バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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水嶺流参の型・怒濤……荒れ狂う波のように連続で剣撃を放つ。力任せに振り回すような単純な技のではなく、それこそ無駄の無い波のように流れる動作を必要とする。水嶺流が殺人剣として全盛を極めた時代、数多の敵に囲まれたまさに絶対絶命という状況をこの技を駆使して切り抜けたという。



根本、怒りの撤退

Fクラスが(というより和真が)Cクラスに勝利した翌日の朝、BクラスではHR前だと言うのに代表である根本が教卓に立ち、その他の生徒は皆教卓についている。

 

根本「それじゃあHRが終わり次第すぐにでも宣戦布告しにいく。ところでお前ら、今さらこんなこと言うのもなんだけどよ……本当にこの方針に納得しているのか?後からゴチャゴチャ言ってきても聞く耳持たないからな」

源太「ホントに今更だな。もうアイツと交渉済ませてあるんだからどの道もう引き返せねぇよ」

岩下「それに、どう考えても勝てっこないって。根本君にしては珍しく良い案だと思うわ」

菊入「ええ。『卑怯、変態、 女装趣味の三拍子がそろった外道』がキャッチフレーズの根本君が考えたとは思えないほどの方法だよ」

根本「おいコラそこのクソアマ共。明らかに俺を馬鹿にしてんだろ何だその悪意に満ちたキャッチフレーズ」

菊入「だって……」

岩下「ねぇ……」

根本「意味あり気に目配せしてんじゃねぇ!」

源太「諦めろ根本。このクラスでのテメェの立ち位置はもういじられキャラで固定されちまってるんだからよ」

根本「納得いかねぇ……」

源太「あ、ちなみにそのキャッチフレーズの発案者は和真だ」

根本「また柊かよ!?人をおちょくらないと死ぬ病気にでもかかってんのかアイツはァァァ!」

 

教卓で発狂したように根本が憤慨し、教室中に生徒達の笑い声が響き渡る。この通りクラス代表としての威厳はこれっぽっちも残っていないものの、一時は村八分状態であったとは思えないほど根本はクラスメイト達に受け入れられているようだ。本人が代表としての発言権を取り戻そうと地道に努力したこともあるが、副官である源太によるサポートが最大の要因だろう。源太は強面の割に意外と面倒見が良く、根本がFクラスに敗北後戦犯扱いされても、覗き騒動の件でさらに立場が悪くなっても、自身の成績が根本を軽々と上回ってからも源太は根本を見限ることなく副官という立ち位置であり続けたのだ。今回根本が以前のように姑息な戦法を取るつもりがないのは、そういう手段を好まない源太の顔を立ててやるためだったりする。やれ卑怯だやれ小物だと周囲からの評価は散々な根本だったが、人として最低限の良識は残っていたらしい。

 

源太(まあそれはそれとして……せっかくだから霧島に喧嘩吹っ掛けてみっかな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鉄人「……以上でHRは終わりだ。せっかく設備も向上したんだ、今後は真面目に勉学に取り組むように」

 

Cクラス教室(現在はFクラスの教室)でHRを終えた鉄人が開けて教室から出て行くと同時に、明久と雄二が何人かの生徒に羽交い締めにされる。

 

須川「諸君、ここはどこだ?」

「「「最後の審判を下す法廷だ!」」」

須川「「異端者には?」

「「「死の鉄槌を!」」」

須川「男とは?」

「「「愛を捨て、哀に生きる者!」」」

須川「宜しい。これより……新教室第一回目異端審問会を始める!」

明久「やめて、僕は異端者なんかじゃないよ!?殺るなら雄二だけにしてよ!」

雄二「ブチ殺すぞ明久テメェ!つかお前ら、俺はこれから試召戦争の作戦決めとか忙しくてこんな茶番に付き合ってる暇なんざ無ぇんだよ!殺るなら明久だけにしろ!」

『試召戦争?もうそんなものはどうでもいい!』

『もう既に十分な設備だしな』

『そんなことよりもか弱い女性達を毒牙にかけるお前達異端者を始末することの方が重要だ』

明久・雄二「「ふざけんなぁぁあああ!?」」

 

二人の魂の叫びもどこ吹く風、FFF団のメンバーは皆試験召喚戦争へのモチベーションを完全に失っていた。一学期にDクラスやBクラスと設備を交換しなかった理由の一つがFクラスのモチベーションを維持することだったのだが、あのとき雄二が危惧した通りの展開になってしまったようだ。

そんな彼らの様子に思わず溜め息を吐く美波。

 

美波「ホント、一学期から全く成長しないわねアイツら……」

秀吉「しかし妙じゃの。何故和真には何もせんのじゃ?少し前まではしょっちゅう襲いかかっていたというのに」

和真「流石に懲りたんじゃねぇの?俺が優子と付き合ってから襲ってきた回数は軽く100を越えるけどよ、一回の例外も無くブチのめしてやったからな」

翔子「……50回を越えたあたりから全員の財布の中身を抜き取って、全額募金箱に投入するようになってた」

姫路「あの、柊君……流石にそれは……」

和真「嫌がらせと社会貢献が一度にできてスゴくお得だろ?」

美波「外道慈善者って表現がぴったりね……」

 

そんな感じでいつも通りばか騒ぎしていると突然教室のドアが開き、Bクラスの根本と源太が入ってきた。

 

源太「取り込み中のとこワリーけど、邪魔するぜ」

雄二「Bクラスが俺達に何のよう……って、聞くまでもないか」

根本「ご名答……俺達Bクラスはお前達Fクラスに試召戦争を申し込むぞ。今日の九時半からで構わないか?」

雄二「ああ、それで良いぜ。せっかく来たんだ、ついでにこの縄をほど-」

源太「じゃあ俺様達はこれで」

根本「首を洗って待っているんだな」

雄二「いやだから!縄ほどくの手伝えよ!おいコラ、そこの卑怯者とヤンキーかぶれ!無視すんなコラァァァ!」

 

そんな雄二の怒号も虚しく源太達はさっさと教室から出ていってしまった。その後、見かねた和真の手助けによってなんとか二人は事なきを得た。

 

雄二「さて、これからBクラス戦なわけだが……ぶっちゃけ昨日以上に緩い闘いになる」

明久「どういうことさ雄二?代表が根本君とはいえ、相手はAクラスに次ぐ上位クラスだよ?」

雄二「それでもランクアップした和真の相手としては力不足だ。……それ以前にもう密約は済ませてあるしな」

明久「へ?密約?」

雄二「俺についてくればわかる。……さて時間だ、いくぞ和真と翔子」

翔子「……わかった」

和真「あいよ」

明久「あ、ちょっと雄二!?」

 

昨日に輪をかけて適当に説明をした後、雄二は翔子と和真を連れて教室から出ていった。

流石に気になったクラスメイト達もそれに続くと、今までの試召戦争と比べて明らかに異質な光景が廊下に広がっていた。

 

明久「……ねぇ雄二、もう始まってるんだよね?」

雄二「ああ」

明久「だったらなんで廊下に誰もいないの?もしかして、Bクラス教室で待ち構える作戦じゃあ……」

雄二「お前にしちゃ中々の読みだが不正解だ。言ったろ?密約は済んでるって」

美波「だから何よ密約って?ちゃんとわかるように説明しなさいよ」

雄二「和真、任せた」

和真「あのな……まあいい。実を言うとだな、月曜日の放課後に源太とある取り引きをしてな」

秀吉「取り引きじゃと?」

和真「そ。Bクラスの前にCクラスを攻め落とす代わりに、BクラスはFクラスに無抵抗で負けるっつう内容のな」

「「「えぇっ!?」」」

 

事前に知らされていた雄二と翔子以外の全員が驚愕する。もしそれが本当なら、今回の試召戦争は完全に消化試合ということだ。

 

明久「な、なんでそんな取り引きを!?」

和真「源太には俺がランクアップしかけてるっつう情報を事前に流しておいた。蒼介という前例を知っている源太は俺達への勝ち目が無くなったと代表の根本に口添えをした結果、根本はBクラスにとって最善の手段を取ることにしたようだ」

美波「最善の手段?どういうことよ?」

和真「考えてもみろ、俺達が真っ先にBクラスを狙った場合とCクラスを倒した後に狙った場合……どちらがアイツらにとって都合が良い?」

ムッツリーニ「…………設備のことを考えると、明らかに後者」

 

そう。どちらも設備のランクダウンは免れないが、前者の場合がFクラス設備まで転落するのに対し、後者の場合はCクラス設備とたかだか1ランクダウンで済む。ダメージを最小限に抑えるためにはFクラスにCクラス設備を手に入れさせる必要があった。

 

和真「勿論俺達にもメリットはある。手早く試召戦争が終わるんなら、一学期みたいに長期休暇を補習授業に当てられる事態を避けられるからな」

秀吉「なるほどのぅ……しかし、根本にしては随分とクリーンな作戦じゃな」

明久「言われてみればそうだね……もしかして、それらは全部嘘で教室に入った途端奇襲してきたり」

和真「そんときゃ……俺がまとめて補習室にブチ込んでやるから安心しろ」

(((非常に頼もしい!頼もしいけどよ……頼もし過ぎて俺達の存在意義が……)))

 

完全に和真におんぶにだっこの現状に流石に大多数の生徒が肩身が狭く感じるも、和真はお構いなしにBクラス教室のドアを無造作に開けて何の躊躇いなく中に入っていき、他のメンバーもそれに続く。明久の危惧したような奇襲とかはなく、Bクラスの生徒達は皆机に座って静かに自習をしていた。

 

根本「来たな。じゃあさっさと終わらせるか」

 

同じく自習に勤しんでいたであろう根本がペンを置いて気だるげに立ち上がり手早く終わらせようとするが、おもむろに立ち上がった源太がそれを手で制する。

 

源太「まてよ代表。せっかくの試召戦争だ、ちょっとくらい余興があっても良いだろ……なあ霧島?」

 

そう言って源太は雄二の隣に並んで立っている翔子を挑発するように見据える。それを受けた翔子も、いつも通り無表情ながらも雪辱戦に闘志を燃やす。

 

翔子「……雄二、良い?」

雄二「別に構わんぞ、心置きなくリベンジしてこい。別に良いよな根本?」

根本「ちっ、さっさと終わらせろよ?」

 

両代表が許可しその他のメンバーも特に異議が無かったため、Bクラス教室で源太と翔子が向かい合う。立会人は勿論英語教師の遠藤先生。これまで翔子と源太は英語科目で二度

刃を交えているが、戦績は0勝1敗1分けと翔子が負け越している。

 

源太「意気込み十分なとこワリーけどよ、今回も俺様が勝たしてもらうぜ」

翔子「……負けない」

 

「「試獣召喚(サモン)!」」

 

 




流石に消化試合過ぎたんで、急遽翔子さんのリターンマッチ戦をねじ込みました。相変わらず行き当たりばったりのシナリオで申し訳ない……。

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