幾何学模様から二体の召喚獣が出現する。
翔子の召喚獣の装備は武者鎧に兜、そして寒気を呼び起こすとされる妖刀・村雨。
一方の源太の召喚獣はというと、以前は民族衣装だったのが西洋鎧に、武器はトマホークからハルバードに変化していた。
《英語》
『Aクラス 霧島翔子 546点
VS
Aクラス 五十嵐源太 637点』
源太「へぇ、随分と実力をつけたじゃねーか」
翔子「……五十嵐は、Aクラスと闘う前にどうしても勝たなければならない相手。でないと、私はさらに上に行くことはできない」
源太「ほー、良い覚悟だ。だがよ、テメェにこいつを防ぐ手段があるのか?この……千の刃をよぉっ!」
〈源太〉の左腕から無数の刃物黒いナイフが次々と出現し、あっという間に召喚フィールド内を埋め尽くした。
翔子(……やっぱり、この技……!)
源太「さてどうする霧島ァ…何もできねーと死んじまうぞ?……シュゥゥゥウウトッ!」
合図と共に全方向から〈翔子〉目掛けてナイフの雨が降り注ぐ。
翔子「……同じ手は喰らわないっ!
アイスブロック・フォートレス!」
〈翔子〉は突如出現した氷の塊に閉じ籠り、その氷塊を再び氷が覆うことで耐久力を強化した。降り注ぐ無数のナイフが突き刺さったものの、ナイフの一つ一つは威力も強度も大したものではないため傷一つつけられず全て弾き飛ばされた。
《英語》
『Aクラス 霧島翔子 446点
VS
Aクラス 五十嵐源太 487点』
源太「!…なるほど、氷の防壁ってわけか。大分能力を使いこなせるようになったみてぇだな……なら、力づくでぶち破るまでだ、巨人の爪ぇぇぇ!」
翔子「っ!解除!」
二重に覆っていた氷塊が溶けると同時に〈翔子〉は即座に距離を取り、次の瞬間にはその場所を備えた巨大な黒腕が通りすぎた。
源太「それによ……能力の精度が上がったのは、何もテメェだけじゃねぇんだぜぇ……オラァッ!」
雄叫びとともに黒腕が枝分かれし、無数の爪となって襲いかかる。〈翔子〉がとっさに横にとび攻撃をかわし、轟音とともに爪の大群が召喚フィールドに着弾し雲散霧消する。
源太「ちぃっ、分裂させるとちょっとした衝撃で消えちまうな…おっと!」
気取られないように上空に潜ませていた氷柱が〈源太〉に降り注ぐが、即座に産み出された黒腕に全て弾き飛ばされた。〈源太〉が返す刀で黒腕を無数の爪に変化させ強襲させる。しかし〈翔子〉も氷の礫を出現させて片っ端から打ち落とし、打ち漏らした残りの爪は村雨で両断した。
《英語》
『Aクラス 霧島翔子 246点
VS
Aクラス 五十嵐源太 387点』
源太(……このまま腕輪能力で応戦しても点数を消耗するだけだろうな。幸い俺様もアイツも接近戦にあまり向かない能力……ここは攻め時だ!)
意を決して絡ませない源太とはハルバードを構えて特攻する。その判断は概ね正しい。点数、操作技術ともに源太が上回っているため、腕輪能力が介入しにくい闘いでは有利に立ち回れることは間違いない。
しかし源太は村雨とハルバードが激突する前に、ある見落としに気がつく。
源太(……296点?俺様と霧島の腕輪能力の消費点数は確かどちらも50。俺はまだアイツに攻撃を当ててねぇし、さっきの攻防で使った回数はどちらも二回のはず……なんでアイツの点数は150も消費されて-)
翔子「……かかった!」
両者が激突する寸前の寸前に、〈翔子〉は紙一重で特攻をかわす。勢いを殺し切れずそのままさらに一歩前に踏み込んだ〈源太〉は、何故か滑って転倒してしまう。
源太(なに!?…しまった、そんな手が!?)
何事かと源太はフィールドを注視すると〈源太〉が転倒した場所、つまり先ほど〈翔子〉が立っていた場所より後ろの場所が薄い氷で覆われていた。
翔子「…隙あり!」
村雨を
源太(くっしまった!…だが操作の方はまだ未熟だな、追撃がワンテンポ遅いぜ!)
ガキィン!
〈源太〉は間一髪で体勢を立て直し、村雨をハルバードでどうにか受け止めた。
源太「惜しかったな。それじゃ反撃に-」
翔子「……ここで決める!アイスブロック・サムライソード!」
その掛け声とともに、〈翔子〉の
源太「二刀流だと!?やべ、一旦退いて-」
翔子「……逃がさない」
何とか間合いから離脱しようとするも氷で覆われたフィールドに足を取られ、その隙に〈源太〉は氷の刀に斬り裂かれた。
《英語》
『Aクラス 霧島翔子 196点
VS
Aクラス 五十嵐源太 101点』
致命傷には至らなかったものの、受けたダメージは決して小さくなかった。
翔子「……形勢逆転」
源太「やるじゃねーか……試験召喚システムの能力は使い方次第でいくらでも応用が効くが、まさかそんな手で来るとはな……だが俺様はまだ負けちゃいねぇ!こうなったら小細工は抜きだ!とっておきでカタをつけてやる!」
〈源太〉の右手からは巨大な腕が、左手からは無数の爪が出現し、それと同時に源太の点数が1点にまで減少する。
源太「こいつを耐えきることができればテメェの勝ち、できなければ俺様の勝ちだ!」
黒腕が〈翔子〉に襲いかかり、黒爪か逃げ場を潰すように左右から追撃する。
翔子「……私の答えはどちらもちがう。アイスブロック・ロングポール!」
激突寸前に〈翔子〉は真下に両手をかざし能力を発動させる。それぞれの手から長い氷柱が産み出され、反作用の法則に従って〈翔子〉は空中に投げ出された。
源太「んなっ!?…………ここまでか」
黒腕と黒爪は氷柱を容易く粉砕したものの標的には命中せず、支えを失った〈翔子〉は悠々と地面に着地し、反撃とばかりに〈源太〉に斬りかかる。全てのパワーを先ほどの攻撃につぎ込んだため余力など残されておらず、満身創痍の〈源太〉はそのまま無抵抗に斬り殺された。
《英語》
『Aクラス 霧島翔子 96点
VS
Aクラス 五十嵐源太 戦死』
源太「……俺様の負けだ。まさかここまで強くなってるとはな」
翔子「……まだ戦績は五分。それに少しでも気を抜けば私がやられていた」
源太「それでも勝ちは勝ちだろ?勝者はふんぞり返ってりゃ良いんだよ。だがな霧島、俺様もここで終わるつもりはさらさらねぇ!次闘うときは勝たせてもらうぜ!」
翔子「……勿論、次も負けるつもりは無い」
二人のライバル関係がさらにヒートアップする一方、和真がレーザーウイングで根本を瞬殺してBクラス戦は終了した。情緒も何もあったものでは無いが、ランクアップした者としていない者は同じ土俵にすら立てないのだ。
そして翌日の金曜日。Bクラス教室に代わったものの取り立ててクラスの日常に変化はなく(異端審問会云々は日常にカウントする)、さして何事も起こらずその日の授業は終了し放課後になり、和真は部活のある秀吉以外のいつものメンバー計6人を連れて職員室のフリースペースに来ていた(途中また明久と雄二が連行されかけたが、和真の仲介で何とか事なきを得た)。
明久「それで和真、ここで何をするの?ひたすら操作技術の向上?」
和真「それも悪かねぇが、より効率が良いのは実戦に慣れることだ」
雄二「じゃあ俺達同士で闘うのか?」
和真「違ぇよ、手の内バレバレの奴同士で闘ってもしょうがねぇだろ。それにお前らが俺と闘っても勝負にすらならねぇしな
雄二「ムカつくが言い返せねぇ……」
和真「そんなわけで、今回俺達の相手してくれんのは……」
和真がの台詞を遮るかのように職員室のドアが開き、ある七人の生徒が一直線にフリースペースフィールドに向かってきた。
「ったく、つくづく先輩遣いの荒い奴だぜ……」
「まあそういうなよ。溜まりたまった借りを生産するチャンスだ」
「ここらで先輩の凄さってやつを見せとくのも、悪かねーしな」
「ふふふ、お手柔らかにお願いしますね」
「私は私の最善を尽くすだけ……」
「先日の肝試しでは不覚を取りましたが、今回はそうはいきませんよ」
「ま、そゆことや和真。今回この模擬代表戦を引き受けたのは、そりゃ可愛い後輩達を助けたろと思ったのもあるけどやな……本命はうちらのリベンジマッチっちゅー話や♪」
やってきたのは常夏コンビ、金田一、小暮、宮阪、高城、そして梓……三年Aクラスの精鋭達であった。
蒼介「というわけで、今回の章のボス役は三年Aクラスの先輩方だ」
和真「正直またかよ……って感じだな」
蒼介「しかしだなカズマ、先日の野球大会は試召戦争として特殊過ぎるし、肝試しはあくまで三年対二年という闘いだった。今回のように3-A対2-Fというのは初めてじゃないか」
和真「だいぶ強引だな……まあ2-A以外に俺達と勝負になるのもうこの人達しかいないし、しょうがねぇか」