バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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【ミニコント】
テーマ:勉強して!

明久「うわぁあああどうしよう!?明日の数学の小テスト、まったくパスできる気がしないよ!」

美波「まったくアキったら……しょうがないわね、教えてあげるわ」

(1分後)

明久「うわあああああ!集中力切れたぁぁぁ!」

美波「早っ!?」

明久「こういうときはアレだ!鳳君もやっているっていう瞑想だ!集中力を高めるんだ!」

美波(あ、割とマトモな対策ね)

明久「」←倒立

美波「……」

明久「ヤルキデナーイ」←ブリッジ

美波「瞑想じゃなくて迷走してるわね……」









世界の歪み

秀吉「で…ではムッツリーニよ、お主はどんな召喚獣なのじゃ?まだ確認しておらんのじゃろ?」

 

美波と和真のキャットファイトですっかりぐだぐだになった空気が秀吉のファインプレーによってなんとか切り替えることができた。もしこのフォローがなければこのままお開きになっていたかもしれない。

 

ムッツリーニ「……試験召喚(サモン)」

 

顔色の悪いタキシードを着た少年が現れた。そのどことなく高貴な出で立ちを見るに、おそらくはヴァンパイアだろう。

 

雄二「なるほど。確かにいつも血を欲しているイメージがあるからな」

秀吉「若い女が好きという点も酷似しておるしの」

和真「よーし、じゃあ次は俺だな」

美波「ふん、どんな面白召喚獣がでるかしね」

 

ようやく呼吸が落ち着いたのか、和真と美波が雄二達のもとへ戻ってきた。自分の召喚獣を盛大に笑われた美波はしょうもない召喚獣が出ることを期待していた。

 

明久「和真の本質かぁ……いったい何が出てくるんだろうね」

雄二「さあな、ゴジラでも出てきたりしてな」

翔子「……大魔王、邪神、破壊神などなど、他にも候補はいっぱいある」

秀吉「とりあえず何が出るにしても、おそらく生半可なものではないじゃろうな」

和真「言いたい放題のところ悪いが、ご期待に添えるかはシステム次第だからな。……サモン!」

 

キーワードと共に召喚獣が現れる。喚び出された召喚獣の特徴は、インドの修行僧のような軽装に神秘的な羽衣、不動明王のような火焔光、筋骨隆々の六本の腕……そして鬼のように厳つく、しかしどことなく神々しさを感じる三つの顔。

 

明久「……予想通りすごく強そうなのが出てきたね」

雄二「こいつは……阿修羅か」

翔子「……確か、帝釈天に闘いを挑み続ける軍神」

和真「つまり俺の本質は闘争心と、ついでに強者に挑み続ける精神ってことだな」

 

簡潔に言うとバトルジャンキー気質である。困難な状況や格上の相手に躊躇なく挑んでいく和真らしい本質だ。

 

秀吉「そう言われると、まさに和真そのものじゃな」

美波「悔しいけどやたらしっくりくるわね……」

姫路「顔は怖いけど、これならなんとか平気です」

翔子「……じゃあ次は私。サモン」

 

阿修羅の隣に翔子の召喚獣が出現する。

蛇のような長い尾、魚の鱗に覆われた体、そして悪魔のような黒い翼といった特徴の召喚獣だ。さらに右手に三つに枝分かれした槍を持っている。

 

雄二「これまた強そうなのが出てきたな」

明久「下半身が蛇だから……ラミアかな?」

和真「いや、悪魔の翼もある。翔子の本質から考えると多分……レヴィアタンだろうな」

姫路「えっと……キリスト教の七つの大罪のうち、嫉妬を司る悪魔ですね」

秀吉「つまり霧島の本質はヤキモチ焼きということじゃな」

翔子「……うん。雄二の浮気は何があっても許せないから」

雄二「さっきからやたらと的確過ぎるぞ召喚システムの判断……」

 

どうでもいいが阿修羅だのレヴィアタンだの宗教神話体系がごちゃまぜ過ぎる。その方が日本らしいと言われればそれまでなのだが。

 

明久「ここまでくると雄二のも気になるよね。召喚してみてよ」

雄二「ん?そうだな……。それじゃ、このままだと俺の召喚獣は喚べないからフィールドをOFFにして鉄人に許可を貰うか。鉄人も今更文句は言わないだろ」

 

雄二がそう言うと、鉄人は「やれやれ」と呟いて、諦めたように頷いた。そろそろ補習を再会したいのだが、ここまで来て渋るのもどうかと思ったのだろう。

 

秀吉「雄二の性格は攻撃的じゃからな。和真のように戦闘向きの奴が出るやもしれんのう」

明久「確かにそうだね。おっきな金棒を持った鬼とか、ゴツいチェーンソーを持ったジェイソンとか、もしかしたら凄い鎌を持った死神なんかが出てくるかも」

和真「キングコング、君に決めた」

雄二「ブチ殺すぞ和真。……ったく、それじゃいくぞ。……サモン!」

 

雄二の喚び声に応じて現れる召喚獣。

身につけている武器は……鍛え上げられた肉体と、引き締まった肉体と、筋肉に覆われた肉体。

 

明久「また手ぶらじゃないかぁーっ!?」

和真「お前の召喚獣は何があってもステゴロしか認めないみてぇだな……」

明久「っていうか、雄二の召喚獣は今までよりも退化してない!?装備がズボンだけじゃないか!」

秀吉「しかもなんの特徴もなく雄二そのものが出てきおったな。これでは服装以外雄二と区別がつかん」

姫路「ちょ、ちょっと目のやり場に困りますね……」

翔子「……(ポッ)」

雄二「翔子、お願いだからガン見はやめてくれ」

 

窓の外に目を向けている姫路に対して、翔子は上半身裸の雄二を穴が空くように見つめていた。こんな反応を見せられては明久達も雄二に召喚獣を消すように言い出せなくなる。

せっかくなんで翔子のために雄二には気付かれないよう、和真はムッツリーニに一枚撮っておくようアイコンタクトを飛ばしておく。余計な気遣いをさせたら和真の右に出るものは世界中探してもそうそういないだろう。真っ当な気遣いもちゃんとできる分余計にタチが悪い。

 

秀吉「じゃが雄二の召喚獣は結局何の妖怪なのじゃ?これではさっぱりわからんぞ」

和真「ドッペルゲンガー……は違うか。そんなんが雄二の本質とはとても思えねぇし」

明久「二人とも何を言っているのさ。これは最近日本で確認された新種の妖怪『坂本雄二』じゃないか。醜い容姿と汚い性格で美人の幼馴染を騙すって話の」

和真「あー、納得」

雄二「明久。召喚獣を喚び出せ」

明久「ん?別にいいけど。サモンっ」

雄二「走れ稲妻!(ドゴォッ)」

明久「あがぁっ!蹴ったね雄二!?僕の召喚獣の首をサッカーボールに見立ててゴミ箱に蹴り込んだね!?なんてことをしてくれるのさ!」

雄二「そう怒るな明久。よく言うだろうが。『友達はボールだ』って」

明久「それを言うなら『ボールは友達』じゃないの!?前後の順番を入れ替えたらただの苛めの現場だよ!」

雄二「そもそも俺はお前を友達だと認めていないがな」

明久「だったら蹴るな!」

和真「……雄二、テメェいい加減にしろよ……」

 

ゴミ箱から召喚獣の頭部を回収しつつ和真は物凄い形相で雄二を睨めつけた。そのあまりの迫力に流石の雄二も臆したのか思わず後ずさる。

 

明久「か、和真!君はいつだって僕の味方-」

和真「あんなへなちょこシュートのどこが稲妻だゴルァ!中途半端にパクられると死ぬほど腹立つんだよ!……見ておくんだな、本物のライトニングタイガーをよぉ!!」

明久「ストォォォオオオッッップ!!!」

 

明久は鬼気迫る表情でダッシュし、シュート体制に入っている和真の足元から頭部を奪い返す。

 

明久「ハァ…ハァ…ハァ……何考えてんのさ和真!?和真の脚力で蹴られたら僕の命がどうなると思ってんの!?」

和真「冗談に決まってるだろ。俺が全力で蹴ったらフィードバックでお前が脳震盪起こしても不思議じゃねーしな」

鉄人「待て柊、お前はそんな危険な攻撃を教師である俺に喰らわせたのか?」

和真「直撃したのにちょっと腰を痛めた程度だったセンセがよく言うぜ……」

秀吉「んむ?雄二。お主の召喚獣の様子が変じゃぞ?」

雄二「お?本当だな。何が起きるんだ?」

 

明久の召喚獣の頭部を見てブルブル震え始めたかと思うと、雄二の召喚獣の口が大きく裂け、全身から凄い勢いで毛が生えてきた。

 

「「きゃぁあああーっ!!」」

ムッツリーニ「……狼男」

翔子「……つまり雄二の本質は送り狼」

雄二「違う!」

和真「じゃあ性欲の…」

雄二「そっち方面から離れろテメェら!」

 

雄二の特徴の一つの鬣のような髪の毛が更にツンツンと逆立って、野性味が強調されていた。このことから雄二の本質は野性と言ったところだろう。

 

姫路「で、でも、満月でもないのに変身なんておかしくないですか?」

 

姫路は狼男を怖がっているのか、明久の袖を摘まみながらおずおずと尋ねる。

 

和真「明久の頭部に反応したっぽいから、多分丸けりゃ何でもいいんだろ」

明久「随分といい加減だなぁ……」

雄二「それはそうと、この召喚獣はきちんと次の試召戦争までには直るのか?こんなのでクラス間の勝負なんてやったら妖怪大戦争になっちまうだろ」

姫路「そ、それは困ります……。怖いのも困りますし、(小声)私の召喚獣は恥ずかしいですし………」

鉄人「現在綾倉先生が全力で復旧に取りかかっているが、召喚システムの調整については俺にもよくわからん。学園長なら何か知っているかもしれんがな」

 

これは教師側にとっても好ましくない事態のようで、鉄人も眉根を寄せている。

 

雄二「確かにその辺は鉄人よりもババァに聞いた方が良さそうだな。なんたって召喚システムの開発者様だからな」

明久「そうだね。学園長に聞いてみようか」

 

明久と雄二は二人で立ち上がり、学園長室を目指して悠々と歩き出す。

 

やけに早歩きで。

 

鉄人「キサマらっ! ドサクサに紛れて脱走か!」

 

明久達の企みに気づいた鉄人が、鬼の形相でFクラス教室を飛び出していった。

 

和真「じゃあ俺もちょっと出かけるか。秀吉、もし西村センセが戻ってきたらお手洗いって伝えておいてくれ」

秀吉(わざわざトイレという単語を避けるあたり、こやつの育ちの良さが伺えるのう)「それは構わんが、お主はどこに行くつもりなのじゃ?」

和真「ん?メインサーバー室」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

和真「あーやくらせーんせー!」

綾倉「(カタカタカタ)……おや、柊君ですか。私に何か御用ですか?」

 

メインサーバー室では綾倉先生が真剣な表情をしながら、メインコンピューターのメンテナンス作業を行っていた。邪魔しちゃ悪いとは思いつつもどうしても気になったので和真はさっさと用件をすませようとする。

 

和真「当然、今起こってるシステムの不具合についてだけど」

綾倉「おや、もうバレちゃいましたか。まあたとえバレてもあの学園長は生徒のために肝試し仕様にカスタマイズしたとか何とか言って言い逃れをするでしょうがねぇ……」

和真「あの人意地っ張りで見栄っ張りだからなぁ……。となると、今頃雄二がそれに乗っかって、残りの補習期間を肝試しに当てるよう学園長に持ちかけているところだな」

綾倉「ほう、それは楽しそうな企画ですね。せっかくですから三年生の方達も誘ってみてはいかがですか?受験勉強の良い息抜きになるでしょう」

和真「勿論そのつもりだぜ。梓先輩とか二つ返事で乗ってくれるだろうしな」

 

和真と軽く談笑しながらも綾倉先生はパソコンに向き合いながら作業スピードを一切緩めない。突出した並列思考能力があって初めて成せる高等テクニックである。

 

綾倉「それで、私に聞きたいこととは……?」

和真「アンタが調整ミスしたとはどうしても思えねぇんだよ。何か隠してること、あんだろ?」

 

和真の発言を聞いて、それまで淀みなく動いていた手が急に止まる。そして綾倉先生は困ったような表情で和真に向き直る。

 

綾倉「このことは箝口令が敷かれているので学園長には内緒ですよ?……柊君の睨んだ通り、この不具合はミスではなく外的要因にあるんです」

和真「この前みたいにハッキングを仕掛けた奴がいんのか?」

綾倉「いえ、そうではなく……いえ、論より証拠ですね。柊君、最近身の回りの電子機器に不調を感じませんでしたか?」

和真「そういえばこの頃テレビも携帯もパソコンも何か処理が重くなったような……」

綾倉「このメインコンピューターも以前よりやや処理が重くなっています。そして私が独自に調査した限りでは、この町にある電子機器の全てが本調子じゃないみたいです。そしてそれらの不調が始まったのは、システムのバランスが不安定になった日と一致しています」

和真「……確か、試験召喚システムって科学とオカルトのバランスで成り立ってるんだったよな……つまりあれか?調整ミスったせいでオカルトの割合が高くなったからあんなのが出てきたんじゃなく…」

綾倉「……ええ。オカルトの力が強まっているのではなく、科学の力が弱まっているのです。それも、この町全体で……こんな芸当ができるのはアドラメレクしか考えられません」

和真「……そいつって確か俺らが停学中に襲ってきた自律型召喚獣のボス格だったよな?綾倉センセ、アンタ何か知っているのか?」

綾倉「……貴方には話してもいいでしょう。これから話すことは他言無用でお願いします」

 

 

 

 




和真君の阿修羅のモデルは乾湿像ではなくリボルテックタケヤの方です。

【ミニコント】 
テーマ:勉強して!2

明久「ねぇ美波、ババ抜きでもしない?」

美波「さっきから全然進んでないじゃない!?現実逃避早すぎるわよ!」

明久「僕の心の中の『ヒゲ公爵』が遊ぼうって誘惑するんだよ~……」

美波「爵位高いのが腹立つわね……」

『アキ君?もし赤点なんか取ろうものなら物凄いチュウをしちゃいますからね?』

和真「↑……と、俺の心の中の玲さんは言っているぞ?」

明久「赤点なんかとってたまるか!よし、やるぞぉぉぉおおおおお!!!」

美波「凄い集中力!?」



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