バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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【Aクラス選手データ②】

久保利光
・成績……S
・操作技術……B
・野球センス……C

野球センスは並だが操作技術はFクラス標準レベルに達している。そして点数は言うまでもなく強大なため、決して油断できる相手ではない。


工藤愛子
・成績……A+
・操作技術……C+
・野球センス……B
 
正規メンバーではないとはいえ、『アクティブ』の一員らしく野球センスはなかなかのレベルである。決勝の指定科目に保健体育が無いのが救いか(逆に言えばムッツリーニも十分に力を発揮できないのだが)。


橘飛鳥
・成績……A+
・操作技術……B
・野球センス……B+

全ステータスが高水準の万能タイプ。穴らしい穴が無いので明確な対処法は存在しない。間違いなく強敵なのだがトップ3や野球部キャプテンの二宮ほど脅威ではない。



野球大会決勝③『一か八かの大博打』

和真が同点打を決めるも蒼介は一切動揺を見せずに後続をシャットアウトして二回表があえなく終了。

現在二回裏、戦闘打者の〈愛子〉が甘く入った高めのストレートを打ってテキサスヒットで一塁に進み、続く九番バッターの〈佐藤〉が三振に倒れ、ワンアウト一塁の場面で再び〈徹〉の打席なのだが……

 

キィイイン!

 

御門「……ファール」

『またファールかよ!?もう15球目だぜ!?』

『どんだけ粘っこいんだよアイツ……』

雄二「ちぃっ……いい加減しつこいぞ大門!」

徹「何とでも言いなよ。木下の速球相手に確実にヒットを狙うには、この戦法は実に有効だからね」

 

ついにベールを脱いだ徹の持ち味は、尋常じゃない程のボールカットセンスにある。絶好球が来るまでストライクゾーンに入る球をひたすらファールにし、狙い通り相手が失投して甘い球になればそれを痛打し、相手が勝負を捨て四球を選んでもそれはそれでOKの二段構えである。

そしてとうとう……

 

秀吉「くっ……(ビシュッ)し、しまった!?」

雄二(コースは問題ねぇが球威がまるで無ぇ!やべぇ打たれる!)

徹「我慢比べで僕に勝てるとでも?(キィインッ!)」

 

ホームラン性の当たりではないものの、レフト後方に痛烈な長打が襲いかかる。流石にこの打球をキャッチするのは不可能だと和真は即座に判断し、ただちに〈和真〉はホームへの中継に入る。三塁まで進んだ〈愛子〉が〈和真〉の肩の強さを警戒してその場に踏みとどまったおかげで失点には至らなかったものの、それでもワンアウト二、三塁の大ピンチを迎えてしまった。そして続いてのバッターは一打席目で手堅く送りバントをしてきた〈沢渡〉だが、またもや手堅く犠牲フライを狙ってボールをセンターフライ打ち上げた。

 

雄二(くっ、こいつら確実に一点を狙いに来ていやがる……

 

 

 

……ん?センターフライ?……っ!……こうなったら一か八かだ!)

 

三塁にいる愛子がセンターを守る〈翔子〉がボールを捕球したのを確認すると、〈愛子〉がホームへ向かって一直線にダッシュする。敵味方問わず誰もがタッチアップ成功を確信する中、雄二は翔子に向けて叫んだ。

 

雄二「翔子!俺を殺す気で返球しろ!」

「「「なっ!?」」」

翔子「……えいっ!」

 

ギュォォォオオオオオ!!!

 

周りが呆気に取られる中、翔子は何の迷いもなく500点オーバーを誇る〈翔子〉の100%の力でバックホームした。凄まじい勢いのレーザービームが〈雄二〉めがけて放たれ……

 

 

ドゴォォォオオォォオオオオオッ!!!

 

 

《英語》

『坂本雄二  18点

 霧島翔子 531点

VS

 工藤愛子 339点』

 

 

その凄まじい送球を〈雄二〉はその全身で受け止め、ホーム間近まで接近していた〈愛子〉に即座にタッチした。

 

御門「…アウト、チェンジ」

 

常識で考えれば気が狂ったと言われても仕方がない無茶をしたことで凄まじいダメージを負ったものの、〈雄二〉どうにか間一髪で生き延びることができたようだ。

 

雄二「工藤……打ち取らせてもらったぜ」

愛子「無茶苦茶するね坂本君……耐えきれたから良かったようなものの、戦死してたら余計ピンチになってたんじゃない?」

雄二「けっ、博打くらい仕掛けないと勝たしてもらえそうに無いみたいからな」

 

 

《二回裏終了。現在1-1》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く三回裏、Fクラスの攻撃で科目は世界史。意気揚々とバッターボックスに召喚獣を配置させた八番打者の須川だったが……

 

 

ズドォォォォオオォォォォォオオオン!!!

 

御門「…………ストライクツー」

須川(こんなもん打てるわけないだろ!?)

 

 

《世界史》

『Fクラス 須川亮 79点

VS

 Aクラス 鳳蒼介 598点

 Aクラス 大門徹 355点』

 

 

点差が絶望的なことはともかく、それを差し引いても〈須川〉は〈蒼介〉のストレートにまったく対応できないでいた。まあ無理もない…コースと球種を事前に知っているだけで難なく当てられる奴など和真以外には誰一人としていないであろうし、おまけに蒼介は既にそのカラクリに気づいたらしく、徹にコースを確認させないようフェイクを入れるよう指示したため、今はもう和真でも打てないかもしれない。

 

須川(くそっ、こうなりゃ一か八かだ!手からボールが離れる前に適当に振ってやる!)

 

一見自暴自棄にしか思えないが、実はその戦法が最も当たる確率が高かったりする。そして野球の神様は実に気まぐれな性格のようで、〈須川〉の適当スイングのタイミングが偶々〈蒼介〉のストレートにジャストミートする。

 

 

 

……しかし、

 

 

バキィィイイイッ!!!

 

須川「ば…バットが折れたぁ!?」

 

どうやら点数差500点オーバーとは野球の神様すら捩じ伏せるものであったようだ。ジャストミートした筈のボールは、しかし撥ね飛ばされることなくそのまま〈須川〉のバットを粉砕し打ち上がり、〈徹〉のキャッチャーミットに収まった。

 

御門「アウト」

雄二(くそっ!やはり少なくともAクラス並の成績でないと前にすら飛ばせそうにないな……)

蒼介(おそらく坂本はこのことを事前に予測していたのだろう。でなければ姫路をスタメン起用する理由が無い)

姫路「さあ、いきますよっ!」

 

意気消沈気味にベンチに戻る須川と入れ替わるようにやけに気合いの入った姫路が召喚獣をバッターボックスに立たせる。

 

 

《世界史》

『Fクラス 姫路瑞希 421点

VS

 Aクラス 鳳蒼介 598点

 Aクラス 大門徹 302点』

 

 

雄二が野球センス皆無の姫路を決勝のメンバーに組み込んだのは何よりも点数を重視したためだ。当たっても絶対ヒットにならない奴よりも当たる確率極小でも当たればヒットを期待できる奴を選ぶのは、戦略的には何も間違ってはいない。

 

 

 

だが……

 

蒼介「……はっ!」

 

ズドォォォォオオォォォォォオオオン!!!

 

御門「…………ストライク、バッターアウト」

姫路「うぅ、そんな……」

蒼介(……そのような運頼みが、この私に通用すると思うな)

 

一球たりとも掠らせもせず〈姫路〉を捩じ伏せた蒼介は、後続の〈秀吉〉も容赦なく三球三振で仕留めた。

 

《三回表終了。現在1-1》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして迎えた三回裏。〈蒼介〉のストレートが猛威を奮っているためビッグイニングは期待できない。よってたった一失点でもすれば敗色濃厚なこの状況で相手の打順は、よりにもよってクリーンナップから。

優子、蒼介、二宮の三人の強打者を相手に無失点で乗り切ることは極めて困難だと言えるだろう。そんな絶対絶命の状況を乗り切るべく司令塔の雄二が再び大博打を打って出る。

 

雄二「ピッチャーを翔子に、キャッチャーを和真に交代!」

「「「えぇっ!?」」」

蒼介(ほう……面白い)

和真(良いねぇ、そうこなくっちゃ♪)

 

両クラスのほとんどに動揺が走るなか、指名された二人は配球の確認のためマウンドに集まる。

 

和真「んー、そうだなぁ……細かいコースは指示しねぇから、とりあえず俺の召喚獣が届きそうなところに全力で投げてこい。全部取ってやるからよ」

翔子「……わかった」

 

全教科400点オーバーの召喚獣から繰り出されるストレートは、蒼介には及ばないとはいえ人類では決して到達することのない超豪速球に変わりはない。そんな球をコース指定もせず捕球するなど困難を通り越して無謀とも言える試みであるが、翔子には何の迷いもなかった。和真が「取る」と言った以上、必ず取ってくれるだろうという無条件の信頼が根底にあった。

 

和真「さて優子、悪いが捩じ伏せさせてもらうぜ」

優子「あら、そう簡単にはいかないわよ。アタシに野球を教えたのはどこの誰だったかしらね?」

 

 

 

《世界史》

『Fクラス 柊和真  514点

 Fクラス 霧島翔子 449点

VS

 Aクラス 木下優子 409点』

 

 

点数差はそれほど開いていない。加えて優子のバットコントロールは和真に比肩するほどのレベルであるため、生半可な投球では容赦無く打ち込まれるだろう。にもかかわらず、〈翔子〉は大きく振りかぶって第一球目を()()()()に投げる。

 

 

ズドォォオォォォオオン!!

 

 

御門「…………ストライク」

優子「っ…!代表ほどじゃないとはいえ、それでもとんでもないストレートね……!」

和真「ああ、まったくだ。おかげで後逸しかけたぜ、アブネーアブネー」

優子(しっかりキャッチしといてよく言うわ……)

 

明らかに挑発目的の和真の言動に優子が心の中で毒づいたものの、余裕綽々とはいかなかったのは事実である。和真の反応があと0.1秒でも遅れていたら、もしくは〈和真〉が構えたミットがあと数㎝でもずれていたら、翔子から放たれたストレートは和真の点数をゴッソリと削っていただろう。

 

 

ズドォォオォォォオオン!!

 

御門「…………ストライク」

優子「うぅ……まったく反応できない」

和真「確かにお前のミートセンスは俺に匹敵する……だがな、バットをボールに当たらないんじゃあ大して怖かねぇんだよ」

 

そう。優子が和真と並ぶのはあくまでミートセンスのみであり、経験、球種の予測・判断、反応速度などでは遠く及ばない。並大抵のピッチャーなら特に問題なかったのだが、翔子ほどの人知を越えたスピード相手には、はっきり言って相性が悪すぎる。

 

ズドォォオォォォオオン!!

 

御門「…………ストライクバッターアウト」

優子「……この打席は完敗ね。次は絶対に打ってやるから覚悟しておきなさい!」

和真(残念だが翔子へのリベンジの機会は無ぇよ。……さて、ここが正念場だな)

 

ベンチに戻っていく優子と入れ替わるようにバッターボックスに近づいてくる蒼介を見据え、和真は気を引き締める。()()()()()で敬遠という手段を取れない以上、この強打者は打ち取る以外に退ける手段は無いのだ。

 

蒼介「……その目、やはり勝負を仕掛けてくるつもりのようだな」

和真「当然だろうが。俺達はこの回無失点に抑えるからには、敬遠なんて間違ってもしちゃいけねぇだろうがよ」

蒼介「確かにその判断は一見間違っていない……だが残念だったな。敬遠しようがしまいが、私が点を取ることに変わりはない!」

和真「ハッ、言うじゃねぇかソウスケ!上等だ、返り討ちにしてやらぁっ!」

 

頂点二人は攻守を逆転させ、今一度再び相見えようとしていた。

 




祝!とうとうUAが30000を越えました!
やた~~~!




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