バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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【選手データ(パワプロ風)⑤】

工藤愛子
ポジション:ファースト
右投げ左打ち

弾道②
ミート……55(D)
パワ……40(E)
走力……50(D)
肩力……40(E)
守備……55(D)
捕球……60(C)

特殊能力……バント○、気分屋、ムード○、調子極端、チームプレイ○、人気者

運動神経は悪くないが戦力的には中の下。正規ではないとはいえ『アクティブ』のメンバーにもかかわらず勝利への執念が希薄なこともマイナスポイント。捕球はそれなりのレベルなので致命的なミスは少ない。


島田美波
右投げ右打ち

弾道②
ミート……60(C)
パワー……50(D)
走力……55(D)
肩力……45(E)
守備……50(D)
捕球……55(D)

特殊能力……リベンジ、競争心、逆境○、意外性、上り調子、積極打法、積極守備、人気者

筋は悪くないが野球経験に乏しく高度な技術は備わっていない。しかし持ち前の男勝りな性格から来る負けん気の強さは時として大きな武器になるかもしれない。


霧島翔子
右投げ左打ち

弾道②
ミート……65(C)
パワー……50(D)
走力……50(D)
肩力……40(E)
守備……60(C)
捕球……55(D)

特殊能力……アイコンタクト、バント○、ゲッツー崩し、盗塁アシスト、競争心、リベンジ、ささやき破り、送球○、調子安定、人気者

ルール覚えたてにもかかわらず中々の巧者。流石は原作で学年首席の座についているだけのことはある。生半可な揺さぶりは通用しない強靭な精神を持ち、また意外と負けず嫌いらしい。


沢渡晴香
右投げ右打ち

弾道②
ミート……70(B)
パワー……40(E)
走力……65(C)
肩力……50(D)
守備……70(B)
捕球……65(C)

特殊能力……バント◎、走塁○、流し打ち、ローボールヒッター、気分屋、上り調子、高速チャージ、送球○、調子安定、選球眼、ムード○、チームプレイ○、人気者


ラクロス部のエースだけあって野球経験の少なさに反してかなりの守備力とミートセンスを誇る。反面フィジカルは女子の域を出ないのでパワープレーは不得手。


姫路瑞希
右投げ右打ち

弾道①
ミート……10(G)
パワー……10(G)
走力……20(F)
肩力……5(G)
守備……5(G)
捕球……5(G)

特殊能力……精神的支柱、扇風機、チャンス×、対左打者×、走塁×、盗塁×、送球×、併殺、エラー、ケガしにくさ△、人気者


………………………………本人の名誉のためにも、あえて何も言うまい。




野球大会決勝⑧『サイドワインダー』

バシィッ!

 

御門「ストライクバッターアウト、チェンジ」

翔子「……っ!」

 

迎えた6回表。蒼介は秀吉、明久、翔子の三人をクロスファイヤーとスローカーブの緩急で翻弄し、Fクラスの攻撃はまたもや三者凡退に終わった。この回蒼介は切り札である“サイドワインダー”を一球たりとも投げなかったが、最終回に備えて温存しているというのが雄二の推測である。

 

 

 

 

 

ガキィン!

 

明久「(パシィッ!)…霧島さんっ!」

翔子「(パシッ)……ナイス送球」

御門「アウト、チェンジ」

時任「くそぉっ……!」

 

折り返しの6回裏。和真は二宮、飛鳥、時任の三人を三種のムービングファストを駆使して打ち取った。雄二の策をあらかじめ予見していた蒼介はまず間違いなく和真がマウンドに上がると確信していたため、この一週間メンバーに速球打ちの練習をさせていたのだが、流石に付け焼き刃の練習では限界があったようだ。三人の内二宮だけは他二人と違って本来ならヒット確実な当たりだったのだが、運の悪いことにセンター方向への低い弾道の軌道であったため和真にまんまとキャッチされてしまった。つくづく攻守に渡って理不尽の塊のような存在である。

 

そしていよいよ七回を迎える。大会規定で八回以降はカットされるため、泣いても笑ってもこの回が最後の攻防である。FクラスとAクラス、和真と蒼介……果たして勝つのはどちらなのだろうか……?

 

《6回裏終了。現在2-2》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

七回表、Fクラス最後の攻撃。

先頭バッターはFクラス最強の矛にして紅き修羅、現在二打数二安打一本塁打一打点であり、実質二点目も入れた絶対的なスコアラー……柊和真。

 

和真「さてと、前の打席はポテンヒット留まりだったからな……今度は宇宙の果てまでぶっ飛ばしてやるぜ!」

蒼介「…………」

 

いつものように不敵な笑みを浮かべながらバットを蒼介に向けホームラン予告をする和真に対し、蒼介は黙ったまま和真を見据えている。

蒼介のスライダー“サイドワインダー”は確かに魔球を名乗るに相応しいキレである。しかし和真を確実に押さえられるか?と問われれば首をひねらざるを得ない。予告通りかっ飛ばされる危険性も十分にあり得る……というかそもそも、ハッキリ言って当てられるだけでも致命的だ。和真の脚力を考えると、たとえボテボテのゴロでも打ち取ることは困難を極める。そしてもし出塁を許せば盗塁を繰り返されて三塁まで進まれるだろう。そうなればあとはスクイズ一つでリードを許し、Aクラスの勝利は絶望的となるだろう。この回を確実に無失点で切り抜けるには、何としても和真を三振させなければならない。

 

蒼介(そのためには……個人的な信念は度外視しなければならないようだな)

徹(!……へぇ、アレをするんだ?)

和真(あん?徹に何かのサインを出した……?)

 

事前に決めておいた合図を送られ、徹はやや意外そうにしながらもニヤリと笑って構える。

 

蒼介(この一投で、己が未来を切り開く……鳳蒼介、推して参る!

 

水嶺流肆の型……大渦・改!)

 

蒼介は大きく振りかぶり、その状態から打者に背中を見せるほど大きく身体を捻る。

 

和真(こ…この投法は……!)

 

蒼介はそのまま引き延ばした筋肉が戻ろうとする反発作用を利用してサイドスローで一気にボールを投げた。放たれたボールの速度はこれまでの蒼介のストレートとは別物であり…和真に匹敵するほどの速度であった。

 

トルネード投法……メジャー挑戦の先駆者たる伝説の大投手、野茂英雄が編み出した独特の投球フォーム。蒼介はそれを自身の投法サイドスローに組み込み、トルネードサイドスローとも言うべき投法に昇華させたようだ。

 

和真(っ!球速・球威ともに以前までのソウスケとは比べ物にならねぇ……だが俺に速球で勝負たぁ無謀だな!)

 

見馴れない投球フォームにほんの一瞬面食らったものの和真はボールにタイミングを合わせてフルスイングした。もし蒼介の投げた球種がただのストレートであれば、ボールは予告通り遥か彼方に飛ばされていたことだろう。

 

 

……そう、ただのストレートであればの話だが。

 

 

ズバァァアアアン!!

 

和真「なっ…!?」

御門「ストライク」

 

完璧に捉えたと確信したにもかかわらず予想外の空振りに流石の和真も僅かに動揺するが、すぐに持ち直して何故空振りにしたのかを分析し始める。

 

和真(コースもタイミングも完璧だったはず……それなのにバットに当たらなかったっつうことは、さっきの球は変化球か?いや、そうだとしたらいくらなんでも速すぎる。トルネードを組み込んだからと言って流石に有り得ねぇ。……となると俺のようなムービングボール?…いや、それだったらバットに全く当たらねぇのはおかしい……まてよ?さっきの球の回転……まさか……)

 

和真は先程の蒼介の球のスピンを脳内で再生し一つの仮説を立ててから、キャッチャーである徹に向き直る。

 

和真「やってくれたなお前ら……まさか“ジャイロボール”とはよ」

徹「流石だね和真、たった一球でもう見抜いたんだ?」

和真(実際に見たのは初めてだから確証は無かったんだが、カマかけたらあっさりと認めたなこいつ……)

 

“ジャイロボール”……それは極めて特殊な回転のかけられたストレートの一種である。

和真のようなムービングボーラー以外のほとんどの投手の投げるストレートにはバックスピンがかけられているが、“ジャイロボール”は全身の回旋運動から腕を自然にねじりながらボールをひねりだすことで、ボールがスパイラル回転をしながら打者に向かっていく。縦回転では何度も縫い目で受けてしまう空気抵抗が正面に縫い目の現れにくいスパイラル回転では極僅かとなり、バッターは初速と終速の差がほとんど無くなったボールが目の錯覚も加わってあたかも浮き上がるかのように感じるという仕組みだ。

 

和真「まあ確かにすごいけどよ……ソウスケ、コントロール至上主義のお前らしくないんじゃねぇか?」

 

トルネードサイドスロー……球速不足に陥りがちのサイドスローで速球を出すことのできる夢の投法、といった都合の良いものではない。

サイドスローの利点は身体の傾きがなく視線がぶれないのでコントロールが付けやすい、クロスファイヤーの際最も角度をつけられるといったことだが、トルネードを組み込んだことでこれらの強みを完全に殺してしまっているのだ。体を大きく捻るため体軸や目線がぶれやすくどうしても制球力が落ちてしまい、制球力が落ちたことで内角ギリギリを攻めるクロスファイヤーの安定感がグッと低くなってしまう。

一方でサイドスローに組み込んだことでトルネード投法の強みも生かしきれていない。トルネードの強みは何と言っても球速と球威だがサイドスローは球速を出しにくい投球フォーム、トルネードからのオーバースローに比べると明らかに旨味が少ないのだ。

と、このように一見お互いがお互いの長所を打ち消しあっているガッカリフォームにしか見えないのだが、もちろんこのフォームにしかない強みもちゃんと存在する。

まあそれはともかく、このコントロール度外視の投球フォームを制球力を重視する投手が好むとは到底考えられない。

そのことが解せない和真がそう指摘すると、蒼介は薄く笑いながら返答した。

 

蒼介「勿論私とて不本意ではある。しかしさっきまでの投げ方ではお前を抑えられそうになかったのでな。自らの信念への拘りなど、敗北してしまえば単なる我儘だろう?」

和真「ほー、そいつはもっともな言い分だな。だが残念だったなソウスケ、どっちにしろその球はもう俺には通用しねぇよ」

蒼介「だろうな。私とてジャイロボールのみでお前を抑えられるとは思っておらん。……それはそうとカズマ、私のスライダーについて少々物申したいことがあるのだが」

和真「あん?“サイドワインダー”がどうしたんだよ?」

 

突然話が明後日の方向に飛んだことに疑問を抱く和真をよそに、蒼介は話を進めていく。

 

蒼介「……“サイドワインダー”、か。はっきり言ってその呼び方は不適切だ。あれは何の工夫もオリジナリティーも無い、極普通のスライダーだ」

和真「……いや、まあそうだけどよ、そんなこと今更-」

蒼介「“サイドワインダー”と名付けるに相応しい変化球は…………今から私が投げる球が相応しい」

和真「……!」

 

会話を切り真剣な表情でセットポジションに着く蒼介に対し、和真は気を引き締め直しつつバットを構える。

 

和真(球種をあらかじめバラしただと?ブラフか?)

 

蒼介は先ほどと同じく大きく身体を捻り、反発力を利用してボールを投げる。和真の優れた動体視力は投じられたボールに“ジャイロボール”とは異なる回転がかけられていることを即座に見抜いた。

 

和真(どうやらマジで“サイドワインダー”みてぇだな。上等だ!このままかっ飛ばして…っ!?)

 

ギュルルルルルルルル……バシィッ!

 

御門「ストライク」

和真(なっ……!?()()()のサイドワインダー!?)

 

そう、凄まじい回転のかかったボールはバッターである和真の手元で……これまでとは逆の方向に鋭く曲がった。

 

和真「……今の球は、シュートか?」

蒼介「そう……右と左、両方向への鋭いキレの変化球、これら二つを合わせて初めて“サイドワインダー”と呼ぶに値するだろう」

 

これがトルネードサイド最大の利点、トルネードの遠心力を加算することにより横方向への変化球の球速、ノビを格段に向上させることができる。

通常のサイドスローで投げる従来の“サイドワインダー”はあくまでも普通のスライダーであった。しかしかの投法で放つソレはもはやスライダーの範疇には入らない代物であり、それに加えてシュートまでも以前までとは比べ物にならないほど鋭くなっている。これら二つの球は正真正銘、蒼介だけのオリジナル変化球である。

 

蒼介(さてカズマよ、二つの“サイドワインダー”をどう攻略する?)

和真(………………)

 

そして三球目に蒼介が選んだ球種はスライダー方向への“サイドワインダー”。前の打席、ヒットにされてしまったものの和真を打ち損じさせた球を凌駕する切れ味を誇るソレに和真は、

 

躊躇うことなくフルスイングした。

 

ガキィィィイイイン!!

 

蒼介「っ!?」

徹「まさか!?」

 

打球はグングン飛距離を伸ばしていくが、Aクラスにとっては幸運なことにボールは風の影響を受けて僅かに逸れた。

 

御門「ファール」

和真「ちっ、入らなかったか。以前より鋭くなっていたせいで振り遅れちまったみてぇだな」

 

振り遅れたにもかかわらず平然とホームラン性の当たりにするバッティング能力も見逃せないが、蒼介と徹にはそれ以上に気になる点が存在した。

 

徹「和真、いったいどうやって“サイドワインダー”の変化を読みきったんだ……?」

和真「あー?別に確信があったわけじゃねぇよ。その球のリスクを考えたら多分スライダー方向に曲がるなと思っただけだ」

徹「……リスクだと?何の話だ」

和真「とぼけんじゃねぇよ。あんな切れ味のシュート、明らかに肘に負担がかかるだろうが」

蒼介(……ふっ、もう見抜かれるとはな……)

 

シュートは肘を痛めやすい変化球として有名である。実際のところはほとんどが肘に余計な力をかけてしまっているせいで悪化するのだが、“サイドワインダー”レベルの変化を投げるにはどうしても多少無理をする必要がある。その為、体の出来上がっていない成長期真っ盛りの現段階ではできれば投げるのを控えるべきである。

 

 

和真「さてと、これで“サイドワインダー”も封じたぜ。さてどうするソウスケ?リスク覚悟で乱発してみるか?流石の俺でも二つの“サイドワインダー”は読み切れねぇから、どちらかに絞って打つしかねぇな~」

蒼介(乱発は愚策中の愚策……こいつは明らかに“サイドワインダー”を捉え始めている。1/2の確率に運命を委ねるのはハッキリ言ってリスキー過ぎる。、

 

 

ならば、この場で完成させるしかないようだな。

ジャイロボールの到達点……“サイクロン”を!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【選手データ(パワプロ風)⑥】

木下秀吉
右投げ左打ち

弾道②
ミート……70(B)
パワ……30(F)
走力……50(D)
肩力……30(F)
守備……60(C)
捕球……60(C)

特殊能力……アイコンタクト、ミラクルボイス、ささやき戦術、盗塁◎、粘り打ち、バント○、ゲッツー崩し、ささやき破り、盗塁アシスト、かく乱、慎重打法、ミート多用、調子安定、チームプレイ○、送球○

姉と同じくメンタルと技術に優れる選手。しかし経験と身体能力に大きく差があるため優子には数段劣る。捕手でもないのにミラクルボイスとささやき戦術を取得している。せめて男子平均並のフィジカルさえあれば優秀なキャッチャーになれただろう。



二宮悠太
ポジション:センター
左投げ左打ち

弾道②
ミート……75(B)
パワー……65(C)
走力……75(B)
肩力……75(B)
守備……75(B)
捕球……65(C)

特殊能力……一球入魂、精神的支柱、切磋琢磨、走塁○、盗塁○、アベレージヒッター、内野安打○、流し打ち、粘り打ち、バント○、チャンスメーカー、ヘッドスライディング、ゲッツー崩し、インコース○、本塁生還、盗塁アシスト、窮地○、打開、接戦○、送球○、守備職人、慎重打法、積極守備、調子安定

野球部のキャプテン。文月学園野球部の総合的なレベルは中の上程度だが、能力を見ればわかる通り全国でも十分通用するであろう実力を持っている。走攻守全てに秀でたユーティリティプレーヤーであるが、強いて言えば守備型の選手である。


五十嵐源太
ポジション:センター
右投げ右打ち

弾道③
ミート……65(C)
パワー……75(B)
走力……75(B)
肩力……80(A)
守備……75(B)
捕球……70(B)

特殊能力……気迫ヘッド、高速レーザー、火事場の馬鹿力、伝説の引っ張り屋、高球必打、チャンス○、対左投手○、パワーヒッター、体当たり、対エース○、リベンジ、競争心、威圧感、打球ノビ◎、送球◎、守備職人、ハードラック、積極打法、積極守備、強振多用、調子極端、


『アクティブ』クリーンナップの一角。小手先の技術に頼らない豪快なバッティングが持ち味。一方守備に関しては和真と同等以上の強肩に目が行きがちだが、細かい技術も一通り習得しており穴がない。『アクティブ』貧乏くじ担当は伊達ではなく、思わぬ不運に遭うことも少なくない。今回の章で出番がカットされたことも不運と言えば不運ではないだろうか。


西村宗一
右投げ右打ち

弾道④
ミート……60(C)
パワー……120(S)
走力……85(A)
肩力……90(S)
守備……65(C)
捕球……80(A)

特殊能力……アーチスト、恐怖の満塁男、重戦車、鉄の壁、鉄人、バズーカ、、メッタ打ち、伝説の引っ張り屋、ミラクルボイス、気迫ヘッド、ささやき破り、打球ノビ◎、調子安定、選球眼

総合的な身体能力は間違いなくトップだが、専門外の競技のためテクニックはそこまでではない(あくまで和真達と比較して、だが)。



※ジャイロボールの説明はmajorを参考にしました。松坂投手曰く、そんなものは現実に無いらしいですけどね……。

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