バカとテストとスポンサー   作:アスランLS

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本編にサッカー及びキャプつばネタが多々出てきますが、別に無視しても構いません。
伏線でもなんでもない茶番なので。


ラブレターとお弁当

雄二達と一緒に帰っていたが、教科書を卓袱台の下に忘れたので校舎に取りに戻って来た明久。

 

明久「はあ、やれやれ…ん?和真?」

 

余計なカロリーを浪費した明久は嘆息しながら上履きを履きFクラスに向かおうとすると、グラウンドでサッカーをしている和真を見つけた。

 

和真「どけぇぇぇぇぇ!」

『で、でたぁ! 和真の強引なドリブルだぁ!』

『おいびびってんじゃねぇよ、ボール取りに行け!』

『いや、でもよう…』

 

ただ全速力でドリブルしているだけなのだが、和真のあまりの気迫とスピードに萎縮してプレスをかけに行くのを躊躇してしまうサッカー部員。

 

和真「勝つ気のねぇディフェンスで俺を止めようなんざ……思ってんじゃねぇぇぇぇぇ!」

 

それをあっさりと突破する和真。日頃練習に励んでいるであろうサッカー部レギュラー達をまったく寄せ付けぬそのプレーは圧巻である。

 

『サッカー部レギュラーがびびってんじゃねぇ!いいから複数で取り囲め!』

 

『お、おおー!』

キャプテンらしき人に渇を入れられ持ち直すサッカー部員達。4人がかりで和真を取り囲んだ。

 

和真「上等だぁぁぁぁぁぁ!

 

……なんてな♪」

『な、なにィ!』

強引にドリブルで切り込むと思わせてペナルティエリア内にセンタリングを上げる和真。そのボールの先にいたのは…

優子「とりゃっ!」

 

ノートラップランニングボレーで正確にシュートを決めるAクラス代表代理の木下 優子。キーパーは一歩も反応できずにボールはゴールネットに突き刺さる。

 

『ゴーーール!』

 

和真「ナイスシュート!」

優子「ナイスアシスト!」

 

ハイタッチした後自分達側のピッチに引き返していく二人。

 

明久(…すごいの見てしまった。秀吉のお姉さんなのに運動神経抜群だなぁ木下さん。)

 

微妙に秀吉に失礼なことを考えながら、明久は自分の教室に向かう。

 

明久「たっだいまー」

 

まるで我が家のように声をかけて教室に入る明久。しかし教室内にはすでに先客がいた。

 

明久「あれ? 姫路さん?」

姫路「よ、吉井君!? とどどどうしたんですか?」

 

必要以上に慌てる姫路。座っている卓袱台の上には可愛らしい便箋と封筒が置いてあった。

 

姫路「あ、あのっ、これはっ」

明久(何をしているんだろう。まるで和真へのラブレターに使うような便箋と和真へのラブレターに使うような封筒を用意しているみたいだけど、使い道がわからない)

 

『現実を見ろ。明らかにラブレターだ』

 

明久の中の悪魔が語りかける。

こんな奴が脳内にいる時点で、明久は相当愉快な人間である。

 

明久(黙れ僕の中の悪魔! これがラブレターだという証拠でもあるのか!)

姫路「これはですね、そのっ」

明久「うんうん。わかってる。大丈夫だよ」

姫路「えっとーーふあっ」

 

姫路は卓袱台につまずいて転ける。その拍子に隠そうとしていた手紙が明久の前に飛んでいき、その一文が目に入る。

 

《あなたのことが好きです》

 

明久「…………」

『……これ以上ない物的証拠だと思うが』

明久「…………」

『わかっただろう?これが現実だよ。さ、諦めて認めようぜ?』

 

明久は飛んできた手紙を綺麗にたたみ、姫路に返す。

そして笑顔で一言。

 

明久「変わった不幸の手紙だね」

『コイツ認めない気だ!?』

明久(何を言うんだこの悪魔め!お前の言葉はいつも僕を不幸にする!もう騙されないからな!)

 

脳内のキャラに騙されたことが多々あるのが、明久が明久たる所以である。

 

姫路「あ、あの、吉井君…それは不幸の手紙なんかじゃないですから」

明久「嘘だ!それは不幸の手紙だ!なぜなら…実際に僕はこんなにも不幸な気分になっているじゃないか!」

姫路「吉井君」

 

取り乱す明久を抑えようと姫路がそっと手を握る。

 

姫路「落ち着いて下さい。そんなに暴れると身体をぶつけて怪我をしちゃいますよ?」

 

諭すように姫路が言うと、明久は落ち着く。それと同時に、現実が明久の中に浸透し始める。

 

明久「……仕方ない。現実を認めよう……

その手紙、相手はウチのクラスの…」

姫路「……はい。クラスメイトです」

 

顔を真っ赤にしながらも迷いなく答える姫路。明久は相手が和真だと確信する。

 

明久(それにしても和真か…)

 

ちらっとグラウンドにいる和真を見ると……

 

『やべぇ! ペナルティエリア内に切り込まれた!』

『今度こそくるぞ! 今度こそしっかり止めろよキーパー!』

『わ、わかった!』

和真「くらえサッカー部! これが俺のタイガーショットだぁあああ!」

『ぶべらぁっっっ!』

『なにィ!』

 

和真のシュートの威力は凄まじく、キーパーを吹き飛ばしゴールネットをも突き破った。

 

『ゴォーーーーーール!』

 

『バカヤロー! 止めろっつっただろ!』

『いや無理に決まってんだろ! だってタイガーショットだぜ!?』

『なーにがだってタイガーショットだぜ、だ! ただおもいっきり蹴っただけじゃねーか!』

『そうだよ!ただおもいっきり蹴っただけだよ! かつて全国の小~中学生がどれだけ真似したと思ってんだ!?』

『知るかぁあああ!』

 

チームワークが乱れ始めるサッカー部。

すでに得点は0-4と一方的な試合だ。

 

明久(…………まあ和真は外見は良いし、 姫路さんほどじゃないけど成績も良い。人当たりも良いし、若干サディストで戦闘狂だけど本当に困っているときには絶対に助けてくれる優しさもある…姫路さんが好意を持つのもわかるな。もし相手が雄二とかだったら腕の良い脳外科医を紹介しているところだけど)「姫路さんはそいつのどこが良いの?実は優しいところ、とか?」

姫路「はいっ!優しくて、明るくて、いつも楽しそうで……私の憧れなんです」

明久「……その手紙、良い返事が貰えるといいね」

明久(これは邪魔なんてできるワケがない。クラスメイトとして応援してあげよう)

姫路「はいっ!」

 

元気よく返事し、嬉しそうに笑う姫路。

明久は和真を心の底から羨ましいと思った。

 

『よし! マークを振り切った! サッカー部の威信に賭けて、なんとしても1点は取るぞ!』

 

和真側ディフェンダーがプレスを仕掛けるがサッカー部員はいち早くシュートモーションに入る。

 

『遅いぜ! くらぇぇぇ!』

 

ペナルティエリア外からサッカー部員は強烈なシュートを放つ。だが、

 

蒼介「無駄だ!」

蒼介はあっさりとキャッチする。

『ばかなぁぁぁ!』

『うちのエースのシュートをあんな簡単に…』

『まさにS・G・G・K……』

 

そして試合終了のホイッスルが鳴る。

結果は0-7。サッカー部の惨敗である。

この試合後、レギュラー達は監督に地獄のような猛特訓をさせられるのだが、それはまた別の話。

 

 

 

 

翌朝、いつも通り学校に向かう。クラスの大半の生徒は昨日消耗した点数を補充する為のテストを受ける。和真は昨日のうちに回復試験を済ませ、その後も一点も消耗してない為その必要はないが、流石に外に出るわけには行かないので、死ぬほど退屈している。

そんな時、近くで明久と島田が揉めていた。

 

島田「おかげで彼女にしたくないランキングが上がっちゃったじゃない!」

 

どうやら昨日の試召戦争で明久が何かをしでかし、その責任を島田になすりつけたらしい。

島田「……と、本来は掴みかかっているんだけど」

 

そのセリフはまだ危害を加えてない人が言うセリフである。既に明久の顔には殴られたような跡があるし、ついでに鼻血も出ている。

 

島田「アンタにはもう充分罰が与えられているようだし、許してあげる」

明久「うん、さっきから鼻血が止まらないんだ」

島田「いや。そうじゃなくてね」

明久「ん?それじゃ何?」

 

島田は心から楽しそうに告げる。

 

島田「一時間目の数学のテストだけど。監督の先生、船越先生だって♪」

 

全速力で明久は教室から出ていった。

和真の脳裏に昨日の校内放送が思い浮かんだ。

 

 

 

 

 

明久「うあー……づがれだー」

 

力を使い果たし、明久は机に突っ伏す。

とりあえず四教科が終了した(ちなみに船越先生は明久が近所のお兄さん(?)を身代わりにし、事なきを得た)

 

雄二「よし、昼飯食いに行くぞ! 今日は確か姫路が弁当を振る舞ってくれるんだったな」

姫路「は、はいっ。迷惑じゃなかったらどうぞっ」

 

そういって弁当が入っているであろうバッグを嬉しそうに出す姫路。

 

明久(そうだった! 姫路さん、君はなんていい子なんだ!君のおかげで僕はもう少し長生きできるよ!) 

 

もちろんカロリー的な意味である。

 

明久「迷惑なもんか! ね、雄二!」

雄二「ああ、そうだな。ありがたい」

姫路「そうですか?良かったぁ~」

 

それはもう嬉しそうに笑う姫路。

 

明久(やっぱり僕には優しい女の子の気持ちってよくわからないな)

 

島田「むー……っ。瑞希って、意外と積極的なのね……」

 

そして割と理不尽な動機で明久を親の仇のように睨む島田。

 

明久(そして厳しい女の子の気持ちもわからない)

 

秀吉「それでは、せっかくのご馳走じゃし、こんな教室ではなくて屋上でも行くかのう」

明久「そうだね……あれ?そう言えば和真は?」

 

いつも悪戯好きのような笑みを浮かべた友人がいつの間にかいなくなっていることに明久は気付く。

 

翔子「……和真なら、さっき『今日は別の教室で食べる』と言って出ていった。多分忘れてたんだと思う」

明久「なんだって!? 全く和真のやつ!」

雄二「和真の交遊関係は恐ろしく広いからな、探し出すのは無理だろう。今回は諦めるしかないな」

姫路「そうですか…残念です…」

明久(全く…自分に好意を持っている女の子との約束を忘れるなんて和真もデリカシーがないなぁ…姫路さんが落ち込んじゃってるよ…後でガツンと言ってやる!)

 

 

 

 

 

 

その頃、Aクラスでは…

 

優子「ところで、別にいいけどなんでアンタはこっちで食べてんの?」

 

弁当を食べながら優子が聞く。

 

和真「ああ、何だか身の危険を感じてな…」

工藤「え?そんな理由で?」

蒼介「ふむ…お前がそう感じたなら、なにかあるんだろうな」

飛鳥「あなたの勘は昔から当たるものね」

徹「前から思っていたけど、それは予知能力のようなものなのかい?」

和真「そんなオカルトじみた便利なもんじゃねぇよ。俺が感じとれんのは身の危険と面白いことの気配だけだ」

優子「その時点ですでにオカルトじゃない」

蒼介「オカルト…というよりは本来人間持っていた力じゃないだろうか。望むものと自分にとっての危険を察知する、人間が進化の過程で失ってしまった感覚、言うなれば“天性の直感”とも言うべきか」

 

そんな他愛ない話をしているうちに、和真達は食事を終えた。

 

和真「さてと、次の試召戦争前の前哨戦だ!徹、フリスペでバトルしようぜ!」

 

召喚獣訓練フリースペース、通称フリスペ。

四大企業、桐谷グループ発案で職員室に設置された常時展開型召喚フィールドだ。教師の許可を得て召喚獣の操作訓練を自由に行える場所であり、このフィールドで闘っても終了後点数が戻るというオプション付きだ。

と、中々便利なシステムなのだが、利用者はほとんどいない。なぜかというと、成績が悪い生徒は使用許可が降りないのだ。召喚獣の操作以前に成績をなんとかするべきだからだろう。逆に成績優秀な生徒(一部を覗く)は試召戦争の旨みが少ない上、成績不良者は使用できないので操作技能で差がでることはあんまりないのでメリットが少ないのだ。また、成績優秀者ほど真面目な生徒が多いので、やはりテストの点数を重視するからだ。よってフリスペ利用者は毎年ほんの数名だ。だが、このシステムが設置された後、学年の成績は明らかに伸びたらしい。それにはちゃんと理由がある。

 

徹「それはかまわないけど、どうして鳳じゃないんだい?」

 

食後のデザートを食べながら徹は問いかける。ケーキに練乳をふんだんにかけて食べている光景は見ているだけで胸焼けがしてくる。甘党にも限度があるだろう。

 

和真「だから言っただろ、試召戦争前だって。戦争前にもし負けちまったら縁起でもねぇだろ?」

徹「…なるほどなるほど。つまり君は、僕相手なら確実に勝てると、そう言いたいのかい?」

 

怒りを滲ませながら言う徹。表情はクールを装っているが、こめかみがひきつっているあたり冷静さを失いかけている。

 

和真「あぁそうだ、お前になら確実に勝てるぜ! ただし数学と物理以外でな!」

 

挑発しつつもさりげなく自分の苦手科目で相手の得意科目の二つを外す和真。抜け目がない。

 

徹「よーしわかった、そのふざけた自信をバラバラに引き裂いてやるよ!」

和真「へへっそう来なくちゃな!」

 

あっさりと挑発に乗せられ、職員室に向かう二人。

 

(ちょ…ちょろすぎる…)

 

残りの皆は呆れつつも気になるのか、彼等に着いていく。

 




というわけで和真君死亡フラグをキッチリ回避&オリジナルシステム登場でした。
今回は島田。

島田 美波
・性質……バランス型
・総合科目……950点前後
・ステータス(F・E・D・C・B・A・S・SSで表す)
(総合科目)
攻撃力……F+
機動力……F+
防御力……F+
(数学)
攻撃力……C+
機動力……C+
防御力……C+

総合科目はFクラス内では上位だがFクラスはFクラス、全体的に低スペックである。しかし数学科目だけはBクラス上位レベルであり、Fクラスの貴重な戦力である。

では。



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