バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

158 / 219
いよいよ召喚大会編突入です。
完結までもう少し(具体的にはあと三章)ですから、パワーバランスが色んな意味で面白おかしく凄まじいほどのインフレが巻き起こる予感……!


オリジナル第三章『S・B・F』

ベルゼビュートは数ある召喚獣の中でも極めて特別な自律型召喚獣である。何をもって特別と定義するかを説明するとかなり長くなるが、特に顕著な要素は三つに絞られる。

一つは彼が人間と比較しても遜色ないほど高い知能を有していること。使役型の召喚獣は使役する者の通りにしか動かない木偶人形に過ぎず、自律型であってもただ本能の赴くままに暴れることしか能の無い畜生止まりであることを考えると、これは極めて特異極まりないことだと言えよう。

二つ目は召喚獣フィールドを媒介にすることなく現実世界に常在できること。召喚獣とは科学とオカルトが交差することにより生じる化外の存在。故に本来は特殊なフィールドを展開しなければ現実世界には現出することすらできないはずである。しかしどういう原理かはまったくもって不明だが、彼はその前提条件を完全に覆しているのである。

そして三つ目だが……そもそも容姿、サイズともに召喚獣には全く見えない外見をしているということだ。

今のベルゼビュートは“桐谷グループ”の臨時代表に就いている男・宮阪桃里と瓜二つの外見をしている。……いや、宮阪桃里として“桐谷”を率いているのは何を隠そうこのベルゼビュートである。本人をどこかに監禁して宮阪桃里に成り済ましているのか、宮阪桃里の肉体を乗っ取っているのか……それとも宮阪桃里の正体がベルゼビュートなのかは不明だが。

それはともかく、この極めて特異な召喚獣であるベルゼビュート…通称ベルは現在、桐谷サイバーシティーの中心部『バベルタワー』の最上階にて、とある人物……アドラメレクの開発者、及び()()()()()()()()とパソコン越しに連絡を取っていた。

 

ベル「それでボス、“玉”の資質を持った奴は揃ったのかよ?((o(^-^)o))」

『勿論だよ。僕が目をつけている内の二人はまだ覚醒していないけど、僕の分析上まず間違いなく“玉”の資質だよ……それも最上級クラスのね』

ベル「おいおい大丈夫なのかよそんなんで……儀式は繊細極まりない上にやり直しは不可能なんだ、『やっぱ違いました、てへっ♪』じゃすまされねーぞ?( ̄Д ̄;;」

『愚問だねベル。この僕の分析が間違っていたことが今まであったかい?』

ベル「…………ねーけどよ(¬_¬)」

 

ディスプレイに文月学園の関係者の顔写真と、それぞれの名前が表示されている。

 

ベル「つーかよ……既に確定してる奴がいるんだし、そいつらだけでもさっさと拉致ってくりゃいいじゃねーかΨ(`△´)Ψ」

『まったく、君はホント不粋だねぇ……せっかくの祭なんだよ?僕達が横槍を入れて中止にでもなったりしたら、興が削がれると言うものさ』

ベル「うっわ出たよボスの悪い癖……()()()()()()()()()()()()()()()人が、なんでそんなこと気にするかねぇ……( ̄□ ̄;)」

 

ベルが呆れるのも無理はない。なにせ一度や二度では無いのだ、パソコンの向こうの人物が誰がどう見ても不合理極まりないとしか思えない愚行に時間と労力を費やすのは。例えば……四年前の『ハーバード大学コンピューターサイエンス学科生失踪事件』にて、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()こと。その人物がアドラメレク、ひいては自信に激しい憎悪を向ける…もしくは取り除かねばならないという使命感、義務感に駆られるであろうことを見越した上で……自分達の障害になると確信していながら、あえて見逃したのだ。

 

『まあそう言うなよベル君、今回は何も酔狂で言っているわけじゃないんだ。僕の分析に寄れば……この二人の覚醒にはこの祭は実にうってつけなのさ』

ベル「ふーん、養殖みてーなもんか……つまりアレか?その二人が覚醒したら、ついに俺達が動くってことで良いんだよな(-ω- ?)」

『然りだ。君の器候補は既にダゴン君が洗脳済み、それにゴライアスの量産も既に成功している。さらに【セブンスター】の完成もあと少しの調整を残すのみ……決戦の日は近いよベル君♪』

ベル「……クククククククククク……!

そうだそうだよそうこなくっちゃなぁっ!……ついに、ついにだ!アドラメレクは完全へと至り……そしてこの世界はぁ……くくく、ふふははは、ヒャーッハッハッハッハッハ!Ψ(`▽´)Ψ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『よく集まったねクソジャリ共』

 

開口一番仮にも教職についている者とは思えない学園長・藤堂カヲルの発言に生徒達はいつものことであるものの呆れ、教師陣はげんなりしたように頭を抱える。月曜日の六時間目、全校集会のため1~3年の約900人の生徒達と全教師陣が体育館に集まっている。

 

『今回アンタらに集まってもらったのは他でもない。試験召喚戦争の祭典……【サモン・ビースト・フェスティバル】が今日から一週間後に開催されることを通達するためだよ』

 

学園長の言い放ったあまりに唐突な内容に決して小さくないざわめきが生まれる。そしてそれは我らがFクラスとて例外ではない。

 

明久「この時期に召喚大会?」

雄二「妙だな、去年はそんな行事なかったはずだ」

 

しばらく喧騒は止まなかったが、やがて鉄人が一喝して体育館に静寂を取り戻す。周りが静かになったことを確認してから学園長は再び話を続ける。

 

『ざわつくのも無理はないがこの祭典は文月学園始まって以来初めての試みだからね、前例がないのは当たり前だよ。この祭典の目的は……一々誤魔化す必要も特に無いから簡潔に言うと、まあ一種のプロパガンタさね』

 

秀吉「随分ストレートにぶっちゃけたのう……」

明久「???ババァ長も以前の僕みたいにガス代を払ってなかったのかな?」

美波「……へ?なんでこの流れで急にガス代の話になるのよ?」

ムッツリーニ「………理解不能」

雄二「……………あぁなるほど。明久、ババァが言ったのはプロパンガスじゃなくてプロパガンダだ」

翔子「……本来は、ある政治的意図のもとに主義や思想を強調する宣伝行為のこと」

姫路「今回のケースですと、そうですね……また召喚獣の宣伝じゃないでしょうか?」

 

清涼祭の召喚大会の主目的はまさに宣伝であったため、今回もそうではないかと思うことは至極当然であるが、そんな生徒達の考えを読み取ったのか学園長は「ちっちっち」と指を数回ほど振りつつ話を進める。

 

『そこそこ察しの良いガキは勘づいたつもりか知らないけど早とちりは駄目さね。この祭典はいつもアタシがしているスポンサーへの涙ぐましいご機嫌とりとはスケールが違う。召喚獣を教育に投入した我が校のカリキュラムを全国、全世界に向けてアピールすることが目的さね。大会前の準備期間として、明日から金曜までは午前授業に変更する。勿論、参加義務があるものの真剣に取り組むかどうかはアンタら次第……だけど肝に命じておくことだね。今回の祭典は文字通り全世界に公開される、努力を怠った者はそれ相応の屈辱を味わうことになるとね』

 

悪役のような笑みを浮かべて学園長が一旦言葉を切り周囲を見回すと、案の定大半の生徒達の表情は強ばっている。文月学園の試験召喚システムが注目を浴びていることはこの学園の生徒なら誰でも知っている。割と秘密主義なため肝試しのときも野球大会のときも露出はごくわずかにとどめてあったのだが、今回学園長はそれを包み隠さずさらけ出すと言うのだ。

 

『当然無理矢理参加させるからには、優秀な成績を残した者には報酬を出そうじゃないか。特に、優勝した生徒には50000円分のQUOカードにその他諸々の副賞……そして-』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雄二「『常磐の腕輪』、か」

翔子「……どんな効果なのかはまだ不明だけど、できれば他クラスには渡したくない」

雄二「特にAクラスにはな」

 

帰宅中、雄二と翔子はサモン・ビースト・フェスティバル……通称『S・B・F』でどのように立ち回るかを話し合っていた。近い内にAクラスに闘いを挑む以上腕輪は手に入れておきたいし、せめて二年Aクラスの生徒には勝ち取らせたくない。

 

雄二「…………にしても和真め、また俺に隠し事してやがったなあの野郎……」

翔子「……でも、和真も知らなかったってことも-」

雄二「あるわけねぇだろ。ババァの話だと予選と決勝トーナメントの二部構成らしいがアイツと鳳、佐伯センパイ……あと、姉妹校からの交換留学生とやらは予選免除らしいからな。事前に通達があってもおかしくは無いし、それに何より……

 

 

 

 

 

 

 

 

今日から祭典初日まで学校を休むって時点で、明らかにこの大会を知ってたとしか思えねぇよ!」

 

雄二の言う通り、和真は今日から一週間欠席すると学校に届け出を出していたらしい。ちなみにこの時点で和真はとある元猫かぶり女子生徒の怒りを盛大に大人買いしてしまったのだが、身から出た錆と諦める他無いだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、肝心の和真はというと…

とあるビルの地下、核シェルターのように無機質ながらも重厚な壁に囲まれた場所に和真がいた。目の前には初号機でも格納しているかのような厳重なシャッターが鎮座しており、後ろにはここまで降りてくるために使用したエレベーターがあるものの電源を止められて降り、和真は正しくこの檻のような空間に閉じ込められた形になる。

 

和真「…………なぁ親父、なんだこの状況?テメェは俺に何をさせるつもりだ」

 

げんなりしたような和真の呟きに、天井に設置されていたスピーカーが喧しく返答する。

 

『フハハハハハ!倅よ、俺からお前に送るアドバイスはたった一つだけだ!…………死ぬなよ?』

和真「……はぁ?」

 

どういう意味だ?……と聞き返す前にシャッターが上がっていき、その先にあったものを直視した和真は石像の如く固まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「グルルルル……」」」

和真「………………マジで?」

 

ライオン。

食肉目ネコ科ヒョウ属に分類される食肉類。オスであれば体重は250キログラムを超えることもあり、ネコ科としてはトラに次いで大きな種である。暇人どもが最強議論を交わすときに度々かませにされることもあるが、それでも人間が重火器無しで挑むことは無謀以外の何ものでもない、百獣の王。

 

そんなライオンが、1,2,3,4……20体ほど。そしてどいつもこいつも瞳に移る和真を獲物として捉えているかのように、獰猛に唸り声を上げている。

あまりに非現実的な光景を前に未だ硬直したままの和真に、再びスピーカーがムカつすほど爽やかな声色で語りかけてきた。

 

『和真よ!その畜生どもを全て打ち倒すには、いくらお前とて“気炎万丈の境地”に至らねば不可能だぞ!』

和真「いや待てコラ!?俺はどうやったら至れるか教えてくれって頼んだんだぞ!?誰がこんな戦場に放り込めと頼んだ!?」

『…………健闘を祈る!(プツッ)』

 

和真の猛抗議もカレーにスルーされ、スピーカーが切れたのを合図に猛獣共が襲いかかってきた。

 

 

 

 

「「「グルァァァアアアアア!!!」」」

和真「あのクソ野郎ぉぉおおお!!死んだら絶対祟り殺してやるぅぅぅっ!」

 




そんじょそこらのDVなど鼻で笑えるほどの暴挙に出た守那さんですが、彼は頭のネジが2,30本飛んでるので常識や倫理観は期待するだけ無駄です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。