バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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【バカテスト・英語】

問 次の日本語を英訳しなさい。

彼らは夏休みとして3週間ほど有給休暇を取る。


姫路の答え
『They take a paid vacation for three weeks as summer vacation.』

蒼介「正解だ。有給休暇を取る=take a paid vacationだと覚えていれば、さほど難しい英文ではないな」


明久の答え
『They take a paid vacatin for three weeks as summer vacatin.』

蒼介「バカチンはお前だ。あと少しで正解だと言うのにくだらんスペルミスをしおってからに……」




今回は説明回というか……THE☆超展開です。




気炎万丈

守那「流石は俺の息子だな!それでこそわざわざ1000万ほど支払って用意した甲斐があると言うものよ!」

和真「このクソ野郎、ぬけぬけと……!」 

 

部屋に入ってくるなり誇らしげに哄笑する守那をしばらく恨みがましい目で睨めつける和真であったが、そもそもこの脳が沸騰してるとしか思えないキチガイ親父にまともな倫理観など最初から期待できなかったと思い直し、諦めたように肩を落とす。それに守那の指導方法はあながち間違っていたとも言い難い。なぜなら現に和真は無事生きているし、当初の目的も達成したらしい。その証拠に…

 

和真「……まあ確かに、無茶苦茶な方法だが得るものはデカかったと認めるしかねぇか。おかげで無事“気炎万丈の境地”に至れたことだしな」

 

()()()()()()()2()0()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。ある個体は爪牙を砕かれ、またある個体は首を引きちぎられ…どのライオンも惨い死に方をしているが、弱肉強食が野生のルールだ。和真を餌と見なして襲いかかった結果返り討ちにあったのだから、同情の余地などありはしない。

それよりも注目すべきなのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。和真は決して弱いわけではないが、以前までの彼でどうにかできるのはせいぜい一頭程度だっただろう。二頭に挟まれれば勝ち目は薄い、ましてや同時に20頭相手取るなどもはや命を投げ捨てるようなもの。常識で考えれば勝ち負けなど論外……そもそも生き残ることすらできやしないはずだ。

その至極真っ当な常識を跡形も無く粉砕し彼に勝利を与えたものこそ、人を超越せしめる“気炎万丈の境地”である。

 

和真「……にしても、一週間も休学届け出したのに1日で習得しちまったな。土日は除くとしても、あと4日どうしようか……」

守那「まあそう焦るな倅よ!……実はな、お前の“気炎万丈”はまだ未完成なのだ!」

和真「……何?」

 

本音を言えば血の繋がった実の息子をライオンの群れに投げ込むようなサイコパスからさっさと離れたかった和真だが、どうしても見過ごせない内容を提示されたからにはそうもいかない。

 

和真「どういうことだよ親父?」

守那「まずはそうだな……お前は理屈から入るよりも実戦で覚える方が性に合っていると思って後回しにしていた、気炎万丈の境地”がどのようなものであるかを説明しよう!」

和真「事実だから否定できねぇけど勝手に人を脳筋扱いしやがって……つっても大まかになら理解してるぜ?こいつは多分、強い感情と何らかの関係があるんだろ」

守那「うむ!お前の睨んだ通り、“気炎万丈”の根源は『感情のエネルギー』に由来する!」

和真「感情の……エネルギー?」

守那「今から18年前頃からだったか……怒りや悲しみといった何らかの感情を爆発させた者の身体能力が、どういうわけか桁違いに跳ね上がるようになった」

 

守那の話した内容には和真にも思い当たるフシがある。FFF団の連中が嫉妬に駆られたときや、清水が美波に対して激烈な劣情を向けているときなどがそうだ。

 

守那「だがな和真、この『感情のエネルギー』はあくまで突発的に起こる火事場の馬鹿力の一種であり、普通なら意図的に発生させることのできない代物だ!これらのケースが出始めてからも、重量上げや陸上の記録が劇的に更新されるといったことは起きていない!」

 

そもそもトップアスリート達はストイックに肉体を鍛え上げてきた経験から精神的に安定している……否、緊張やプレッシャーなどの外的要因で調子を崩さないためにもそれはもはや大前提である。そう言った意味では、『感情のエネルギー』は精神的に未熟な人間からしか発生しないものであると言えよう。

 

守那「だが、俺やお前の精神は良くも悪くも不安定だ……特に和真、お前は心の内に修羅を飼っている!お前が普段押さえつけたり折り合いをつけている闘争心、破壊願望を解き放つことで、『感情のエネルギー』を自在に生み出すことができる!それこそが、“気炎万丈の境地”なのだ!」

 

先ほどのライオンとの死闘の際も、かつて満身創痍で“閏高”に立ち向かった小学生時代も、和真は内に眠る闘争心を解放することで『感情のエネルギー』を発生させ、それによって肉体を凄まじく活性化させることで圧倒的劣性を覆してみせた。

 

和真「そこまでは俺も大体わかってた。……で、未完成ってのは?」

守那「簡潔に言えば使い方が大雑把で無駄が多い!和真よ、今のお前普段より大分疲れているだろう!」

和真「あん?……あー確かに、言われてみれば…」

 

ライオンを全滅させるまでにかかった時間は15分ほど。いつもの和真ならウォーミングアップにすらならない短時間で、現在は体力を半分ほど消耗してしまっている。はっきり言って異常なペースだ。

 

守那「“気炎万丈”の欠点その一!『感情のエネルギー』で活性化した肉体……いや、細胞は体力の消耗も激しくなる!むやみやたらと使えばあっという間にガス欠してしまうぞ!今からお前が覚えるべきことの一つは『感情のエネルギー』による部分的活性化と活性具合の調節だ!今のままでは30分程度が限界であろうが……無駄な活性を省けば消耗はかなり抑えられるというわけだ!」

和真「なるほど、そう言われると確かに毎回全身を強化するのは非効率だな。……ところでなんで細胞に言い直したんだ?」

守那「“気炎万丈”で活性化できるのは身体能力だけにあらず!使いこなせれば脳細胞だけを集中的を活性化させ、頭の回転を極限まで速めることも可能だ!……お前の通っている学校では、こちらの方が都合良かろう?」

和真「……以前至ったとき妙に頭がすっきりしてたからダメ元で身に付けてみたが、その話が本当なら想像以上に使えそうだな。……で、具体的にはどうするんだよ?」

守那「うむ、それはだな……」

 

そこで一旦言葉を切り、守那は和真からある程度距離を取る。そして…

 

 

 

 

 

守那「とにかく実戦あるのみだ!かかって来い和真、俺との闘いの中で“気炎万丈”をものにするがいいフハハハハハハ!」ゴォォォオオオオオッ!!!

 

感情を極限まで昂らせ、“気炎万丈の境地”へと至る。

『感情のエネルギー』による肉体の強化は凄まじく、普段はか弱い女子に過ぎない清水ですら身体能力のみなら和真に比肩するレベルにまで押し上げるのだ。ただでさえ素の状態で鉄人をも上回る守那ならば……どうなるかは言わずともわかるだろう。

 

和真「結局は脳筋理論かよ……でもまぁ」

 

呆れるように頭を欠いてうつむきつつも、内に秘めた闘争心を解放する。和真の場合守那とは違っていちいち感情を昂らせる必要などなく、普段理性で抑え込んでいる闘争心を解放してやるだけでこと足りる。激烈なまでの闘争心から生じた未知のエネルギーは細胞を急激に活性化させ、柊和真は紅き修羅となる。

 

和真「嫌いじゃねぇがな!」ゴォォォオオオオオッ!!!

 

一つ補足をしておこう。感情のエネルギー化は際限無く行えるわけではなく、個人差はあれど必ず限度というものがあり、許容量をオーバーした分……つまりエネルギー化できないほどの強い感情は本人の心をかき乱し理性を狂わせるというリスクを孕んでいる。明久や清水が一種の暴走状態に陥るのはそれが原因であるのだが、和真の闘争心は普段抑え込んでいるだけで心の内に常に燃えたぎっている。……それほどの修羅をこれまで御してきた和真が暴走状態に陥る可能性など、万に一つもありはしない。

 

守那「さぁ、ここからはひたすら闘争→休憩・栄養補給の繰り返しだ!和真よ、果たしてこの一週間で“気炎万丈”を使いこなすことができるか!?」ゴォォォオオオオオッ!!!

和真「できるできないじゃねぇ、やるんだよ。……テメェがヘラヘラ笑ってられるのも今のうちだぜ!」ゴォォォオオオオオッ!!!

 

両者は人間離れしたスピードで距離を詰め、鋼鉄すら容易く粉砕しかねないほどの破壊力を伴った拳を激突させた。スピードでは和真が勝っていたものの腕力の差は歴然、凄まじい轟音の直後に和真は後方へ吹き飛ばされた。

 

守那「どうした倅よ!お前の力はそんなものか!?俺もお前に合わせてあえて未完成状態に留めているというのにそのザマかフハハハハハハ!」ゴォォォオオオオオッ!!!

和真「ってぇな………上等だコラァ!」ゴォォォオオオオオッ!!!

 

柊親子の拳の語り合いはまだまだ続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃文月学園では、明久が未だかつてない窮地に陥っていた。

 

FFF団からの処刑?否。

 

姫路や美波からの折檻?否!

 

鉄人の補習or生徒指導?……否!!!

 

 

 

 

 

玉野「のんびりしていたら皆に先を越されちゃうから……だから私、勇気を出そうって決めたの!」

明久「えぇっ上着まで!?お願いします玉野さん!せめてズボンだけは残しておいてください!」

 

初対面の女子生徒から意味不明の追い剥ぎ(?)に遭っていることである。

彼女の名は玉野美紀、優子とは別ベクトルで和真の天敵とされている恐るべき女子生徒だ。彼女は可愛らしい男子生徒をひたすら女装させたがるというどうしようもない性癖を隠そうともしない残念系の極致のような女子だ。以前FクラスがBクラスとの戦争を回避する目的で明久の女装写真を囮に使った際に明久をロックオンしたようで、たまたま遭遇した明久を空き教室に連れ込んで着替えさそうとしているのである。分かりやすく言えば、言い逃れの余地のない変態ということだ。

 

玉野「あのね、アキちゃ-吉井君」

明久「玉野さん。多分だけど君絶対に僕のことを心の中で『アキちゃん』って読んでるよね?」

玉野「心配しないでアキちゃ-明子ちゃん!」

明久「違う!更に悪化させて欲しいって言ったワケじゃないんだ!僕の名前は明久なんだ!」

玉野「替わりのお洋服ならちゃんと用意してあるから。これを着て、思いっきり可愛くなろ?」

明久「じょ、冗談じゃないよ!誰がそんな服-って、ふぬぉぉぉー!何この力!?玉野さん本当に女子!?」

 

明久もまた『感情のエネルギー』の恐ろしさを体感しているようだ。その後明久は持久戦の末に衣服を取り返して事なきを得たものの、不運にもここでファンタジスタ振りを発揮してしまう。

 

明久「じゃ、じゃあね玉野さん!僕ちょっと雄二に呼ばれてるからまた今度!」

玉野「え……?坂本君に……?」

 

 

 

 

 

や っ て し ま っ た。

 

 

やってしまったと言わざるを得ない。

明久の言葉に偽りはない。確かに雄二は一週間後に控えた『S・B・F』に向けてのミーティングを開くためにFクラスの主要メンバーに集まるよう通達したし、その中には勿論明久も入っている。

だが……明久の言い方では()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。勿論だからといって真っ当な人間ならそこから怪しい関係を邪推するようなことはまずないだろうが、あいにくここは文月学園…頭がお花畑の人間だらけの魔の巣窟。ましてや玉野は和真や徹曰く『頭に蛆が沸いているとしか思えない』と揶揄されるほどの人物。そんな彼女に対しての明久のあの台詞は悪手も悪手……、ファンブル中のファンブル、彼が開けてしまったものはパンドラの箱どころではないのだ。

 

玉野「アキちゃんと、坂本君が……あの噂、本当だったんだ……」

 

 

 

 

哀れなり ああ哀れなり 哀れなり

 

 

 




和真君、覚醒!
終盤になったこで自重を投げ捨て始めています。

“気炎万丈の境地”は原作キャラ達のギャグ補正による超人化を強引に理屈付けた設定『感情のエネルギー』を自在に操れることのできる能力です。蒼介君の“明鏡止水”とは炎と水、静と動、科学とオカルト、安定と不安定という色々な意味で完全に合わせ鏡の能力です。また、“明鏡止水”は一応人の範疇に収まるほぼノーリスクの安定した能力なのに対して、“気炎万丈”は爆発力は凄まじいが人を超越する代償に色々なリスクを孕んだ不安定な能力です。


【オリジナル設定】
感情のエネルギー……バカテス世界の人間が時にありえないレベルの芸当をすることを強引に理屈付けたもの。怒り、悲しみ、嫉妬、歓喜など、何かしらの感情が極限まで高まったとき発生するエネルギーであり、発生源となった人を桁外れに強化する。偶発的に発生する火事場の馬鹿力のようなものだが、守那は意図的に発生させることができ、和真に至っては自重を止めるだけで勝手に発生するようになった。




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