バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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【三年Aクラス主力選手データ】

金田一真之介
・学力……A+
・操作技術……A+
・野球センス……A

梓に次ぐ3-Aのメイン火力なだけあって点数、操作技術ともに申し分なし。おまけにサッカーとはいえ運動部のキャプテンを務めていただけあって、運動神経もトップクラスである。


常夏コンビ
・学力……A+
・操作技術……A
・野球センス……B+

清涼祭以降真剣に受験勉強に取り組んでいるため、現在の学力は雄二に匹敵する(どの教科も夏川より常村の方が僅かに高いのはご愛敬)。金田一と同じく明確な弱点は特に見当たらない。



 


野球対決!2-F対3-A(中編)

二回の教科は化学。Fクラスの攻撃は期待値の低い下位打線からであり、おまけに常夏コンビはカッチガチの理系のため化学は得意科目なようで、あっさりと三者凡退してしまう。

続いて二回裏、七番の〈近藤〉の打球を〈美波〉が華麗にキャッチしてどうにか打ち取るも続く〈兼藤〉には一塁に進まれ、さらに九番の〈市原〉に痛烈なライナーを打たれる。あわや追加点かと思われたが、運良く()()()()()()()()だったため並外れた脚力と反射神経による化け物染みた守備範囲を誇る〈和真〉が見事にダイビングキャッチ、そしてすかさずファーストに送球してダブルプレーとなる。

 

そして三回表。この回の科目は英語、そしてバッターは一巡したため再び秀吉に回る。

 

秀吉「試獣召喚(サモン)じゃ!お主ら、さきほどのように簡単にはやられんぞい!」

 

一打席目は手も足もでず三振してしまった影響か、秀吉の気合いは十分であった。知っての通り秀吉に恋愛感情を抱いている常村であるが勝負事なので心を鬼にして真剣に臨む所存である。本気で勝ちにいくのならむしろその感情を全面に押し出して動揺を誘うべきのような気がしなくもないが。

 

 

《英語》

『二年Fクラス 木下秀吉 263点

VS

 三年Aクラス 夏川俊平 266点

 三年Aクラス 常村勇作 271点』

 

 

点数差はほぼ互角。秀吉の気合いの入り用から考えてまともに捉えられたら本塁打も十分あり得る。そう判断した常村はセオリー通りアウトローギリギリのコースを指示する。夏川も特に異論は無く、召喚獣にその場所に投げ込ませる。

 

 

……全て秀吉の筋書き通りであるとも知らずに。

 

秀吉「…………かかったのじゃ!」 

 

〈夏川〉の投球直後、〈秀吉〉はすかさずバントの構えを取る。ゴン、と硬い音が響いた。

 

常村「な…プッシュバントだと!?」

夏川「しまった!完全に裏をかかれた!」

 

急いで三塁手の〈堀田〉が転がったボールに向かうが時既に遅く、〈秀吉〉は悠々と一塁ベースを踏んでいた。

 

常村「くそっ、完全にしてやられたぜ……」

夏川「気合いの入った振る舞いは全部演技かよ……」

和真(流石秀吉、大した千両役者ぶりじゃねぇか)

 

続く〈明久〉は手堅く送りバントを行い〈秀吉〉を二塁まで進める。これで得点圏内、しかも次からのバッターは翔子、和真、雄二の最強トリオとまさに絶対絶命だ。

 

翔子「……サモン」

 

 

《英語》

『二年Fクラス 霧島翔子 512点

VS

 三年Aクラス 夏川俊平 266点

 三年Aクラス 常村勇作 271点』

 

 

表示された点数は比較するのもアホらしくなるほど圧倒的なものであったが、常村は敬遠するべきかどうか頭を悩ませることになる。この点数差はハッキリ言ってキツ過ぎるものの、かといって敬遠したところで次のバッターは翔子に輪をかけてキツい和真である。そして和真も敬遠すれば、二人に比べれば一段格が落ちるものの充分驚異的なバッターである雄二に満塁の状態で回ってしまう。

 

金田一「……タイム!ピッチャー夏川に代わって俺こと金田一が務めます」

 

そんな風に常村が悩んでいると、突然金田一からのピッチャー交代宣言をした。常村が呆気に取られるなか、夏川が金田一に疑問をぶつける。

 

夏川「なんでこのタイミングで交代なんだよ?」

金田一「アイツら押さえんのは正直お前じゃ荷が重いだろ。英語が得意な俺が投げた方が確実だ」

夏川「いやいやいや、お前の点数だと下手したら常村が吹き飛ぶぞ!?」

金田一「逆転されるリスクに比べたら安いもんだ」

常村(えぇぇえぇぇぇえええ!?アイツ何言っちゃってんのぉぉぉおおお!?)

 

常村が内心でシャウトする中、金田一はそのまま強引に押しきってマウンドに立つ。常村の抗議の視線もどこ吹く風、さっさとコースを指定しろと無言で訴えかける。

 

常村(ったく、これだから体育会系は……とりあえずインハイに、と)

 

常村がコースを指定すると、〈金田一〉は大きく振りかぶってボールを放り投げた。

 

 

ズバァァアアァァアン!!!

 

 

常夏「「…………え?」」

翔子「……っ!速い……っ!」

 

 

《英語》

『二年Fクラス 霧島翔子 512点

VS

 三年Aクラス 金田一真之助 408点

 三年Aクラス 常村勇作 271点』

 

 

あまりの球速に味方であるはずの常夏コンビが呆然とする中、初見で打つことは自分には不可能であると彼女の優れた頭脳が判断してしまったのか、翔子は悔しそうに歯噛みする。いかに超人的な点数を持っていてもボールに触れられなければ意味がないと言わんばかりに、〈金田一〉はそのまま一方的に三振に打ち取った。

 

……のは良いものの、

 

 

《英語》

『二年Fクラス 霧島翔子 512点

VS

 三年Aクラス 金田一真之助 408点

 三年Aクラス 常村勇作 135点』

 

 

常村「やっぱこうなったよ畜生!俺の召喚獣もうボロボロじゃねぇか!」

金田一「うるせー!テメーがちゃんと捕らねーから悪いんだろうが!生きているだけありがたいと思え!」

 

二球ほど取りこぼしてしまったせいで常村の点数が半分を切っていた。まあ無理もない、400点台ともなるとストレートは尋常じゃないほどの()豪速球になる。むしろ常村はたった二球しか取りこぼしていないことを褒めるべきだろう。続くバッターはFクラス最強の和真。流石の和真も400点オーバーの超スピードボールを初見でジャストミートすることは叶わなかったが、それでも手堅く二塁打を放ち追加点を入れてスコアを同点にした。そしてその次のバッターである雄二は手も足も出ず空振り三振に倒れた。

 

 

《英語》

『二年Fクラス 坂本雄二 309点

VS

 三年Aクラス 金田一真之助 408点

 三年Aクラス 常村勇作 7点』

 

 

脅威のクリーンナップを1失点で凌ぎきったものの、その代償は安くなかった。もし〈和真〉があと一球でもボールを見送っていれば、今頃〈常村〉は抹殺されていたことだろう。流石に金田一もこれはダメだと思ったのか、次の回からは例えピンチでも常夏バッテリーで行くことに同意する。ただでさえ三年にとっては得るものが何も無い余興同然の野球大会なのに、その上テストを受けさせられるなどあまりにも不憫過ぎるであろう。

 

《三回表終了。現在3-3》

 

 

 

 

 

 

そして二回裏、三年生達の攻撃であるが、二年生チームのポジションが一部変更されていた。

 

 

《英語》

『二年Fクラス 木下秀吉 263点

 二年Fクラス 坂本雄二 309点

VS

 三年Aクラス 堀田雅俊 242点』

 

 

常村「どういうことだ……?なんでピッチャーが木下になってんだよ?」

夏川「確かに何でアイツがピッチャーじゃないのか疑問だったけどよ……なんでこのタイミングで交代したんだ?」

 

そう、さっきまでファーストだった秀吉がマウンドに、その代わりに明久が一塁ベースについていた。

別に違和感のあるポジションではない。トレースを使用した秀吉の点数は全教科250点前後と、ピッチャーをするのに適正な成績ではある。彼らがどうしても解せないのは、何故今まで秀吉を温存していたのかということだ。

 

『ストライク!バッターアウト!』

 

一番打者の堀田、二番打者の小村と、3-A上位打線の二人が手も足も出ず凡退する。

さっきまで〈明久〉の低得点のかわすピッチングに慣れてしまっている彼らに、〈秀吉〉の速球に即座に対応することは極めて難しいであろう。途中一球取りこぼしてしまったものの、雄二の方が高い点数のためさほど深刻なダメージには至らなかったようだ。

三番打者の常村は召喚獣をバッターボックスに向かわせるが、今の自分ではひっくり返っても打てはしないというと確信していた。

 

 

《英語》

『二年Fクラス 木下秀吉 263点

 二年Fクラス 坂本雄二 269点

VS

 三年Aクラス 常村勇作 7点』

 

 

何しろ点差が点差だ。どうやら野球仕様の召喚獣は点数が削られると運動能力が落ちるようで、バッターボックスに向かうまでも非常に緩慢な動きであった。

 

常村「おい坂本、一つ聞いても良いか?」

雄二「ん?何を聞きたいんだセンパイ?」

 

一球目のボールがストライクゾーンに収まるのもお構いなしに、常村は苦々しい表情で雄二に疑問をぶつける。

 

常村「なんでこの回まで木下を温存してたんだよ?まさかとは思うが……俺達を舐めていたのか?」

雄二「そいつは心外だな。アンタらのキャプテンにも言ったんだがよ……俺達とアンタらじゃあこの大会に懸ける熱意が違うんだよ」

常村「……熱意だと?どういうことだ?」

 

審判がツーストライクを告げるが、常村は気にも止めずに雄二に続きを促す。それを受けて雄二は常村の目をしっかりと見据えて言い放った。

 

雄二「決勝で当たるのが教師どもだろうと2-Aだろうと、秀吉の速球がいかにスゴくてもそれだけで抑えられるとは思えねぇ。そのためにはアイツらに守備に慣れて貰わないといけなかったんだよ」

常村「……なるほどな、優勝を見据えての行動と言うわけか」

雄二「そう、俺達が目指すのは優勝のみだ。アンタらに負けようが決勝で負けようが俺達にとっては…」

 

『ストライクバッターアウト!チェンジ!』

 

雄二「…何ら違いないんだよ。だったら、アンタらに負けるリスクを差し置いてでも決勝に備えとくのは当たり前だ」

 

リリーフ秀吉はAクラス上位打線を三者凡退に抑え、華々しくデビューを飾った。

 

常村(どうやら舐められているわけではなかったようだな。……面白ぇ、そこまで優勝が欲しいんなら……俺達に勝って

みせろ後輩ども!)  

 

《三回裏終了。現在3-3》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして迎えた四回、科目は保健体育。

先頭打者はこの科目限定で圧倒的な戦闘力を有するムッツリーニ。796点というアホみたいな点数に真っ向勝負など挑むわけがなく、常夏コンビはすかさず敬遠する。

しかしそれだけで回避できるほどムッツリーニは甘い相手ではない。積極的に盗塁を行い、次のバッターである須川が三振するまでに三塁まで到達した。

そして八番打者の福村は手堅くスクイズを決めて追加点を入れ、Fクラスは再逆転に成功した。

しかし3-Aも負けじと食い下がる。スクイズをさせる隙も与えず美波を三振に打ち取り見事四回表にピリオドを打ったかと思えば、続く四回裏で先頭打者である金田一がソロホームランを放ち、すかさず同点に追いついた。その後六番打者の名波に二塁打を打たれるものの秀吉は順調にアウトカウントを増やし、八番打者の兼藤をファースゴロに打ち取り四回を終わらせる。

得点は4-4の同点。決着は最終回に委ねられる。この回で決着がつかない場合は7回まで延長されるが、それ以降は引き分け扱いとなり両者共にトーナメントから脱落してしまう。

 

和真(ふざけんな、引き分けなんざ論外だ)

金田一(こんな所で負けるのは気に食わねー)

 

和真/金田一「勝つのは俺達二年Fクラス(三年Aクラス)だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第二グラウンドで和真達が一進一退の攻防を繰り広げているのに対し、体育館での試合は一方的な試合展開となっていた。

 

 

2年Aクラス  2 1 0 1 2   6 H9 E0

教師チーム 0 0 0 0   0 H0 E2

 

 

ご覧の通り、優勝候補No.1と謳われた教師チームの圧倒的劣勢……未だ得点はおろか一塁ベースを踏むことすらできないでいた。

否……それどころかピッチャーである〈蒼介〉の投げるボールに掠らせることすらできていない。現在打席に立っている教師は補習担当を務める我らが鉄人。しかし、人外染みた身体能力と学年主任に匹敵する点数を併せ持つはずのこの教師ですら、これまで〈蒼介〉のストレートに触れることすらできないでいた。

 

鉄二「くっ……この俺が手も足も出んとはな……!」

蒼介「名残惜しくもありますが……そろそろ決着と行きましょうか」

 

 

 

 

 




和真「西村センセ、召喚獣がかかわるとロクに活躍できてねぇな……」

蒼介「作者曰く『強大なボスキャラのかませに丁度良い強さ』だそうだ」

和真「補習室送りになっても知らねえからな……」

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