バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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お久し振りです。
今回は原作では省かれた始業式のシーンです。内容は新生徒会役員&一年生担当の学年主任の紹介……要するに新キャラの発表会ですね。

そこ!テコ入れとか言うんじゃありません!


七巻開始・始業式

笑いあり涙あり修羅場あり流血あり臨死体験ありその他諸々のハチャメチャな夏休みもようやく終わりを迎え、大多数の学生達の悲嘆の声も一切お構いなしに二学期がスタートする。現在全校生徒が始業式に参加するため体育館に集合している。ちなみに我らが和真はというと、用意されたパイプ椅子に座って学園長の無駄に長い上に大してありがたくもない話を心底気だるそうに聞いていた。

 

和真「はぁ……年をとると体感的な時間の流れが速くなるっつうけどよー、それに比例して話が長くなるのはどうにかなんねぇのか?」

姫路「柊君、ちゃんとお話しを聞かないとダメですよ」

 

隣に座っている姫路が困ったような表情で和真の愚痴を嗜める。この二人は苗字の関係上五十音順で並ぶと必然的に隣同士になるため、今回のような式典の最中に愚痴りだす和真を姫路が諌めるのはもはやFクラスの恒例行事と化している。

 

和真「んなこと言ってもダルいもんはダルいぜ……ったく、先進的な学校を謳うんならこんな式省いちまえばいいのによ」

姫路「もう、柊君ったら……あんまり我儘言ってると優子ちゃんに言いつけちゃいますよ?」

和真「ほー、そいつは困る。じゃあ俺は海水浴以降お前の体重がさらに増加したことを明久にチクるけど構わねぇよな?」

姫路「どうして知ってムグゥっ!?」

 

思わず大声を出しかけた姫路の口を予見していた和真がすぐさま手で塞ぐ。姫路が落ち着いたことを確認してから和真はその手を離す。

 

和真「式典の最中に大声出すんじゃねぇよ」

姫路「す、すみません……。でもどうして柊君がそのことを知っているんですか?誰にも言ってない筈なのに……」

和真「俺が知ってるわけねぇだろそんなどうでもいい情報。種明かしをすると、ただ単にカマかけただけだぜ」

姫路「はぅっ……!」

和真「俺が優子に弱いのは事実だがな、お前が駆け引きで俺に勝とうなんざ十年早ぇんだよ」

 

弱点が露呈しているとはいえ、和真の駆け引きの上手さは学園でも一二を争うレベルである。騙されやすい女子筆頭である姫路の生半可な戦術では返り討ちに合うのが関の山だろう。その後、体重の増加を露呈してしまった姫路はネガティブオーラを撒き散らしつつ沈み込んでしまい、流石に罪悪感を感じたのかその後和真も学園長の話は聞き流しつつもおとなしくしておくことに。

 

学園長「……っと、もうこんな時間かい?それじゃあ次は後期生徒会役員の紹介だよ。本当は一人一人に所信表明でもしてもらおうかと思っていたんだけど、時間が押してるから巻きで頼むさね」

和真(アンタの話が長いせいだろうが……)

学園長「名前を呼ばれたら前に出てきな。高橋先生、後は任せたよ」

高橋「わかりました。それでは二年生の役員から紹介していきましよう。まずは前期から続投の二人……会長の鳳蒼介君、副会長の橘飛鳥さん」

「「はい」」

 

高橋先生に名前を呼ばれた二人は、席を立ちゆっくりと歩みを進める。名家出身の二人(おまけに片や柔道インターハイチャンピオン、肩や世界的大企業の次期後継者)から滲み出る絶大なカリスマオーラに圧倒されたのか、僅かなざわめきすらシャットアウトされ体育館全体が静寂に包まれる。二人がステージに上がったのを確認してから、高橋先生は紹介を続ける。

 

高橋「続いて後期から任に着いた二人……書記の沢渡晴香(サワタリ ハルカ)さん、会計の二宮悠太(ニノミヤ ユウタ)君」

 

深緑色のセミロングをした快活そうな女子生徒と、坊主頭であるが夏川と違ってかなり真面目そうな男子生徒が席を立ちステージに向かって歩き始める。 

 

和真(あいつらが役員か。まあ二人とも文武両道だし人選としてはベストかもな、性格も文月に何故かやたら多い奇妙奇天烈系ってわけでもねぇし)

 

二宮の期末テストの順位は12位、沢渡も14位とどちらも成績優秀者である。流石に和真達のような精鋭中の精鋭には遠く及ばないものの、二人とも得意科目では飛鳥を上回る点数を叩き出している。打倒Aクラスを掲げる上で無視できない主力級と言っていい。さらに沢渡は女子ラクロス部、二宮は野球部の部長にそれぞれ任命されたほどのスポーツマンでもある。生徒を代表する立場にはまさしくうってつけであろう。

 

高橋「……では、一年生の新役人の紹介に移りたいと思います。庶務の黒木鉄平(クロキ テッペイ)君、書記の宗方千莉(ムナカタ センリ)さん、会計の志村泰山(シムラ タイザン)君……そして副会長の綾倉詩織(アヤクラ シオリ)さん」

 

呼ばれた四人が一斉に立ち上がる。和真と言えど一年生とは流石にあまり交流が深くないため、わかっている情報はこの四人が、それぞれ別クラスにもかかわらず非常に仲が良いということぐらいである。

 

和真(これじゃあまるで仲良し団体だなオイ。……まあアイツら四人とも確か学年トップクラスだったし、学園側も文句は無いだろうな。

……それにしても、なぁ……)

 

和真はステージに向かって歩きだす四人をそれぞれ観察してある感想を抱く。

 

まずは学年首席の綾倉詩織。苗字からわかると思うが三年学年主任である綾倉慶の愛娘である。かなりの美人顔ではあるものの、常にニコニコ裏のありそうな微笑みを浮かべている綾倉先生とは似ても似つかないほどクールな表情をしている。顔つきや栗色のサラサラヘアーはしっかり遺伝しているところから、もしかしたら綾倉先生のアレは後天的なものではないかと以前和真が思ったことがある。

 

続いて次席の志村泰山。知り合いの人物で例えると、ちょうど久保と高城を足して2で割ったような容姿をしている。確か文月新聞主催のランキングでモテる男子(一年生の部)でトップだったことを和真は思い出す。

 

その次に宗方千莉。この女子はまあ……美波と飛鳥を足したような人物だと思ってもらえばそれで構わない。要するに同性に死ぬほどモテる。長い緋色のロングストレートを束ねてポニーテールにしていて、美形ではあるものの非常に厳格そうな顔つきであり、秀吉と同じ演劇部に所属している。

 

そして最後の黒木鉄平だが……

 

和真(明らかにアイツだけ浮いてるよな……)

 

一言でいうと……濃い。

天に向かってそびえ立つ黒々とした剛毛、海苔のような太い眉毛、燃えたぎるような情熱を宿した瞳と、全体的に何か暑苦しい。そして性格も見た目通りの熱血漢であり、地球温暖化の元凶と一年生の間で噂されているとかいないとか。この手の輩は個人的に嫌いではない和真だが、あの四人が並ぶと他三人がクール系なのでどうしても違和感を覚えてしまうのは仕方ないだろう。

一人一人簡単な挨拶をした後、大きな拍手を受けつつそれぞれが席に戻る。

 

高橋「ありがとうございました。続いてのプログラムは、新任の教師の紹介します。突然行方不明になった池本先生の代わりに一年学年主任に勤めて頂くことになった-」

和真(さて、どうさんな奴だ。全フィールドを張れることが条件の学年主任に抜擢されるほどの人だ、生半可な人材では-)

 

 

 

 

 

高橋「-御門空雅先生です」

「「「ぶふぉっ!?」」」

 

和真だけでなく、空雅と面識のある生徒のほとんどが思わず吹き出してしまう。ステージに上がってきた空雅はいつも通りの死んだような目つきであるものの髭はきちんと剃ってあり髪もいつもと違ってしっかりセットしていて、服装も多少崩れているもののキッチリと着ていた。

 

和真(え!?おっちゃんが新任の教師!?教員免許持ってるのかよ……?いやそんなことより!アンタ大企業の社長だろうが!?)

 

内心パニックに陥ってる和真を尻目に空雅改め御門先生は高橋先生からマイクを受け取りつつ、片手で髪をかきむしりながらスピーチを始める。

 

御門「あー……ちょっと今ニコチンとコンポタが不足しててスゲーだりーから簡潔に話すぞおめーら。元“御門エンタープライズ”代表取締役の御門空雅だ。ここに来た経緯を説明するとだな、このたび俺は度重なる理不尽な激務にほとほと嫌気が差し、保有している株の名義を秘書の奴に変更し無断で会社の全てを押し付けてから教師になることになった。まあそんなわけで、適度によろしくなガキども。……はい終わりー、お疲れさんまた明日ー」

 

聖職者にあるまじき不真面目極まりないスピーチをしてから、御門先生先生はさっさと体育館から出ていった。その後烈火の如く怒り狂った学園長がすぐさま鉄人を派遣したが、逃げられてしまったらしいと後で耳にした。そんなグッダグダの雰囲気のまま始業式は閉会式を迎える。その後のホームルームでいつものメンバーを除くFクラスの大半が宿題をやっていないことが判明し鉄人の雷が落ちたことは語るまでもないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




沢渡晴香
・文系
・ラクロス部部長
・総合科目2735点

二宮悠太
・理系
・野球部部長
・総合科目2851点

この二人は一年生四人と違ってさほど重要なポジションではなく、今のところ名無しよりはマシ程度の出番しか考えてません。パワーアップした秀吉よりちょっと強い生徒という認識程度で全然構いません。

御門のおっちゃんが教師として文月学園にやってきた本当の理由はアドラメレク関連なのですが、彼は遅かれ早かれ桐生さんに“御門”を(本人の意見は無視して)くれてやるつもりでした。どうも大企業の社長なんてガラじゃなかったみたいですね。

七巻の内容をほぼオリジナル展開にしたせいか、思ったほどストックがたまらなかったので更新ペースは暫く三日に一回になります。


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