島田美波
・成績……C
・操作技術……B
・野球センス……B
点数はCクラスレベル(数学はAクラスレベル)とFクラスではトップクラスであり、運動神経や操作技術も申し分ない。しかし相手が相手なだけあって活躍は今のところ少なめ。
ムッツリーニ
・成績……D
・操作技術……B+
・野球センス……A
従来の試召戦争と同じく科目が保健体育のときはまさに無敵。相手が敬遠してこようがお構いなしに戦況を有利な方向に持っていけるポテンシャルを秘めている。さらに重要な局面を任されることが多いせいか、操作技術も周りのクラスメイトに比べてやや高い。
姫路瑞希
・成績……S
・操作技術……B
・野球センス……F
並外れた点数を絶望的な運動神経の無さが台無しにしているためロクに活躍できていない。哀しいことに今後も出番は多分回ってこない。
木下秀吉
・成績……A
・操作技術……B
・野球センス……C+
実を言うと腕力はともかく彼の運動神経はそこそこなのだが、クラスメイト達や実姉がアレなので相対的に低く見られがち。
《日本史》
『二年Fクラス 木下秀吉 245点
VS
三年Aクラス 夏川俊平 276点
三年Aクラス 常村勇作 288点』
夏川「オラァッ!!!」
秀吉「むぅ!?……これは、手強いのう……」
一球目、秀吉はインハイに投げ込まれたストレートにのけ反りみすみすストライクを献上してしまう。最終回だけあって常夏コンビ改め常夏バッテリーの気迫はさっきまでとは比べ物にならない。
夏川「ラァッ!!!」
秀吉「ぐっ(ガキィンッ)し、しまった!?」
続いて投じられた二球目は、先程のストライクすれすれのコースとは打って変わってど真ん中。完全に裏をかかれた秀吉は対応しきれずに中途半端なスイングになってしまい、あろうことか三塁手の真正面に転がしてしまう。
常村「よし、打ち取ったぜ!」
秀吉「やられたのじゃ……」
三塁手の堀田は転がってきたボールをキャッチし、すぐさまファーストに全力で送球した。
バチィンッ!
『し…しまった!?』
常村「バッ……何取りこぼしてんだよ!?」
しかし野球の神様は秀吉に微笑んだようで、凄いスピードで投擲されたボールは一塁手のグローブを弾いて落球した。慌てて拾うもののその間に秀吉は一塁に到達してしまう。
『す……すまねぇ夏川……』
夏川「……いや、今のは堀田のミスだ。真剣なのは結構だけどよ、Aクラスレベルの点数の送球なんざそうそうとれねぇってことを、この機会に覚えとけよ」
『あ、ああ……すまん』
ここでチームメイトを責めてもさっきの失敗は無かったことにはならないので、夏川はクールダウンを促し自身も気持ちを切り替えるが、状況は一気にピンチを迎えてしまった。なぜなら次のバッターは日本史を得意とする明久なのだから。
明久「試験召喚(サモン)!」
召喚獣を喚び出しながらバッターボックスに入る。しかしこ遅れて表示された明久の点数によって、常夏コンビのみならずその場全ての人間は度肝を抜かれることになる。
《日本史》
『二年Fクラス 吉井明久 372点
VS
三年Aクラス 夏川俊平 276点
三年Aクラス 常村勇作 288点』
「「「ぶほぉっ!?!?!?」」」
思わず吹き出してしまう生徒が何人もいた。召喚大会決勝や先日の胆試しから明久が日本史を得意としていることは周知の事実ではあるが、いくらなんでも予想外過ぎる点数であった。キング・オブ・バカの名をほしいままにする明久が、学年トップクラス……二年以外の学年ならば首席に匹敵する点数を取ったのだ、驚くなという方が無理があるだろう。
常村「なんだよその点数は……お前、いつの間にこんなに伸びたんだ……?」
明久「僕だってこの夏休み、ただ遊んでたわけじゃないんですよ。もうすぐ解禁される試召戦争に備えて必死に勉強したんだ……この教科だけ集中的にね!」
常村「……なんつうか、まさにバカの一つ覚えだな」
明久「誉め言葉として受け取っておきましょう」
夏川「ぐっ……クソォッ!」
表面上はどうにか取り繕えていたものの先程のエラーの影響は残っていたようで、夏川が投げたボールは精彩を欠いたものとなっていた。
そんな雑な投球で今の明久に通用する筈もなく…
キィイイン!
……明久の召喚獣は痛烈な長打を放ち、二塁打となる。まだ失点こそしていないものの、夏川にとってこの被弾は点数以上に致命的なものとなったことは間違いない。ピッチャーのコンデイションは基本的に水ものであり、一度調子が崩れだすとそう簡単には持ち直すことはできない。
結果、
翔子「……えいっ!(カキィイイイン!!)」
和真「ハァッ!(カキィィィィイイイイイイン!!!)」
雄二「オラァッ!(カキィイイイン!)」
Fクラスのクリーンナップ三人に痛烈な本塁打を浴びてしまう。その後下位打線の三人はどうにか打ち取ることに成功したものの、既に点差は取り返しのつかないほど開いてしまっていた。
《五回表終了。現在9-4》
『ストライク!バッターアウト!』
先頭打者の市原が敢えなく三振に倒れ、後続のバッターはここまで攻守ともにまるで良いところがない堀田。
《日本史》
『二年Fクラス 木下秀吉 245点
二年Aクラス 坂本雄二 346点
VS
三年Aクラス 堀田正俊 288点』
バッターボックスに召喚獣を向かわせながら、堀田はベンチで意気消沈している夏川のことを思い返す。
堀田(夏川の奴、落ち込んでたな……常村もそうだが、ちょっと前まで平気で人を見下すような奴だったのに、人は変わるもんだ)
『ストライク!』
ここに来て秀吉のピッチングがより精度を上げている。点数や操作技術はともかく、スポーツをあまり得意としていない堀田には少々荷が重いのかもしれない。
堀田(……でも、そんなアイツが今落ち込んでるのは……どう考えても俺のせいだよな……?)
『ストライク!』
それに加えて、かつて神童と謳われた雄二のリードが難易度をよりつり上げている。たとえ打てなかったとしても、常村や夏川、金田一達は彼を責めるようなことはしないに違いない。
堀田(今のアイツなら俺を責めたりはしない……でも、一方で凄く落ち込むだろうなぁ……
何とかしてやりたいって思っても、バチは当たらねぇよなぁっ!)
カキィィィィイイイン!
雄二「っ!?」
秀吉「なんとっ!?」
それでもくじけることなく前を進む者には、野球の神様は答えてくれたようだ。秀吉の放ったアウトローの速球を一か八かでフルスイングした結果、ボールはライト方向の空の彼方に消えていった。堀田は悠々とベースを一周してから、二年生達に向かって高らかに宣言する。
堀田「勝ち誇るのはまだ早いぜ……俺達の闘志は、まだ死んじゃいないんだからよ!」
夏川「堀田……お前……!」
常村「堀田の言う通りだぜ。ここらで三年の凄さって奴を見せつけてやらねぇとな……そうだろテメェら」
『おぉぉおおぉぉ!』
堀田の本塁打で勢いに乗った3-Aチーム。その後小村は撃ち取られたものの常村、金田一、二人が立て続けにヒットを放ち、2アウト2,3塁のチャンスで夏川が打席に立つ。
秀吉「……いくぞい!」
夏川(こいつ、立て続けに被弾したってのに全然動揺してねぇ……敵ながら大した剛胆さだぜ。
……だがな、)
カキィィィィイイイン!
秀吉「くっ……無念じゃ……」
夏川「ここで打たなきゃ、男が廃るぜ」
インハイ気味に投じられた速球を、夏川は一切怯むことなくジャストミートした。打球の行方など確認する必要すらないだろう。
雄二「……審判、タイム!ピッチャーを吉井明久に、それにキャッチャーを柊和真に交代!」
一点ビハインドで益々3-Aの士気が上がるなか、突然雄二がバッテリーを丸ごと交代し出した。
明久「秀吉、後は任せてよ!」
和真「ったく、俺はショートだってのに……」
二人の召喚獣、そしてバッターボックスに入った名波の召喚獣の点数が表示される。
《日本史》
『二年Fクラス 吉井明久 372点
二年Fクラス 柊和真 495点
VS
三年Aクラス 名波健一 299点』
ボールの速度は召喚獣の点数に比例して速くなる仕様上、この回の明久のストレートは秀吉を遥かに凌駕するものとなる。しかしその分キャッチャーに求められる技量もはね上がるため、和真の力量が足りなければより不利な状況になることは間違いない。
バシィィイイイッ!!!
和真「あっぶねぇなぁ……危うく取りこぼすところだったじゃねぇか」
そんな心配を一周するかの如く、和真は明久の超豪速球を平然とキャッチしてみせた。どうやら自滅は期待できそうもないようだ。
『ゲームセット!9-8で2年Fクラスの勝利』
心配が雄二達の勝利を高らかに告げた。結局あの後明久は下位打線三人相手に奪三振ショーを繰り広げ、Fクラスを勝利に導いた。負けはしたものの、三年生達は悔しそうにしながらもどこか晴れ晴れとした表情になっていたそうだ。
ピピピピピ
雄二「ん?偵察に出していた連中からの報告か、どれどれ……んなっ!?」
携帯を開きメールの内容を確認した雄二は、信じられないといった表情になる。和真と明久が何事かと問いただすと、雄二は携帯を渡してきたので二人は画面を覗きこみ、そして雄二と同じく驚愕する。
メールの内容を要約すると、
二年Aクラスが教師チーム相手に……完全試合を達成したとの知らせであった。
さて、次の回で一旦余興を挟んでから、いよいよVS二年Aクラスです。