バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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【吉井玲先生の特別英語試験】

玲「こちらでは私、吉井玲が学校のテストとは異なる形式の問題を出していきたいと思います。正解が一つに限られる画一的なものではなく、もっと幅広い回答が可能な出題形式です。決して個人的な調査を目的にしている訳ではありませんが、質問には正直に答えてください」

問 あなたの今までの異性とのお付き合い経験について、英語で答えて下さい。

姫路の答え
『I have no associated with a male.』

玲「瑞希さんは今まで男性とお手伝いしたことがないのですね? それは大変結構なことだと思います。学生の本分は勉強ですからね。尚、異性と付き合うという意味で用いる場合の“associate”は主に否定的な意味を伴います。間違いではありませんが、“romantic overture(男女交際)”等の単語を用いると更に良いかと思います」

優子の答え
『l kissed Kazuma on his lips the other day.』

和真の答え
『(何度も書いたり消したりした跡)I was stolen a kiss by Yuko the other day .』

玲「なんと、お二人はお付き合いをしているのですか。特に和真君には少々言いづらいことを聞いてしまいましたね……。恥ずかしがりながらも正直に答えてくれてありがとうございます。……それにしても、最近の高校生は進んでいるのですね。我が家の愚弟がそのような真似をしていないか、あの子の回答がとても気になります。」


吉井明久の答え
『英作文ができませんでした。』

玲「…………………」


勉強会in霧島家1

秀吉「ふぅ、いつ訪れても購買は混んどるのう……」

 

翌日の昼休みに秀吉は、いつもは弁当なのだが今日は両親が忙しかったため購買で昼食を買いに行き、現在Fクラスの教室に戻る途中である。そんな秀吉に後ろからとある腹黒糸目教師が声をかけてきた。

 

綾倉「おや木下君、購買帰りですか?」

秀吉「む、お主は……綾倉先生かのう?」

綾倉「清涼祭のとき以来ですね。しかし担当学年も違うのによく覚えてくれていましたね」

 

嬉しそうに微笑む綾倉先生を見て秀吉は内心顔をひきつらせる。単にここ最近和真を通して『綾倉特性ドリンク』が猛威を奮っているので、忘れたくても忘れられないというだけである。

 

秀吉(この先生、ワシでも何を考えてるかわからんから不気味じゃのう……。間違いなく和真以上のサディストじゃろうし、あんまりかかわりたくはないのじゃ……)

綾倉「そうだ、前々から木下君に話したいことがあったんですよ」

秀吉「な、なんじゃ?」

綾倉「確か君は……演劇に熱中するあまり、学業を疎かにしてしまっているようですね」

秀吉「う……うむ……面目ないがその通りじゃ……」

 

落ち込んだように俯く秀吉。どうやら密かに気にしていたことらしい。成績上位をキープしながらインターハイ上位入賞を果たした飛鳥のような例がある以上、演劇部での活動が成績不良の免罪符にはならないことは、秀吉とて自覚している。そんな秀吉に綾倉先生は優しげに語りかける。

 

綾倉「もし君の培った演技力が、テストにおいても強力な武器になり得るとしたら……どうしますか?」

秀吉「な……なんじゃと!?それは真か!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

姫路が二日連続の夜更かしを咎められ、週末までの間学校以外の外出を禁じられてしまったため、一同は週末に翔子の家で勉強会を開くことに決め、週末までの三日間は蒼介がAクラス教室で開いた特別講義に参加することにした(美波は蒼介の用意した漢字対策プリントに取り組む。そんな物を昨日の今日で用意できる辺り、どうやら蒼介はコンピュータースキルも申し分ないらしい)。その間何故か秀吉が不参加であったが、事情を聞かれたくないようだったので一同はそっとしておくことに決めた。明久のときと随分対応に差があるようだが、それはひとえに人徳の差であろう。

そんなこんなで、あっという間に土曜日がやってきた。

 

明久(ん?あの着流し姿は……)「鳳君、おはよう。鳳君も霧島さんに誘われたの?」 

 

翔子の家に向かう途中、明久はたまたま蒼介とばったり遭遇した。今日び休日に家紋の刺繍の入った着流しで外出しているような学生など極少数なためすぐに蒼介だとわかった。

 

蒼介「吉井か。ああ、既にカズマにも頼まれているが昨日私が開いた講義の後に霧島からも頼まれてな。……良い友達を持ったな」

明久「あはは、まあね」

蒼介「ところで、例の減点とやらはいったいどれほど貯まっている?」

明久「……もう490点まで膨れ上がっちゃったよ」

蒼介「ならば今回の勉強会は気合いを入れて臨む必要があるな。私もできる限り力を貸そう」

明久「ありがとう、助かるよ。……でも鳳君、自分の勉強は大丈夫なの?」

蒼介「気にするな。試験前に切羽詰まって詰め込まなくてはならないような雑な学習はしていない」

明久「そ、そうなんだ……」

 

ついさっき姉である玲から似たような指摘を受けた、現在進行形で切羽詰まって雑な学習をしている明久にとっては耳が痛くなる話である。

そんな感じで軽く談笑しながら歩いていると、非常に立派な造りの霧島家に辿り着く(上流階級出身の蒼介は何の緊張も抱かなかったが、典型的な庶民である明久は目の当たりにしただけで緊張してしまった)。呼び鈴を鳴らして待っていると、大きなドアを開けて私服姿の翔子が出迎えた。

 

翔子「……吉井、鳳。いらっしゃい」

明久「お、お邪魔します」

蒼介「今日は世話になる。それとこれは昨日カズマに持たされた文月学園式試験問題集だ」

翔子「……ありがとう。あと、もう皆だいたい揃ってる」

明久「あ、僕達が最後なんだ」

 

二人は翔子に先導されて長い廊下を歩く。途中翔子は書斎、シアタールームなど目についた部屋を懇切丁寧に逐一説明していく。

 

蒼介「……ん?なあ霧島、あの鉄格子のついている部屋は何だ?」

翔子「……雄二の部屋」

蒼介「…………」

明久「鳳君、今のことは忘れよう」

蒼介(こんなのばっかりかFクラス……)

 

途中で蒼介が珍しくやや疲れた表情になりながらも歩みは止めず、しばらく歩いたところで翔子は立ち止まってドアを開ける。するとその中ではムッツリーニと愛子が言い争っていた。

 

『ムッツリーニ君は頭でものを考え過ぎだよ!「百聞は一見に如かず」って諺を知らないのっ?』

『……充分なシュミレーションもなく実践に挑むのは愚の骨頂』

『そうやって考えてばかりだから、スグに血を噴いて倒れちゃうんだよ!』

『……何を言われても信念を曲げる気はない』

『またそんなことばかり言って……!このわからずやっ!(チラッ)』

『……卑怯な……っっ!!(ブシャァァ)』

 

愛子がシャツの襟を開いたことで、ムッツリーニは鼻血の海に沈んだ。明久と雄二のいつものやり取りに比肩しうる不毛な争いである。

 

秀吉「明久に鳳か。やっと来おったな」

明久「あ、秀吉、今日は参加してくれるんだね。ところであの二人、何があったの?」

秀吉「うむ。それが、『第二次性徴を実感した出来事は何か』とか言う議論が高じてああなったようなのじゃが……」

明久「あのさ。その原因になった議題からして既に何かがおかしいと思うんだ」

蒼介「というかそもそも、工藤はカズマ主催の勉強会(テスト当日まで泊まり込みで、ひたすら問題を解き続ける無限地獄)に参加していたはずだが?」

翔子「……途中で脱落したようで、和真からこっちに斡旋されてきた」

明久「あ、よく見たら工藤さんいつもより疲れてるように見える……どれだけ過酷だったんだろう?」

翔子「……吉井、今の愛子はそれを聞かれたらしばらく立ち直れなくなるから絶対詮索しちゃダメ」

蒼介(加減というものを知らんのかアイツは……)

 

『叩くなら砕けるまで』を信条としているナチュラルサドの和真は、決して教師になってはいけない人種の一人である。

 

姫路「明久君、鳳君、こんにちは」

明久「ん。ああ、こんにちわ姫路さ……」

蒼介は「こんにちは。……どうした吉井?」

 

いつもと違って姫路のポニーテールを見た途端に、明久は一瞬で言葉を失う。

 

明久(す、凄く可愛い……!どうしよう!?なんて言ったらこの気持ちを伝えられるんだ!?『今日の姫路さんは死ぬほど可愛くて見ているだけで頭がおかしくなりそうだ』でいいかな?……いや、それは長すぎるからもっと簡潔に分かりやすく、短くまとめて……)

姫路「明久君?」

明久「今日の姫路さんは死ぬ!」

姫路「えぇぇ!?」

蒼介「不吉な占い師かお前は」

姫路「あの、明久君……。私、何か悪い相でも出来ているんですか……?」

明久「……ごめん。気にしないで……。ちょっと不測の事態に対応しきれなかっただけなんだ……」

姫路「は、はぁ……」

 

褒めるつもりでつい死の宣告をしてしまうような奴は、いくら世界広しと言えど明久ぐらいのものであろう。

 

蒼介(さて、私も準備にとりかかるとするか。今回の勉強会の主な目的は吉井の学力向上だが、吉井には姫路をマンツーマンであてがうため木下と島田に古典を教えてくれと坂本からは頼まれていたな……ん?)

 

蒼介が考え事をしながら教える準備をしていると、翔子がぐるぐる巻きにされた雄二を引きずってやってきた。

 

翔子「……雄二を連れてきた」

 

ドサッ

 

そのまま絨毯の上にロープでぐるぐる巻きにされた雄二が転がされる。Fクラスメンバーからすれば何の目新しさもないありふれた光景だが、Aクラスの蒼介と愛子にはおそらくかなりシュールな光景に映るだろう。

 

雄二「ん?鳳か。もう来てたのか?」

蒼介「……それよりも、今のお前の状況について詳しく教えてくれないか?」

 

雄二のロープを解きながら蒼介が尋ねる。

 

雄二「別に大したことはねぇよ。いつものように気を失って、目が覚めたらここにいただけだ」

蒼介「それは充分大したことあるのではないか……?……まあお前と霧島の関係に赤の他人である私が口を出すつもりはないが、勉強道具はどうするんだ?」

翔子「……大丈夫。準備は万全」

 

掲げられているのは雄二の鞄。ついでに着替えも持ってきたりと、雄二関係のことでは翔子に抜かりは一切ない。

 

明久「さて、と。それじゃ皆揃ったみたいだし、始めようか」

秀吉「そうじゃな。それがいいじゃろ」

 

 

『それは違うよっ!世論調査では成人女性の68%以上が……』

『……違わない。世界保健機関の調査結果では成人男性の72%が賛同している』

『またそうやって屁理屈を……!』

『……屁理屈じゃなくて事実』

『くぅ……っ!こうなったら、今度のテストでムッツリーニ君を抜いてボクの方が正しいって証明してみせるからね!』

『……はっ、たかが三位の未熟者が何を』

『またそうやって憎たらしいこと言って……ムッツリーニ君なんてこうだよっ!(ピラッ)』

『……卑劣な……っ!!(プシャァァア)』

 

蒼介(あいつらはここへ何しに来たんだ……?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

致命的に古典が苦手な秀吉と美波の学習には蒼介だけじゃなく雄二も参加することになった。この一週間でかなりの学力向上の兆しを見せている美波だが、古文への苦手意識は未だ払拭できていないのか、それとも別の理由なのか、明久と姫路の世界史組の方をチラチラ見ている。

 

坂本「おい島田。世界史の方ばかり見てないで集中しろ。お前の国語はムッツリーニにすら劣るんだからな。せめてFクラスの平均ぐらいは取れるようになってもらわないと二学期の試召戦争に困る」

美波「う……。わ、わかってるわよ!でも、その……世界史も、ちょっと自信なくて」

蒼介「島田、紀元前550年頃生まれた、『仏教』及び『ジャイナ教』の創始者は誰だ?」

美波「え?えーと、ゴウタマ・シッダールタ……?」

蒼介「ああ、正解だ。その様子だと世界史は大して心配する必要は無いな」 

雄二「鳳の言う通りだ、それよりもお前は致命的な弱点を克服しろ」

美波「うぅ……。ウチは別に畳と卓袱台も嫌いじゃないのに……」

秀吉「ワシも島田に同感じゃ……姫路が転校せずに済むレベルの設備さえあれば充分じゃから、もう少し手を抜いても……」

雄二「いーや、ダメだ!次こそは必ずAクラスに、こいつ(鳳)に勝つんだ!負けっ放しは趣味じゃねぇからな!」

蒼介「私達Aクラスはいつでも挑戦を受けて立つつもりだが……坂本、お前は何のために試召戦争を起こしたんだ?カズマから聞いた話では、振り分け試験でわざわざ点数を調整してまでFクラスの代表に収まったそうじゃないか」

雄二「んぐ!?そ、それはだな……」

美波「おおかた、翔子がFクラスに着いてきちゃったからじゃないの~?」

秀吉「翔子に相応しい設備を手にいれたい』……と。何ともロマンチックじゃのう♪」

美波「もう籍を入れるべきね♪」

 

厳密には翔子がついてきたのは完全にイレギュラーで、Fクラスに行くことを決めた理由は他にあるのだが、それを口に出すのは雄二のプライドが許さなかった。

 

雄二「くっ、てめぇら……!まぁいい。次の問題だ【『はべり』の已然形を用いた例文】を書いてみろ」

「「“以前”食べたケーキ“はベリ”ーデリシャスでした」」

雄二「お前らちょっとそこに正座しろ」

蒼介「このレベルでは私でも大分骨が折れるな……」

秀吉「面目ないのう……(ボソッ)やはりワシはあれを頼るしかないんじゃろうか?」

 

あまりのポンコツ振りに流石の蒼介も手を焼いている一方、ムッツリーニと愛子は相変わらず独特な問答を繰り広げていた。 

 

『ムッツリーニ君。さすがにこの問題はわからないでしょ?』

『……中一で70%。中二で87%。中三で99%』

『どうしてこんなことまで知ってるの!?』

『……一般常識』

『うぅ……。正攻法では勝てる気が気がしなくなってきたよ……』

『……工藤はまだまだ甘い、この程度ならおそらく鳳も苦もなく答えられる』

『こ、こうなったら……あのね、ムッツリーニ君。実はボク……』

『…………?』

『いつも、ノーブラなんだよね』

『……っ!?(ボタボタボタ)』

『え?それなのにどうして形が崩れないのかって?それはね……実は(ボソボソ)って感じのマッサージをいつも(ゴニョゴニョ)ってなるまで、毎晩毎晩……』

『……殺す気か…………っ!(ブシャァァ)』

『殺すだなんて人聞き悪いなぁ。別にボクは、ムッツリーニ君が出血多量でテストで実力が出せなくなるといいのに、なんてことも考えてないし』

『……この程度のハンデ、どうということはない』

『ふ~ん。そんなこと言うんだ?』

『………たかが三番目如きには負けない』

『むかっ……そこまで言うなら遠慮なく。……それで、さっきの続きだけど、(モニョモニョ)を体が熱くなるまでやったら、最後には(ホニャホニャ)を使って(ヒソヒソ)を……』

『……死んで……たまるか……っ!(ダバダバダバ)』

 

明久(ムッツリーニ、テストまで生き残れるのかな……?)

 

出血のし過ぎでムッツリーニの顔色が青色になってきているので、そろそろ心配になる明久だった。

 

 

 

 

 

 




美波に続いて秀吉にも教科フラグが立ちました。
それを回収し終えたとき、秀吉は恐ろしいまでにパワーアップするでしょう。


【吉井玲先生の特別(?)英語試験】

問 あなたが今までの異性とのお付き合いや経験について日本語でもいいから答えなさい。


明久の答え
『もうコレただの質問じゃないの!?』

玲「これはテストです。異性と抱擁を交わしたことのあるなら、抱擁と、接吻したことがあるのなら接吻と、きちんと正直に解答して下さい。アキくんには後ほど尋も……補習を行います。姉さんと今夜はぽっきりとお勉強をしましょう」


美波の答え。
『前に一度だけ、節分をしたことがあります』

玲「豆まきは異性とのお付き合いに含まなくても大丈夫です」


和真の答え
『この前の休日に優子にボウリングで接戦の末勝利した。優子はかなり悔しがっていたが、スコアは268-263だったため俺も内心冷や冷やしていたことは内緒である』

優子の答え
『この前の休日に和真とボウリング対決に僅差で負けました……。263-268まで肉薄したものの負けは負け。次は絶対に勝ちたいと思っています』

玲「先ほどの問いとは違ってこの上無く健全ですね。非常に微笑ましい光景とまったく微笑ましくないスコアが対称的ですね」


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