バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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和真「そういえばさ、ソウスケ」

蒼介「何だカズマ」

和真「“鳳”のシンボルって朱雀なんだろ?明らかに火属性のイメージなのにお前は蒼の英雄だの明鏡止水だの……アイデンティティーのことごとくが水属性っぽいじゃねぇか」

蒼介「別に構わんだろう。『ベイブレード』のドランザーだって朱雀なのに青い機体だしな」

和真「そういう問題かよ!?第一ドランザーは青色だけど火属性だろうが!」

蒼介「お前、知らないのか?初代ドランザーは『フロスティックドランザー』という機体でな、その名の通り氷属性だったんだぞ?」

和真「……え?マジで?」

蒼介「マジだ」

和真「……知らんかった」

蒼介「だいたい火属性は本来お前の担当なんだぞ、赤みがかかった髪とか戦闘時の気性の荒さとか。だというのにお前は『ライトニングタイガー』などと電気属性っぽい技に現を抜かしおって……」

和真「仕方ねーだろうが!作者がシュナイダーより日向の方が好きなんだからよ!」

蒼介「そんな理由でか……」






第五巻終了

空雅「……おい、なんだよこの部屋は?こんなもんいつの間に用意しやがったんだ?」

 

文月学園の期末試験が終了した日の夕方、“御門”本社ではいつものように定時退社しようとした御門社長を秘書であり大学時代からの後輩でもある眼鏡の似合う茶髪の美女、キュウリこと桐生舞に捕まえてとある部屋に連行した。その部屋には窓一つ設置されていない監獄のような部屋であった。冷暖房や換気扇はあるため健康面ではさほど問題ないが、空雅にとって深刻な問題なのは入ってきたドア以外に逃走するスペースが無いということだ。こんな部屋は社長である空雅すら預かり知らぬ場所である。ジト目を向けられた桐生は怪しい笑みを浮かべながら何故かどや顔になる。

 

桐生「ふっふっふ……あなたに残業分の労働を押し付けられ続けて幾星霜……だがしかぁぁああし、このまま泣き寝入りする舞ちゃんじゃないってことですよ!」

空雅「幾星霜って、お前入社一年目だろうがよ。つーか格好つけてるとこ悪いが、要するに軽費を使い込んで俺を逃がさない部屋をこっそり増築してたってことだよな?キュウリお前、性根腐りきってんな」

桐生「桐生です!第一軽費管理も貴方が押し付けたことでしょうが!いつもみたいに揚げ足取ってうまく逃げようったってそうはいきませんよ!今日からはキチンと残業終わらせるまで帰しませんから!さあ。さあ!さぁぁあああ!!!」

空雅「あー、あー、あー、あー!!!

顔近いんだよ。うぜぇしキメぇし見苦しい」

桐生「ウゼッ……!?」

 

息をするように放たれた暴言に思わずショックを受ける桐生を放置して、空雅は懐からやけに大きなライターらしきものを取り出しながら奥の壁に近づく。

 

桐生「……はっ!?御門せ…社長!いったい何をするつもりですか!?いい加減往生際が悪-」

空雅「オラァッ!!!」

 

ライター(?)を着火しながら空雅が腕いっぱいに円の軌道を描くと、ライターから凄い熱量の火が灯され、鉄の壁を円形にくり貫いた。

 

舞「え…………えぇぇぇぇぇっ!?」

御門「『バーナーブレード』……“橘”の新発明だぜ。それじゃ、あばよっ!」

 

御門はその穴に躊躇なくダイブした。ちなみにここは15階、このままでは全身から血をぶちまけてグロテスクな死体になること間違い無しであるが、当然そこら辺も対策済みである。

 

空雅「そらぁっ(シュッ……ガキンッ!)」

 

懐から鉤縄(ボタン一つで巻き取り可能の優れもの)を取り出して、隣にあるビルの窓に引っかける。そして空雅は忍者顔負けの手際で鍵縄を巻き取りつつ隣のビルの壁を登っていった。あまりにもぶっ飛んだ逃走劇に呆然としていた桐生だったが、しばらくして我に帰る。

 

そして絶叫。

 

桐生「あん……の、ハイスペック駄目人間がァァァアアアアア!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

御門「ったく、あいつもしつこいな。俺に残業させるなんざ100億世紀早いんだよ」

 

あの後も桐生は社員を総動員して執念深く追い回してきたが、空雅の無駄に高い逃走&隠密スキルの前にあえなく見失ってしまったようだ。

見事撤退に成功した空雅は悠々と商店街をぶらついている。すると、見知った姉弟が仲良く買い物をしているのが目に留まり、無視するのも何だと思い声をかけることに。

 

空雅「よう、吉井とその弟の少年。その様子だと仲直りできたみてーだな」

明久「あれ、おっちゃん?」

玲「ええ、おかげさまで。……アキ君?御門先輩と知り合いだったのですか?」

明久「姉さんこそおっちゃんと知り合いだったの?というか……え?先輩って……」

空雅「お察しの通り、大学時代の先輩後輩の関係だ」

明久「えぇぇぇぇぇぇ!?」

 

あまりにも予想外すぎる真実に、明久は商店街の真っ只中であることを忘れて思わず絶叫する。

 

空雅「うるせーな、周りの迷惑考えろや」

玲「そうですよアキ君、お行儀悪いですよ」

明久「あ、ごめんなさい……いやでも、仕方ないじゃないか。こんな小汚いオッサンがハーバード卒だなんて聞かされたら……」

空雅「相変わらず失礼なガキだなお前は。小汚い云々は性根の汚いお前だけには言われたくねーよ」

明久「失礼なのはそっちじゃないかな!?……あれ?姉さん確か23歳だったよね?」

玲「ええ、そうですけど……アキ君、女性に年齢を聞くものではありませんよ?」

明久「あ、ごめんなさい。……でも、そうなるとおっちゃんの年は……」

空雅「俺は25だが」

 

明久、本日二度目の絶叫。

その直後に明久を粛清する玲に別れの挨拶を済ませて空雅は二人のもとを離れる。一人商店街を猫背の体勢で歩きながら、

 

 

ーーーゾクッ

 

 

空雅は言葉ではとても表現できそうにない、得体の知れない気配を感じとる。空雅にとってそれはどこか懐かしく、それでいて心の内から嫌が応にも憎悪が涌き出てくるような気配であった。

 

空雅(とうとう動き出しやがったな……

アドラメレク……!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、生徒会役員一同は生徒会室に集まっていた。集った理由は他でもない、今日は三年役員の辞任式である。

 

梓「……ほな、本日をもってウチら三年生は引退や。2学期からはアンタら二年生、そして一年生が主体となっていくことになるさかい。……さ、アンタらもそれぞれ一言で良いから述べろや」

 

梓の言葉を受けて三年一同は二年役員である蒼介と飛鳥に視線を向ける。

 

高城「佐伯嬢に騙される形で入った生徒会ですが……有意義な時間を過ごさせていただきました」

小暮「私達は今日でここを去ることになりますが、貴方達との思い出は決して忘れません」

杏里「今期、私は途中参加だけど、貴方達の力になれたなら嬉しい……」

夏川「最初はちょくちょく衝突してたけどよ、今なら思うぜ……鳳、お前は誰よりもすげぇ生徒会長だ!そして橘、お前もな」

常村「本当なら大門にも別れの挨拶をしたかったんだかな……。あいつともよく喧嘩したが、今となっちゃあそれすら懐かしいな」

 

三年生達の言葉を胸に刻んだ蒼介達は、返しの言葉を紡いでいく。

 

飛鳥「小暮先輩、宮阪先輩、梓先輩……」

蒼介「常村先輩、夏川先輩、高城先輩……」

 

「「お疲れさまでした!!」」

 

 

 

 

 

高橋「それにしても、こんな大事な日に池本先生はどこをほっつき歩いいてるのでしょうか?」

綾倉「無断欠勤するような人ではないと思ったんですけどねぇ……」

 

生徒会顧問である綾倉先生と高橋先生は、この場にいないもう一人の学年主任に半ば憤り、半ば身を案じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらに同じ時間帯に、新校舎の屋上にて仮面の男『ファントム』はノートパソコンを広げていた。

 

『どうだいアドラメレク、新しい器の調子は?』

[ふむ、これまでの有象無象て比べて桁違いに良質。『玉』としては及第点をくれてやろう]

『それは重畳。……しかしそれでもまだ不安定であることには変わらん、今のままではテストプレイすらままならんぞ?』

[問題ない。我の体が不安定だというなら……我が現出する世界も不安定にしてしまえばよかろう]

『……なるほど、私をここに来させたのはそのためか』

[察しがいいな。では、少し離れていろ]

 

ファントムが離れたのを確認すると、画面の中でアドラメレクはさっきまでのパソコン音声のような声ではなく鈴を転がすような美しい声で、不可解な言葉を呟いた。

 

アドラメレク「 מרחב טופולוגי」

 

その呟きとともに以前程馬鹿げたサイズでは無いものの、通常より何倍もある幾何学模様が出現し、その中心から白の天使が現れる。

 

そして再び言葉を紡ぐ。

 

アドラメレク「העולם מעווה מדע להחליש」

 

 

世界が、歪む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学園長「…………っ!?なんだいこれは!?せっかく調整した科学とオカルトのバランスが滅茶苦茶に……くそっ!?いったいどうなってるさね!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




蒼介「第五巻が無事終了したな」

和真「今回の後書きは、期末試験の結果発表と今後の試召戦争に向けてのミーティングを俺、雄二、翔子の三人で行う。そんなわけでソウスケ、お前終わるまであっち行ってろ。お前今巻出番いっぱい貰ったんだからこれくらい良いだろ」

蒼介「ハァ……仕方ないな」




蒼介、退出。





和真「さて、それじゃあ始めるぞ」

雄二「とりあえず、めぼしいキャラの点数と順位を上から順に見ていくか」

翔子「……じゃあ、まずトップの鳳から」


鳳蒼介……6388点(1/300)


雄二「……もう何も言うまい」

和真「テストを受けるたびに点数が上がっていくという反則仕様が今巻で明らかになったからな」

翔子「……早急に決着を着けないと手遅れになるかもしれない」

雄二「だが今回の結果では保健体育は言わずもがな、英語でも首位から陥落したそうだ」

翔子「……心当たりが一人」

和真「心当たりっつうか、そんなもんアイツしかいねぇだろうよ……」


柊和真……5067点(2/300)
霧島翔子……5067点(2/300)


和真「俺達もかなり強くなったはずなんだがなぁ……」

雄二「首席と次席の点差は縮まるどころかむしろ開いたな……」

翔子「……でも、以前と比べて1000点近く点数を伸ばした和真は正直かなりすごいと思う」

和真(まあ今回もっと伸ばした奴がいるんだけどな)


姫路瑞希……4563点(4/300)
久保利光……4559点(5/300)


和真「今回のライバル対決は姫路に軍配が上がったようだな」

翔子「……私と和真にも匹敵するすごい鍔迫り合いの末、紙一重で瑞希の勝ち」

雄二「まあこいつら二人は予想の範疇だ。……問題は次の三人だ和真この野郎」


木下優子……4512点(6/300)
大門徹……4028点(7/300)
工藤愛子……3569点(8/300)

雄二「…………」

翔子「…………」

和真「…………」

雄二「……言い訳を聞こうか?」

和真「……正直すまんかった」

雄二「すまんかった、で済むかバカ!なんだこの点数!?手強い敵が揃いも揃ってもっと手強くなってるじゃねぇか!特に木下姉!久保や姫路と大差無いってどういうことだ!?」

和真「そりゃあまあ……元々俺と点数を競ってたわけだし、これくらいのことはねぇ……」

翔子「……ひとえに和真の愛の力」

和真「翔子、優子の力だ」

翔子「……ひとえに優子の愛の力」

和真「くそ、言い直させても俺への精神的ダメージが全然減らねぇ……」


佐藤美穂3516点(9/300)


和真「特に言及する所は……あったわ」

翔子「……物理科目が400点オーバーしている」

雄二「くそ、Aクラスの戦力がどんどん充実していきやがる……半分は和真のせいだがな!」

和真「悪かったって言ってるだろ!?」


坂本雄二……3465点(10/300)
橘飛鳥……3002点(11/300)

和真「飛鳥はインターハイに向けての訓練で学業が多少疎かになってるな。だが猛練習の甲斐あってインターハイで優勝を勝ち取れたらしい」

翔子「……まさか、佐伯先輩に勝ったの?」

和真「あの二人はそもそも体重差ありすぎて階級が違う。あの先輩は三年間無敗で引退したそうだ」

翔子「……雄二がトップ10に食い込んだ」

雄二「まあ俺の点数はあまり重要じゃないんだが。代表が前線で戦う機会は少ないしな」

和真「雄二よぉ、単機で最前線まで斬り込んで勝負を決めた某クラス代表のこと忘れたのかよ」

雄二「あんなチート腕輪持ちと一緒にするな!」


五十嵐源太……2766点(13/300)


雄二「こいつもか……おい和真」

和真「いい加減しつけぇよ……こいつは英語以外の伸びしろがかなりあったからな。英語も伸びているのは予想外だが」

翔子「……英語は628点と鳳を抜いて学年トップ」

雄二「Bクラス版ムッツリーニだな……。しかもムッツリーニと違って露骨に点数が低い教科も無い」

和真「そういや翔子、お前も確か英語531点で3位だよな?」

翔子「……借りは、必ず返す」

雄二(この二人、妙なライバル意識があるな……)

 
木下秀吉……2703点(15/300)

雄二「はい来たよ今回最も予想外だった奴が!」

翔子「……もともとの点数を900点とすると、およそ1800点の上昇になる」

和真「今回のMVPは文句なしでこいつだな。……しかしスキルの性質上、優子の成長に比例してこいつの点数も伸びるんだよな。よし、ここは秀吉のためにも優子をさらに鍛え上げて…」

雄二「やめろバカ!?明らかにこっちが損するだろうが!」


島田美波1654点(128/300)


雄二「秀吉ほどではないが、島田もかなり成績が向上したな」

翔子「……原作でも美波本人の学力は高い。Fクラスレベルになった原因は日本語(特に漢字)が不自由だから」

和真「今巻で、蒼介がドイツ語で意思疏通できたおかげである程度の壁は越えられたみてぇだな。あと、全ての漢字を覚え差すのではなく問題慣れさせることに念頭を置いたようだ」

翔子「……そう言えば、どうして鳳がドイツ語を話せるの?」

和真「アイツは“鳳”後継者として英才教育を受けたからな。ドイツ語に限らず、先進国の言語はだいたい不自由なく話せるぜ」

雄二「あいつマジで弱点無しか!?」


土屋康太1391点(173/300)
   
和真「ムッツリーニも躍進したな」

翔子「……鳳の指導のおかげで、保健体育以外の点数もFクラス標準レベルまで上昇した」

雄二「それでも保健体育は796点と全体の半分以上と圧巻ものだな」

和真「ちなみに愛子が498点で3位、ソウスケが587点で2位と、まさにムッツリーニの独壇場だ」

翔子「……あの二人も伸びてはいるけど、いかんせん相手が悪い」


吉井明久1275点(191/300)


和真「ちなみにこれは世界史を除いた点数だ」

雄二「あのバカがここまで伸びるとはなあ、というか世界史を入れたらCクラス並じゃねぇか……」

翔子「……和真がAクラスに塩を送っていたと同時に、鳳もFクラスの成績を向上させていた」

和真「そう言うことだな。……さて、ここで一つ明久には内緒の話をしてやろう」

雄二「なんだ?藪から棒に」

和真「最終的な明久の減点は490。つまり今回の目標は1290点だ」

翔子「……世界史抜きでも結構惜しかった」

和真「そして俺達が明久の家に行ったとき、明久に課せられた点は250点(直後に50点プラスされたが)原作では150点だったのに何故100点増えていると思う?」
 
雄二「そりゃあ……女子の人数が原作と違ったからだろ?秀吉を女子とカウントすると一人につき50点で原作では計三人で150点、この作品では……ハッ!?」

和真「気づいたようだな……。そう、この作品では優子と翔子もいたからさらに100点上乗せされてたというわけだ
……つまり、俺が優子を連れて来なけりゃ明久は無事目標点に届いていたわけだ」

雄二「お前、今回あらゆる方面に迷惑かけてるな……」

和真「この件に関してお前に責められる謂れはねぇよ。お前が野次馬根性を出さず帰宅してりゃあ、翔子も明久の家に行ってなかっただろうし」

雄二「忘れたか?俺は明久の幸せが大嫌いな男だ!」

和真「威張って言うことじゃねぇだろ!
……まあ、和解してくれて本当に良かったぜ」



和真「さて、このあたりでお開きにしようや」
 
翔子「……気がつけば本編より長くなってる」

雄二「しかしどいつもこいつも伸びたもんだ。これだと『二年生は学力はすごいけど頻繁に騒動を起こす問題児の集まり』なんてレッテルを貼られそうだな」
 
和真「別に間違っちゃいねぇだろ?おいソウスケ、締めるぞ」

蒼介「やれやれ、待ちくたびれたぞ。
読者の皆、差し支えなければ、これからも読んでくれると嬉しい」

和真「アドラメレクはいったい何をしたのか?ファントムの目的とは?次の投稿を楽しみに待っていてくれ!」


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