バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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【短編ストーリー】
『怠☆惰☆王~御門空雅(幼稚園時代)』

御門(4)「ねんどでじゆーこーさく、ねぇ…めんどくせーけどさぼったらせんせーうるせーだろーし……(ピーン!)……よし、あれでいくか」

~制作中~

先生「空雅君は何を作ったのかな?」

御門(4)「ほい」

先生「………空雅君?全然できてないどころか、まったくこねてないようにしか見えないんだけど?」

御門「さくひんめい、とーふ」

先生「豆腐!?明らかに手抜きじゃないか!↑の制作中はいったい何だったの!?」

御門「おきにめさねーか……じゃあごまどーふ」

先生「種類を変えればまかり通るとでも!?」


Linne Klein

現在、試験召喚システムをカリキュラムに取り入れている学校は文月学園以外にもう一校…スウェーデンにある姉妹校、Juli Privat Gymnasiumという高校である。つい最近両校間の交流の一環として交換留学制度というものが成立し、来年の1月にその第一号がこの学園に入学する……予定だったのだが、文月学園が企画を進めていた試験召喚システム研究の分水嶺となる祭典『S・B・F』のことを知った姉妹校の校長が、その留学生をエントリーさせてくれないかと学園長に頼み込んだらしい。その留学生は今年10歳にして飛び級入学した天才であり、大方その生徒を優勝させることでそちらの高校の方が優秀であるとデカい顔をしたいのだろう…と学園長は当たりをつけていたが、貴重なモルモット-もとい協力者が増えるに越したことはないため二つ返事で了承した。そして『S・B・F』開催6日前となる今日にその生徒……リンネ・クラインは来日し、既に栄応大への進学が決まっている佐伯梓は学校案内を任されたのであった。正直乗り気では無かったが受験勉強まっただ中の同級生に押し付けるほど梓は鬼畜ではないため渋々引き受けることに。余談だが梓も高校生とは思えない童顔低身長のため、8歳年下のリンネと並んでいても不自然なほど違和感が無いのはご愛敬。

 

梓「アレが学園長室や。ウチら一般生徒は気軽に立ち寄れる場所ちゃうけど、何か困ったら迷わずここに駆け込めばエエで。普段は色々とアレなオバハンやけど留学生雑に扱ったら最悪国際問題やからな、ある程度丁寧に対応するぐらいの分別は流石にあるやろうし」

リンネ「ねェねェ、さっきからツマンナイよサエキ!もっとオモシロイのはナイの?」

梓「アンタは学舎に何を求めとんねん。あんまり我儘言わんといてぇな、こちとら受験シーズンやってのに貴重な時間を割いて案内を買って出たんやから-」

リンネ「ウソだっ!コグレからキイてるよ、スイセンニュウガクが決まっててヒマそうにしてたからオしツけられたっテ!」

梓「葵、余計なこと吹き込まんといてや……」

 

小暮の間接的な妨害に遭い、『リンネの良心に訴えかけてさっさと解放されよう大作戦』がおじゃんになったことに思わず肩を落とす梓。

 

リンネ「コグレがグチってたよ、サエキはスキあらばすぐ人をダマそうとするアクヘキがあるって。ニホンではウソつくとジゴクに落ちるって信じられてるんデショ?ダイジョウブなのサエキ?」

梓「平気平気、落とせるもんなら落としてみぃっちゅう話や。万が一落とされても閻魔騙して舞い戻ったるわ」

リンネ「ダイジョウブなのそれ?エンマってウソつきの舌ヒッコヌイちゃうって本んでヨんだんだケド…」

梓「一枚くらいくれたってもええよ。なんせこちとら二枚舌やし」

リンネ「サエキのバアイ、二マイじゃおさまらないとオモうケド……」

 

そんな感じで他愛ない雑談を交えつつ二人の学校案内ツアーが続いていくが、やはり退屈なのかリンネは梓の解説を右から左に通過させていく。そしてふと、リンネは向こうの校長から小耳に挟んだことを思い出した。

 

リンネ「ねぇサエキ、こっちのショウカンジュウは高いテンスウをとるとトクシュなノウリョクがつくんでしょ?」

梓「特殊な能力?腕輪能力のことかいな?」

リンネ「ウン!」

梓「へぇ、そっちには金の腕輪無いんかぁ」

 

補足すると、金の腕輪やその発展系である“オーバークロック”及び“ランクアップ”は綾倉先生が開発し文月学園の召喚システムに組み込んだものであるので、Juli Privat Gymnasiumに腕輪能力が無いのは当たり前である。ちなみに向こうの校長がリンネを『S・B・F』に参加させたがったもう一つの理由に、条件をフェアにするという名目でリンネの召喚獣に金の腕輪を組み込んでもらうことで、どさくさに紛れて腕輪能力に関するデータを持ち帰れないかという思惑がある。その目論見はリンネの召喚獣に腕輪が組み込まれたことで半分ほど達成しているが、Juli Privat Gymnasium製の召喚フィールドでは召喚しても腕輪能力が機能しないという落とし穴がある。これは不運でもなんでもなく、綾倉先生が気紛れにそういう仕組みになるよう設定しただけの、簡潔に言えばちょっとぬか喜びさせてやろうという単なる嫌がらせだったりする。

話を戻すが、リンネは綾倉先生の計らいで既に腕輪能力を手に入れているのだが、能力を主力とした実践経験が皆無なので、本番となる大会の前にリンネとしては能力を慣らすために練習の一つくらいはしておきたいところなのだ。……と、そこまでリンネから説明された梓はこの後の展開を予想できてしまいゲンナリとする。

 

リンネ「だからサエキ、ボクとショウブしてよ!」

梓「嫌や」

リンネ「エェッ!?どうしテ!?」

梓「いや、飛び級で首席になったらしいアンタに首席ですらないウチが敵うわけないやん。負けるとわかってる勝負を引き受けるほどウチは酔狂ちゃうで」

リンネ「エェェ~、いいじゃんチョットぐらい。サエキのケチ」

梓「関西人やもん、ケチは文化やで」

 

食い下がるリンネだが梓はまったく取り合わない。しかし、いくら梓とて8歳年下の少年の頼みを意地悪で断ったりはしない。きっと何かやむにやまれぬ事情があるのだろう。

 

梓(そんな勝負引き受けるわけないやん……。こいつは和真、鳳と並んで『S・B・F』でウチが優勝を目指すにあたって障害となる奴筆頭やろうし、“青銅の腕輪”やウチの腕輪能力はできるだけ隠しときたいからな)

 

訂正、意地悪で断っていた方が幾分か可愛らしかったと思えるほど大人気無かった。そもそも数ある優勝賞品の中で目玉となるのは“常磐の腕輪”、あと2ヶ月ちょいで文月学園に来なくなる三年生が欲しがるものではないというのに……和真と波長が合うだけあって梓も相当な負けず嫌いのようだ。

  

梓(……せやけど、欲を言えばこいつの能力は把握しときたいな。よし、ここはいつものように高城を騙し-ってアイツもう帰宅しとるやん、肝心な時に限って使えんなぁ……しゃあない、気が進まんけどこうなったら運任せや)

 

内心で高城を理不尽に罵倒しつつ梓は心を決める。

 

梓「しゃあないなぁ……フリスペ行って誰か相手してくれる奴見繕ったるわ」

リンネ「ホント!?……でも、ショクインシツにダレもいなかったラ?」

梓「………そんときゃウチが相手したる」

 

ちなみに梓はもし本当に闘うことになっても手の内を明かさないように“青銅の腕輪”を職員室のどこかに隠し、腕輪能力も使わないつもりである。この方法なら問題無くリンネの腕輪能力の情報だけを掠め取れる。ちなみに梓の気が進まないことは、みすみす黒星を増やしてしまうことただ一点のみである。

 

梓(ちょうど大会前やし、操作の練習しとる奴一人くらいおるやろ。というかおってくれ頼む。ウチの代わりにモルモットもとい人柱になってくれ、お願いやから)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論から言うと梓の理不尽な祈りが天に届いたのか、職員室のフリースペースでは明久と秀吉とムッツリーニ……と、何故か徹と源太が合同で練習を行っていた。

他のFクラスメンバーはというと、まず雄二は先ほどの次元の違う闘いや御門に言われたことに何か思うところがあったのか早々に帰宅し、翔子も当然のごとく雄二に付き添って帰宅、姫路はテストを終えた美波に頼まれて教室で勉強とそれぞれだ。よって勉強よりも操作技術の向上を重視したのは短期間での成績アップが望めなさそうな明久とムッツリーニ、トレースの能力上点数を優子に依存している秀吉の三名となる(と言っても明久は他二名の指南役みたいなものだが)。そして源太と徹が後からフリースペースにやって来て、明久達とは知らない中ではないため成り行きで合同訓練みたいなことをしていたようだ。余談だが明久の数少ない特技の一つ、「やたらと年下に好かれる」が発動しリンネになつかれたりもした。

 

梓「…と、そんなわけでこの子の相手したってくれへん?ウチが相手してあげたいのは山々やねんけど、さっき世界史のテスト受け直して今採点待ちやねん」

明久「あぁ、田中先生作る問題は優しいけどテストの採点遅いですもんね……僕は別にいいですよ、ここは仮想フィールドだからフィードバックも無いですし」

リンネ(サエキってばまた口からデマカセを……あとアキヒサ、少しはウタガおうよ……)

源太「………まぁ、俺様も別に構わねぇですよ」

ムッツリーニ「………右に同じく」

秀吉「わしも構わんぞい」

徹「…………。特に実害も無さそうですし、僕も構いませんよ」

 

他三人も特に断る理由は無いためあっさり受諾。しかしかつて生徒会で梓と交流があった徹はまるで「今度は何を企んでるんだ?」と言わんばかりにしばらくジト目で警戒するが、聞いてる限り不利益を被る内容ではないと判断したのか、最終的に渋々と受諾した。

 

リンネ「タタカってくれるの?やったァ!

ところで、科目はどうする?」

明久「社会はどう?」

徹「ここは流行りの数学だろう?」

源太「外国語だよなぁ?なんてったって異文化交流なんだからよぉ」

秀吉「露骨に自分の得意な科目じゃなお主ら……」

 

その後どの科目にするかしばらく揉めたが、最終的に中立の秀吉が無難に総合科目を提案しそれに決まった。

 

明久「それじゃ、いくよリンネ君」

リンネ「にひー。テカゲンはしないよ?」

源太「ほーう?良い度胸してんじゃねぇかガキんちょ」

徹「随分と成績優秀みたいだけど、勝負はそれだけでは決まらないよ。全員まとめてぶちのめしてやる」

秀吉(この二人は相変わらず血の気が多いのう……)

 

 

「「「「試験召喚(サモン)」」」」

 

 




リンネ君の国籍は原作でもはっきりしていないのですが、原作で明久に持ち主と間違われて渡された美波の日記を返却する際に「これはスウェーデン語で書かれていない」と言ってたのでこの作品ではスウェーデン人として扱います。ちなみにリンネ君の名前のスペルですが、スウェーデンの偉人であるカール・フォン・リンネとオスカル・クラインからLinne Kleinにしました。最後にJuli Privat Gymnasiumですが、Juli=7月=文月、Privat Gymnasium=私立高校です。
いくら姉妹校だからって安直過ぎる?こんなもん適当で良いじゃないですか……どうせ今後も名前しか出てこないんだし。



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