『怠☆惰☆王~御門空雅(幼稚園時代②)』
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サンタ(園長)「クウガくんは何が欲しいのかな?」
御門(5)「あー?じゃあせかいのはんぶん」
サンタ「欲望デカッ!?……ごめんね、それは流石に私でも用意できないんだ」
御門「なんだよつかえねーな……じゃあエンピツとかでいいよもう」
サンタ「落差が激し過ぎるよ!?もっと良い物じゃなくて大丈夫かい?」
御門「(ハンッ)アンタごときにそんなきたいしてもしょーがねーだろ」
サンタ(5歳児に鼻で笑われた……)
6つの幾何学模様が出現し、その中心から召喚獣が現れる。
〈明久〉の装備は見た者に同情あるいは嘲笑されること間違い無しの学ラン(龍の刺繍付き)&木刀のチンピラルック、〈ムッツリーニ〉は忍装束に小太刀二刀流、〈秀吉〉は刀に羽織り、〈源太〉は西洋鎧にハルバード、〈徹〉は両腕に嵌められたガントレットと全身を覆う甲冑、そしてリンネは…
明久「黒いロングコートに……ボウガン?」
徹「……それっておかしくないか?召喚獣が使う武器は数あれど、公平性を欠くという理由で飛び道具は無かったはずだよ?」
リンネ「そうなノ?ボクのいたガッコウではフツウにあったけど…」
梓「学校が違えばレギュレーションもちゃうってわけやな」
秀吉「それにしても、随分と立派な弓じゃのう」
リンネ「すごいデショ?固有武器『ウィリアム・テルのクロスボウ』だダヨ!」
明久「固有武器って確か……。
リンネ君やっぱり5000点以上-」
明久の台詞が言い終わる直前、狙っていたかのようなタイミングで点数が表示される。
《総合科目》
『二年Fクラス 吉井明久 1661点
VS
二年Fクラス 土屋康太 1493点
VS
二年Fクラス 木下秀吉 2914点
VS
二年Bクラス 五十嵐源太 3208点
VS
二年Aクラス 大門徹 4489点
VS
交換留学生 Linne Klein 6287点』
明久「嘘ォッ!?!?」
ムッツリーニ「………正直予想外」
秀吉「これは驚いたのう……」
徹「ふん、予選を免除させるだけのことはあるね」
源太「まさかこれほどとはな……面白ぇ」
リンネの点数は驚異の6000点台。あの蒼介ですら6000点を越えたのはつい最近であることを踏まえると、10歳でこの点は優秀を通り越してもはや異常と言って良いレベルだ。しかし相対する四人の心は決して折れてはいなかった。好戦的かつ負けず嫌いの『アクティブ』メンバーの二人はもとより、Fクラスの三人も多少気圧されはしたものの闘志は失ってはいない。リンネの点数は確かに高いが彼等Fクラスの倒すべき相手……蒼介の点数はさらに高いのだから。
リンネ「にひー、ミンナやる気マンマンだね。……じゃあボクもトバしていくよ!“Guidad Explosiv Kula”」
明久達が激戦を繰り広げている一方、雄二達はスーパー“ミカド”に夕飯の買い物に来ていた。坂本家の食卓は全て雄二が行っているが、これは雄二が特別孝行息子というわけでも専業主夫を目指しているわけでもなく、母親がかつての姫路や吉井玲とは別ベクトルのビックリ料理人のため雄二が作らざるを得ないからである。……まあもっとも今日夕食を作るのは翔子なのだが。
そもそも翔子の両親が不在の日はしょっちゅう雄二の家に夕食を作りに行っていると完全に通い妻状態なのだが、このことがクラスメイトに知られようものなら確実に暴動が起きるため、雄二は元神童の頭脳をフルに活用して全力で隠蔽を行っている。
雄二「さてと、買う物はこれで全部だな」
翔子「……あ、ちょっと待って。確かめんつゆ切らしてたから」
雄二「……なんでお前は人ん家の冷蔵庫のの中身をそこまで正確に把握してるんだよ?」
翔子「……冷蔵庫の管理は妻の務め」
雄二「だから気が早いって言ってるだろ!?頼むから学校では自重してくれよ、でないと俺の命がヤベェ……!」
翔子「……うん、わかってる。だから今は自重してあげない」
雄二「~~~っ!……はぁ、勝手にしてくれ……」
諦めたようにガックリと肩を落とす雄二。男女の力関係はほぼ女子の方が強い(例外は蒼介ぐらい)文月学園だが、雄二達クラスとなると対抗馬はせいぜい和真達くらいしかいない。しかし和真は言うまでもなく雄二もなんだかんだで満更でもないようなので彼らはそれで良いのだろう……というか、先ほどどう見ても夫婦にしか見えないやり取りを繰り広げておいて、それにもかかわらずああだこうだと不満を述べられても信憑性もあったものじゃないだろう。
雄二達はめんつゆをカゴに入れレジで清算を済ませると、レジの店員が福引きのチケットを十枚ほどくれた。どうやらこのスーパーのオープン3周年記念として、一定額以上買い物をした人に福引券を渡しているらしい。
翔子「……福引きコーナーは確か店の外」
雄二「貰ったからにはせっかくだし使っておくか」
そんなわけで福引きコーナーに足を運ぶと軽い人だかりができていて、三葉と玄武の刺繍の入った法被を着た店員がガラガラを前で景気の良い声をあげていた。
『おめでとうございます!四等賞、”コンポタ5000円分”大当たりです!』
雄二「当たりかどうか判定が微妙な景品だな…」
一缶二缶なら普通に嬉しいが5000円分ともなると結構な重量になるため、それを持ち帰るとなると文字通り結構な重労働になるだろう。
『さてさて、一等の”コンポタ10万円分”と特賞の”コンポタ50万円分”はまだ出ていませんよ〜!』
雄二「いや待て、それは確実に嫌がらせだろ……」
コンポタ350ml一缶を150円とすると、コンポタ50万円分ともなると空き缶を除いた中身だけでもなんと1t以上に及ぶ。流石に店側もその量を持ち帰れというほど非常識ではないだろうから郵送という形になるだろうが、それを踏まえてもまったく嬉しくない特賞であることには変わりない。
雄二(なんでそこまでコンポタ推し……あぁ、あのおっさんが原因なんだろうな……)
このスーパー“ミカド”は名前からお察しの通り“御門エンタープライズ”系列のスーパーである。おそらくだが御門空雅がトップから降りたことで、彼によって過剰生産を促されていたコンポタが余りに余ったのだろう。それをどうにかしようとした苦肉の策が参加の店舗で福引きと称して顧客にばらまくこと……まあ要するに福袋みたいなものだ。
とんだ肩透かしを食らった雄二だったが、わざわざ来たのだから他にはどんな賞品があるのか確認すると…
五等賞・如月ハイランドペアチケット
六等賞・卯月温泉ペア宿泊券
七等賞・お食事券一万円分
雄二(いやなんでだよっ!?)
上位の賞品と下位の賞品の価値が完全に逆転していることに雄二は内心でシャウトした。
雄二「なんにしても、まともな賞品があってよかったぜ。狙い目は、そうだな…」
翔子「如月ハイランドペアチケット?」
雄二「バカ共に嗅ぎつけられてまたろくでもない目に遭いそうだから却下だ」
翔子「……じゃあ、温泉宿泊券?」
雄二「…………あー、そうだな。『S・B・F』や打倒Aクラスで今後ハードになっていくだろうし、ここらで英気を養っとくのも-」
どこまでも回りくどいキング・オブ・ツンデレをこの上なく優しげな瞳で見つめる翔子。週一で和真からツンデレ対策講義を受けている翔子相手ではどれだけ取り繕ってもバレバレである。その優しげな瞳にいたたまれなくなりつつも、雄二は気合いを入れて福引きに赴く。その結果は…
-ティッシュティッシュコンポタティッシュコンポタティッシュティッシュコンポタティッシュティッシュ
望み通りの物はそうそう当たらない。
それが福引きである。
翔子「……雄二、私は気にしてないから元気だして」
雄二「いや、別に落ち込んでねぇよ。……にしてもどうすっかなこのコンポタ」
雄二の手元には15000円分のコンポタ計100本(約35㎏)。大して好きでもないものをこれだけ貰ったところで処理に困る、というかそれ以前に重い。本音を言えばその辺に捨てていきたい。
雄二「ハァ…御門のおっさんでもこの場にいりゃ押し付けてやるのによ……」
翔子「……あそこにいる」
雄二「は?どれどれ………マジかよ」
翔子の指差したのは河原。雄二が目を凝らして見ると確かに見覚えのある男がだらしなく寝そべって煙草をふかしている。その周りには空き缶が散乱していることをふまえると、間違いなく先ほど蒼介を破った御門空雅その人だった。渡りに船とばかりに雄二達はコンポタのケースを持って近づいていく。
雄二「おっさん、こんな所で何やってるんだ」
翔子「……御門先生、さっきぶり」
御門「あん?……ああ、お前さんらか。つーかどうしたんだそのケース?ようやくお前さんらもコンポタの良さに目覚めたのか?」
雄二「アンタの公私混同の弊害だ。もとはと言えばアンタが原因なんだから、こいつの処理は頼んだぞ」
御門「唐突な押し付けだがしゃあねーな、コンポタはどれだけあろうが困らねーから別に構わんぞ。最近オニオンコンソメにもはまりつつあるが、コンポタは主食だからな」
雄二「どんな食生活だ……。まあいいか、それじゃあ頼んだ。行くぞ翔子」
御門「まあ待て少年」
かさばる荷物を荷物を処理し終えた雄二は翔子を連れてさっさとこの場を去ろうとするが、御門はどういうわけかそれを引き留める。
雄二「……何だよ?」
御門「残念なことに俺、教師なんだよ。何やら悩みごとを抱えている生徒は放置できねーだろ……話してみろよ。もしかしたら、解決の糸口が見つかるかもしれねーぞ?」
《総合科目》
『二年Fクラス 吉井明久 戦死
VS
二年Fクラス 土屋康太 戦死
VS
二年Fクラス 木下秀吉 戦死
VS
二年Bクラス 五十嵐源太 戦死
VS
二年Aクラス 大門徹 戦死
VS
交換留学生 Linne Klein 5461点』
リンネ「にひー。ボクの勝ちィ~!」
明久「つ、強いねリンネ君…」
ムッツリーニ「……恐ろしい能力」
秀吉「大したもんじゃのう」
源太「だあぁぁあああ畜生負けた!」
徹「や…やるじゃないか……」
召喚獣バトルロワイヤルはリンネの圧勝で幕を閉じた。やはりランクアップ能力にはランクアップ能力でしか対抗できない……と結論付けても一見問題なさそうだが、それでも梓はまだ断定するのは早すぎると判断した。何故なら…
梓(大会前にええもん見れたわ、吉井君らには感謝やな。……にしても、なんで大門は本気でやらんかったんやろ?ウチと一緒で警戒してるんかな?)
徹は習得しているはずの
徹(……佐伯先輩が見ている以上、万全を期すため今はあの力を使うわけにはいかない。……あの技は、小暮先輩を仕留めるための切り札だからね)
蒼介「吉井達とリンネ・クラインの闘いは、まさに筆舌に尽くし難いものであった」
和真「だから筆舌には尽くさないでおくぜ!」
御門(ただのマンネリ防止だろ…もしくは作者の出し惜しみ症候群か……)