バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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よくよく考えるとアンダースローで135出したり左のサイドで138出したりする某パワプロ女性選手達って、ハッキリ言ってゴリラ以外の何者でもないですよね……忠実に実写化したら三角筋すごいことになってそう……。


野球大会決勝⑥『投手戦』

バシィッ!

 

御門「ストライクバッターアウト、チェンジ」

『ぐっ……』

和真(この勢いのまま追加点入れられりゃ万々歳だったが……そんな温い相手じゃねぇし、仕方ねぇか)

 

ツーアウト一塁の状況で美波と交代して打席に立った近藤だが、“サイドワインダー”を使うまでもないと言わんばかりにあっさりと捩じ伏せられてしまった。体力自慢のFクラス生徒といっても総合的な実力は本家野球部員には劣る。その野球部員を圧倒できる蒼介に歯が立たないのは当然と言えば当然であった。

 

雄二「よし、守備だ!事前に決められたポジションにつけ!」

 

この回での逆転は流石に不可能だとあらかじめ予想していた雄二は、チャンスが潰れたことにも一切動揺せず指示を出す。指事を受けたFクラスメンバーは召喚獣を媒介にしていたときとは全くことなる守備位置にそれぞれついた。

 

蒼介(ポジションを変更してきたか……まあ当然だな。センターラインにおそらく野球経験の少ないであろう霧島を配置させたままにしておく理由はない)

 

センターラインとは、特にボールに触る機会が多いポジション(捕手・二塁手・遊撃手・中堅手)で構成される守備の要となるラインであり、これらのポジションにつく選手の守備力がチーム全体の防御力を左右している。運動能力は高いとはいえ「女子の中では」という但し書きがつき、おまけに野球のルールを先日覚えたばかりで経験の乏しい翔子をセンターに据えたままにすることはハイリスクノーリターンである。さらに翔子のポジションチェンジに伴いそれぞれのポジションに適材適所に人員を割り振った結果、最終的に総入れ換えになったのだろう。

蒼介は入れ替わったポジションを確認すべく、手始めに外野にいる生徒に視線を向ける。

 

蒼介(ふむ……木下弟が右翼手、姫路と交代した福村が左翼手、坂本が中堅手か。再び坂本が捕手になってリードすると思っていたが……予想が外れたな)

 

一通り確認し終わると、続いて蒼介は内野手の四人にそれぞれ視線を向ける。

 

蒼介(霧島が一塁手、須川が二塁手、近藤が三塁手、吉井が遊撃手か……。遊撃手はカズマの正ポジションのはずだが、実際にその位置に着いたのは吉井。つまり……)

 

そこまで考えてから、蒼介はマウンドとホームにそれぞれ視線を移す。ホームではムッツリーニがプロテクターとマスクを身に付け、キャッチャーミットをはめて御門先生の前に座り込んでいる。

 

そしてマウンド上には、

 

蒼介「……やはりお前が投げるのか、カズマ」

 

和真がいつもの不敵な笑みを浮かべていた。ベンチで待機している沢渡は二宮と『アクティブ』のメンバー達に情報を求める。

 

沢渡「柊君が投げるみたいだけど……やっぱり彼、ピッチングも凄いの?」

優子「……ええ、生半可なレベルじゃ手も足も出ないわよ」

蒼介「『アクティブ』のエースは私だが周知の通り私は色々と多忙を極める身。マウンドに立てないことも多々ある」

徹「そんなとき代わりのピッチャーを務めるのが和真なわけだけど……和真が投げたときも負けたことは無いよ」

二宮「柊のピッチングは軟投派の鳳とは真逆……球威のある速球で相手を真っ向から捩じ伏せる本格派投手だ」

蒼介(厳密には少し違うがな……)

 

 

和真達が投球練習を済ませたことを確認し、久保と交代した時任がバッターボックスに入り、次の打者である愛子がネクストバッターズサークルで準備する。

 

『よし、来い!』

和真「随分威勢が良いじゃねぇか。それじゃお言葉に甘えて……いくぜオラァッ!」

 

和真がマウンド上で大きく振りかぶる。投球フォームはスリークォーター気味のオーバースロー。日本を代表する本格派投手達の多くが該当する、所謂王道と呼ぶに相応しいフォームである。

初球に選択された球は、当然のごとくストレート。勿論時任もストレートに狙いを絞っていたのだが、バットを振ることは叶わなかった。

 

 

ズバァァアアアン!!

 

 

御門「ストライク」

『っ……速っ……!』

 

なぜなら和真の投げたストレートが、予想を遥かに上回るスピードだったからである。実際に間近で見た時任は勿論のこと、ベンチで見物していたAクラスの生徒達(『アクティブ』メンバー、二宮の事前に知っている面子を除く)にも衝撃が走った。

 

久保「まさか、あれほどの速度だとはね……」

蒼介「奴の最高球速は145kmだからな」

沢渡「145!?プロ並じゃない!?」

優子「おまけに和真の速球は、実を言うと純粋なストレートじゃないわ」

沢渡「え?どういうこと?」

 

時任がバットに当てることすら出来ずに三振する傍ら、和真のピッチングに関する情報の共有を進めていく。

 

二宮「柊のストレートは、手元で僅かに曲がるんだ」

久保「……?どういうことだい?ストレートのように速い変化球っことかい?」

蒼介「いや違う。確かにそれも持ち球としてあるが、変化するとはいえあくまでストレートだ。その名を“ツーシーム・ファストボール”と言う」

 

日本で言うストレートは、アメリカでは“フォーシーム・ファストボール”と言う。ボールが1周スピンする間に縫い目 (シーム) の線が4回 通過し、マグヌス効果による揚力をより効果的に得られるため、最も速度の出る球種である。

対して和真の投げるストレート……“ツーシーム・ファストボール”は、ボールを1周する間に縫い目 の線が2回通過する向きで投じられた球である。スピンで縫い目が現れる回数を減らしマグヌス効果による揚力を減らすことで、フォーシームに比べて若干球速を落とすことを引き替えに、シュート方向に曲げたりすることができる。

 

蒼介(カズマのツーシームはその絶妙な変化から、完璧な捕球には捕手にかなりの技量を要求される。土屋が捕手を務めているのは、おそらく奴だけがその基準値を満たしているからであろうな)

 

蒼介のその読みはドンピシャである。ムッツリーニがキャッチャーの抜擢されたのは、Fクラスの生徒で和真のツーシームをキャッチできるのが反射神経も申し分なくなおかつ日頃から撮影で動体視力を鍛えているムッツリーニただ一人だったからである(それでも最初らへんは後逸祭りだったようだが)。

 

ズバァァアアアン!!

 

御門「ストライク、バッターアウト」

愛子「うぅ……こんなの打てっこないよ……」

ムッツリーニ「……はっ、その程度か」

愛子「むかっ、ちょっとカチンと来ちゃったな~。試合中に仕掛けると和真君が怒るだろうから今は見逃してあげるけど、後で覚悟しといてよねムッツリーニ君」

ムッツリーニ「……望む所だ」

 

愛子がいったい何を企んでいるのかはまだ不明ではあるものの、十中八九望まない方がムッツリーニの身のために違いない。

それはさておき、続くバッターは佐藤と交代した栗本。彼は成績はAクラス内では下から数えた方が早いものの、運動神経は中々のレベルの男子生徒だ。でもって中々と言うだけあって一か八かでスイングしたバットが偶然ボールに命中したりするし、

 

キィィイイイン!

 

ピッチャーライナー性になった打球がすごいスピードで飛んでいったりする。だが彼の幸運が適当に振ったスイングのタイミングが偶々ジャストヒットしたことだとすれば、彼の不幸は現在マウンドに立っているピッチャーが()()和真だったことである。

 

 

和真「オラァッ!(パシィィイイッ!!!)」

『『『バカな!?』』』

  

痛烈なピッチャー返しを何てこと無いかのように平然とキャッチした和真に、Aクラスのみならず味方であるはずのFクラスの生徒達も信じられないとばかりに驚嘆する。しかし天性の直感と並外れた反射神経、そして動体視力を併せ持つ和真からすれば本当に何てこと無かったようである。

見事Aクラスの打線を三者凡退で捩じ伏せたFクラスは、この勢いのままリードを狙うべく五回表に臨んだ。

 

 

……が、

 

 

ギュルルルルルルル…バシィィッ!

 

御門「ストライクバッターアウト、チェンジ」

蒼介「勢いを殺すようで悪いが、そう易々と点数を献上するわけにはいかないのでな」

『く、くそぉっ……!』

 

そんなFクラスの勢いを即座に殺すかのように、蒼介は“サイドワインダー”を決め球にした投球で奪三振ショーを繰り広げた。今回の先頭バッターはムッツリーニだったのだが、Fクラスの中でもかなりの猛者である彼すらまるで寄せ付けない見事なピッチングであった。

 

和真(やっぱりピッチャーとしてなら……あくまでピッチャーとしてだが、俺よりソウスケの方が一枚上手だな。……さて五回裏なんだが、先頭バッターがアイツかよ)

 

軽く溜め息をつきつつ、バッターボックスに立った出塁率8割オーバーのリトルカットマンに視線を移す。

 

徹(和真、わかっていると思うけど……僕はさっきまでの連中とは格が違うよ?君のスタミナ、削れるだけ削らせてもらう)

和真(絶対何か企んでやがるよな……まあいい。そもそも俺のやることはただ一つ、真っ向から打ち倒すだけだ。柊和真推して参る、ってなぁっ!)

 

 

 




【選手データ(パワプロ風)②】

柊和真 
ポジション:遊撃手/投手
右投げ右打ち
オーバースロー

弾道④
ミート……90(S)
パワー……90(S)
走力……100(S)
肩力……80(A)
守備……95(S)
捕球……85(A)

特殊能力……アーチスト、安打製造機、高速ベースラン、電光石火、内野安打王、精神的支柱、広角砲、一番槍、魔術師、アイコンタクト、重戦車、気迫ヘッド、挑発、対左投手◎、チャンス◎、チャンスメーカー、流し打ち、バント○、逆境○、リベンジ、追い打ち、競争心、威圧感、上り調子、打開、接戦、盗塁アシスト、ハイボールヒッター、送球◎、ささやき破り、打球ノビ◎、高速チャージ、積極打法、積極盗塁、積極守備、強振多用、人気者、選球眼


球速145㎞
スタミナ……90(S)
コントロール……60(C)
ツーシーム 
カットボール③
チェンジアップ③
???③

特殊能力……暴れ球、マインドブレイカー、勝利の星、打たれ強さ◎、対ピンチ◎、ノビ○、キレ○、闘志、根性○、重い球、リリース○、対強打者○、要所○、打球反応○、速球中心、人気者


『アクティブ』の絶対的主砲にして、内野の守備の要・ショートを守る。ピッチャーとしての和真は制球力と変化球が武器の蒼介とは真逆の速球中心の本格派。ちなみに最高球速はフォーシームの記録だが余程のことが無い限りフォーシームは投げない。基本はツーシームとカッターを使い分け、相手の意識が霧散するのを見計らってチェンジアップでタイミングを上手く外すのが彼の投球スタイルである。さらにもう一つ奥の手となる変化球が存在するのだが、その変化球だけは誰にも明かしてない言わばとっておきである。
野手としてはハッキリ言ってチートの権化のような能力である。走・攻・守の全てが突出していてつけ入る隙がまるで無い文句なしの5ツールプレーヤー。特に走塁に関しても本人の図抜けた脚力と非凡な走塁技術が合わさり世界最高レベルと言っても過言ではない。





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