バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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【Fクラス選手データ②】

吉井明久
・成績……C+
・操作技術……S+
・野球センス…… A

野球編におけるFクラス四強の一人。
世界史はAクラス上位レベル、日本史に至っては学年トップクラスの成績を誇る歴史のエキスパート。並外れた操作技術はもちろん野球センスも申し分ない。

 
坂本雄二
・成績……A+
・操作技術……B
・野球センス…… A

Fクラス四強の一人。
操作技術は精々Fクラス標準レベルだが、総合成績・野球センスともにトップレベル。さらに神童と謳われたほどの頭脳を駆使した策略やリードも脅威的。


霧島翔子
・成績……S
・操作技術……B
・野球センス…… B+

Fクラス四強の一人。
操作技術・野球センス共にFクラス標準レベルの域を出ないものの、それを補って余りあるほどの圧倒的な成績が強み。さらにいかなる劣性、逆境、ピンチでもメンタルを崩さない強靭な精神力も持ち合わせている。


柊和真
・成績……S
・操作技術……A+
・野球センス…… S+

Fクラス四強の一人にして野球編における二大チートキャラの片割れ。全ての能力が高水準にまとまっており、特に野球センスは郡を抜いて高い。打撃や走塁は勿論のこと、脅威的な守備範囲を誇りレフト方向への打球はだいたいアウトにできると考えてよい。



戦力分析

「「「「…………」」」」

 

明久、雄二、秀吉、ムッツリーニの四人は現在2-Fの待機場所にて昼食をとりつつ決勝に向けての作戦会議を行っていた。ちなみに女子三名は応援合戦に向けての打合せをしており、和真は敵情視察も兼ねて2-Aの待機場所で昼食を取るそうだ(雄二達はいつものように優子の件で弄ろうとしたが適当に流された。大分耐性がついてきたようである)。

円になって座る彼らの目の前にあるルーズリーフの束には、間違いなく2-Aが勝ち上がってくると確信していた和真が事前に用意していた選手のデータが記されている……のだが、目を通せば通すほど心が折れそうなほどの圧倒的な戦力である。

 

雄二「……このまま黙っていてもしょうがねぇから、小分けにしてピックアップしていくぞ。まずは比較的脅威度の少ないこいつらだ」

 

そう言って雄二はルーズリーフの束から二枚を抜き出して広げた。一枚目には見慣れたショートカットの少女、二枚目には先日始業式で生徒会書記職に任命されたセミロングの少女の写真が貼り付けられていて、その他各教科の点数及び本人の経歴などが記されていた。写真はムッツリーニ、詳細なデータは和真が用意したものであり、Fクラスが誇る情報収集のスペシャリスト達の共同製作である。

 

雄二「まず一人目は俺らもよく知ってる工藤だ。期末での総合成績は3569点、正規メンバーではないとはいえ和真率いる『アクティブ』に所属していることから運動神経も申し分無いだろうな」

明久「雄二、この工藤さんでも比較的脅威じゃない扱いなの……?」

ムッツリーニ「……運動能力が高いとは言え、島田や霧島に劣るレベル」

雄二「そうだ。和真からも野球経験はそんなに無いとの情報を得ている。2-Aの中じゃ比較的御しやすい相手になると考えて良い。……二人目は女子ラクロス部のキャプテン、沢渡晴香」

秀吉「……ううむ、あの女子ラクロス部か。となると、こやつも一筋縄じゃいかなそうじゃの……」

 

知名度はインターハイ優勝者が二人も所属していた柔道部には劣るものの、女子ラクロス部は全国でも有名なほどの強豪チームであり、あの『アクティブ』に土を付けたという唯一無二の武勇伝もある。そのチームのエースを任されているのが沢渡だ。決して油断できる相手ではない。

 

雄二「とはいえ野球とラクロスは全くの別物。運動神経は目を見張るものがあるが、不馴れなスポーツで十全に発揮できるほど世の中甘くないからな、脅威度はそこまでではない。ちなみに総合成績は2735点だ」

ムッツリーニ「……確か、秀吉の一つ上」

秀吉「点数では拮抗しておるが、運動神経ではどうしても遅れを取るじゃろうな……操作技術はワシに分がある分互角と言ったところかの」

 

以前までと違い秀吉はFクラスでは突出した成績を誇る主戦力の一人となっている。そんな秀吉と互角の相手が比較的驚異度の少ないポジションに収まっていることから、クラス間の戦力差が容易に伺い知れる。

 

雄二「次は……若干不確定だが、この二人だ」

 

二人の説明を一通り終えた雄二は、ルーズリーフの束からまた二枚を抜き出して広げた。今度は二人とも明久達と面識のある相手だった。

 

雄二「三人目は橘飛鳥。期末の点数は3002点だが和真曰く夏休みの間研鑽を重ねていたらしいから、実際にはさらに点数が上がっていると考えるべきだろう」

ムッツリーニ「……インターハイで優勝したことからも、運動神経はかなりのものと推定できる」

明久「おまけに和真達の幼馴染らしいから、工藤さんのように野球慣れしてないってこともないだろうね……」

秀吉「そして強化合宿で姉上との連携で和真に勝利を収めたことから、操作技術もワシらFクラス生徒と遜色ないじゃろうな」

雄二「こういう穴の無い奴が一番崩しにくいんだよな……。んで四人目、久保利光」

明久「久保君?あんまりスポーツが得意ってイメージが無いけど」

雄二「だから不確定なんだよ。こいつの注意すべきポイントはなんといっても点数だ」

明久「あ、そっか。久保君頭良いから、その分召喚獣の強さも……」

 

野球をベースにしている以上野球センスや運動神経が重要になってくるのは勿論だが、試験召喚システムの使用上点数の高さに比例して召喚獣が強くなるという大原則も、決して忘れてはならないファクターである。

 

ムッツリーニ「……期末テストの総合成績は4559点、姫路とほぼ互角」

秀吉「流石に姫路ほど極端にスポーツが苦手とは考えにくいから、野球での戦力としては姫路より数段上だと予想できるのう」

雄二「こいつを懐柔して十対八人で勝負するって作戦も考えたが……あの鳳相手にそんな小手先の策が通じるとは思えねぇ」

 

おそらくは事前に対策されているだろう。しかし、いまいち理解できなかった明久は雄二に異を唱える。

 

明久「久保君を懐柔って何言ってるのさ。鳳君云々以前に、あの久保君がそんな汚い行為に手を染めるはずがないじゃないか」

雄二「……そうか。そう思っていられるなら、お前はそのままの方が幸せなのかもしれないな……」

秀吉「真実の久保はヨゴレた好意に身が染まっておるからの……」

ムッツリーニ「……知らぬが仏」

明久「え?何?どうして久保君の話をすると皆そんな慈愛に満ちた目で僕を見るの?」

 

明久にまるでどこか遠くに行ってしまう友人を見送るような視線を思わず送ってしまった雄二達を、いったい誰が責められようか。

 

雄二「…………まあいい、続けるぞ。次の三人は強豪揃いのAクラスの中でも、特に警戒すべき連中だ」

 

残ったルーズリーフの束から雄二は一枚だけを残して抜き取りる。三人中二人は愛子と同レベルで見知った顔であり、残りの一人は直接的な交流は無いものの顔は覚えている。沢渡と同じく、新生徒会役員に着いた坊主頭の男子生徒だ。雄二はまずその生徒から説明をし始めた。

 

雄二「五人目は二宮悠太……何を隠そう、()()()()()()()()だ」

明久「それは……強敵だね……」

ムッツリーニ「……文月の野球部は柔道やラクロスみたいな全国クラスの強豪じゃないが、それでも十分脅威的」

秀吉「雄二よ、確かこやつも今のワシ以上の成績じゃったな?」

雄二「ああ、総合成績2851点……操作技術は大したことなさそうだが何せ本職だ、野球の実力はかなりのレベルだろうな。……だが残りの三人は、はっきり言ってこいつよりヤバい」

 

そう言うと雄二は銀髪の少年の写真が貼られたルーズリーフに視線を移した。

 

雄二「六人目は大門徹。『アクティブ』正規メンバーにして、和真曰く不動の一番バッター。出塁率は四球を含めると8割を越えるそうだ」

明久「8割!?5回に4回はチャンスを作られるってこと!?」

雄二「珍しく正解だ明久。何でもボールに喰らいつく執念が桁違いに強く、大抵のピッチャーは根負けして歩かされるか、プレッシャーに負けて失投して強打されるらしい」

秀吉「投手からすれば非常に厄介な相手じゃな……」

ムッツリーニ「……そして出塁した後も警戒が必要」

雄二「その通りだムッツリーニ。奴の期末成績は4028点……ガンガン盗塁を仕掛けてくる可能性大だ」

 

そしてクリーンナップに回る頃には得点圏となる、という寸法であろう。肝心のクリーンナップに選ばれるのはおそらく野球部主将の二宮、桁違いの実力を持つ蒼介……そして最後の一人はおそらく、今から雄二が説明する人物であろう。

 

雄二「七人目は大門と同じく『アクティブ』正規メンバー……和真の恋人兼飼い主兼相棒、秀吉の姉である木下優子だ」

(((飼い主て……)))

 

三人の心が一つになったものの、最近の和真の手懐けられっぷりを見てると否定しきれないので、誰一人異論を唱えることはなかった。

 

雄二「総合科目の点数は4512点と久保や姫路と遜色無い成績だ。……これだけでも充分強敵だが、あの和真とコンビを組んでるだけあって野球能力はかなり高いだろうな」

明久「おまけに操作技術も、この前の胆試しの立ち回りを見る限りFクラス標準レベルは越えているっぽいしね……」

雄二「以前和真が言っていたんだが、身体能力は精々『アクティブ』では下から二番目程度だが……テクニックやセンスは和真にも匹敵するレベルらしい」

ムッツリーニ「……しかも今回は召喚獣を媒介にしているので、運動能力も桁違い」

秀吉「やれやれ……改めて考えると、我が姉ながらとんでもない化け物っぷりじゃのう……」

 

総じて、先ほど雄二が一番崩しにくいと評した飛鳥の完全上位互換と言える。走攻守全てのアクションに全身全霊で気を配らなければ確実に痛い目見るだろう。

 

雄二「……とまあ、ここまでピックアップした奴らだけでも3-Aより遥かに厄介だが、一番警戒しなければならない奴は……当然こいつだ」

 

そう言って最後のルーズリーフを広げる雄二。添付された写真には、ツヤのある紺の髪とクールな表情が特徴的な男子生徒が写っている。

蒼の英雄、限りなく完全に近い人間の異名を持つ、数百年の歴史を持つ名家・鳳一族始まって以来の天才……

 

雄二「最後の一人はこいつ、学年首席の鳳蒼介。操作技術は四月のムッツリーニとの対戦を分析したところ、かなりのレベルだが明久や和真ほど突出しているわけじゃねぇ。こいつの怖いところは和真をも上回るテクニックと、6000点オーバーの圧倒的な学力だ」

明久「6000点……それってもう並の教師より高いってことだよね」

ムッツリーニ「……召喚獣の能力もそれの比例してとんでもないものになる」

秀吉「そのとんでもない力を、和真以上のテクニックの持ち主が扱うと思うと、気が滅入りそうじゃな……」

 

加えて蒼介には雄二と同等の指揮能力まである。生半可な策ではアッサリと対応されるだろう。総じて、和真にも匹敵する理不尽なまでに強大なスペックであると雄二は結論づけた。

 

雄二「……9人目は不確定だそうだ。点数を重視して佐藤美穂、それか運動能力に優れた男子生徒を選んでくるだろうな。こいつらの実力は、教師チーム相手に完全試合を達成したほど強大だ」

 

四人の士気はさらに落ちる。完全試合……ヒットや本塁打はもちろん、四死球やエラーやフィルダースチョイスなどすら一度も無く試合を終えるまさに完全勝利、プロ野球及びメジャーリーグでも達成された回数が総計50にも満たないほどの偉業である。

 

雄二「……だが、付け入る隙は必ずある。……そうだろ、和真?」

和真「その通り、最後に勝つのは俺達だ」

 

Aクラスの休憩所で昼食を終えて戻ってきた和真が、雄二にキャンパスノートを投げ渡す。雄二が全員に見えるようにノートを開くと、2-Aの三試合のスコアブック、及びスタメンが記されていた。そのデータを見る限り、どうやらスタメン最後の一人は佐藤で、控え二人が運動の得意な男子生徒のようだ。

 

明久「和真、これどうしたの?この短時間で用意できる書き込み量じゃなさそうだけど……」

和真「一緒に飯食ってた源太から強引に譲ってもらった。アイツ、あの外見でかなり几帳面だから記録してるに違いねぇと思って探り入れたら、案の定だったぜ」

 

人は見かけによらないという言葉を体現しているような奴である。その一方で、バイクに乗ることが趣味であるなど見かけ通りの一面もあったりするのが源太だ。

 

雄二「でかした和真!よし、これらのデータをもとに作戦を練るとするか。……お前ら、絶対に勝つぞ!」

 

「「「「おう!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『これより、一年生各クラスによる、応援合戦を行います。一年生の生徒は……』

 

グラウンドにアナウンスが響き渡る。昼休み明け一発目は意外と人気のある応援合戦だ。色とりどりの衣装に身を包み、一年生達がグラウンドの各所に集まる。

そんな後輩達を尻目に、明久達は次に来る自分たちの番の為の準備をしていた。ちなみに応援団長に抜擢された和真は、右腕に『団長』と刺繍された腕章を身に付けて所定の位置にスタンバイしている。

 

明久「学ランなんて久しぶりだなぁ。中学校以来だよ」

雄二「なんだ。明久も中学は学ランだったのか」

ムッツリーニ「……同じく」

秀吉「ワシもじゃな」

明久「へぇ~。秀吉はセーラー服だったんだね」

秀吉「明久よ。会話がつながっておらんぞ」

 

皆で衣装を手に取って話をしていると、そこにチアガールの衣装を持った美波が困ったような表情をしたままやって来た。いったいどうしたのかと明久が疑問を抱くのをよそに、美波は秀吉に真剣な目をして話しかける。

 

美波「ねぇ木下」

秀吉「嫌じゃ」

美波「う……。まだ何も言ってないのに……」

 

かなり人懐っこい部類の秀吉にしては珍しく、随分とそっけない返事である。

 

美波「そんなこと言わないで。ほら、この衣装もかなり可愛いわよ?」

秀吉「可愛いから嫌なのじゃ」

 

美波が広げてみせるチアの衣装から目を逸らすようにそっぽを向く秀吉。

 

美波「応援団は人数が余ってるじゃない。こっちは三人しかいなくて困ってるの。だから、ね?」

 

頑として拒否する秀吉たが、美波は粘り強く食い下がる。これは別に応援合戦を何としても成功させようという使命感からくるものではない。

やがて美波達の方にその原因が遠くの方から駆け寄ってきた。

 

姫路「あ。美波ちゃん。早く着替えないと時間がなくなっちゃいますよー」

 

タッ、タッ、タッと弾むように駆けてくる姫路であるが、いつもはあまり大きく動かない分より躍動感が伝わってくる……全身の至るところから上下の動きに対する躍動感が。ムッツリーニは死を覚悟して十字を切り、明久は体奥から沸き上がる赤い液体を出すまいと咄嗟に目を伏せる。

 

美波「だから嫌なのよ、あの子と踊るのは……!揺れるのよ!?跳ねるのよ!?暴れるのよ!?」

秀吉「そうは言われても、ワシは男じゃからチアガールはやらんのじゃ!」

 

秀吉と美波の言い争う後ろで、一瞬遅れてムッツリーニがいつものように鼻血を吹いて大地に倒れ伏す。

 

明久「まぁ確かに姫路さんと並んで踊ったら、色々と比較されるよね……」

美波「しかもあの子、すっごい張り切ってて一生懸命飛び回るのよ!?もう隣にいるウチへの嫌がらせにしか思えないの!翔子も瑞希ほどじゃないにしても充分立派な物をお持ちだし、これ以上はウチの精神が持たないわ!」

 

話をまとめると、どうやら秀吉をチアに加えることで精神的な被害を少しでも減らそうと考えてるらしい。

 

明久「秀吉。美波もここまで頼んでるんだし、チアガールやってあげたら?きっと秀吉なら凄く似合うと思うよ」

秀吉「嫌じゃっ」

明久「けどあんな学ランの下に無理してサラシを巻くくらいなら、おとなしくチアガールをやった方が」

秀吉「あ、あれはお主らが、巻かねば教育委員会に訴えられる、と言うから仕方なくつけておると言うのに……!」

 

海に行ったときの一般人の反応を鑑みると、その危惧はあながち大袈裟ではなかったりする。

 

姫路「あの、明久君。美波ちゃんは木下君に何をお願いしているんですか?」

 

こちらにやってきた姫路が、秀吉と美波のやり取りを見て明久に尋ねてきた。

 

『なんでそんなに嫌がるの?こんなに可愛いのに』

『可愛いからじゃ!ワシは男じゃから、可愛い物は着ないのじゃ!』

『えっとね、木下。ここだけの話しなんだけど……』

『なんじゃ』

「実はチアリーダーの衣装って……凄く男らしいのよ?」

『さてはお主、ワシを明久レベルのバカじゃと思っておるじゃろ!?ワシの理想はじゃな……あそこで腕を組んで悠然と仁王立ちしている和真みたいなのがそうじゃ!』

『でも柊だって、日頃から優子に猫可愛がりされてるじゃない』

『アレは姉上限定じゃからなんとも言えんのう……』

 

 

明久「美波が、秀吉にもチアガールをやってみないかってお願いしてるんだよ」

姫路「チアガールをですか……。どうしてでしょうね?」

明久「あはは……。きっと女子の数が少なすぎると思ったんじゃないかな?」

姫路「あ、そういうことですか」

 

ポン、と手を叩く姫路。

そして懐からあるものを取り出す。

 

姫路「あの、女子の人数が少ないと言う話でしたら……」

明久「待って姫路さん。どうしてもう一着チア衣装を取り出してジッと僕の方を見るの?」

雄二「ははっ。良かったじゃないか明久。俺も女子が少ないのを心配していたんだ。これで少しは見栄えも良くなると」

姫路「あの、坂本君……。良かったら」

雄二「待て姫路。なぜ更にもう一着取り出して俺を見る」

 

もう姫路は取り返しのつかないところまで頭の病気が進行してしまったようだ。ちなみに和真にも同様に薦めようものなら、姫路は肘パンチの一つでも喰らって悶絶していただろう。『男に女装を強要するような奴に人権は無い』、和真のポリシーの一つである。

 

明久「それはそうと姫路さん」

姫路「はい、なんですか明久君?」 

 

この話をさっさと打ち切りたいのか、明久と雄二は姫路に畏まったような態度で話しかける。

 

明久「応援の練習、すごく頑張ってるらしいね」

姫路「あ、いえ。それほどでも……」

雄二「だがな姫路、島田も心配していたが本当に無理はしなくていいんだぞ?応援合戦はあくまで余興で、体育祭の得点とは関係のない種目だからな」

 

美波が心配している内容はまた別のことなのだが、物は言い様である。

 

姫路「……んの……ませんから……(ボソッ)」

明久「え?」

姫路「…………いえ、何でもありませんっ」

 

一瞬とんでもなく張りつめたような表情をしていた姫路だが、次の瞬間にはいつもの笑顔に戻っていた。明久は少し気になったが、自分の見間違いだったと判断した。

 

 

 

 

 

『じゃあ木下!こうしましょう!ウチが学ランを着るから、アンタがチアを』

『それはワシにとって何の解決にもなっておらんじゃろうがっ!?』

 

遠くから未だに言い争っている美波と秀吉の声が聞こえてきた。ちなみに、最終的に秀吉はサラシに学ラン姿でボンボンを持って踊ると言う折衷案?で妥協して、大いに観客を沸かせたそうな。Fクラスの応援は事前に和真に言われた『もし腑抜けた応援しやがったら全力でケツバット』という脅し文句に心底ビビった男子一同の奮闘により、全学年全クラスの中で一番盛り上がった。

 




次回からはいよいよVS3-Aです。

激闘の果てに、戦士達は秘宝を取り戻せるのか……?



※秘宝=エロ本

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