バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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まさかの7000字オーバーです。
ちょっと詰め込みすぎました。


Bクラス戦決着

和真「やれやれ、もうこんな時間か。今日はラクロス部に殴り込みに行こうと思ってたのに」

翔子「……愚痴を言ってもしょうがない。戦死者は放課後まで補習の義務がある」

源太「………………」

和真「いやまぁそうだけどよ。明日もイキナリ補習室に直行しなきゃならねぇと思うと憂鬱だぜ…あぁ、体動かしてー」

翔子「……和真、なんだか鮫みたい」

源太「………………」

和真「はは、間違ってねぇかもな。それはそうと翔子、雄二は待ってくれてんのか?」

翔子「……うん。校門で待っててくれるって」

源太「………………」

和真「なんだかんだ言って大事にされてんなーお前。もう7時だぜ?普通帰ってるぞ流石に」

翔子「……こうして今雄二と一緒に下校できるのも和真のおかげ。あらためてありがとう」

源太「………………」

和真「俺は大したことしてねぇよ、最終的に行動したのはあいつだ。……ところで源太、なんでさっきから何も喋らねぇんだよ?」

源太「…………いやなんでテメェ等はそんな元気なんだよォォォ!?」

 

五十嵐源太の魂の叫び。

 

源太「おかしいだろ!?あの鉄人の扱きの後でなんでそんな何事もなかったように下校できるんだよ!?俺様なんかあと一歩で趣味は勉強、尊敬する人が二ノ宮金次郎になる寸前だったんだぞ!?俺様が尊敬するのはウルフ○ズだけだってのに!」

翔子「……そんなこと言われても」

和真「お前とは鍛え方が違うんだよ、ウルフ○ズが好きなくせにガッツ0の軟弱者が。せいぜい帰って明日の補習にビビりながら部屋の隅でガクブル震えてろこのチンピラが」

源太「ねぇなにこいつ?何様?殺っちゃっていいよな?原型なくなるほど顔面しばき回しても許されるよな?」

雄二「…………なにやってんだお前ら……」

 

 

 

 

 

 

翌朝、登校した明久達は昨日雄二が言っていた作戦を聞きに集まる。

 

雄二「まず秀吉にコイツを着てもらう」

 

そう言って鞄から取り出したのは女子の制服。

 

明久(雄二、それどうやって手に入れたの?君に何があったんだい?)

 

入手経路は十中八九ムッツリーニだろう。

 

秀吉「それは別に構わんが、ワシが女装してどうするんじゃ?」

 

女装させられることに対してまるで抵抗が無い。これでは女性扱いされても仕方がないのではなかろうか。

 

雄二「秀吉には木下優子として、Aクラスの使者を装いCクラスを挑発してもらう」

 

Aクラスには秀吉の双子の姉の木下優子が所属しており、一卵双生児のようにそっくりな容姿をしている。優子に化けてAクラスとして圧力をかけるという策だ。

 

雄二「と、いうわけで秀吉。用意してくれ」

秀吉「う、うむ……」

 

雄二から制服を受け取り、その場で生着替えを始める秀吉。男子制服とは着方からして別物なのにも関わらずなれた手つきで着替えていく。

 

明久(な、なんだろうこの胸のときめきは。相手は男なのに目が離せない)

 

明久が脳内で葛藤している傍ら、隣でムッツリーニが迷うことなく凄い速さでカメラのシャッターを切っていた。

 

雄二「よし、着替え終わったぞい。ん、皆どうした?」

 

着替え終わった秀吉は雄二をのぞくメンバーのなんとも言えない雰囲気を不思議に思う。

 

雄二「さぁな?俺にもよくわからん」

秀吉「おかしな連中じゃのう」

明久「…………でも冬服で助かったね!」

雄二「ああ、まったくだ」

秀吉「? どういうことじゃ?」

雄二「木下姉がちゃんと対策しているからか日焼け具合はさほど変わらないが、夏服だと秀吉の女々しい貧弱な体つきじゃあ一目で区別がついてしまうからな」

明久「そうそう。木下さん和真の影響で鍛えてるからか、アスリート体型らしいから」

秀吉「泣くぞお主等?ワシかてたまには引くぐらい本気で泣くぞ?」

雄二「とにかく、Cクラスに行くぞ」

秀吉「……うむ…」

 

雄二が半泣きの秀吉を連れて教室を出て行き、明久も後に続く。そのまましばらく歩き、Cクラスを目の前に立ち止まる明久達。

 

雄二「さて、ここからはすまないが一人で頼むぞ、秀吉」

 

Aクラスの使者を装うのならFクラスの明久達が一緒にいるのはまずいため、離れた場所に隠れ様子を見る事にする。

 

秀吉「気が進まんのう……」

 

当の木下はあまり乗り気ではないようだ。姉のふりをして敵を騙す、決して気持ちの良い話ではないだろう。

 

雄二「そこをなんとか頼む」

秀吉「むぅ……。仕方ないのう……」

雄二「悪いな。とにかくあいつらを挑発して、Aクラスに敵意を抱くように仕向けてくれ。秀吉なら出来るはずだ」

 

ただでさえ瓜二つの容姿に加えて秀吉は演劇部のホープと名高い演技の鬼、それくらい造作もないだろう。

 

秀吉「はぁ……。あまり期待せんでくれよ……」

 

溜め息と共に力なくCクラスに向かう秀吉。そんな様子を見届けた明久は不安そうに雄二に訪ねる。

 

明久「秀吉は大丈夫なの?別の作戦を考えた方が……」

雄二「多分大丈夫だろう」

明久「心配だなぁ……」

雄二「シッ。秀吉が教室に入るぞ」

 

秀吉がCクラスの教室に入る。

 

 

『静かにしなさい、この薄汚い豚ども!』

 

 

明久(……うわぁ)

『な、何よアンタ!』

 

この怒声は昨日のCクラス代表の小山だろう。いきなり豚呼ばわりされてご立腹のようだ。

 

『話しかけないで!豚臭いわ!』

 

自分から来ておいて豚呼ばわり、突っ込みどころが多すぎる。

 

『アンタはAクラスの木下!ちょっと点数がいいからっていい気になってるんじゃないわよ!何の用よ!』

 

雄二の思惑通り、小山は秀吉を優子だと思い込んでいる。

おまけにどうやら面識もあるようだ。

 

『アタシはね、こんな臭くて醜い教室が同じ校内にあるなんて我慢ならないの!貴方達なんて豚小屋で充分だわ!』

『なっ!言うに事欠いて私達にはFクラスがお似合いですって!?』

 

小山にとってFクラス=豚小屋のようだ。

 

『聞いた話ではなんでもFクラスとBクラスの戦争終結後、勝ったほうに攻めこむつもりじゃない?ハッ、家畜にも劣る下劣な魂胆ね!

手が穢れてしまうから本当は嫌だけど、もう一度アンタを叩き潰して、負け犬のアンタに相応しい教室に送ってあげようかと思っているの。覚悟しておきなさい、近いうちにアタシ達が薄汚いアンタ達を始末してあげるから!』

 

そう言い残し、木下は戻ってきた。 

 

秀吉「これで良かったかのう?」

 

妙にスッキリとした表情で秀吉は帰還した。姉に対して不満でもたまっていたのであろうかと思わざるを得ないほどノリノリの演技であった。

 

雄二「ああ、素晴らしい仕事だった」

『キィィィー!ムカツクぅ!Fクラスなんて相手にしてられないわ!Aクラス戦の準備を始めるわよ!あのときの屈辱、倍にして返してやるわ!』

 

Cクラスの教室からは小山のヒステリックな声が聞こえる。完全に頭に血が上っているようでこの後すぐにでもAクラスに宣戦布告をするだろう。

 

雄二「作戦もうまくいったことだし、俺達もBクラス戦の準備を始めるぞ」

明久「あ、うん」

 

Cクラスを罠に嵌め終わったFクラス一同はあと十分後に迫った試召戦争に備えるために明久達はFクラスへ向かった。

 

明久「ところで小山さんと木下さんに何があったの?もう一度とか屈辱とか」

秀吉「以前小山の所属するバレー部が『アクティブ』に惨敗したと聞いておってのう」

明久「……ああ……なるほど」

 

友達も多いが恨みを持っている人もそこそこ多いのが和真である。

 

 

 

 

 

 

 

 

秀吉「ドアと壁をうまく使うんじゃ!戦線を拡大させるでないぞ!」

 

あの後午前九時よりBクラス戦が再開され、明久達は昨日中断されたBクラス前に行き進軍を始めている。雄二曰く、『敵を教室内に閉じ込めよ』とのこと。ここで一つ問題があった。

姫路の様子が明らかにおかしい。

本来は総司令官である彼女が今日は一向に指示を出す気配がない。それどころか何にも参加しないようにしているようにも見える。

 

秀吉「勝負は極力単教科で挑むのじゃ!補給も念入りに行え!」

 

現在指揮をとっているのは秀吉。ここまでは指示どおり上手くやれている。

 

『左側出入口、押し戻されています!』

『古典の戦力が足りない!援軍を頼む!』

 

左側の出入口が押し戻される。Bクラスは文系が多いため、このままではまずい。

 

明久「姫路さん、左側に援護を!」

姫路「あ、そ、そのっ……」

 

姫路は戦線に加わらず何故か泣きそうな顔をしてオロオロしていて役に立ちそうもない。

 

明久(まずい!突破される!)「だあぁっ!」

 

人混みを掻き分け、左側の出入口に突っ込む。そして明久は立会人の竹中先生の耳元でささやく。

 

明久「……ヅラ、ずれてますよ」

竹中「っ!!少々席を外します!」

明久(やれやれ、いざという時の為の脅迫ネタ~古典教師編~をこんなところで使う羽目になるなんて)

 

いったいいくつあるんだとか、いざという時っていつだとか、色々つっこみたいが取り敢えずgjである。

 

明久「古典の点数が残っている人は左側の出入口に!消耗した人は補給に回って!」

 

明久の機転によりなんとか持ち直すことに成功するが、姫路の不自然な振る舞いが気になったのか明久は事情を聞きに行く。

 

明久「姫路さん、どうかしたの?」

姫路「そ、その、なんでもないですっ」

明久「そうは見えないよ。何かあったなら話してくれないかな」

姫路「ほ、本当になんでもないんです!」

 

『右側出入口、教科が現国に変更されました!』

『数学教師はどうした!』

『Bクラスに拉致された模様!』

 

両側がBクラスの得意科目……正直言ってかなりピンチである。

 

姫路「私が行きますっ!」

 

そう言って姫路は体の震えを振り払い、戦線に加わろうと駆け出した。

 

だが、

 

姫路「あ………うう………」

 

急にその動きを止めてうつむいてしまった。今にも泣きそうな表情で両拳を握り締めている。

 

明久(なんだろう?何かを見て動けなくなったようだけど……)

 

明久は姫路が見た方を目で追ってみる。その先には窓際で腕を組んでこちらを見下ろす根本の姿があった。何かを手に持っているようだ。

 

明久「っ!!」

 

それは三日前の放課後、姫路が恥ずかしがって明久から隠した封筒だった。明久の脳内で点と点が一つの線になる。

 

明久「……なるほどね。そういうことか」

 

昨日の協定から明久はずっと引っ掛かっていた。なぜ、あの根本があんな対等な条件の提案をしてきたのか。

根本はあの時点で既に姫路を無力化する算段が立っていたのだ。姫路が参加できないのなら、あの協定はBクラスが圧倒的に有利な条件である。

さらにその協定を利用して和真・翔子をも討ち取ることに成功する。結果、Fクラスの三大戦力は全て根本に封じられてしまった。

 

明久「姫路さん」

姫路「は、はい……?」

明久「具合が悪そうだからあまり戦線には加わらないように。試召戦争はこれで終わりじゃないんだから、体調管理には気をつけてもらわないと」

姫路「……はい」

明久「じゃあ、僕は用があるから行くね」

姫路「あ……!」

 

何か言いたげな姫路を置いて明久は駆け出す。姫路は何かを言いかけようとしたが、どうしても言葉が出てこなかった。

 

姫路「……私…………最低だ…………」

 

 

 

Fクラスの教室へと歩みを進める明久の表情は、とても柔和な笑顔を浮かべている。

 

明久「面白いことしてくれるじゃないか、根本君」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明久(あの野郎、ブチ殺す)

 

ただし、眼には殺意の炎を灯しながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明久「雄二っ!」

雄二「うん?どうした明久。脱走か?チョキでシバくぞ」

明久「話があるんだ」

雄二「……とりあえず、聞こうか」

 

雄二は明久の憤怒の目を見て何かを察したのか真面目な顔で聞く。 

 

明久「根本君の着ている制服が欲しいんだ」

雄二「……お前に何があったんだ?」

 

真剣な眼差しからの、あまりにぶっ飛んだ要求に雄二はどう反応すれば良いかわからなくなる。

 

姫路のラブレターをが根本に奪われた→それを取り返したい→でも姫路の心境を考えると、できればだれにも知られたくない→まず制服を没収してそこから抜き取ればいい→根本の制服が欲しい

 

いくらなんでもはしょりすぎである。それでは変な趣味に目覚めたと思われても仕方がない。

 

明久「ああ、いや、その。えーっと……」

雄二「…ま、まぁいいだろう。勝利の暁にはそれぐらいなんとかしてやろう」

 

完全に引き気味に雄二は答える。案の定である。

 

明久「それと、姫路さんを今回の戦闘から外して欲しい」

雄二「…理由は?」

明久「理由は言えない」

雄二「どうしても外さないとダメなのか?」

明久「うん。どうしても」

 

雄二は顎に手を当てて考える。

和真達がいない以上、姫路抜きでBクラスに挑むなど自殺行為もいいとこだ。普通はこんな頼み聞き入れられるわけがない。

 

雄二「……条件がある」

明久「条件?」

雄二「姫路が担うはずだった役割をお前がやるんだ。どうやってもいい。必ず成功させろ」

 

しかし雄二は明久の無茶な頼みを聞き入れた。

 

明久「もちろんやってみせる!絶対に成功させる!」

雄二「良い返事だ」

明久「それで、僕は何をしたらいい?」

雄二「タイミングを見計らって根本に攻撃をしかけろ。科目は何でもいい」

明久「皆のフォローは?」

雄二「ない。しかも、Bクラス教室の出入り口は今の状態のままだ」

明久「……難しい事を言ってくれるね」

 

今の戦闘はBクラスの前後の扉の二ヶ所で行われており、場所の条件から常に一対一となっている。これは少しでも時間を稼ぐためと、雄二の作戦に必要な行動らしい。この状況で根本に近づくには姫路達のような圧倒的火力が必要になる。当然明久にはそんな火力は明久にはない。

しかし明久はふとあることを思い出した。

 

明久「…わかった。やってみせる」

雄二「よし、じゃあ俺はDクラスに指示を出してくる。絶対に失敗するなよ。俺はお前を信頼している」

 

そう言って雄二は柄にもないセリフを吐いたのち、教室を後にした。

 

 

 

明久「……痛そうだよなぁ」

 

これからすることを想像するだけで身体に痛みが走る。

だが明久はすぐ覚悟を決めた。

 

明久「よっしゃ!あの外道に目に物見せてやる!」

 

頬を叩き自らを奮い立たせる。背負うことになるいくつものリスクを差し引いても、根本を潰さない理由は無い。

 

明久(方法がある。勝算もある。根性さえあればやれるのだから、やらない理由はどこにもない!後のことなんか知るもんか!)

 

明久「美波!武藤君と君島君も、協力してくれ!」

 

この三人は既に点数をかなり消費し、当面は補給テストを受けるのが任務になっている。

 

美波「どうしたの?」

武藤「何か用か?」

君島「補給テストがあるんだが」

明久「補給テストは中断。その代わり、僕に協力して欲しい。この戦争の鍵を握る大切な役割なんだ」

美波「……随分とマジな話みたいね」

明久「うん。ここからは冗談抜きだ」

美波「何をすればいいの?」

 

明久「僕と召喚獣で勝負して欲しい」

 

 

 

 

 

 

「二人とも、本当にやるんですか?」

 

Dクラスに召喚獣勝負の立会人として呼ばれた英語の遠藤先生がかなり困惑した表情で明久達二人に念を押す。

 

明久「はい。もちろんです」

美波「このバカとは一度決着をつけなきゃいけないんです」

向かい合う明久と美波。

遠藤「それならDクラスでやらなくても良いんじゃないですか?」

美波「仕方ないんです。このバカは《観察処分者》ですから。オンボロのFクラスで召喚したら、召喚獣の戦いの勢いで教室が崩れちゃうんで」

遠藤「もう一度考え直しては」

明久「いえ。やります。彼女には日頃の礼をしないと気が済みません」

遠藤「……わかりました。お互いを知る為に喧嘩をするというのも、教育としては重要かもしれませんね」

 

『試獣召喚(サモン)!』

 

明久「行けっ!」

 

〈美波〉目がけて駆け出す〈明久〉。木刀を強く握りしめ、壁を背にした相手に対し、駆ける勢いを乗せて大きく拳を振るった。

 

ドンッ!

 

明久「ぐ……ぅっ!」 

 

そのモーションの大きな攻撃はたやすくかわされる。

 

美波「どこ狙ってるのよこの下手くそ」

明久「こん……のぉっ!」

 

更に力を込めた一撃を〈明久〉が放つ。

しかし〈美波〉は横っ飛びでそれをかわし、〈明久〉の拳はまたも壁を打つ羽目になった。

 

明久「つぅ……っ!」

 

教室を揺るがすほどの力を込めた一撃だ。その反動も半端じゃない。脳天から爪先にかけて激痛が走った。

 

美波「アキ、時間がないわよ」

 

壁にかけてある時計を見上げながら美波は励ますように告げる。現在の時刻は午後二時五十七分。作戦開始まであと三分。

 

『お前らいい加減諦めろよな。機能から教室の出入り口に集まりやがって、暑苦しいことこの上ないっての』

『どうした?軟弱なBクラス代表サマはそろそろギブアップか?』

 

根本と雄二の声。姫路が戦えない分、雄二率いる本隊まで出場せざるを得なくなったのだろう。

 

明久「らぁっ!」

 

学習能力がないかのように壁に〈明久〉の拳が叩きつけられる。先の痛みが抜けないうちに新しい痛みが訪れる。

 

『はァ?ギブアップするのはそっちだろ?』

『無用な心配だな』

『そうか?柊も霧島も戦死して、頼みの綱の姫路も調子が悪そうだぜ?』

『……お前らじゃ役不足だからな。休ませておくさ』

『けっ!口だけは達者だな。負け組代表さんよぉ』

『負け組?それはお前のことになるだろうな』

 

明久「はぁぁっ!」

 

四度目の攻撃。

よく見ると拳から血が吹き出し、教室の床に血溜まりができていた。

 

『……さっきからドンドンと、壁がうるせぇな。何かやっているのか?』

『さぁな。人望のないお前に対しての嫌がらせじゃないのか?』

『けっ。言ってろ。どうせもうすぐ決着だ。お前ら、一気に押し出せ!』

『……態勢を立て直す!一旦下がるぞ!』

『どうした、散々ふかしておきながら逃げるのか!』

 

美波「アキ、そろそろよ」

明久「うん。わかっている」

 

明久(痛い…………苦しい…………だけど諦めるもんか!)

 

初日の和真の言葉が脳裏に浮かぶ。

 

『壁にぶち当てて壁を破壊して予想外の方向から奇襲をかけられる』

 

明久の狙いは最初からこのBクラスにつながる壁だった。

どうしても倒したい相手が壁の向こうにいる。その相手に通じる道はない。

ならばするべき行動は一つのみ。

 

明久(壁があったら殴って壊す!

 

道がなければこの手で創る!

 

僕を………僕達Fクラスを………誰だと思っている!!!

 

……そうだよね、和真)

 

『あとは任せたぞ、明久!』

 

敵の本隊を引き付け、雄二は壁の向こう側の明久によく通る声で告げる。時間はジャスト午後三時。作戦開始だ。

 

明久「だぁぁーーっしゃぁーっ!」

 

召喚獣に持てる力全てを注ぎ込んで、壁を攻撃する。

 

明久「ぐぅぅぅっ!」

 

全身に走る衝撃に神経が軋む。気絶しそうなほどの痛みが明久の体内で暴れ狂う。

 

しかしそれでも明久は諦めない。

 

明久「負ける……もんかぁぁぁ!」

 

ドゴォオオオオオッッッ!

 

豪快な音が響き渡り、BクラスとDクラスを隔てていた壁が跡形もなく崩壊した。

 

根本「ンなっ!?」

明久「くたばれ、根本 恭二ぃぃぃ!」

美波「遠藤先生!Fクラス島田が…」

『Bクラス山本が受けます!試獣召喚!』

明久「くっ近衛兵か!」

 

明久達と根本の距離は20メートル程度。広い教室のせいで随分と距離があるため近衛兵はすぐさまカバーに入る。

 

根本「は、ははっ!驚かせやがって!残念だったな!お前らの奇襲は失敗だ!」

 

取り繕うように笑う根本。

確かに明久達の奇襲は失敗だ。既に周りを近衛部隊全員に取り囲まれている。こうなった以上、点数に劣る明久達にこの場を切り抜ける術はない。

 

だが明久達の役目はすでに終えている。

 

ダン、ダンッ!

 

出入口を人で埋め尽くされ、四月とは思えないほどの熱気がこもった教室。そこに突如現れた生徒と教師、二人分の着地音が響き渡る。

エアコンが停止したので、涼を求める為に開け放たれた窓。そこから屋上よりロープを使って二人の人影が飛び込み、根本恭二の前に降り立った。

体育教師の大島先生だからこそできる荒業だ。

 

「…Fクラス、土屋 康太」

 

根本「き、キサマ……!」

 

「……Bクラス根本 恭二に保健体育勝負を申し込む」

 

根本「ムッツリィニィーーッ!」

 

明久達が近衛兵を引き付け丸裸になったので、根本にもう逃げ場はない。

 

ムッツリーニ「…試獣召喚」

 

 

『Fクラス 土屋康太 保健体育 541点

VS

Bクラス 根本恭二 保健体育 203点』

 

 

〈ムッツリーニ〉は手にした小太刀を一閃し、一撃で敵を切り捨てる。

今ここに、Bクラス戦は終結した。

 




原作とほぼ同じ展開でしたがこのシーンは個人的に変えたくなかったので仕方ありません。
直接聞いたわけでもないのに伝染するカミナウィルス。

今日はBクラス戦に終止符を打ったムッツリーニの召喚獣。

土屋 康太
・性質……防御軽視&速度重視型
・総合科目……950点前後
・ステータス
(総合科目)
攻撃力……F+
機動力……E
防御力……F
(保健体育)
攻撃力……A+
機動力……S+
防御力……A
・腕輪……加速

総合科目はあくまでFクラス上位レベル。しかし保健体育のスペックは学年首席すらも上回る。さらに本人のモチベーション次第ではさらに上の点数も狙える。

『加速』
文字通り速度が上がる。直接的な攻撃力は無いが消費点数が30点と他と比べて低い。そもそもこのステータスで先制攻撃されるのだからたまったものではない。ちなみに人間が操作するには手に余るほどのスピードのため、発動中召喚獣は近くの敵にオートで斬りかかる補正がさりげなくつく。
和真の腕輪能力の天敵。攻撃は全部避けられ、その隙をついて切り裂かれる。まぁ和真は保健体育では能力が使えないので意味はないが。

では。

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