バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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【バカテスト】

次の元素記号を原子量の小さい順に並べ、その名称を書きなさい。
『Ne Ga H O Po I Na』


姫路の答え
『H:水素
 O:酸素
Ne:ネオン
Na:ナトリウム
Ga:ガリウム
I:ヨウ素
Po:ポロニウム』

蒼介「正解だ。GaやPoはなかなか出てこない元素だが、姫路には特に問題なかったようだな」


ムッツリーニの答え
『H:H
Na:な
 O:お
Ne:ね
Ga:が
I:い
Po:ポッ(*/▽\*)』

蒼介「こんな解答なのにナトリウム以外の並び順があっているのが腹立だしいな……」


第二学年の結束

梓「アハハハハ八八ノヽノヽノヽノ\/\!!!

どうしたん和真その猫耳!?めっちゃ似合うとるやん!違和感無さすぎて腸がよじれそうやぁはははははは!」

和真「あのよ…できればそっとしといてくんない?せっかく慣れてきたのに羞恥が再発するんで」

優子「そうですよ先輩!何でそんなに笑うんですか!?こんなに可愛いのに!」

和真「違う!論点はそこじゃねぇ!」

梓「ほうほう、言われてみれば確かに可愛らしい系の顔立ちしとるな。ところで木下さん、アンタが一番可愛いと思っとるところは?」 

和真「オイ待てや梓先輩コラ。いい加減話進めねぇといくら先輩でもそろそろキレんぞ?」

優子「えっと…まず撫でるのをやめたときにするちょっと寂しそうな表情ですね。アタシ、あれだけでご飯三杯はいけます!」

和真「優子も答えなくていいんだよ!?しかもまずってなんだ!?いくつ答えるつもりなんだお前!?」

梓「和真~、そういうときは遠慮したらアカンでぇ?ちゃんと『優子、もっとナデナデしてぇ……!』ってお願いせな」

和真「……さてと、ちょうどいいモルモットが二匹ほど見つかったことだし『綾倉特性ドリンクver.4シンジャエール』の人体実験でも-」

「「調子に乗ってごめんなさい!」」

 

にこやかな笑みを浮かべながら和真がポーチから取り出した得体の知れないドリンクを前にして、即座に謝罪モードに移行する二人。この反応を見るに、優子だけでなくどうやら梓もこのシリーズの恐ろしさを知っているらしい。

 

和真「覚えとけ二人とも。俺は尊敬する先輩だろうが大好きな彼女だろうが、いざというときは容赦なく抹殺できる系男子だからな」

優子「胸張って言うことじゃないでしょそれ……」

梓「ウチにはともかく、木下さんにまで容赦無いんやね……」

和真「当たり前だろ。人を好きになるってのはなぁ、そんな簡単なことじゃねぇんだよ。綺麗な面ばかり好んでそれ以外を否定してるようじゃ長くは続かねぇよ。

そう、好きになったからにはクソ不味い汁飲んで悶え苦しんでいる表情もひっくるめて愛せるくらいじゃなきゃダメなんだよ。俺だって本当はこんなことはしたくねぇけどよ、ここは心を鬼にしないとウククククククク…」 

優子「堪えきれてないわよ!?アンタ絶対心から楽しんでるでしょうが!」

梓(木下さん、とんでもない奴と結ばれてもうたなぁ……。まぁこの子ら二人とも幸せそうやから別にエエんかな……?)

 

優子への恋心を自覚したからといって、どうやら和真の本質はあまり変わっていないらしい。人をおちょくっているときの、なんとまあ楽しそうな表情。

そして梓の考えは概ね正しく、この二人はこれで丁度良いのだろう。和真が優子の可愛がりを内心では嫌がっていないのと同様、優子は和真の自由気儘で傍若無人かつ悪意なく人を振り回すところも、決して嫌いではないのだから。事実振り回されてる現在でも、怒っているというよりは「仕方ないんだからこの子は」的な表情を浮かべている。

 

梓「あんまりイチャつかせたらモニター先で熱中症になる人出てきそうやからそろそろ始めよか?」

和真「……そ、そうだな……」

優子「……え、ええ……」

梓(こいつらカメラ回ってるの忘れとったな……みるみる顔赤なってるやん)「高橋先生、召喚許可お願いします」

高橋「承認します」

「「「試獣召喚(サモン)!」」」

 

それぞれの幾何学模様から三体のオカルト召喚獣が喚び出る。ガブリエルに阿修羅に玉藻御前、召喚獣の種類は直接強さに直結するわけではないが、最終決戦に相応しいそうそうたる顔ぶれである。

 

 

《総合科目》

『Fクラス 柊和真  5067点

 Aクラス 木下優子 4512点

VS

 Aクラス 佐伯梓  4032点』

 

 

合計得点は倍以上離れてはいるものの、そんなもの気を抜けばあっという間に引っくり返されることは、今までの梓の闘いぶりが証明している。

 

梓「まずはこれや!防げるもんなら防いでみぃ!」

 

玉藻の尾が藍色に怪しく光り、九つの狐火が発射される。これまで幾多のオカルト召喚獣を葬ってきた蒼い火球はまるで生きているかのような軌道を描きながら、あっという間に阿修羅の周りを取り囲んだ。

 

和真「優子!」

優子「ええ!」

 

ガブリエルが持つ白百合が弓の弦に変形し、三発の水の矢が発射される。どうやら放たれたこの矢は誘導弾のようで、それぞれ炎を追尾して着弾しお互いがお互いを打ち消し合った。

 

佐伯「まだ狐火は6発残っとるで!」

和真「……6発?クハハハハハ!丁度いい数じゃねぇか!」

 

阿修羅は六本の腕から雷の剣を創造し、迫りくる狐火を一つ残らず切り裂いた。

 

梓(っ!?しもた!?ウチの対応力の低さ、完全に見抜かれてもうとる!)

 

和真の並外れた観察眼は梓の隠そうとしていた弱点を見抜いていた。いくら梓の突出した操作技術と並列思考能力を持ってしても、複数の炎を同時に操りながら相手の攻撃に完璧に対応することは不可能である。本体ならともかく、炎の一つ一つの回避までは流石に手が回らない。

それでも9つの炎でごり押しできるため並大抵の相手なら全く問題にはならない弱点だったのだが、阿修羅とガブリエルの連携攻撃相手では流石に荷が重かったようだ。

 

和真「……(チラ)」

優子「……(コクン)」

梓(こいつら会話無しで意思疏通を……?……って何やそれ!?)

 

突然ガブリエルが阿修羅に向かって滑空し、阿修羅は六本の内の二本の腕で腰に掴まると、なんとガブリエルは阿修羅を背負ったまま飛翔した。

 

梓(チィ、狐火で撃ち落とそうにもまだインターバルが……)

和真「撃てねぇよな?撃てねえだろ?……よっしゃ投擲ィィィイイイ!」

優子「オーケー!」

 

ガブリエルは高速で玉藻との距離を詰め、あろうことか阿修羅を玉藻に向かって投げ捨てる。一見愚行にしか見えないが、和真が不敵な笑みを浮かべたままであることから予定通りのことらしい。

 

梓「…はっ、格好の獲物や!引き裂いたる!」

 

飛んで火に入る夏の虫と言わんばかりに、玉藻の九本の尻尾が様々な角度から襲いかかる。阿修羅は六本の腕で応戦するも多勢に無勢とばかりに押されていく。しかしそれでも和真はさらに笑みを強くする。

 

和真「おっとまいったな。尻尾の数に手が足りねぇ、これじゃあ多勢に無勢ってもんだ……となるとギアを上げるしかねぇよなぁぁぁあああああ!喰らいやがれ!修羅太極!」

梓「っ!?それも固有能力かい!?」

 

阿修羅の中心に陰陽太極図が出現し、陰と陽の力が両サイドに広がっていく。阿修羅の体の片方が真っ黒に、もう片方が真っ白に染まる。

奇々怪々な現象が起きたものの阿修羅の第二の能力『修羅太極』は別に複雑怪奇な能力などではなく、ただスピードとパワーを底上げするだけのシンプルな能力である。

しかしだからこそ、この能力を発動しているときの阿修羅は……接近戦で無類の強さを発揮する。

 

和真「オラオラオラオラオラオラオラ(ドガガガガガガガガガ…)…くたばりやがれぇぇえええ!(ドゴォォォォ!!)」

梓「うぐぅっ……!押し負けてもうた……!せやけど甘いなぁ、今のアンタは絶好の的やで!」

 

圧倒的な手数の前に為す術なく吹き飛ばされながらも、玉藻は九本の尾をそれぞれ三本ずつ結び、目も眩むほどの燐光を帯びた三つの束全てを阿修羅に向かって照準を合わせる。

 

梓「三連・三重の蒼炎!」

 

束ねられたそれぞれの尾から、翔子達との闘いで使われた九重の蒼炎には劣るものの、先ほどのものとは比べ物にならないスピード、規模、破壊力の狐火が発射された。

 

和真「上等じゃねぇか!迎え撃て阿修羅!」

梓「無謀やな!蹴散らしたる!」

 

阿修羅は即座に修羅太極を解除し、再び雷霆剣六刀流形態に移行し三つの蒼炎をそれぞれ二振りの剣で十字に受け止めた。

 

「「うぉぉぉおぉぉぉぉおおおおお!」」

 

二つの力のぶつかり合いを制したのは、わずかの差で玉藻の狐火であった。威力負けしてしまった阿修羅はその身を焼かれ、そのまま遥か後方に吹き飛ばされてしまう。

 

和真「……悪いな梓先輩、今のぶつかり合いは特攻に見えて特攻じゃねぇんだよ。例え押し負けようが、俺にはカバーしてくれる相棒がいるからな。……そうだろ優子?」

優子「もちろん、言われるまでもないわね」 

梓「敵ながら大したチームワークやな……!」

 

宙に吹き飛ばされた阿修羅は、あらかじめ上空でスタンバイしていたガブリエルに再び二本の腕で掴まった。阿修羅を回収したガブリエルは返す刀で玉藻に水の矢を三発打ち込む。狐火で応戦しようにもインターバルに入っているため撃つことができない。そのため梓の取れる手段は一つ。

 

梓「……!?しもた、これは……っ!?」

 

和真達の狙いに気づくも時既に遅し。みすみす喰らうわけにもいかないため玉藻は芭蕉扇を使わざるを得なく、水の矢は全て跳ね返したものの飛行能力を持つガブリエルはそれら全てを悠々とかわし、その直後どういう意図があるのかか阿修羅を上空に放り投げた。

 

和真「狐火と芭蕉扇のインターバルが重なるこのときを待っていたぜ……これで終わりだ、浄化の極炎!」

 

阿修羅は空中で6本の腕を掌を揃えて玉藻に向け、九重の蒼炎と同等以上の規模の火炎を発射した。流石に避けられないと判断した梓は玉藻に九本の尾で急所をガードさせる。

しかし和真の最後の固有能力が判明していなかったため仕方ないことだとはいえ、その判断は悪手中の悪手と言わざるを得ない。

なぜなら……着弾した浄化の極炎が九本の尾を跡形もなく消し飛ばしたのだから。 

 

 

《総合科目》

『Fクラス 柊和真  1357点

 Aクラス 木下優子 4512点

VS

 Aクラス 佐伯梓  2466点』

 

 

墜落する前に再びガブリエルにキャッチされたため、阿修羅はどうにか無傷で済んだ。 

一方玉藻は直撃した割にダメージが少ないものの、最大の武器である尾を一つ残らず失ってしまった。

 

梓「……どうやらここまでやな。

ギブアップや、堪忍してや」

和真「あん?随分潔いじゃねぇか」

梓「芭蕉扇は召喚獣本体には使えん制約があってな。飛び道具も失ってもうたし、接近されてあの技…修羅太極やっけ?あれ使われたらもう打つ手無いんや……

和真「そうかい……じゃあ、俺達二年チームの勝ちってことで良いんだな」

梓「そういうことやな……ハァ、ウチ一人で全員倒すつもりでおったのに、まさかたった二人のコンビネーション相手に惨敗するとは。自分が情けないわ……」

和真「別に俺達は圧勝したわけでもねぇし……アンタが相手したのはたった二人じゃねぇんだよ」

梓「……え?どういうこと?」

 

思わぬ否定に呆気に取られる梓をよそに、和真達は梓が何を間違っていたのかを説明する。

 

優子「ええ、アタシ達二人だけで闘っていたら結果は違ったでしょうね」

和真「この勝利は、言うなれば俺達6人でもぎ取った勝利だ。徹達が高城先輩の致命的な弱点とアンタの狐火のインターバルを暴き、翔子達が高城先輩を倒し、アンタに奥の手である芭蕉扇を使わせ、そして芭蕉扇の限界を暴いた。そうでなきゃ、いくら俺達でもこんな思いきった攻めはとてもできねぇよ」

 

三年生サイドの作戦は、良くも悪くも梓に頼りすぎていた。梓は確かに圧倒的な能力を有していたが、ここまで情報が露呈しながら勝利できるほど和真達は甘くなかったということだ。梓の敗因は純粋な実力ではなく、仕方がないとはいえ情報アドバンテージを完全に失ったことと、パートナーをぞんざいに扱いすぎたことだ。

 

和真「これが俺達二年の結束だ。アンタ一人がどれだけ強かろうが、たった一人で闘っている奴になんざ負けてたまるかよ」

優子「もし高城先輩が生き残っていたら、アタシ達はもっと苦戦させられたでしょうね」

梓「……くくく、なるほどなぁ……勝ち続けたせいかウチには、なんでも自分一人でやろうとする癖がついとったのかもなぁ……」

 

個人の能力など、どれだけ高くともたかが知れている。自分一人だけ強ければいいという考えの人間は、その程度の生き方しかできやしない。自分一人だけで努力して得られるものは、たいして大きいものではない。そんなことはわかっているつもりだったのに、と梓は内心で自嘲する。

 

梓「……完敗や、後輩ども」

「「……ッッシャァア!」」

 

肝試し対抗戦は二年生チームの勝利で幕を閉じた。優子と和真はいつものように、満足したような笑みを浮かべてハイタッチした。

 

高橋「では皆さん、私は急用ががあるので失礼させて頂きます」

和真「……一応聞いておきますが、俺達の助けは?」

高橋「気持ちだけ受け取っておきましょう」

 

そう言って高橋先生は早足で教室を出ていった。和真以外の二人は何が何だかわからないといった表情である。

 

梓「どないしたんやろな高橋先生?」

優子「和真、何か知ってるの?」

和真「そうだな……教師とスポンサーのプライドを賭けた闘いってところかな」

「「???」」

和真(ソウスケ……しくじんなよ?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新校舎の屋上で、仮面の男『ファントム』はノートパソコンでとある検証を行っていた。

 

『ふむ、これ以上歪みを広げることはできそうにないな。仕方がない、多少のリスクは伴うが、この状態でアドラメレクのテストプレイに移行するしかない。……さて、この学園の原石達は果たしてどれだけ抵抗できるかな?』

 

そう言ってファントムはパソコンを操作してアドラメレクを起動させようとする。あとはエンターキーを押すだけでAクラス教室内に白い天使が転送されるというところで、

 

 

 

 

 

 

突然飛来した木刀に腕を弾き飛ばされる。

 

『っ!?』

 

ファントムが木刀の飛んできた方向に視線を移すと、いつの間にか蒼介が屋上の柵に腰かけていた。

 

蒼介「ようやく尻尾を出したな下郎め」

『君は確か……』

?「三度もこの学園に侵入してくるとはいい度胸だな」

『っ、もう一人いたのかい……?』

 

反対方向から声がしたので振り向くと、これまたいつの間にか鉄人が腕を組んで屋上の柵にもたれかかっていた。

 

ガチャッ

 

『今度は誰だね……?』

?「知るかよ、いちいち名乗るのもかったりぃ」

 

さらに屋上のドアが開けられたので振り向くと……御門空雅がコンポタを片手に持ちながら、いつもの生気の無い眼で立っていた。

 

空雅「んく…んく……プハァッ……てめーの能力なんざとっくに割れてんだよ。おおかた視覚だけじゃなく聴覚、嗅覚でも感知できないステルス能力……だろ?」

鉄人「貴様には残念なお知らせだろうが……綾倉先生の進言で校舎中に赤外線センサーを取り付けておくことになってな」

蒼介「費用はかなりかかったそうだが……この状況を作るためには安い買い物だな」

『おやおや、これは……絶体絶命という奴なのかな?』

 

三人はファントムを逃がさないように取り囲む。三人が三人武道の達人のため、彼等から逃げ出すのは極めて困難であろう。しかしファントムの声には何故か余裕を滲ませていた。

 

 

 

 

 

 

 




和真・優子ペア、圧勝!……でもないか、和真君割と死にかけだし。作中で述べられた通りこれは彼ら二人ではなくチームの勝利ですね。

肝試しは終了しましたが、エピローグまでもう少しだけ続きます。

ちなみに鉄人と蒼介はあらかじめ御門社長借りておいた巻き取り式鍵縄で下から登ってきました。

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