そういえば気になったんですが、美波さん、姫路さん、翔子さんの三人は過剰な暴行を加えてるシーンはそんなに差はないのに、なぜ翔子さんアンチの作品はほとんどないんでしょう?
明久「……うわ、こりゃ酷い」
和真「あいつは相変わらずやることがせこいなぁ……」
相手の前線部隊を片付けた後、教室に戻った和真達が見た光景は、穴だらけになった卓袱台と折られたシャープペンと消しゴムだった。恐らくクラス代表、根本 恭二の指示だろう。根本という男はとにかく評判が悪い。噂ではカンニングの常連だとか。目的の為には手段を選ばないらしく、曰く『球技大会で相手チームに一服盛った』とか『喧嘩に刃物はデフォルト装備』とか。まあそれらは噂に尾ひれがついたものだろうが。
ちなみに『やるからには当然勝ちにいくが、勝負は楽しんでこそ』が信条の和真にとって根本は当然いまいちソリが合わない相手である。
明久「これじゃ補給がままならないよ」
秀吉「地味じゃが、点数に影響の出る嫌がらせじゃな…」
雄二「あまり気にするな。修復に時間はかかるが、作戦に大きな支障はない」
明久「…雄二がそういうならいいけど」
何かしら気になりながらも、大したダメージではないと断定した雄二の言葉に明久は納得する。
明久「でも、どうして雄二は教室がこんなんになってるのに気づかなかったの?」
これは明らかに戦闘開始から今までの間にやられた嫌がらせだろう。雄二が教室にいたのなら気づかないはずがない。つまり雄二は何かしらの事情で教室を空けていたことになる。
雄二「協定を結びたいという申し出があってな。調印の為に教室を空にしていた」
秀吉「協定じゃと?」
雄二「ああ。四時までに決着がつかなかったら戦況をそのままにして続きは明日午前九時に持ち越し。その間は試召戦争に関わる一切の行為を禁止する。ってな。それを承諾してきた」
明久「え?でも体力勝負に持ち込んだ方がウチとしては有利なんじゃないの?」
Fクラスは学力はからっきしだが男子の比率がとても高い分、他のクラスに比べて体力にはアドバンテージがある。だから一見その協定はFクラスにメリットが無いように思えるが、実はそうではない。
翔子「……吉井、うちには瑞希がいる」
明久「あ、そっか」
雄二「本丸はまだ落とせそうにない。あいつ等を教室に押し込んだら今日の戦闘は終了になるだろう。そうすると作戦の本番は明日になる。その時はクラス全体の戦闘力より姫路個人の戦闘力の方が重要になる」
和真(……それは建前でおそらく姫路はフェイク。俺と翔子と姫路はまず間違いなく最大限に警戒されているからそう自由には動けねぇだろう。Bクラスにはあいつもいることだしな。となると、根本を殺るのはあいつか)
雄二「つまりこの協定は俺達にとってもかなり都合がいい」
明久(なるほど、確かにその通りだ……でも何かがおかしい。机に嫌がらせをするためだけにそんな協定を申し出るなんて、根本君はそんな甘い男なのだろうか)
秀吉「明久。とりあえずワシらは前線に戻るぞい。向こうでも何かされているかもしれん」
そう言って秀吉は舞台を率いて教室を出て行った。
和真「まだ時間あるな。じゃあ俺はノコノコうろついてるBクラスの奴等を手当たり次第狩ってくるぜ」
お前は通り魔かと言いたくなるようなセリフを残し、和真も教室を出ていった。
和真「戦争中だっつうのに何やってんだお前らは……」
あれから三人ほど殺った後四時になったので教室に戻る途中、明久をぼこぼこにして引きずり回していた島田と会う。
島田「あ、柊!ちょっと聞いてよもう!」
明久を投げ捨ててから、若干涙目になりながらながら和真に駆け寄る島田。
話をまとめると、明久が保健室に運ばれたという嘘に騙されてBクラスの生徒に捕まり、明久は何を勘違いしたか島田を偽物と勘違いしてBクラスごと始末しようとし、なんとか誤解が解けた後明久が、自分は最初から本物だと気付いてた、とほざいたらしい。部隊の指揮官が勝手に持ち場を離れるなと途中思ったが、それ以上に明久が救い用のないバカだとわかったので水に流した。
和真「それにしても、お前も災難だなぁ~」
島田「そうよ!全く…」
和真「こんなバカに惚れちまったんだからな」
島田「そうそ……ふみゅっ!?」
適当にふっかけた和真の誘導尋問にあっさり引っ掛かる島田。
島田「なななななななに言ってるのよっ!ウ、ウチがこんなバカのこと好きなわけないでしょ!」
これ以上無いほど露骨に動揺している。これで気付かない奴は明久(バカ)くらいであろう。これ以上切り込んでも頑として認めようとしないであろうと判断した和真は追及はしないでおく。普段ならサディズム全開で弄り倒しているが先程も言った通り今は戦争中、下手に苛めて士気に関わると面倒だ。
和真「……そうかい。まぁそれはそれとして、取り敢えず教室に戻るか」
島田「そ、そうね……」
和真(相変わらず素直じゃねぇな…あんまりのんびりしてると置いてかれるぞ。姫路は思ったより行動力がありそうだしな)
そんなことを考えたながら、和真はは明久を引きずる島田と共にFクラスの教室に戻る。
和真「おーい、戻ったぞ」
雄二「ああ、おつかれさん」
和真「さてと、今日はもうやることねぇな。……ふわぁ……急に眠気が…………少し寝るか」
急に気が抜けたのか畳に横になる和真。この些細な気の緩みが命取りになるとも知らず。
和真「…………んむ…ふわぁあ…あれ?おい秀吉、あいつらもう帰ったのか?」
目が覚めると教室内には秀吉以外居なくなっていることに気付き、そのことを聞く。
秀吉「雄二達はCクラスと協定を結びにいったぞい。なんでもワシらの戦いの後攻めこむ準備をしておるらしくてのう」
和真「……んだとぉっ!?くそ、このままじゃ不味い!」
秀吉「ど、どうしたのじゃいきなり!?」
和真「Cクラス代表の小山 優香は根本の彼女、確実にグルだ!これは明らかに俺達を嵌める罠なんだよ絶対!」
秀吉「大丈夫じゃ和真!霧島も姫路もついていった!Bクラスにそう簡単にあやつらを倒せる者がいるとは思えん!」
秀吉は和真を落ち着かせようとそう言う。だがBクラスがとんでもないジョーカーを握っていることを和真は知っていた。
和真「それがいるんだよ、一人だけ!取り敢えず俺は行ってくる!お前は念のため待っててくれ!」
そういって和真は全速力でCクラスに向かう。そのときの和真の表情は、いつもの飄々とした不敵な笑みの面影すらない、鬼気迫るものだったと言う。
和真(くそ、俺としたことが!なんでこんなときに寝てんだよ!もし根本が源太を連れてたら不味い……)
雄二「Fクラス代表の坂本 雄二だ。このクラスの代表は?」
雄二がCクラス教室の扉を開き教室の全員に告げる。教室には大勢残っており、ムッツリーニの情報どおり漁夫の利を狙って試召戦争の準備をしてるようだ。
「私だけど、何か用かしら?」
名乗り出たのはきつい性格だと一目でわかるような表情を浮かべたショートヘアーの女子。バレー部の小山 友香だ。
雄二「Fクラス代表としてクラス間交渉に来た。時間はあるかは?」
小山「クラス間交渉?ふぅん……」
いやらしい笑みを浮かべる小山。見た目通り性格はあまり良くなさそうである。
雄二「ああ。不可侵条約を結びたい」
小山「不可侵条約ねぇ……。どうしようかしらね、
根本君?」
根本「当然却下。だって、必要ないだろ?」
教室の奥から取り巻きを連れて、根本と一人の男子生徒が前に立った。灰色のたてがみのような髪に猛禽類のような鋭い目つきをした、いかにも不良といった生徒だ。
明久「な、根本君!Bクラスの君がどうしてこんなところに!?」
根本「酷いじゃないかFクラスの皆さん。協定を破るなんて。試召戦争に関する一切の行為を禁止したよな」
明久「何を言って……」
根本「先に協定を破ったのはそっちだからお互い様、だよな。五十嵐(イガラシ)、やれ!」
五十嵐「あいよ」
雄二「五十嵐だと!?やばい!」
五十嵐と呼ばれた根本の隣の生徒が前にでる。
五十嵐「遠藤先生!Bクラス五十嵐が-」
翔子「……させない!Fクラス霧島が受けて立つ!試獣召喚(サモン!)」
雄二「待て翔子!?」
雄二が制止するも召喚獣が出現する。
翔子の召喚獣は武者鎧に日本刀、
五十嵐の召喚獣は民族衣装にトマホークだ。
《英語》
『Fクラス 霧島 翔子 432点
VS
Bクラス 五十嵐 源太 486点』
明久「なっ!?」
表示された点数に驚きを隠せない明久。それも仕方ない、五十嵐の点数は学年首席に匹敵するほどの高得点であったのだから。
五十嵐「ここに来る前二年間、イギリスにいたんでなぁ!悪ぃが俺様にとって高校生レベルの英語なんざゴミ同然だぜ!」
明久「僕らは協定違反なんてしてない!これはCクラスとFクラスの-」
雄二「無駄だ明久!根本は条文の『試召戦争に関する一切の行為』を盾にしらを切るに決まってる!」
根本「ま、そゆこと♪」
明久「屁理屈だ!」
根本「屁理屈も理屈の内ってな」
翔子「…雄二、逃げて!」
雄二「翔子!だがお前は-」
翔子「…早く!」
雄二「…くそっ!お前等、ここは逃げるぞ!」
悔しそうに雄二が言うと、明久達はCクラス教室から離脱した。
根本「五十嵐、霧島は任せたぞ。わかってると思うが確実に仕留めろよ?」
五十嵐「へいへい」
根本はそう言うと、取り巻きと共にFクラスを追って教室を出た。
五十嵐「悪ぃな、あんまりすっきりしねぇやり口だがよ……これは戦争なんでな」
五十嵐は若干ばつが悪そうに翔子にそう謝罪する。チンピラみたいな見かけの割に意外にも正々堂々を好む性格のようだ。
翔子「……別に謝らなくてもいい。ただ…」
五十嵐「あん?」
翔子「……私は負けてあげるつもりなんかない!」
五十嵐「…ハッ、テメェ面白ぇな!じゃあ始めようか……腕輪持ち同士の闘いをよぉっ!」
二人はそれぞれ腕輪の能力を発動させる。
〈翔子〉の周りに氷の礫が舞う。
〈源太〉の召喚獣の左腕が鋭い爪を備えた巨大な黒い腕に変わる。
翔子「……アイスブロック!」
五十嵐「巨人の爪!」
無数の氷の礫と巨大な腕がぶつかり合う。
その衝撃はすさまじく、召喚フィールドが音を立てて軋む。しかし徐々に腕の方が押し始める。
五十嵐「どうやら点数差があるせいか、パワーは俺様に分があるらしいなぁ!」
翔子「………………」
五十嵐「覚悟は良いな?じぁあ…トドメだぁぁぁ!」
そのままフルパワーで〈五十嵐〉の腕は〈翔子〉を蹴散らした。〈翔子〉が力尽きる。
だが、
五十嵐「な、なにぃ!?」
その直後、隙ができた〈五十嵐〉の両側から氷の礫が飛来し、そのまま串刺しにした。
フルパワーが来る前に氷の結晶を〈五十嵐〉の横にさりげなく潜ませていたらしい。礫がまともに突き刺さり、〈五十嵐〉も倒れる。
《英語》
『Fクラス 霧島 翔子 戦死
VS
Bクラス 五十嵐 源太 戦死』
結果は相討ち。
翔子「……ごめん、でもこれは戦争だから」
五十嵐「…アッハッハ!テメェほんと面白ぇな!」
勝てる勝負を落とした結果だが、五十嵐は悔いはないと言わんばかりに満足そうに笑った。
和真「どうやら間に合ったようだな!」
和真はなんとか逃走中の明久達と合流した。
明久「和真!?来てくれたんだね!」
和真「事情は把握してる!ここは俺に任せて先行け!」
そう言うと和真は明久達とBクラスの間に立ちふさがる。しかし少し間に合わず、二人ほど逃がしてしまった。
和真(ち、二人逃がしたか…それに、翔子がいなかったな…源太にやられたか、チクショウ!)
根本「おいおい柊。もう少しでFクラス代表を討ち取れたのに、邪魔しないでくれよ」
和真「俺が邪魔なら力づくで排除しろよ。これは戦争だぜ?田中センセ、Fクラス柊が世界史勝負を申込むぜ!試獣召喚!」
根本「じゃあそうさせて貰うさ。お前等、例の作戦通りにやれ」
根本がいやらしい笑みを浮かべながらそう言うと、Bクラス生徒達は和真を取り囲んだ。
『試獣召喚!』
和真の召喚獣をとり囲むようにBクラス生徒達の召喚獣が出現する。
《世界史》
『Fクラス 柊 和真 400点
VS
Bクラス生徒×8 平均185点』
和真「お前等も学習しねぇな…俺相手に大人数で来たらどうなるのかわかってねぇのか?」
根本「残念だが、お前の弱点はもう割れてんだよ」
勝ちを確信しているかのように、自信たっぷりに根本は言う。
和真「…弱点だぁ?」
根本「お前の腕輪の能力はいくつもの大砲を召喚する能力。確かに大した破壊力らしいが、こうやってバラければ避けられないことはないんだよ」
そう。〈和真〉の大砲のスピードはそこまで速くはない。Bクラス召喚獣のスペックなら避けに専念すれば単発ならなんとか避けられるレベルだ。一対一や相手が固まっているなら砲身を並べて弾幕状に放つことでその弱点をカバーできるが、今回のように囲まれてはそれができない。何人かは確実に始末できるが残った召喚獣に隙を突かれて戦死するのがオチだ。
和真「…なるほど、思ったより頭がキレるな。確かに腕輪能力を封じられた状態でこんだけのBクラスレベルの人数は流石の俺でも捌ききれねぇな」
根本「どうだ、諦めたか?」
勝ち誇る根本。しかし和真はなんら萎縮することなくいつもの笑みを浮かべている。
和真「ほざけ。誰が諦めるかよ」
根本「この状況をなんとかできるとでも?無謀だな」
そういって根本はせせら笑う。
和真「はっ、言ってろ。
無茶で無謀と笑われようと、意地が支えのケンカ道!
壁があったら殴って壊す!
道がなければこの手で創る!
俺を、誰だと思っていやがる!
Fクラスの勝利への道は、俺が切り開く!!!」
柊 和真は諦めない。たとえどれほど絶望的な状況であろうと、突破口をこじ開け希望をその手に掴もうとする。
根本「…チッ、だからお前は気に食わないんだよ!そんな強がりを言ってどうなるというんだ!」
和真「強がりかどうかは今見せてやるよ……フル装填!」
ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ…
根本「っ!お前等注意しろ!」
和真「残念だが無駄だぜ…」
〈和真〉の周りに40門の、以前とは形状の異なる砲身が出現する。そして、
和真「一斉閃光砲撃(ガトリングレーザー)!」
それぞれの砲身から閃光が放たれ、一瞬でBクラス生徒達の召喚獣を消滅させた。
『……………………え?』
あまりの出来事に、Bクラス生徒達は何の反応もできなかった。
『Fクラス 柊 和真 1点
VS
Bクラス生徒×8 戦死』
根本「ば、ばかな!?お前、何をしたぁぁぁ!?」
根本は狼狽える。まあ無理もないだろう、確実に挽回不可能と思われた状況から、相手が予想だにしないジョーカーを用いて形勢をひっくり返されたのだから。
和真「特別大サービスで教えてやるよ。俺の腕輪は点数を限界まで注ぎ込んだとき、砲弾が光速のレーザーになる裏技があんのよ。ただまぁ…」
〈和真〉は持っている槍を支えきれず床に落としてしまった。
和真「当然使用後は瀕死になるし、おまけにこれ使った日は召喚獣のスペックが最低まで落ちるデメリットがあるがな。400ぴったりなのになぜか1点残る仕様だけどよ」
それはつまり、追撃されれば戦死は免れない上、逃げ延びたとしてもその後最低レベルのスペックの上丸腰で闘わなければならないということだ。和真の武器は大きすぎて、そんなスペックでは持ち運ぶことすらままならないのだ。
根本「ば、バカな!?そんな状態でどうやって俺を倒そうっていうんだ!?」
和真「おいおい、なに的外れなこと言ってんだよ、」
馬鹿にするように笑いながら根本を指差し、
和真「試召戦争はチーム戦だぜ?仲間が俺の代わりにお前をぶちのめしてくれるだろうよ!」
そう宣言した。
根本「お…おのれぇ!試獣召喚!」
根本の召喚獣が和真の召喚獣を切り裂いた。
柊和真、戦死
根本「…くそ、気に入らねぇ……好き放題言いやがって……だが俺にはまだ切り札がある。これで要注意の三人は全て封じたぜ!」
というわけで、和真君&翔子さんフェードアウトです。
翔子さんは敵の絶対的エースを道ずれにし、和真君に至っては15人もの生徒を戦死させたので、戦績としては十分でしょう。
あと、カズマなのにカミナでした。
和真の腕輪の奥の手は、技そのものが死亡フラグです。今回のようにやむを得ない場合以外は決して使いません。
霧島 翔子
・性質……バランス型
・総合科目……4700点前後 (学年2位)
・400点以上……保健体育以外
・ステータス
(総合科目)
攻撃力……A
機動力……A
防御力……A
・腕輪……アイスブロック
学年二位の肩書きに恥じないスペック。
弱点らしい弱点は無い。
『アイスブロック』
50点を消費して氷の塊を召喚する能力。温度を下げたり相手を凍らせたりはできない。無数の氷の礫を生み出し相手に撃ったり、氷の壁を生み出し身を守ったり相手を閉じ込めたり、フィールドに氷を敷いたりなど、応用力の高い能力。
ただし50点につき1種類しかできない。
では。