バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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【英語】

次の単語を英訳しなさい。
『スペイン語』

源太の答え
『Spanish』

蒼介「基礎英単語の一つだが、たまに頭文字のSが大文字になるのを忘れてしまう人が結構多い。そのようなケアレスミスには充分注意するように」


明久の答え
『Spaniard』

蒼介「それはスペイン人だ。……だが1学期前半からは考えられないまともな間違いだな。私も教えた甲斐があったと思える」

ムッツリーニの答え
『Spaget…』

蒼介「どう解釈してもスパゲティと書こうとしたようにしか見えん……。私の教え方が悪かったのか……?」




六巻開始・特別補習

「……雄二」

「なんだ翔子?」

「……特別補習っていつまでだっけ?」

「確か今週いっぱいだな。まったく、折角一学期が終わったってのに毎日登校だなんて、ババァは夏休みの意味を知らないのかってんだ」

「……でも、私達Fクラスは仕方ない。試召戦争で平常授業が沢山潰れていたから」

「とはいってもだな、少なくとも俺やお前や和真や姫路はFクラスの連中に合わせたレベルの授業なんて正直受けるだけ無駄だろ?教師に目をつけられてる俺はともかく、せめてお前らはAクラス連中に混ぜて夏期講習を受けさせるとかの配慮があってもだな」

「……レベルとかは関係ない。雄二がいるから、私はFクラスに行く」

「またお前はそんなことを……」

「……雄二が学校に行かないなら私も行かない。特別補習があってもなくても」

「いや、そこは行かなきゃだめだろ……お前は俺と違って優等生で通ってるんだから」

「……雄二が結婚式に行かないなら私が連れて行く。結婚の意思があってもなくても」

「かっこいい台詞のようだがそれは立派な人権侵害だと言うことを覚えておけ!というかそんなことになったら俺は全力で抵抗するからな!」

「……抵抗なんて無駄。私、頑張るから」

「なんでそんなことで頑張れるんだよ!努力の無駄遣いをすんな!」

「……前に」

「ぁん?」

「……前に、吉井が言っていた」

「なんだ?あのバカが何を言っていたんだ?」

「……『好きな人の為なら頑張れる』って」

「違うからな!?あいつの言おうとしたこととお前のじゃあ意味合いが全然違うからな!?」

「……私も最近、心からそう思った」

「私もじゃないっ!そんなこと考えんのは世界中探してもお前だけだ!」

「……雄二とは小細工なしの腕力勝負で結婚してみせる」

「だから結婚に腕力は関係ないとぎゃあああっ!頭蓋が!頭蓋が軋む音が!」

「……結婚、してくれる?」

「しねぇよ!っていうかできねぇよ!学生の内は結婚云々の話は進めねぇって約束しただろうが!」

「……うん、わかってる。冗談」

「微塵も冗談には見えなかったぞ……」

「……でも、雄二」

「んぁ?」

「……卒業したら私と結婚してくれるってこと?」

「げほげほっ!な、何を言ってやがる!?」

「……雄二のこと、信じてるよ」

「~~~~~ッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

期末試験も終わって七月も残すところあと数日となった。大抵のクラスは夏休みを満喫するなり部活動に精を出すなりしているなか、和真はFクラス一同と共に数多くの試召戦争で潰れた授業分を取り戻すべく鉄人による特別補習を受けていた。清涼祭の売り上げで購入した遮光カーテンのお蔭で直射日光対策はできているものの、冷房などという贅沢品は設置されていないため気温はどうしようもなく、さらに担当教師が鉄人ということもあってクラスのほとんどが限界に近い状態であった。

しかし和真はこのうだるような暑さをまるでものともせず、鉄人の講義を聞き流しつつ綾倉先生特製『エキスパート・ラーニング』の問題を解き進めていた(先日の期末試験を鼻で笑えるほど難しいのでスラスラとはいかないようだが)。

本来ならば講義以外の教材に集中するのはいけないことであるが、Fクラスのレベルに合わせた授業など翔子と同等の学力を有している今の和真には正直何の価値も無く、かといって和真のレベルに合わせた授業など行おうものなら姫路と翔子以外は誰もついてこれなくなるだろう。鉄人もそれを理解しているため、通常授業時は授業にするよう和真と約束した上で今は見逃している。

 

鉄人「……全員動くなっ!」

「「「っ!?」」」」

和真(……あん?)

 

集中して問題に取り組んでいる耳に突然鉄人の怒声が耳に入ってきた。和真は何事かと辺りを見回してみるとFクラスの生徒達のほとんどが中腰の状態でフリーズしていた。

 

和真(なるほど、補習に嫌気がさして逃げ出そうとしたってところだな。それにしても西村センセ、黒板の方を向きながら気配を察知したのか……野生の獣かよ)

 

そう思いたい気持ちもわからないでもないが、天性の直感なんてものが備わっている和真には人のことを言う資格が無いのではなかろうか。

 

鉄人「貴様ら……脱走とは良い度胸だな。

そんなに俺の授業は退屈か?」

 

鉄人はゆっくりと振り返り脱走を企んだ生徒達を睨みつける。これから襲い来るであろう鉄拳に生徒達が戦々恐々していると、鉄人は意外なことを言い出した。

 

鉄人の「……そうか。お前らがそこまで退屈しているとは気付かなかった。これはつまらない授業をしてしまった俺の落ち度だな。……侘びと言ってはなんだが、代わりに一つ面白い話をしてやろう。霧島、姫路、島田、木下、柊は耳を塞げ」

和真「いやいや、そりゃねぇっすよ。面白い話なら仲間外れにして欲しくはねぇな」

鉄人「……まあお前なら問題ないだろうから好きにしろ。他の四人は絶対に聞くんじゃないぞ。

……そう。あれは、十年以上前の夏」

 

明久達が不可解に思っているのをお構いなしに、鉄人は話し始めた。雄二はもうなんとなく感づいているが、ここで耳を塞げばこの鬼教室は間違いなく補習時間を増やしてくるだろうから泣く泣く聞くことにする。まあ、今さらどんな選択をしようと地獄行きには変わらないのだが。

 

鉄人「俺がブラジルの留学生とレスリングをやっていたときのことだ」

『『『ギャぁアあーっ!!』』』

和真(あーあ……俺はどうってことないが、耐性無い奴にとっちゃ生き地獄同然だな)

 

生粋のアウトドア派の和真は暑さに対して異常に強い耐性を持つため鉄人のレスリング談義程度恐るるに足りないのだが、一般人からすればもはや拷問通り越して処刑と同義である。

 

鉄人「相手は身長195㎝、体重120㎏の巨漢、ジョルジーニョ・グラシェーロ。腕の太さが女性のウエストくらいありそうな男だった。だが俺とて負けはしない。188㎝、97㎏の鍛えに鍛えた肉体でヤツと正面からぶつかり合い……」

『やめろ!やめてくれぇ!?』

『脳が、脳が痛ぇよ!!』

『ママァーッ!!』

和真(デケーっちゃデケーけどよ、俺はクソ親父を見慣れてるからなぁ……そう言えば制服の丈が短くなってきたなぁ、今度採寸し直すか)

 

多くの生徒の精神がガラガラと崩壊していく中、和真は徹が聞いたら血涙ものの内容を呑気に考えていた。

 

鉄人「……しかし、ヤツはレスリングと柔道を勘違いしていた。腕ひしぎを仕掛けてきたんだ。だがこの俺の自慢の上腕二頭筋には勝てるわけもない。汗に塗れ、血管を浮き上がらせながらも俺は腕を伸ばしきることなく抵抗し続けた。すると向こうはすかさず俺の頭上にまわり、その分厚い大胸筋で俺の顔を圧迫しつつ上四方固めを」

『ぐああああっ!い、嫌だ!目を閉じたくない!最悪のビジュアルが瞼の裏に張り付いて離れない!』

『起きねぇ……福村が起きねえよ!?おい、しっかりしろよ!』

『空気を……新鮮で涼しい空気をくれ!!』

和真(つーか、俺の身長は最終的にどこまで伸びるんだ?親父みてぇに2m越えは正直勘弁して欲しいんだが……。頑張れ母さんの遺伝子)

 

周囲は阿鼻叫喚に包まれているが、和真はもう完全に身長の方に関心がいってしまっている。

 

鉄人「……そして、制限時間いっぱいまで使った俺達の寝技の攻防は続き……ん?お前ら、もうダウンか?……そして柊、自分から催促しておいてそれはマイペースにも程があるんじゃないか?」

和真「俺、レスリングよりボクシング派なんで」

鉄人「まったく、お前という奴は……しかしこれでは補習もままならんな。仕方がない、10分間だけ休憩を入れるとしよう。脱走なんて下らないことを考えた自分を反省するように」

 

鉄人は耳を塞いでいる四人にジェスチャーで手を離すように伝えると、休憩の旨を伝えて教員用の椅子に座る。脱走を警戒しているのか、教室から出ていく気は無いらしい。ちょうど聞きたいことがあったので和真は『エキスパート・ラーニング』を手に取り、死屍累々のクラスメイト達をスルーして鉄人に近づく。

 

和真「なーなー西村センセ、ちょうど物理で教えて欲しいところがあるんだけど」

鉄人「ほう、勉強熱心だな。どれ、見せてみろ……お前な……」

 

鉄人は休憩時間にもかかわらず学ぶことをやめない和真に感心しつつも、指定された箇所に目を通した途端に呆れたように溜め息を吐く。

 

鉄人「……ラプラス変換なんて高校教師に聞きにくるか普通?」

和真「でも、教えられるでしょ?」

鉄人「できないわけではないが……まったく、優秀過ぎるのも考えものだな」

 

とはいえ教師たるもの学習意欲のある生徒には手助けしてやらねばならないと考え、鉄人はできるだけ分かりやすく解説していく。

 

鉄人「……と、このようにラプラス変換をうまく用いれば、複雑な微分方程式も容易に解くことができるわけだ」

和真「なるほど、だいたい理解できた。流石補習担当、何でも教えられるんすね」

鉄人「綾倉先生ほど精通しているわけではないがな」

和真「あの人は例外でしょうが……なんだよ物理と数学だけで3600点って……。あ、そういや西村センセ、もう一つ聞きてぇことがあったわ」

鉄人「今度はなんだ?」

和真「さっきのレスリングのことだけど、結局どっちが勝ったんだよ?」

鉄人「……やれやれ、ちゃんと全部聞いていたのか。もちろん俺が勝ったに決まっているだろう。俺はお前の父親……カミナさん以外にはそうそう負けんよ」

和真「俺としてはさっさとあの鼻っ柱を叩き折ってやりてぇんすけどね……」

鉄人「……それは俺も同意見だ」

 

明久「すいませーん、西村せんせーい」

 

和真と鉄人が他愛ない雑談を繰り広げていると、突然明久から呼びかけられた。二人は怪訝そうに目を見合わせてからとりあえず明久達のところに向かう。

 

和真「どうしたんだよ明久?」

鉄人「お前が俺を呼ぶなんて珍しいな」

明久「すいません。ちょっと先生にお願いがあったもので」

鉄人「お願いだと?おかしなことじゃないだろうな」

明久「違いますよ。ちょっと召喚許可を貰いたいだけなんです」

和真(そういや装備がリセットされたっけ。となると戦力を把握しておくっつうわけだな……あん?)

 

明久がなぜ鉄人に声をかけたのか得心が言った和真だが、隣で鉄人があからさまに『厄介なことになった』といった表情になっていることに訝しむ。

 

鉄人「あー……。いいか吉井。お前は観察処分者だ。人よりもずっと力があり、しかも物や人に触ることのできる召喚獣を持っている。そんな危険なものをみだりに喚び出すことは感心できんぞ。余計な事は考えずにだな……」

和真(あん?なんだこの歯切れの悪さは?いつもなら『くだらないこと気にかけてる暇があるなら勉強しろ』みたいに毅然として断ってるはずだろうに……)

秀吉「西村教諭。ワシらは別に悪巧みをしておるわけじゃないぞい。ただ、純粋に召喚獣の装備がどうなっておるのかが気になるだけなのじゃ」

 

見かねた秀吉が助け船に入るも、鉄人はさらに困ったような表情になる。

 

鉄人「いや、しかしだな木下。試召戦争でもないのに召喚獣を呼び出すと言うのはあまり良いことではないぞ」

 

この奥歯に物がはさまったような物言い。召喚を許可すれば不都合な点があると見て間違いない。

 

雄二「鉄人。何をそこまで隠している。俺達の召喚獣に何か不具合でもあったのか?」

鉄人「いや、何でもないぞ坂本。それより休憩も終わりだ。席について次の授業の準備をするんだ」

 

いつもなら鉄人呼ばわりされると文句を言う筈なのにこの対応。姫路や翔子や美波も鉄人がどこかおかしいことに気がついたようだ。

 

姫路「西村先生。私達の召喚獣に何かあったんですか?」

翔子「……隠さないで教えて欲しい」

美波「ウチらの召喚獣なら物に触れないから呼出してもいいですよね?」

鉄人「……さて。授業を始めるぞ」

 

Fクラスの中でも真面目なこの三人の意見も聞こうとしないとなると、流石に和真も気になったのか雄二にアイコンタクトであることを指示する。雄二はそれに頷いた後、鉄人の腕をおもむろに掴む。

 

鉄人「なんだ坂本」

雄二「どうやら何かあったのは間違いなさそうだな。こうなりゃ召喚許可をよこせなんて言わねぇ。ただし、何が起きたのか説明はしてもらうぜ……起動(アウエイクン)!」

 

呼び声に反応して白金の腕輪が起動する。雄二の白金の腕輪の機能は教師の許可なしに召喚フィールドを作成することができる。

 

明久「それじゃ、早速……試験召喚(サモン)っ!」

 

お馴染みのキーワードを口にすると、明久の足元に魔方陣のような幾何学模様が出現し、その中心から召喚獣が喚びだされる。

 

和真(……こいつはいったいどういうことだ?)

 

 

 

 

 

 




蒼介「第六巻が始まったな」

和真「四、五巻と試召戦争要素の薄い話が続いたからな、久しぶり暴れるぜ!」

蒼介「始めに言っておくが、今回の話は原作と大分違う展開になると断言できる」

和真「なにせ常夏コンビが既に改心済みだからなぁ……」


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