バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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【バカテスト・世界史】

問 四大悲劇と呼ばれるシェイクスピアの戯曲を全て挙げなさい。

姫路の答え
『①ハムレット②リア王③オセロ④マクベス』

蒼介「正解だ。シェイクスピアの有名な作品には他にも『ロミオとジュリエット』や『ヴェニスの商人』などがあるが、四大悲劇と呼ばれるものはこの四つになる。知名度で『ロミオとジュリエット』を加えてしまいがちだが、間違えないで覚えておくように」


明久の答え
『①ハムレット②リア王③ロミオとジュリエット④父の結婚生活』

蒼介「お前の父親は家庭でどんな扱いを受けているんだ……?」


雄二の答え
『①秘蔵本燃やされる②鎖に繋がれる③スタンガンで昏倒④そんな扱いを受けているのに異端審問会にかけられる』

蒼介「改めて列挙すると、お前の普段扱いは本当に酷いな……」






小山との取引

和真(そういやいたな、こんな奴)

雄二「これはまた随分と珍しい客が来たもんだな」

明久「じゃあ、ムッツリーニが相談を受けていた相手って……」

小山「ええ、私よ。相談って言うよりは購買で丁度見かけたから質問させてもらっていただけなんだけどね」

ムッツリーニ「………Fクラスの試召戦争の予定を聞きたいらしい」

明久「僕らのクラスの予定?」

小山「メンテナンスも終わったみたいだし、明後日の朝にはついに試召戦争が解禁されるでしょう?その時にFクラスはどう動くのかを教えてもらいたいのよ」

 

試験召喚戦争は本来なら二学期開始と同時の予定だったのだが、不具合のメンテナンス(学園長はあくまでもこれを否定しているが)や装備の変更、野球仕様へのバージョンチェンジなどで延期に延期を重ね、明後日ようやく解禁されるのだ。

 

雄二「最下層クラスである俺らの動きを調べに来るなんて、随分と慎重なもんだな」  

 

からかうように雄二が言うが、ヒステリックさに定評のある小山にしては珍しく雄二の挑発混じりの台詞に乗せられることもなく、余裕たっぷりに小さく笑みを浮かび返した。そのあまりにも不自然な様子を目の当たりにした雄二と和真は内心でひっそりと警戒体勢に入る。

 

小山「それはそうでしょう?だって、Fクラスは一学期にあそこまで学年全体を引っかき回した、言わば台風の目なんだもの。警戒して然るべきだと思わない?」

和真「一方それに対してお前らCクラスはものの数分でフェードアウトしたもんな、警戒する価値まるで無し♪」

 

 

ピキィッ…!

 

 

気のせいだろうか、和真の悪意に満ちた揺さぶりを受けた小山のこめかみ辺りから軋むような嫌な音が聴こえたFクラス一同。

 

雄二「………………。それはまた光栄な評価だが……いいのか?折角二学期になって元のCクラスの設備にリセットされたっていうのに、いきなり試召戦争なんか考えて」

 

少しだけいたたまれなくなった雄二が即座に話を元に戻しつつ、値踏みするように問いかける。

試召戦争のルールの一つに、“戦争に負けてランクを落とされた設備は学期が変わるごとにリセットされる”というものがある。上位クラスが下位クラスに負けて設備を落とされた場合はそのままだが、下位クラスが負けて設備のランクが落とされた場合は学期が代わると元に戻されるのだ。

 

秀吉「そう言えばCクラスは以前の試召戦争でAクラスに負けてDクラス程度の設備に落とされておったの」

姫路「それが二学期になって元のCクラスに戻っているってことですよね」

翔子「……このルールは要するに、試召戦争を積極的にやらせようという意図。学期末に試召戦争をやれば下位クラスは殆どノーリスクで上位クラスに挑戦が出来る」

 

そもそも振り分け試験直後に試召戦争をやったところで、点数の差はほとんど変動していないので普通ならまるで勝負にならない。一学期の間に必死に勉強して、その学習の成果を学期末に試すというのが学園側の意図したコンセプトなのだろう。ところが今年はFクラスが新学期早々から試召戦争を起こしたり、システムのメンテナンスやら他のイベントやらが重なったおかげで一学期末はびっくりするほど静かであった。

 

小山「試召戦争を考えても何も、別に私は自分たちから戦争を始める、とは言ってないわよ?ただ、また中心になるであろうFクラスの動きが知りたいってだけで」

雄二「回りくどい言い方だな。要するにこっちが情報を提供しないならそっちも何も教えるつもりはないってことだろ?」

小山「まぁ、そういう言い方もできるかもね」

 

不敵な表情で小山は言う。彼女の目的は同盟の申込みというわけではなく、どちらかと言えば取引に近い。Cクラスの情報を教えてもらう代わりにFクラスの情報を教える。それでお互いが邪魔になれば対策を立て合い、そうでなければそれば無駄な潰し合いは回避できるというわけだ。

 

明久「そういうことなら、最初から雄二のところに聞きに来たらいいのに」 

小山「あら。だって坂本君が相手だと、こうやって取引になっちゃうでしょう?こっちが情報を提供しないで済むなら、それに越したことはないじゃない」

和真「うわっ、発想からしてケチくせぇな。お前が小物たる所以はそういう所だよこのド三流が」

 

 

ビキビキッ……!!

 

 

表面上は余裕の笑みを浮かべてはいるものの、心なしか小山の顔全体に怒りマークが浮かび上がる。

やはりその空気に耐えられなくなり、今度は明久が軌道修正する。

 

明久「そ…それで、どうするの雄二?」

雄二「……いいだろう。その取引、乗ってやる」

小山「……そう。それは助かるわ」

雄二「言うのは俺達が目標としているクラスだけでいいのか?」

小山「それだけじゃダメ。攻め込む時間も教えてもらわないとね。というか、目標のクラスだけならわざわざ聞く必要も無いし」

 

確かに小山の言う通り、Fクラスが打倒Aクラスを最終目標としていることなど既に周知の事実だ。それではとても取引にはならない。雄二は攻め込む時間もと言われて一瞬迷ったような顔をした。勝ち筋が見えたのはほんのついさっきのため、いかに神童と謳われた雄二でもさすがに大まかなプランはまだできていない。

 

雄二「Aクラスには、すぐには無理だがそうだな……試召戦争解禁から遅くとも一ヶ月以内には攻め込む予定だ」

小山「……ふぅん……?なるほどね……」

雄二「そっちはどうなんだ。Aクラスを目指すというなら、俺達との戦いになるが」

小山「私たちはそこまで高望みはしてないわ。ただ、Bクラスには挑んでみたいけど。そうね……解禁から一、二週間くらいで」

和真(……ククッ、なるほどなるほど)

 

小山の開示した目標は何の意外性もない順当なものであったのだが、何故か不敵な笑みを浮かべる和真。

 

明久「でも、いいの小山さん?Bクラス代表の根本君って、確か小山さんの彼氏だったと-」

小山「それ以上言ったら殺すわよ」

 

和真の相手の神経を逆撫でするエグい挑発はどうにか我慢していた小山だが、根本については完全に忘れたい過去のようだ。

 

小山「私はね、頭の良い男が好きなの。お勉強が出来る人って意味じゃなくて」

雄二「ケッ、よく言うぜ。根本なんか卑怯なだけの小物だったろうが」

小山「卑怯な手段って勝つ為には合理的で有効だと思わない?私はそういうの結構好きなんだけど。……あの男は、もう御免だけどね」

和真(そんなチンケな手段が通用するのは有象無象に対してだけだっつの。真の強者にはそんなもん容易く捩じ伏せられて終わるんだよ)

 

小山の言い分を「聞く価値無し」と内心で一蹴する和真。守那、鉄人、鳳親子……彼らは卑怯な手段などまるで歯牙にもかけないだろうから。

 

 

『俺ってさ、じゃんけんは後だし以外したことないんだぜ』

『何を言ってるんだ、それでいつも負けていただろ?お前は卑怯者なんかじゃないさ。それに引き替え俺なんて、掃除当番はいつも腹痛のフリをしていたんだぜ?』

『いやいや。俺の方が卑怯者さ』

『そんなことはない。俺の方が卑怯者さ』

『…………実は俺、同い年の従兄弟がいてさ。彼女が欲しいってそいつに相談したら、この前クラスメイトを紹介してくれたんだ』

『『この卑怯者っ!殺してやる!』』

『…………そいつ、男子校に通っているはずなのにな…………』

『…………俺のジュース、やるよ』

『…………今日の帰り、たこやき奢ってやるよ』

『……ありがとう……』

 

 

そんな和真とは対照的に、近くの席で始まる卑怯アピール。なんというか、いつものFクラスだ。

 

姫路「そうなんですか。小山さんって、頭の良い人が好きだったんですね」

小山「ええ、そうよ姫路さん」

和真「お前は頭悪いのにな」

 

 

ビキビキビキィッ……!!!

 

 

表情は既に取り繕えなくなっており、小山は全身に怒りのオーラを纏い始めた。爆発するか……!?と、和真を除くFクラス一同が顔を強張らせるが、すんでの所で小山はどうにか踏みとどまったようだ。

 

小山「………………教えてくれてどうもありがとう。それじゃ、お互い目標の相手も違うみたいだし、うまくやりましょ」

 

最後にそう結んで小山は腕を組んだまま教室から出て行った。……やけに早足かつ、肩を怒らせながら。

 

雄二「和真、ナイス挑発」

和真「それほどでも」

明久「全然ナイスじゃないよ!?なんであんなことしたのさ!?」

姫路「うぅ、とても怖かったです……」

美波「小山さん、本気で怒ってたわね……」

秀吉「うむ…いつ爆発してもおかしくなかったぞい」

和真「何言ってんだお前ら?相手を挑発して冷静さを失わせるなんざ、交渉の常套手段だろうがよ」

「「「…………はぁ……」」」

 

まったく悪びれずに言う和真に思わず溜め息をつく一同(雄二、翔子除く)。しかし和真の挑発は決して無駄ではなく、このおかげで雄二はあることを確信できた。

 

和真「ところで話は変わるけどよ、俺らの召喚獣の装備はもう変更されたのか?」

雄二「装備の変更か……。試召戦争を控えているとなると、確認しておく必要があるな」

ムッツリーニ「………システムのメンテナンスは終わったらしい」

明久「ってことは、もう召喚できるんだよね」

雄二「そうだな、ちょっと試してみるか。誰か教師は……」

 

召喚の立ち会いをしてもらうための教師を探すと、タイミングが良いのか悪いのか担任の鉄人が廊下を歩いているのが見えた。

 

明久「もっと頼みやすい先生が良かったけど、まぁ仕方がないかな……」

雄二「だな。そろそろ昼休みも終わっちまうし」

明久「じゃあ、西村先生ー」

鉄人「ん?……吉井に坂本か。何か用か?」

 

明久が声をかけると鉄人は教室に入ってきて、明久と雄二の顔を見て露骨に嫌そうに眉を顰めた。その対応は教師としてどこか間違っている気もするが、基本的に明久と雄二が二人そろって鉄人に関わるときは大概が厄介事の前触れなのでその反応も仕方ないだろう。

 

明久「えっと、すいませんが召喚許可を「ダメだ」お願いできま「不許可だ」せんか?「却下だ」試召戦争も「断る」解禁されるし、「諦めろ」新しい召喚獣を「無理を言うな」って断り過ぎじゃないですか!?一つのお願いを言い切る前に六回もダメだしされたのは初めてですよ畜生ッ!」

鉄人「貴様がこちらの話を聞かないからだろうが」

和真(アンタも大概だけどな……)

鉄人「前から言っているだろう。お前の召喚獣は簡単に召喚してはいけないものだと」

明久「それは、まぁ……」

 

召喚獣は人間よりはるかに力がある。具体的にはFクラス標準レベルの点数でも和真と互角に渡り合えるくらいには。そのうえ観察処分者の明久の召喚獣は物に触れることもできるのだから、鉄人がそうやって心配するのは無理もないことだ。

 

明久「大丈夫ですよ先生。今まで僕らが問題を起こしたことがありますか?」

鉄人「一学期の間にお前と坂本が書いた反省文は百枚を超えていたと記憶している」

秀吉「一日一枚ペースじゃな」

翔子「……おそらくギネス級」

姫路「文集を作れるくらいの枚数ですね……」

美波「アンタら、本当に学校でなにやってんのよ……」

 

ちなみに和真は学力教科合宿のときに書いた奴のみである。明久達と和真では危機察知能力や要領の良さ、世渡りの上手さが天と地ほど離れている。

 

鉄人「だいたいお前たちが俺を先生付で呼ぶと大抵ロクなことがない。また何か妙なことを企んでいるんじゃないか?」

明久「なんだ、そんなことですか。それなら……宜しく宗くん(パキュッ)」

雄二「頼むぜ宗一(ペキュッ)」

鉄人「教師をファーストネームで呼ぶな」

「「手の骨がぁああーーッ!」」

和真「アホだろお前ら……」

 

やけに気安い物言いとともに差し出した明久と雄二の右手が即座に握りつぶされた。右手を押さえてのたうち回るバカコンビを尻目に、翔子・姫路・美波の三人が鉄人の前に立つ。

 

美波「西村先生。ダメですか?ウチらは別に悪いことに使おうと思ってるわけじゃなくて、装備を確認したいだけなんです」

姫路「美波ちゃんの言うとおりです。悪戯なんてしませんから」

翔子「……私からもお願いします」

鉄人「いや、しかしだな」

「「「よろしくお願いします、西村先生」」」

鉄人「……まぁ……、装備を確認したいという気持ちも、わからんでもないが……」

 

Fクラスにあるまじき模範生徒(表面上は)三人を前に態度が軟化する鉄人。

 

雄二「頼むぜてっつん☆(パキュッ)」

明久「宜しくてっちゃん♪(ペキュッ)」

和真「コントか」

 

再び調子に乗ったバカ二人だが、今度は左手が握りつぶされていた。

 

鉄人「まったく、お前らは……。ほら、さっさとしろ」

明久「え?何がですか?」

鉄人「俺も忙しいのだから、早く召喚しろと言ってるんだ」

 

やれやれと、溜息をつきながらも鉄人は結局許可をくれた。

 

鉄人「どうせお前たちはいくら却下したところで坂本の腕輪で召喚をしてしまうからな。それなら目の届く範囲で行動させた方がマシだ」

明久「そう思うのなら、すぐに許可してくれたらいいのに」

雄二「まったくだ。骨折り損じゃねぇか」

鉄人「そう簡単に許可を出していたらお前たちはすぐに調子に乗るだろうが」 

和真「甘いな西村センセ、簡単に許可出さなかろうがオートで調子に乗るのがこいつらだぜ」

明久・雄二「「キサマどっちの味方だ!?」」

秀吉「まあよいではないか。召喚許可は貰えたのじゃし、結果オーライじゃ」

ムッツリーニ「……(コクコク)」

姫路「ちょっと楽しみですね。どんな風に変わっているんでしょうか」

翔子「……私もちょっとドキドキ」

美波「ウチは前みたいにぬりかべなんかが出てこないことを祈るわ……」

和真「いらんフラグ建てんでも良いだろうに……。んじゃ喚んでみっか。せーの…」

 

「「「試獣召喚(サモン)!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

?「…という段取りだ、頼んだぞ」

?「了解了解、それじゃあ、そうだな……放課後にでも交渉してくる」

?「いいか、絶対にしくじるなよ?クラスの命運がかかってるんだからな」

?「わかったわかった。ま、任せとけって」

 

 

 

 

 

 




でた!和真さんの挑発コンボだ!



Q.どうして和真君は心なしか小山さんに当たりがキツいんですか?まさか過去に何か因縁が……?

A.和真「え?短気な奴の神経を逆撫ですると愉快だろ?」←何当たり前なこといってるんだ?的な表情で首をかしげる

飛鳥「ホント、たまにド外道ね貴方……」

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