バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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水嶺流伍の型・瀑布……跳躍からの凄まじい唐竹割り。助走により生じるエネルギーを全て剣に籠めるまさに必殺の一撃だが、隙が大きすぎるため運用方法は専ら暗殺用である。水嶺流が殺人剣として全盛を極めた時代に、兜ごと相手を一刀両断するためにあみだされたという。

陸、漆、捌、玖の型は未公開、拾の型『海角天涯』は未だ謎が多いため水嶺流の解説は一旦ここまでです。



VS三年Aクラス②

金田一「三番手はこの俺、科目は当然英語だ」 

 

二連勝した3-Aだが攻めの手を緩めるつもりはないようで、No.3の金田一を投入してきた。しかし選択した科目が英語と判明するや否や、雄二は送り出す生徒を即座に決定した。

 

雄二「翔子、任せたぞ」

翔子「……わかった」

金田一「ほう、アンタか。……こいつは一筋縄じゃいかなさそうだな」

 

お互い意図したわけではないが、偶然にも学年三位対決である(翔子は夏休み前までは次席だったが、和真はつい先日ランクアップしたので抜かれている)。

 

「「試獣召喚(サモン)!」」

 

二体の召喚獣が出現する。ちなみに金田一の召喚獣は剣闘士の鎧にグラディウスだ。

 

 

《英語》

『二年Fクラス 霧島翔子   532点

VS

 三年Aクラス 金田一真之介 429点』

 

 

金田一「おっと……こいつは予想以上だ」

翔子(……この人は肝試しで200点以上の点差を覆しかけていた。決して油断できる相手じゃない)

 

ひとまずは様子見なのか、〈翔子〉は村雨を構えたままその場から動こうとしない。

 

金田一「あん?攻撃を誘ってんのか?だったら遠慮無くいくぜ!」

 

脳筋でも単細胞でないが、どちらかと言えば小手先よりパワーを重視する金田一は、翔子が何かを狙っているとわかった上で〈金田一〉を特攻させる。

 

金田一「…おっと!」

 

ガキィンッ!

 

〈翔子〉がカウンター気味に固有武器特有の頑丈さを利用した鋭い突きを繰り出すが、〈金田一〉はあっさりとグラディウスの腹で受け止める。

 

金田一「危ねー危ねー」

翔子(……マズい…!)

金田一「それじゃ改めて、いくぜ!」

 

キキキキキキキィインッ!!!

 

そのまま距離を詰めて怒濤の連続攻撃を浴びせかける〈金田一〉。〈翔子〉も召喚獣のスペック差を活かしてなんとかガードするものの、完全に防戦一方の展開になってしまっている。

 

翔子(……このままじゃ、いずれ崩される……!早く……早くなんとかしなくちゃ……っ!)

金田一(………………ここだ!)

 

不意に、〈金田一〉の猛攻がピタリと止んだ。

 

翔子(っ!?隙ーーーいや、これは!?)

 

突然の隙に〈翔子〉は反射的に攻撃に移る。、寸前でこれが罠であることに感付くも時既に遅く、〈翔子〉は攻撃体勢に入ってしまう。

 

金田一「かかったなっ!」

 

ガードが緩む隙を見逃さず〈金田一〉はカウンターを喰らわせた。〈翔子〉はダメージを確認するため一度距離を取る。

 

 

《英語》

『二年Fクラス 霧島翔子   456点

VS

 三年Aクラス 金田一真之介 429点』

 

 

新装備の頑丈さのおかげで幸いそこまで大した負傷ではなかったものの、これで両者の点数差は無いも同然になってしまった。こうなると経験で大きく劣る翔子が圧倒的に不利である。

 

翔子(……今の攻防ではっきりした。まともに闘えばこの勝負、おそらく勝ち目は薄い……!)

金田一「どうした?まさかとは思うが、まだ受け身の姿勢を続けるつもりじゃねーだろうな?」

翔子(……仕掛けるなら、今!)

金田一「おっ、ようやくやる気に…あ?」 

 

意を決して向かってきた〈翔子〉に応戦しようと〈金田一〉はグラディウスを構えるが、〈翔子〉のスピードがやけに遅いことに一瞬気を取られる。〈翔子〉はその一瞬の隙を逃さずに、

 

 

 

急加速して斬りつけた。

 

金田一「ぅおっ!?まずい、一旦距離を-」

翔子「……逃がさない……!」

金田一「そう甘くねーってわけか……!」

 

〈翔子〉が体勢を整えさせないよう猛攻撃を繰り出し〈金田一〉それをひたすら防いで機を伺うという、先ほどとは真逆の構図が出来上がる。

 

 

 

和真「あれは…チェンジオブベースか」

雄二「鳳と闘ったとき、奴がアレと似たような技を使って島田が瞬殺したからな。多分それを見てコピーしたんだろう」

和真「似たような技?もしかして壱の型・波浪か?あー…技の入りはまぁ、似てるっちゃ似てるな」

雄二「ん?どういうことだ?」

 

何やら含みのある和真の言い方に雄二は疑問を持つ。

 

和真「水嶺流は門外不出の流派だからあくまで俺の憶測だけどよ、多分あの技で重要なのは急加速じゃなくて急減速の方だ」

雄二「…………隙が生じやすいからか?」

和真「御名答。闇雲な減速は相手にバッサリいくチャンスをプレゼントするようなもんだからな。それでも減速をする理由は、加速と減速を織り混ぜることで相手のペースを崩すためだ」

雄二「……なるほど、確かに翔子のソレとは用途がまるで違うな」

和真「そうだ。翔子は不利な状況をひっくり返す切り札として使ったみてぇだが、壱の型・波浪は単なる基本動作でしかない。減速が無ければ効果は半減だし、完全に劣化互換だな」

雄二(流石の翔子でも、見ただけだと完成度はそんなものか。……って、暢気にそんな感想を考えてる場合じゃないな。和真の言う通り、急加速一辺倒だと二回目は警戒されて通じないだろうし……おそらくここで仕留め切れなければ、翔子は負ける……!)

 

 

 

キキキキキキキキキィインッ!!!

 

翔子(……一瞬でも…一瞬でも攻撃を緩めてはいけない…っ!おそらくこの攻撃がラストチャンス……!)

金田一(こいつを凌ぎきれば十中八九俺の勝ちだが……いかんせんスペックが違いすぎて防ぐので手一杯だなこりゃ)

 

戦況は完全に互角だが、踏んできた場数の違いか両者の精神的余裕には雲泥の差がある。そしてこの精神的余裕が、この膠着状態を脱する方法を導きだす。

 

金田一(俺の点数はまだ400点以上ある。一度地獄を潜ってもそうそう死にはしねーだろ……よし、仕掛けるか)

翔子(っ!また!?)

 

再び〈金田一〉の動きが完全に停止する。〈翔子〉は先ほどと同じようにそのまま攻撃してしまう。しかしさっきとは違ってそれまで攻めていたのは〈翔子〉なので、カウンターどころかガードや回避する余裕すらなく〈金田一〉は村雨に斬られてしまう。

 

金田一「オラァッ!」

翔子「っ!しまった……!」

 

ザシュッ!

 

しかし〈金田一〉がお構いなしに即座に反撃に転じる。〈翔子〉は何とか急所を外させたものの、形勢は完全に逆転してしまった。

 

 

《英語》

『二年Fクラス 霧島翔子   398点

VS

 三年Aクラス 金田一真之介 259点』

 

 

金田一(半分近く削られちまったが、この程度の点差なら十分逆転できる。この勝負、完全に俺が制したぜ!)

翔子「っ……!」

 

〈金田一〉の召喚獣は勝負を決めるため怒濤の攻撃を浴びせかける。この攻撃は誘い込みのための布石だと頭でわかっていても、翔子程度の操作技術で寸止めは不可能である。

 

 

万事休すかと思われたそのとき……

 

 

 

 

 

 

バキィッ!

 

 

降り下ろした〈金田一〉のグラディウスは村雨に斬撃を止められた瞬間、無惨にもへし折れてしまった。

 

金田一「んなっ!?」

翔子「……これをずっと待っていた!」

 

すかさず〈翔子〉は反撃に転じる。〈金田一〉は何とか凌ぎきろうとするも丸腰の状態ではどうしようもなく、あえなく村雨に斬り裂かれた。

 

 

《英語》

『二年Fクラス 霧島翔子   398点

VS

 三年Aクラス 金田一真之介 戦死』

 

 

金田一「……おい霧島、いったいどういうカラクリだ?和真みてーな破壊力重視なら相手の武器を破壊するケースもあるけどよ、オメーの召喚獣はどう見てもバランス型だろ?なんで俺の武器だけが一方的にへし折れたんだよ?」

翔子「……やっぱり思った通り、固有武器の性質を知らないんですね」

金田一「固有武器ぃ?何だそりゃ?」

翔子「……総合科目が5000点以上の生徒の武器は固有武器と言って、耐久性が通常武器より段違いに高いんです」

金田一「5000点以上……か。なるほどな、俺達が知らないわけだ」

 

そう、三年の彼らが知らなくても仕方ないのだ。何故なら彼らの学年に総合科目が5000点以上越えている生徒は一人もいないのだから(というか普通はいなくて当たり前で。5000点オーバーが3人も在籍している二年が異常なだけだが)。翔子はチェンジオブペースで猛攻をしかけたときから、この情報アドバンテージが活きる瞬間を虎視眈々と狙っていたのだ。

 

金田一「……ま、疑問は解けたところで三回戦目はおしまいだな。文句無しにオメーの勝ちだ」

翔子「……ありがとうございました」

 

点数差ほど楽勝では無かったものの、Fクラスにようやく一勝をもたらした翔子は悠々と雄二達のもとに戻る。

 

翔子「……雄二、危なかったけどなんとか勝ったよ」

雄二「ああ、お前はよくやってくれたよ。あとは俺達にまかせろ」

 

そう言いつつ雄二がフィールドに向かう。どうやら次は雄二が出るらしい。

 

雄二「四回戦の相手は俺だ。科目は国語を選ぶ」

梓(国語か……スマンけど、常村)

常村(ああ、わかってる)「なら、俺が相手になろうじゃねぇか」

 

選択科目が国語にもかかわらず、雄二の相手はガッチガチの理数系である常村。しかし雄二にとって彼が出てくることは予想通りであった。

 

雄二「やっぱりアンタが出てきたか」

常村「坂本、まるで俺が相手だとわかっていたかのような口ぶりじゃねぇか」

雄二「このくらい予想できて当たり前だろ。最終戦には佐伯センパイ、科目選択権のある五戦目には理科が得意らしい宮阪センパイが出てくるだろう。俺達に科目選択権のある六戦目か今回のどちらかに、社会だけAクラス上位並の明久が出てくることはわかりきっているだろうから、アイツには多分高城センパイを当ててくるはずだ」

常村「それで、残った方への捨て駒に俺があてがわれるだろう……ってか?残念ながら大外れだ。何故ならよ……俺はテメーに勝つからだ!サモン!」

雄二「どうかな?肝試しでは遅れを取ったが、今度はそうはいかねぇ……サモン!」

 

幾何学模様から召喚獣が出現する。常村の召喚獣の装備は狩人の服装にバトルアックスだ。

 

常村「……なんだお前の召喚獣の装備?まんまチンピラじゃねぇか」

雄二「ほっとけ」

 

そして遅れて点数が表示される。

 

 

《国語》

『二年Fクラス 坂本雄二 346点

VS

 三年Aクラス 常村勇作 268点』

 

 

常村「チッ、思ったより点数差ありやがる……」

雄二「Aクラス戦に向けてパワーアップしたのは、何も和真だけじゃないってことだ。……それじゃ、早々にカタをつけてるぜ」

常村「上等じゃねぇか!先輩の偉大さってもんをわからせてやる!」

 

第四回戦の闘いの幕が、今ここに切って落とされた。

 

 

 




雄二「ふと気になったんだがよ……」

和真「あん?何だいきなり?」

雄二「あんなにズバズバ斬られてたのに翔子の召喚獣も金田一センパイの召喚獣も全然平気そうだったな」

和真「あーそれか。一学期にどっかの誰かがスプラッタシーンを作り過ぎたことを反省したのか、ばーさんが切断したり貫通したりしないよう召喚獣の仕様を変更したそうだ」

明久「いや、他人事みたいに言ってるけどどっかの誰かって間違いなく和真だよね!?」


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