私はさほど伸びていなかった」

 

そう言いながら翔子は成績表を手渡す。

 

 

『二年Fクラス 霧島翔子

 

 国語      482点

 ①現代文    488点

 ②古典     476点 

 

 数学       458点

 ①数学Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ  455点

 ②数学A・B・C  461点 

  

 理化      510点

 ①生物     514点

 ②科学     506点

 

 社会      520点  

 ①世界史    522点

 ②倫理政経   518点

 

 外国語     573点

 ①英語W    574点

 ②英語R     572点

 

 保健体育     502点

 

 

 総合      5588点』

 

 

雄二「…………」

 

目を通した雄二は思わず沈黙。

 

翔子「……ランクアップはまだまだ遠そう」

雄二「普通に俺より上じゃねぇかよ………」

翔子「……それはいつものこと」

 

何気なく悪気もない翔子の言葉を受け、雄二は膝から崩れ落ちた。雄二が翔子には勝てないのは、最早ちょっとした呪いか何かではないだろうか。

すると、意気消沈する雄二のもとにムッツリーニがやってきた。

 

ムッツリーニ「………雄二」

雄二「なんだムッツリーニ……見ての通り今メンタルがやばいから後にしてくれるか?」

ムッツリーニ「………おそらくは『S・B・F』に関係している物体が至るところに-」

雄二「詳しく」

 

悪巧みのチャンスは決して逃さない……それが坂本雄二の真骨頂である。さて、今回はどんな奇抜な策を練ることやら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蒼介「ふむ……」

 

ところ変わってAクラスの教室。蒼介も雄二と同じように自らの成績表に目を通していた。

 

 

『二年Aクラス 鳳蒼介

 

 国語      713点

 ①現代文    716点

 ②古典     711点 

 

 数学       707点

 ①数学Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ  706点

 ②数学A・B・C  708点 

  

 理化      708点

 ①生物     710点

 ②科学     706点

 

 社会      709点  

 ①地理     705点

 ②倫理政経   714点

 

 外国語     711点

 ①英語W    710点

 ②英語R     712点

 

 保健体育     703点

 

 

 総合      7799点』

 

 

まさに圧巻の一言。とうとう蒼介の点数は学年主任の高橋先生と並んだ。圧倒的格上(御門空雅)との激闘は蒼介の“明鏡止水”をさらなる深みへと到達させた。

 

蒼介(とはいえまだ完全ではない。今の私の“明鏡止水”は、例えるならあと1ピースで完成するジグソーパズルだ。そしておそらく、その1ピースに該当するものは……カズマよ、今お前は何をしている?私との差はまた広がったぞ。“オーバークロック”も既に習得し、お前が意図的に隠していたであろうランクアップのその先に私もたどり着いた。……この一週間で、私に点数差をみすみす広げられてまでお前は何を得たのだ?…………私を失望させてくれるなよ?)

 

親友にして最大の宿敵の顔を思い浮かべながら、蒼介はほんの一瞬彼そっくりの好戦的な笑みを浮かべる。

 

優子「……和真、帰ってきたら覚悟しなさいよ。泣かす……今回という今回絶対泣かす!(ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…!!!)」

蒼介(とはいえ、私と相見えるまで無事でいればの話だがな……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その和真はというと…

 

和真「……結局間に合わなかったか。くそっ、“気炎万丈”は二日前には完成したってのに…」

守那「それまでに蓄積したダメージを癒すために二日間まるまる費やしてしまうとはなフハハハハハハ!」

和真「やかましいわ!お前のせいなんだから他人事みてぇに爆笑してんじゃねぇよ!テンションに任せて好き放題ボコりやがって!」

守那「フハハすまんすまん!しかし倅よ和真、お前もこの通り同じくらいワシを痛め付けたではないか!ワシ一人に責任を押し付けるのはどうかと思うぞ?」

和真「じゃあ何か!?あのままおとなしくボコられてろってか!?んなことしたら大会にすら間に合わなくなるわ!」

守那「まあ良いではないか!療養の片手間に勉学に取り組んでいたようだが、“気炎万丈”状態では頭の回転も学習率も段違いであっただろう!お前の学力は一週間前と比べて格段にアップしているハズだ!」

和真「だからテスト受けなきゃ反映されねぇっつってんだろうがこのクソ親父!」

 

いつものようにひと通り親子口喧嘩を繰り広げてから、二人は帰宅準備にかかる。すると、思い出したように守那がこんなことを言い出した。

 

守那「和真、今回みたいに“気炎万丈”を治癒に応用する方法はできるだけするなよ?」

和真「…あん?なんでだよ?」

守那「あの方法は体の細胞分裂を過剰に促進させているのでな、使い過ぎるとどんどん寿命が縮んでいくぞ-」

和真「だ・か・ら!なんでお前はそういう大事なことを後から言うんだよ!?易々と使っちまったじゃねぇか!」

守那「一回くらいならさして影響は無いはずだ……多分な!」

和真「断言しろよそこはぁぁあああ!」

 

怒り狂う和真を見て、どういうわけか守那はどこか微笑ましそうに笑いだした。その光景を見た和真は、怒りが一周回ったのか逆に落ち着いてきた。

 

和真「……何がおかしいんだよ?」

守那「いや、この短期間で随分と変わったと思ってな。……今だからこそ言うが実を言うとな、以前までのお前には完全な“気炎万丈”を教える気は無かったのだぞ」

和真「…………危険だからか」

守那「ある程度察しがついていたようだな。その通り、気炎万丈に限界は無く、その気になれば際限無く己を強化できる……しかし肉体には限界がある。調子に乗って過剰に強化し続ければ…」

和真「…行き着く先は破滅ってわけか」

守那「その通り……そして以前までのお前なら、そのことになんら躊躇することなかっただろう。生まれながらの修羅であるお前が、肉体が衰えてからの人生に価値を見出だすはずもない。……しかし今は違う、今のお前には寿命を使い潰せない理由がある。それは…

 

 

 

 

 

あのお嬢ちゃんだろ!?だろ!!??だろぉっ!!!???」

和真「だぁぁっ!!急にウザくなるんじゃねぇよ!?さっきまでのシリアスな雰囲気ぶち壊しじゃねぇか!」

守那「否定はせんのだろう?いやぁ、あの恋愛音痴だったお前がなぁ……すっかり恋する乙女みたいに-」

和真「ぶち殺すぞテメェ!?やめろニヤニヤするんじゃねぇ!あとお前俺に隠れて優子に余計なこと吹き………………あ」

守那「む、どうした倅よ?」

和真「(ズゥゥゥウウン…)……優子怒ってるだろうなぁ……事前に伝えたら確実に怒られるから事後報告しかしてなかったし……確実にキツいお仕置きされる、うわ学校行きたくねー……」

守那「……まあ、頑張れ」

 

目に見えて落ち込む和真に、さしもの守那もそう言うしかなかったそうな。

 

 

 

守那(……しかし不思議なものだな。

惚れた女にすっかり飼い慣らされたこの息子の胸の内には………ワシとは比べようのない、途方もなく強大な修羅が潜んでいるのだからな。そして、肉体の感情エネルギー許容量もまた桁外れだ。もし和真がリスク度外視でなりふり構わず“気炎万丈”をフルパワーで扱ったとすれば……そのときのこやつは、もはや人ではなく兵器だろうな)

 

   

 




雄二が一気に優勝候補の一角に食い込みましたね。若干やり過ぎな気もしますが、神童とまで呼ばれてたくらいだしこれくらいできても良いでしょ?

そして和真君はせっかく格段にパワーアップしたもののテストに間に合わなかったため、前回までの点数で闘う羽目になりました。蒼介君との点数差はさらに広がり、ぶっちゃけ敗色濃厚です。付け入る隙があるとすれば、蒼介君が“明鏡止水”を完成させていないのに対し和真君は“気炎万丈”を完成させてることでしょうか。

次回からはいよいよ大会編ですが、3月いっぱいは予定が詰め詰めなので申し訳ありませんが投稿は四月からになりますのでご了承ください。



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