問.次の文の(1)(2)(3)の空欄を埋めなさい。
1352年、北朝は(1)、(2)、(3)の3ヵ国に半斉令を出し、本所領年貢の半分を兵粮料所として当年1作だけ武士に給与した。
明久の答え
『(1)近江
(2)美濃
(3)尾張』
蒼介「正解だ。その後半斉令の対象は軍勢派遣の8ヵ国に拡張したが、武士が受給した半済分はなかなか返還されないだけでなく、幕府の許可を得ないで武士が半済と称して自由に本所領などの横領が問題になったようだ。一部を贔屓すると必ず綻びが生じるということだな」
美波の答え
『(1)おう
(2)みの
(3)おわり』
蒼介「……近江、美濃、尾張→おうみのおわりと、語感で覚えてしまったせいで漢字が出てこなかったことがひと目でわかるな。一応言っておくが島田、平仮名で書いても部分点は貰えないぞ」
ムッツリーニ
『(1)Oh!me
(2)NO!
(3)終わり』
蒼介「だからと言ってこれは無いだろう……」
姫路と杏里の闘いが同時ノックアウトで終了し、現在両者とも二勝二敗一引き分けという互角の展開である。シチュエーション的にはかなり盛り上がるもののハッキリ言って今の状況は喜ばしくない。その理由は大きく分けて二つある。一つは次の第六試合で負けた方のチームは勝ち越せなくなるため、最終戦のモチベーションが下がる恐れがあることだが、それに関しては闘う生徒が和真と梓のためおそらく杞憂に終わるだろう。問題は二つ目…残り二戦が1勝1敗という結果だった場合の規定を定めていないことだ。というか、時間的に考えてお開きになる可能性大だ。
雄二「というわけで明久、負けたらブチ殺すからな」
明久「いやどういうわけ!?唐突すぎてびっくりだよこっちは!」
雄二「模擬戦とはいえやるからには絶勝つ。だがな明久、お前が高城センパイに負けた時点で全部水の泡なんだよ。……っつーわけで、負けたら地獄の断頭台な」
明久「やれやれ、ホント雄二は横暴なんだから……でもまあ安心してよ、僕には必勝の策が-」
和真「念のため釘さしておくが、高城先輩を騙しまくって勝とうとするなよ?」
明久「えぇっ!?ど、どうしてさ!?」
自信満々な表情から一転、まるで崖の上に追い詰められたサスペンスドラマの犯人のように狼狽する明久。どうやら和真の推測通り、高城の騙されやすさにつけこむ気であったらしい。そんな明久に溜め息を吐きつつ、和真は諭すように言う。
和真「あのな明久……雄二の言う通りやるからには絶対勝つ。だがそれとは別にこの模擬戦の趣旨は、Aクラス戦に向けて実践を積むことだろ?んな狡い勝ち方しても意味無ぇだろうが」
明久「そ、そうは言っても和真…相手は学年首席な上に操作技術も僕や佐伯先輩クラスだそうじゃないか……」
和真「それがどうしたって言うんだよ?」
弱気になる明久と肩を組み、いつもの不敵な笑みを浮かべる和真。そのまま周囲には聞こえないように語りかける。
和真「召喚大会で俺に切った啖呵を思い出せ。目の前に立ち塞がる壁は殴り壊すんじゃなかったか?好きな人の為なら頑張れるんじゃなかったか?お前がこの半年やりたくもねぇ勉強を続けていたのは何故か……もう一度考えてみろ」
明久「…………そうだった。僕達は絶対に、Aクラスに勝つって決めたんだったね!わかったよ和真、君は小細工なしの真っ向勝負でぶっ倒してくるから!」
意気揚々と召喚フィールドに向かう明久を見送りつつ、雄二は和真に近づいて労いの言葉をかける。
雄二「お疲れさん。いつもいつも大変だな」
和真「そう思うならたまにはお前がやれよ、面倒ごと全部俺に丸投げしやがって」
雄二「まあ良いじゃねぇか。お前が一番適任なのは事実なんだからよ」
いまいち納得いかないのかゲンナリした表情をしている和真だが、(本人にとっては不本意なことに)雄二の指摘は概ね正しい。和真と蒼介は他の追随を許さないほど多くの才に恵まれているが、その中でも稀有な才能なのが周囲に対する影響力である。蒼介は主に能力を、和真は主にメンタルを、それぞれ格段に向上させることを得意としている。『アクティブ』のメンバー達が心身ともに強靭である理由の一つは、最も二人の影響を受けているからである。
『『試獣召喚(サモン)!』』
雄二「お、どうやら始まったみたいだぞ」
和真(……さてと、あいつはどれだけ白金の腕輪を使いこなせるようになったのかねぇ)
《社会》
『二年Fクラス 吉井明久 366点
VS
三年Aクラス 高城雅春 392点』
明久が選んだ科目は勿論、最も得意とする社会。両者の点数がそれほど差が無い一方で、〈明久〉がお馴染みのチンピラ装備一式を身に纏っているのに対し〈高城〉の格好は着流しに〈翔子〉の村雨ほどではないが立派な刀と、装備には天と地ほどの格差がある。そして肝心の操作技術はと言うと…
高城「……噂に違わぬ操作技術ですね。実に動きがスムーズです」
明久「先輩こそ、雑用を押し付けられ続けた経験値は伊達じゃありませんね!」
…完全に拮抗していた。
〈明久〉が木刀での降り下ろしをフェイクに足払いをしかけると、〈高城〉は刀で木刀を弾きつつ足を浮かせて回避し、そのまま返す刀で相手の足を刈り取ろうとする。〈明久〉は僅かにバックステップをしてそれを回避し、即座に距離を詰めながら渾身の突きを放つ。〈高城〉は敢えてスレスレで回避しながら、カウンターとばかりに水平斬りを放つ。〈明久〉は膝を曲げて屈みこみ紙一重で刀をかわし、その状態で転倒目的の水面蹴りを放つ。〈高城〉はその足にタイミング良く蹴りを当てて相殺し、両者は反動で吹っ飛んだ。
この短時間でこれだけの攻防を繰り広げたにもかかわらず、お互いダメージらしいダメージを受けていなかった。
明久「このままだと埒が明かないので、ここは切り札を使わせてもらいますよ……二重召喚(ダブル)!」
そのキーワードとともに明久の足下に幾何学模様が出現し、2体目の召喚獣が喚び出された。
《社会》
『二年Fクラス 吉井明久 183点/183点
VS
三年Aクラス 高城雅春 392点』
それと同時に一体目の召喚獣の点数が半分になり、もう一体の召喚獣に移される。
高城「ほう、それが噂に聞く白金の腕輪の能力ですか。しかし吉井君、一人で二体の召喚獣を操ることは決して容易なことではないはず。私は手堅く操作が粗雑になった方に照準を合わせますよ」
明久「さて……そううまくいくでしょうか?」
二体の〈明久〉は木刀を構えて特攻する。二体同時に操っている弊害か、先程までの緻密な攻めとは比較にならないほど単調な攻め方だ。
高城(やはり二体の使役は吉井君でも荷が重かったようですね……これも真剣勝負、悪く思わないでください)
副獣よりもやや早く特攻してきた主獣の斬撃にタイミングを合わせ、袈裟斬りでカウンターを仕掛ける。
しかし主獣は即座に木刀で受け止めつつ、同時の後ろに飛ぶことで衝撃を殺した。
高城(…っ!急に動きが精密に……なっ!?)
そしていつの間にか着地点に移動していた副獣がそのまま主獣を受け止め、〈高城〉の後ろに向かって主獣を投げ飛ばした。
明久「っ…!……いくぞぉぉおおお!」
着地にやや失敗してそのフィードバックに顔を歪めつつも、明久は二体の召喚獣で〈高城〉を挟み撃ちさせる。
高城「し、しまっ-」
明久「もう遅い!」
今度は副獣がいち早く〈高城〉に斬りかかる。先ほどの特攻と比べて遥かに隙が少なかったため〈高城〉はカウンターではなく無難にガードした。しかしその選択は挟みうちされている状況では悪手中の悪手……間髪入れず後ろからきた主獣に足払いされて敢えなく転倒する。そうなってしまえばもはや明久の思う壺。二体の召喚獣の見事な連携で〈高城〉に体勢を立て直す隙を一切与えず小攻撃で着実に点数を削り取っていく。
和真「…………流石にこりゃ予想外だな」
雄二「ああ、まさかあのバカがあそこまであの腕輪を使いこなせるようになってるとは……」
和真(…………もしかして……いや、いくらなんでもそれは無いか……)
明久の急激な成長に和真は一つ心当たりを見つけるが、あまりにもぶっ飛んだ推測のため頭から消し去ってしまう。
一方闘いはクライマックスに突入していた。〈高城〉は転倒れたまはまの体勢で器用に反撃はするもののやはり二体一では多勢に無勢だったのか、やがて点数は尽きてしまった。
《社会》
『二年Fクラス 吉井明久 68点/73点
VS
三年Aクラス 高城雅春 戦死』
高城「……お見事です。まさか、二体の召喚獣をここまで精密に動かすとは」
明久「脳は二つに分かれてるんですよ?バカな僕でも努力すれば召喚獣を二体同時に操れるはずだと信じて、この夏イメトレを重ねたんです」
高城(いや、右脳と左脳では役割が異なっているのですが…………まさか、佐伯嬢が得意としている並列思考を身に付けたのですか!?)
高城の憶測はほとんど当たっていた。流石に梓ほど細かく分割することは不可能だが、バカであることを生かした集中力は、とうとう並列思考による召喚獣二体同時操作を実現させたのだ。
明久「さてと、後は和真が勝ってこの代表戦は終わりですね」
高城「……差し出がましいでしょうが、勝利宣言は気が早すぎますよ?佐伯嬢は私よりも遥かに強いですから」
明久「それはわかってますけど……でも和真は今までで二回勝ってるんでしょ?あれからさらにパワーアップした和真なら-」
高城「いいですか吉井君、確かに柊君は佐伯嬢に二度勝利しています。しかしながらいずれも、二対一という佐伯嬢が極めて不利な状況でした」
明久「あ、そう言われてみれば……」
一回目の闘いは形式こそ二対二であったものの、和真は試合前の時点でタイマンで勝つことを諦めていた。二回目の闘いは二対一で闘った上に、圧倒的な情報アドバンテージがあった。つまり和真はまだ梓に完全勝利を収めているとは言い難いのだ。
高城「そしてもう一つ……パワーアップしたのは何も柊君だけではないんですよ」
明久「えっ…それってどういう……」
高城「私から言えることは以上です。あとは実際に目の当たりにした方が早いでしょう」
少々気がかりな言葉を言い残して、高城は三年生サイドに戻っていった。
ぱぱぱぱーん!明久は二重召喚スキルを格段に向上させた!
原作主人公だと言うのに最近ロクな活躍をさせてあげられませんでしたからね。これぐらい強化してあげてもバチは当たらないでしょう。
ついでに、本作主人公二人が周囲の力をインフレさせてる元凶だと判明しました。まあ隠す気は微塵もなかったのですが。
ちなみにネタバラシすると、和真のぶっ飛んだ推測とやらはドンピシャで当たっています。
それが何かはまた後ほど。