バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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【バカテスト・現代文】

次の文章を読み、問いに答えなさい。

生真面目な性格をしている彼のことだから思い悩んでいるに違いない。
幸子はそう考えるといてもたってもいられず、彼の部屋の扉を叩いていた。
「平助さん、入りますよ」
返事も待たずに中に入る。すると、部屋の中では赤身(せきしん)で思い悩む平助の姿があった。
「なんという格好をしているのですか」
幸子の存在に気が付くことはなく、平助は考え事をしていた。

「何と言う格好をしているのですか」と言った時の幸子の様子を答えなさい。


姫路の答え
『平助が服も着ないで考え事に没頭している姿を見て驚いている。』

蒼介「正解だ。赤身とかくと"あかみ"と読むことが多いが、"せきしん"と読む場合の意味は衣服をつけていないさま、つまり裸というものになる。よって幸子は『平助の服を着ていない姿』に驚いたということだ」


玉野の答え
『折角スカートを穿いているのにフリルが少ないことに憤っている。』

蒼介「何をどうしたらその回答に行き着くんだ……?」


吉井明久の答え
『ネクタイが曲がっていたので呆れている』

蒼介「吉井、裸にネクタイという珍妙な姿を見て気にするのはそこなのか?」




laser wing

和真がCクラスに宣戦布告し、鉄人が空気を読んでHRを手短に終えたFクラス一同は、教卓に立つ雄二からの指示に耳を傾けていた。

 

雄二「さて、これからCクラスとの試験召喚戦争な訳だが……和真以外は適当に教室で寛いでくれてていい」

『え?』

『どういうことだ?』

 

いつもならそれぞれに点数を聞き出して部隊編成をしたり、お得意の奇策の下準備を指示したりするのだが、雄二の出した指示はこれから戦争が始まるとは思えないほど呑気な内容であった。

 

明久「雄二、どういうこと?」

雄二「そのままの意味だ。今回の戦いは和真が単独で片をつけるから、残りの48人は全力で俺を守れ」 

「「「…………」」」

 

どうかしているとしか思えない作戦内容に、クラスのほとんどのメンバーが思わずフリーズする。

 

雄二「……ん?どうしたお前ら?」

美波「あのねぇ坂本……確かに柊は強いけど、限度ってものがあるでしょうが。……柊もそう思うでしょ?」

和真「いや、今回のプランは俺が提案した」

「「「えぇえぇぇえええ!?」」」

 

衝撃のカミングアウトに先程のメンバーが大いにざわつくものの、和真はいつもの不敵な笑みを浮かべながら説明に入る。

 

和真「考えてもみろよ、ソウスケは一学期時点で今回戦うCクラスを単独で制圧したんだぜ?逆に言えば、それぐらいできなきゃAクラス打倒なんざ夢のまた夢だってことだ」

明久「いや理屈はそうなんだけどさ、鳳君が一人で制圧できたのは腕輪が……っ!……和真、もしかして……」 

和真「ま、そゆことだ♪」

 

珍しく察しの良い明久に一際良い笑顔を向けてから和真は話を続ける。他の生徒達も和真が何を成し遂げたのか理解したのか、やや驚愕した表情で静かに二の句を待つ。

 

和真「そして俺一人で闘う理由は他にも二つある。……明久、原子爆弾が日本に投下された理由は太平洋戦争の早期終結以外にも理由があったとされている。それは何だ?」

明久「え?…えっと……ソ連への牽制、だっけ?」

和真「正解。日本史はもう問題無さそうだな」

 

当時の情勢から考えると戦争終結後にソ連と対立することは確実であった。そこでアメリカは原爆の威力を見せつけてソ連を牽制し、有利な立場に立ちたいという思惑があり、原爆投下による「実験」が適切に行うことができる場所として白羽の矢が立ったのが日本の広島と長崎である……という説だ。

 

和真「つまりそれと同じようにこのCクラス戦を俺一人で蹂躙することで、AクラスやBクラスを牽制することが目的だ」

明久「でもさ和真、僕達以外にはまだそのことを知られてないんだからAクラス戦まで隠してたほうが良いんじゃない?」

和真「前にも言っただろ明久……()()はAクラスに挑むのに必要な最低限の条件だってよ。それはつまり、Aクラスに宣戦布告した瞬間に向こうに感づかれるっつうことだ。だったらいっそのこと強力な切り札として見せつけた方が良い」

雄二「そういうことだ。敵にできるだけ情報を隠すのは確かにセオリーだが、強力な武器は見せつければ抑止力になり嫌でもそこに注意を割かなければならなくなる」

秀吉「なるほどのう。……それで、二つ目の理由はなんなのじゃ?」

和真「二つ目は戦術とは無関係なんだがな……なあ明久、ドラクエで強い攻撃呪文を覚えたプレイヤーがすることはなんだ?」

明久「え?和真ドラクエやったことあるの?」

和真「ねぇよ。例えだ例え」

明久「うーん……僕ならその辺にいる雑魚敵で威力を確かめるかな?」

和真「大正解だ。 

そう、これから行われる試召戦争は闘いなんかじゃ断じてねぇ。そうだな……

 

単なる試し斬りだ」  

 

そう言って和真はFクラス教室から出ていった。

残されたメンバーは当たり前のようにスライム扱いされているCクラスに僅かばかりの同情を覚えたそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『い…いたぞ!柊だ!』

『ひぃっ!?鬼の補習は嫌だぁぁあああ!』

『ば、バカ!闘う前から弱気になってんじゃねぇ!この人数で一斉にかかればなんとかなるはずだ!……多分』

『多分じゃ嫌だぁぁぁあああああ!!!』

黒崎「……よし!ここは任せろ!」

『トオル、何か策があるのか!?』

『流石副官、頼もしいぜ!』

黒崎「………………運に」

『『『運任せかよ!?』』』

和真(どいつもこいつも人を大魔王みてぇによ……カラミティエンドすんぞコラ)

 

特にこれといった工夫もなくCクラスに向かって悠然と歩いていた和真を、CクラスNo.2の黒崎トオル率いる迎撃部隊が取り囲んだ……のだが、既に敗色濃厚な雰囲気がその場に蔓延していた。和真はまるで魔王と対峙するかのような黒崎達の態度に心外だと言わんばかりの不満そうな表情をしているが、全滅する可能性が極めて高くよしんば勝利できたとしても確実に九割以上は道連れにされるであろう和真は、黒崎達からすれば正しく大魔王のそれであった。

 

和真(長谷川先生を連れてるってことは数学か。小山の奴、情報が古いにもほどがあるぜ)

 

小山はFクラスに宣戦布告つもりであったため当然情報収集は行ったようだが、おそらくは四月のAクラス戦で大門に敗北したことを知り、浅はかにも数学で迎撃するよう黒崎に指示したのであろう。

 

和真「それじゃあ始めるとするか。長谷川センセ、召喚許可を」

長谷川「承認します」

「「「試獣召喚(サモン)!」」」

 

それぞれの足下にお馴染みの幾何学模様が出現し、その中心から召喚獣が飛び出す。Cクラスの生徒達もそれぞれ装備が強化されているようだが、和真の黄金に輝く聖槍と比べるとどうしても見劣りしてしまう。

 

《数学》

『Fクラス 柊和真   509点

VS 

 Cクラス 黒崎トオル 189点

 Cクラス 遠山平太  176点

 Cクラス 榎田克彦  173点

 Cクラス 新沼京子  178点

 Cクラス 大野透   169点

 Cクラス 泉小太郎  180点

 Cクラス 横尾知恵  183点

 Cクラス 野々村充  178点』

 

 

『もうだめだぁ……おしまいだぁ』

『こんなのどうやって闘えって言うのよ……』

黒崎「やっぱりガセ情報掴ませれたんだなあのポンコツ代表め……」

 

今の黒崎の発言と全員がBクラス並の点数であることから、やはり小山は数学が得意な生徒を固めて和真を討ち取るつもりだったのだろう。しかし結果は御覧の有り様……和真討伐部隊の戦意は早くも喪失しかけていた。

 

黒崎「くそっ!こうなったら少しでも柊の点数を削るぞ!できるだけアイツに腕輪能力を使わせるんだ!」

『黒崎……そうだな!ここは覚悟を決めるときだ!』

『もうヤケクソよ!盛大に手こずらせてやるわ!』

 

指揮官の鶴の一声で、生徒達は神風特効的な意味合いとはいえ一応戦意を取り戻した。これはクラス間での戦争、犬死にと相手を消耗させての戦死では自クラスの勝率が天と地ほど違うであろう。

 

和真「ほー…黒崎よぉ、小山なんぞよりよっぽどリーダーに向いてるじゃねぇか。……いいぜ、お望み通り使ってやるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小山(見てなさいよ柊和真!ギッタギタにして泣きべそかかせてやるんだから!)

 

Cクラス代表の小山優香はやはり怒りに燃えていた。

そんな中、教室前で待機させていたはずの生徒が教室に駆け込んできた。

 

『だ、代表!』

小山「なによ!?持ち場を離れるんじゃないわよ!」

『それどころじゃないんです!』

小山「は?いったいどういう…って、こんな展開前にもあったような……」

 

既知感を感じた小山はその原因が何だったのか考えを巡らせ、四月に起きた屈辱的な戦いを思い出すと同時にCクラスのドアが勢いよく開かれ、悠然と和真が入ってきた。

 

和真「よ、約束通り遊びに来てやったぜ」

小山(た、単独でこの教室まで……まさか……いや、そんなわけない!百歩譲って鳳なら納得できるけど、Fクラスのバカが……きっと腕輪能力にものを言わせて強引に突破してきたに決まってる!ならコイツは大幅に消耗しているはず……)

 

四月にAクラスに宣戦布告し、ものの数分で蒼介に討ち取られたトラウマがフラッシュバックしそうになるものの、何とかそれを頭から振り払いつつ和真を目で殺さんばかりの形相で睨みつける。

 

小山「強がっても無駄よ!数学の点数があまり残ってないことぐらいお見通しなんだから!あんた達、こいつを仕留めるわよ!木内先生、召喚許可を!」

木内「承認します」

「「「召獣召喚(サモン)!」」」

 

和真が腕輪能力を乱発して強引に突破してきた場合に備えて、数学担当の木内先生は教室で待機してもらっていたらしい。どうも小山は個人的な感情を優先してCクラスの勝利よりも和真を倒すことに比重を置いているようだ。その時点でリーダーとして三流なのだが、そうまでした立てた作戦も全くの検討違いなのだから実に憐れである。

 

 

《数学》

『Fクラス 柊和真   509点

VS 

 Cクラス 小山優香  186点

 Cクラス 寺崎孝   167点

 Cクラス 河瀬雅人  166点

 Cクラス 野口一心  168点

 Cクラス 新野すみれ 172点

 Cクラス 神戸慎   160点

 Cクラス 村田奈々  159点

 Cクラス 岡島久美  163点』

 

 

御覧の通り、和真はここまでの闘いで一点たりとも消耗などしていなかった。

 

小山「そんな……どうして……どうしてよ!?」

和真「小山よぉ、もうわかってるんだろ?この力の暴力的なまでの強さはお前が一番よく知っているハズだ……ランクアップした腕輪能力の強さは」

小山「嘘よ……Fクラスのアンタなんかが……」

和真「一つアドバイスしてやるから後学のため覚えとけ。プライドが高いのは結構だがよ、それに固執し過ぎると寿命を縮めるぜ。

……レーザー・ウイング」

 

和真がキーワードを呟くと同時に、〈和真〉の背中から強い光を帯びたプラズマ状の翼が三対噴出した。あまりに非現実的な光景にCクラスの生徒達が思わず狼狽えるが、そんなことは構い無しに翼の光はどんどん強くなる。

 

和真「……掃射ァッ!」

 

ズドドドドド

 

『『『ぎゃあぁぁああぁあっ!?』』』

 

和真の掛け声と共にそれぞれの翼が光線を放ち、Cクラス生徒達の召喚獣は成す術もなく蹂躙された。

 

 

《数学》

『Fクラス 柊和真   518点

VS 

 Cクラス 小山優香  186点

 Cクラス 寺崎孝   戦死

 Cクラス 河瀬雅人  戦死

 Cクラス 野口一心  168点

 Cクラス 新野すみれ 戦死

 Cクラス 神戸慎   戦死

 Cクラス 村田奈々  戦死

 Cクラス 岡島久美  戦死』

 

 

和真「あっ二人仕留め損ねた。こりゃあまずいな~、撃った後エネルギーが貯まるまでちょっと時間がかかるんだよな~」

小山「っ!今がチャンスよ野口!」

野口(いや、明らかに誘ってるだろアレ……)

 

好機を逃すまいと小山は〈和真〉を仕留めにかかる。誰ざどう見ても罠だとわかりそうなのだが、この頭に血が上りやすい代表が自分の意見を聞き入れるとはとても思えず、また既に結果が見えてしまっているため野口も諦めて小山に続く。

 

和真「……なぁんてな♪」

 

 

ズバァァァンッ!

 

 

小山「そ…そんな……!?」

野口(ハイハイ予想通り。

はぁ…明日からFクラス教室かぁ……)

 

不用心に近づいてきた二体の召喚獣を、六枚の翼のうち二枚を刃状に変化させて容赦なく切り裂いた。その直後、その二枚の翼は跡形もなく消滅してしまう。和真は確認のため召喚フィールドに残りの翼を軽くぶつけてみると、翼は一つ残らず全て砕け散った。

 

和真(なるほど、翼の耐久力は無いに等しいのか……ランクアップしても攻撃に特化した性能ってわけだな)

 

呆然として膝から崩れ落ちる小山や、明日からの学校生活を想像して憂鬱になる野口の傍らで、和真はそんな感想を抱いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




水嶺流弐の型・車軸……雨粒を正確に射抜くように、相手の急をピンポイントで貫く高速の刺突技。水嶺流が殺人剣として全盛を極めた時代には、この技で数多の戦士の眼球や首や心臓を抉ったとされている。


レーザー・ウイング……和真のランクアップ腕輪能力。三対の翼から破壊力抜群のレーザーを放つ。一度撃った後ある程度インターバルが必要なのは事実であるが、不用意に近づく敵は翼を刃状に形状変化させて切り裂く。反面耐久力は紙レベルであり、ちょっと触れただけで空中分解してしまうほど脆い。また、召喚獣本体がダメージを受けると全ての翼が消滅してしまうといった弱点が存在する(召喚し直せば復活する)など、相変わらず攻撃に特化した性能である。






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