バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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前回少し短かった分、今回は長めです。


先手必勝・開戦の号砲

島田「そういえば坂本、次の目標だけど」

雄二「ん?試召戦争のか?」

島田「うん」

 

屋上に戻った姫路は律儀にも明久達に味見をしていなかったことを謝った。それに対して明久達は二つ返事で許した。

 

島田「どうして次はBクラスなの?目標はAクラスなんでしょう?」

 

雄二が次の目標をBクラスにしたことについて疑問を投げかける。島田。それを聞いた雄二はいきなり神妙な面持ちになる。

 

雄二「正直に言おう。どんな作戦でも、うちの戦力じゃAクラスに勝てやしない」

 

戦う前から降伏宣言。自信満々にクラスを焚き付けた雄二らしくもないが、無理もないことだ。文月学園はAからFの6クラスから成るが、Aクラスは他5クラスとは格が違う。学年順位トップ50の内、11位までは精々Bクラスよりも少々点数が上の普通の生徒だ、が残りのトップ10は次元が違う

。Aクラスはそのトップ10の内、7人が在籍している(残りの3人は和真、姫路、翔子)。特に代表の鳳 蒼介は学生のレベルを完全に逸脱しており、学年3位の姫路を遥かに上回る成績の翔子とすら隔絶している。まともに挑んでも勝ち目は無いだろう。

 

島田「それじゃ、ウチらの最終目標はBクラスに変更ってこと?」

 

AクラスほどじゃないがBクラスの設備も通常の3倍の広さと十分豪華なので、妥協点としては悪くないだろう。しかし雄二はそんな妥協をする男ではない。

 

雄二「いいや、そんなことはない。Aクラスをやる」

明久「雄二、さっきといってることが違うじゃないか」

翔子「……クラス単位では勝てないから、一騎討ちに持ち込むの?」

雄二「そうだ」

和真「なるほど…考えたな」

明久「一騎討ちに?どうやって?」

雄二「Bクラスを使う」

 

不適な笑みを浮かべて雄二は自信の策を打ち明けるが、当然明久は理解できてないようだった。

 

雄二「試召戦争で下位クラスが負けた場合どうなるか知ってるよな?」

明久「え?も、もちろん!」

和真(知らない…だろうなぁ)

姫路(吉井君、下位クラスは負けたら設備のランクを一つ落とされるんですよ)ボソボソ

明久「設備のランクを落とされるんだよ」

 

さもわかってましたと言わんばかりに答える明久だが、姫路が助け舟を出したのがバレバレである。つっこむのもバカらしくなったのか雄二は嘆息する。

 

雄二「……まあいい。つまり、BクラスならCクラスの設備に落とされるわけだ」

明久「そうだね。常識だね」

和真(よく言う……)

雄二「では、上位クラスが負けた場合は?」

明久「悔しい」

 

もしそうなら下位クラスにとって試召戦争は驚くほどメリットがない。

 

雄二「ムッツリーニ、ぺンチ」

明久「ややっ僕を爪切り要らずの身体にする動きがっ」

和真(というかお前から持ちかけた話だろう、試召戦争……なんで知らねぇんだよ……)

姫路「相手クラスと設備が入れ替えられちゃうんですよ」

和真「つまり、うちに負けたら最低の設備に替えられるんだよ。そのシステムを使って交渉する訳だ」

島田「交渉って?」

雄二「Bクラスをやったら、設備を入れ替えない代わりにAクラスへと攻め込むように交渉する。設備を入れ替えたらFクラスだが、Aクラスに負けるだけならCクラスの設で済むからな。まずうまくいくだろう。そしてそれをネタに交渉する。『Bクラスとの戦いの直後に攻め込むぞ』という風にな」

明久「なるほどね!」

 

Aクラスは試召戦争をしても授業が遅れるというデメリットしかない。Fクラスと違って勉学に意欲的な彼等は連戦などできれば避けたいだろう。

 

秀吉「…じゃが、果たして一騎討ちをしたとして勝てるのじゃろうか?」

翔子「…まともに戦えば私でも歯が立たない」

姫路「すみません、私でもちょっと…」

和真「俺も何度かフリスペで闘ったが点数差が有りすぎて勝ったことねーな。そのときは腕輪も無かったし」

雄二「そのへんに関しては考えてある。心配すんな」

和真(十中八九ムッツリーニをぶつけるんだろうな)

 

今のFクラスで蒼介に勝ち目があるのは保健体育学年1位のムッツリーニだけだと和真は見ている。本当は自分が闘いたいのだが、和真は勝敗を度外視して私情に走るような男ではない。

 

雄二「ま、そんなわけで明久、今日のテストが終わったら、Bクラスに宣戦布告してこい」

明久「断る。雄二が行けばいいじゃないか」

 

先日Dクラスにボコられた経験が生きたのか、明久も少しは学習したらしい。

 

雄二「やれやれ、ならジャンケンできめるか?」

明久「ジャンケン?」

和真(確実に罠だなこりゃ…さて明久はどうする?)

明久「OK。乗った」

和真(ですよねー)

 

前言撤回、学習能力のないやつであった。いつになったら雄二の手口を警戒するようになるのだろうか。

 

雄二「ただのジャンケンじゃつまらないし、心理戦ありでいこう」

明久「わかった、僕はグーを出すよ」

雄二「そうか、なら俺は、お前がグーを出さなかったら……ブチ殺す」

 

心理戦でもなんでもなくただの脅迫である、。

 

雄二「行くぞ、ジャンケン」

明久「わぁぁっ!」

 

あまりにも非常識な心理戦に慌てる明久を無視して雄二がじゃんけんを進める。

雄二はパーで明久はグー。

 

雄二「決まりだ、言って来い」

明久「絶対に嫌だ!」

雄二「Dクラスのときみたいに殴られるのを心配してるのか?それなら今度こそ大丈夫だ。保証する」

 

やけに自信満々の雄二。これは勿論また明久を嵌める手口なのだが、当然明久はそのことを微塵も疑わない。将来よくわからないうちに怪しい宗教にでも入信させられたりしないか割と心配になる和真り

 

雄二「なぜなら、Bクラスは美少年好きが多いらしい」

明久「そっか。それなら確かに大丈夫だね」

 

割と自惚れが強い性格をしているようだ。あまりにも自信満々な態度が面白くなかったのか、雄二は即座に明久をディスる。

 

雄二「でも、お前ブサイクだしな……」

明久「失礼な!365度どう見ても美少年じゃないか!」

和真「明久、円の角度は360度だぞ」

雄二「5度多いな」

秀吉「実質5度じゃな」

明久「三人なんて嫌いだっ」

 

そう言いながらもBクラスに駆け出す明久。

 

 

 

 

しばらくして…

 

明久「……言い訳を聞こうか」

 

再びズタボロになって戻ってきた。

ちなみに和真はもうすでにラグビー部の練習に混ざりに行って教室にはもういない。 

 

雄二「予想通りだ」

明久「くきぃー!殺す!殺し切るーっ!」

雄二「落ち着け」

明久「ぐふぁっ!」

 

飛びかかる明久の行動を予想済みだった雄二は容赦なく鳩尾を強打し、明久は無惨にも畳の上に崩れ落ちる。

 

雄二「先に帰ってるぞ。明日も午前中はテストなんだから、あんまり寝てるんじゃないぞ」

 

そう言ってさっさと教室を出て行く雄二。清々しいまでに外道である。

 

明久「うぅ……腹が……」

 

あまりのダメージに起き上がれない明久。

 

明久(誰も心配して保健室に連れて行ってくれないなんて、僕って嫌われるんだろうか?こういうとき助けてくれる和真は放課後だからいないにしても、姫路さんなら駆け寄ってきてくれそうな気がするんだけど)

 

そう思い首だけで教室を巡らすと、鞄を抱え込んで何かを警戒するように周囲を見回している姫路が見えた。

 

明久(……ああ、そういえば昨日手紙を書いていたんだっけ。もしかしてそれをどこに置くべきか考えているのかな)

 

そんなもん持って帰れとか言ってはいけない。

それ以上見ていたら悪い気がして、明久は教室を出た。匍匐前進で。

 

 

その頃、Aクラスでは…

 

蒼介(FクラスがBクラスに試召戦争を申し込んだか。Bクラス、ついでにDクラスを利用して私との一騎討ちを申込もうというわけか)

 

学年首席・鳳 蒼介は雄二の策を早くも見破ったようだ。学力だけじゃなく、頭のキレも申し分ない。

 

蒼介(なるほど、確かにその方法ならAクラスとFクラスの絶望的な差を埋めることができる。恐らく挑んで来るのは土屋 康太だろう。坂本 雄二か、見事な戦術だ。ここまで入念に布石を打っているとは。それに人の心理をよく理解している)

 

蒼介は雄二の策略に感心し、その手腕を称賛した。

 

蒼介(さて、そうとわかれば、私はどう対処する?相手の提案を飲まないことが一番確実ではある。土屋 康太は唯一私よりも点数が高い生徒、一騎討ちを受けるは危険だ)

 

連続で試召戦争、辛いし面倒だが一騎討ちよりも確実な方法である。だがこの方法を選ぶことが、本当に正しいことなのだろうか。いや、

 

蒼介(……否。断じて否。私はクラス代表だ。クラスメイトのことを考え行動することがトップに立つ私の責務であろう。……土屋康太、その一騎討ち受けてたとうじゃないか)

 

試召戦争が重なるとクラスメイトが疲弊する上、授業も遅れてしまう。そのことを避けるため、蒼介はムッツリーニを真っ向から撃破することを決意した。

 

蒼介(…まあしかし、みすみす相手の策略に乗るのも癪だ。それに、不安に思うクラスメイトも出るだろう。……よし、先手を打っておくとしよう)

 

何を思ったのか、メモ用紙に何かを書き出す蒼介。

それが書き終わると、

 

蒼介「木下、久保、大門、工藤。帰るまえにちょっと集まってほしい」

 

Aクラスの生徒数名を呼び寄せる。

 

優子「どうしたの代表?」

久保「何かあったのかい?」

 

呼ばれた四人は蒼介の机の回りに集まる。

 

蒼介「ああ、これからBクラス戦後に攻めてくるであろうFクラスに対するミーティングをしようと思う」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雄二「さて、いよいよBクラス戦だな」

 

総合科目テストを終え、昼食を済ませ、いよいよBクラス戦が始まろうとしている。

 

和真「おい雄二、試召戦争前の景気付けにクラスメイトを鼓舞してやるよ」

雄二「ん、そうか?じゃあ頼むぞ」

 

モチベーションは高い方が良いので、雄二は二つ返事で了承した。和真は教卓の前に立つ。しかし個性の強いクラスメイトの多岐にわたるフォローで鬱憤が溜まりに溜まっていた和真は、火種に迷うことなくガソリンをぶちまけた。

 

和真「いいか野郎共!俺達の標的はAクラスだ!つまりBクラスなど取るに足らん雑魚に過ぎん!守りや回復は考えんな!真っ向から敵を一人残さず撃破するぞ!」

 

『うおぉぉぉぉぉぉぉおおおおお!』

 

雄二「まてまてまてまてまてぇぇぇ!」

和真「なんだよ、何か文句でもあんのかよ?」

雄二「文句しかねぇよ!自力で負けてるんだからそんなことをしたらあっという間に全滅するだろうが!」

和真「俺の辞書に“特攻”以外の文字はねぇ、それ以外のページは全部白紙だ!」

雄二「捨てちまえそんな使いづらい辞書!もはやただのメモ帳じゃねぇか!」

 

猛然と抗議する雄二。文字通り玉砕作戦には問題が山積みである。ある程度溜飲が下がった和真は真面目モードに切り替える。

 

和真「まあジョークはこのくらいにして…雄二、前線部隊に俺と姫路を入れろ」

雄二「……なに?」

和真「相手に奇襲をかける。腕輪持ちの俺ら二人で相手の部隊をぶち破る。先んずれば人を制す、ってやつだ。」

 

今回の戦闘は敵を教室に押し込むことが重要になる。その為、開戦直後の戦闘は絶対に負けられない。作戦としては中々理にかなっている

それにBクラスは文系が多いため相手は文系科目の教師を連れてくるだろうが、それは和真の独壇場だ。

 

雄二「…いいだろう。だが奇襲が終わったら姫路は前線部隊から外すぞ。他の部隊の層が薄くなってしまうからな」

和真「オーケー。聞いたか姫路。派手に暴れるぞ、出し惜しみは無しだ!」

姫路「わっ、わかりました!がんばります!」

和真「というわけで野郎共、ガンガン行こうぜ!」

『うおぉぉぉぉぉぉぉ!』

 

前線部隊の士気は最高潮に達していた。姫路と一緒に戦えることもあるが、和真には大衆のボルテージをヒートアップさせる才能がある。

 

キーンコーンカーンコーン

昼休み終了のベルが鳴る。開戦の合図だ。

 

雄二「よし行ってこい!目指すはシステムデスクだ!」

『サー、イェッサー!』

 

前線部隊は全力でBクラスへと向かう廊下を駆け出した。

体力の差を考慮して、和真は姫路に合わせて少しゆっくり走る。

 

 

《総合》

『Bクラス 野中 長男 1943点

VS

Fクラス 近藤 吉宗 764点』

 

《数学》

『Bクラス 金田一 佑子 159点

VS

Fクラス 武藤 啓太 69点』

 

《英語》

『Bクラス 里井 真由子 188点

VS

Fクラス 君島 博 73点』

 

文字通り桁が違う点数差でどんどん戦死していく第一陣。ここまでは想定内であるが、このまま放っておけば全滅してしまうだろう。

 

和真「よし追い付いた!姫路、お前は数学のフィールドに行け!俺は英語のフィールドに行く!」

姫路「わかりました!」

 

主戦力の二人が到着し、それぞれ得意分野のフィールドに別れる。

 

岩下「来た!姫路さんだわ!Bクラス岩下、菊入、金田一がFクラス姫路 瑞希さんに勝負を挑みます!」

四人『試獣召喚(サモン)!』

 

それぞれの試験召喚獣が顔を出す。

 

 

《数学》

『Fクラス 姫路 瑞希 412点

VS

Bクラス生徒×3 平均160点』

 

 

姫路の召喚獣の装備は西洋鎧に自身の身長の2倍はある巨大な剣。和真ほど極端ではないが、攻撃を重視した武器だ。左腕に腕輪をしている。これはテストで400点以上の成績を納めた生徒には特殊能力を備えた腕輪が装備される、言わば強者の特権のようなものだ。

 

キュポッ!

 

『きゃあぁぁーっ!』

 

召喚と同時に〈姫路〉が先手必勝とばかりに熱線を放ち、三人を飲み込んだ。まさに鎧袖一触の圧倒的な威力である。

 

姫路「ご、ごめんなさい。これも勝負ですのでっ」

 

 

 

 

和真「四人か……全部で十人しかいねぇのに随分景気が良いじゃねぇか」

『皆、油断するなよ!』

『わかっている!こいつは姫路以上に危険だ!』

『不用意に近づくなよ!全滅するぞ!』

 

 

《英語》

『Fクラス 柊 和真 400点

VS

Bクラス生徒×4 平均180点』

 

 

先日のDクラス戦での出来事を知っているのか、警戒して距離をとり隊を組む四人。

だが彼等は見落としていた。先日とは違い、和真の得点が400点だということを。

 

和真「固まってくれるとは親切だなぁ。見せてやるよ、10連…装填」

 

『Fクラス 柊 和真 300点

VS

Bクラス生徒×4 平均180点』

 

〈和真〉の周りに合計10門の大砲の砲身が出現する。そしてそれぞれの砲身がBクラス生徒の召喚獣に照準を合わせる。

 

『な、なんだ…?』

『何だかヤバイ予感…』

『もしかして私達…詰んでる?』

『多分ね…避けられそうにないし…』

 

Bクラス生徒達は己の末路を悟ったようだ。

 

和真「いくぜ…一斉砲撃(ガトリングカノン)!」

 

ドガガガガガガガガガン

 

『『『ぎゃぁぁぁあああああ!!!』』』

 

それぞれの砲身から一発ずつ射撃が繰り出される。

広範囲の弾幕攻撃にBクラス生徒の召喚獣はなすすべもなく、あっという間に全滅してしまった。

 

和真「これぞ超火力特化砲撃だ。まぁ燃費が悪過ぎるのが玉に瑕だがな」

 

姫路に殺られた生徒と一緒に鉄人に補修室に連れて行かれる生徒達を眺めがら、和真は一人呟く。




やっとBクラス戦が始まりました。
和真君無双part2。そこ、マンネリとか言わない。
雄二の策略はもうバレてしまいましたが問題ありませんでした。蒼介君はどうやら思ったより負けず嫌い性格のようです。

『一斉砲撃(ガトリングカノン)』
和真の腕輪能力。支払った点数10点につき1つ砲身を出現させ、一斉に砲弾を射つ。高火力かつ広範囲の攻撃が可能だが、デメリットがいくつもある。
・400点を切ると使えない。
・必ず10発刻み。つまり最低でも100点もの点数を消費しなければならない
・砲身の照準は一つ一つ自分が調節しなければならない。これがかなり難しく、大抵の人は全て前を向けるくらいしかできないため、ある程度機動力があれば射つ前に避けられなくもない(ただし和真は並外れた感覚でそれぞれ自在に調節できるのでこのデメリットはあってないようなもの)。
あと一つありますが、それは本編で明らかになります。

大砲は男のロマン。異論は断じて認めない!、
ちなみに一対一で闘う場合よっぽどの相手じゃない限り使いません。点数が勿体な過ぎるので。

では。

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