辻堂さんの冬休み   作:ららばい

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注意:この話は『真剣で私に恋しなさいA-1』及び『つよきす』とのクロスオーバーになっています。
   その為それらの原作を知らない場合話がわからないかもしれません。
   尚、この話は完全な番外編扱いな為、読み飛ばしても進行的に問題はありません。


25話:夢枕(前編)

江乃死魔と決着を付け、恋奈と最後の喧嘩をした翌日。

 

この日は私にとって久々にワクワクする日だった。

それこそ数日キュウリ生活をしていたある日、定期的にメシをくれる脚長おじさんことダイが現れた日のように。

 

何にせよ私とダイのデート日である。

喧嘩で疲れたあとだったにも係わらず、子供のように胸がドキドキして寝付けなかった程だ。

 

なのに、

なのになんで

 

「何でテメェらが付いてくるんだよ」

「あ? そりゃカレシが遠出するんだから彼女としては付いていきたいだろ。

 っていうかテメェと大を二人きりにできるかよ」

「マキちゃんとヒロだけじゃ心配だしね、お姉ちゃんも同伴させて頂きます」

 

一旦実家に帰り、前に着ていたライダースーツを着用し、

滅多に使わないヘルメットを二つ用意してダイの家に戻るとそこにはお邪魔虫が二匹スタンバイしていた。

 

「マキさんもヘルメットつけんるんですね、意外だ」

 

人をまるで交通法無視の常習犯のように言いやがる。

 

「昼間からノーヘルで走れるかよ。速攻マッポに見つかるだろ」

「うんうんマキちゃん、ちゃんとルールを守って偉いわね」

「ぷっ、小学生みたいな扱いされてやんの」

 

・・・・・・今おそらく私のこめかみには凄まじく血管が浮き出ているはず。

いい加減腹が立ってきた。

 

こいつらと会話しても腹を立てるばかりだ、無視してバイクに跨る。

因みにこのバイク、名をゴルゴム君という。

中々に速度も出て乗り心地も良い愛着ある一品だ。

 

「ほら。ダイ、乗れ」

「う、うん」

 

私に促されダイは恐る恐る後ろに乗る。

 

「ほい、ヘルメット。ちょいとダサいデザインだけど文句ねぇよな?」

「いや、文句はないけどさ・・・・・・これって自転車とかに乗るときのヘルメットだよね」

「頭守れりゃ用途なんざどうでもいいだろ」

 

適当に実家から見繕ったヘルメットだ、多分ダイの言う通り中学生とかが使ってそうな真っ白な頭頂部のみを守るデザインのもの。

正直あまりにダサすぎて私は死んでもつけたくないが、ダイがかぶると恐ろしくにあっていた。

そのイモ臭さに吹き出す。

 

「何かバカにされてる気がする」

「気のせい気のせい、そんじゃ出発進行!」

 

自分愛用のフルフェイスヘルメットをかぶり、アクセルを回す。

同時に燃費の悪そうな煙を吹き上げながらゴルゴム君は中々の立ち上がり速度を見せながら発進した。

 

「おい先生! 置いてかれるぞ!」

「逃がすかァ! 今日の朝から妙に姉面しおってからに!

 ヒロのお姉ちゃんは二人もいらぬ!」

 

置いていった二人は私の発進に合わせて姉ちゃんの乗用車に乗り込み一気に急発進。

僅かな間で私に追いついた。

まぁ仕方ない。ここは住宅地だ、いくらなんでも猛スピードで走るほど私もアウトローじゃない。

 

「あのー、マキさん」

「ん、どした」

 

おずおずとダイが私にしがみついたまま話しかけてくる。

 

「ダイ、ちょっとくっつく力弱いぞ。もう少ししがみつけ」

 

これでは速度を上げたとき振り落としかねない。

 

「いや、その。どこにしがみつけばいいのでしょうか?」

「・・・・・・ふふぅん」

 

なるほど。

シャイボーイな長谷君はしがみつこうにもテレが入ってる訳か。

ここは一つからかってみるか。

 

「好きなとこに腕回せよ。

 何なら・・・・・・胸でもいいんだぜ?」

「な、そ、それは流石に」

 

照れてる照れてる。

どうせ辻堂への浮気を考えてるんだろうが、今回は私の方が発言権がある。

 

「ほら、さっさと腕回せ。そろそろ速度あげるんだからさ」

 

催促する。

勿論速度を上げるのは嘘だ。

今のところ大通りに出るまでは規定速度を超える予定はない。

 

だがダイは私の言葉を間に受けて慌てている。

しかしそれも短い間であって、次第に遠慮がちに腰に手を回した。

まぁ、それが妥当な所か。

別に本当に胸に手を回しても構わなかったんだが。

 

「おいコラ! 大に色仕掛けしてんじゃねぇぞ腰越ェ!」

 

後ろからピッタリ追随する車から辻堂の怒声が私にぶつけられる。

が、私はヘルメットしているから聞こえませんと知らんぷり。

 

「クソクソクソ腹立つムカつく目につく憎い憎い憎い畜生畜生畜生畜生

 畜生畜生畜生畜生怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨」

 

なんだか知らないが姉ちゃんの呪怨怨嗟の呪文が聞こえる。

やべぇなんだこの寒気。

しかも私を視線だけで射殺さんとばかりに睨む姉ちゃんのプレッシャーを感じる。

怖気が走るとはこの事だ。

 

「・・・・・・ちょっとスピードあげるわ」

「・・・・・・うん、お願いします」

 

どうやらダイの方にも怨念をぶつけていたらしい。

ダイの表情を見たら私以上に血色の悪い顔をしていた。

何だこれ、追いつかれたら呪い殺されるゲームでも始まってんのか。

 

何にせよちょいと気分を変えようとエンジンをふかし、速度を更に上げる。

 

「逃がすかぁ! 先生頼むぜ!」

「任せなさい! お姉ちゃん実はスリルドライブを全大会総なめしてる伝説を残してるお姉ちゃんなの!」

 

スリルドライブって確かクラッシュせずに超スピードで公道とかを走り抜けるゲームだった記憶がある。

 

「オラオラオラ! そんな眠っちまいそうなトロいスピードで私を離せるかァーッ!」

 

凄まじい速度で更に追い上げてきた。

何だよ、なんでだよ。

今日はダイと二人きりで楽しいドライブの筈だっただろ。

どうしてこうなった。

 

「マキさん揺らしすぎィ! 吐きそうだからッ、酔っちゃうからッ!」

 

湘南中の曲がり角を片っ端から突撃し、撒こうとするも全然ちぎれない。

それどころか徐々に詰め寄られてくる。

ありえないだろう常識的に考えて。

バイクが市街地のレースで車に追いつかれつつあるとか。

 

「マキさん、もう諦めようよ。

 姉ちゃん本気になってるから絶対逃げきれないと思う」

 

ダイは最初から諦めていたようだ。

 

「おもしれぇ・・・・・・俄然やる気出てきた」

「うわぁ、何か危険な展開」

 

公道市街でのレースでは私の負けだ。

だが峠ならどうだ。

 

「ハリィーハリィーハリィー! あんまりトロい運転してるとケツ掘るぞー!」

「姉ちゃん悪乗りしすぎ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うえぇ、めちゃくちゃ疲れた」

「俺は心臓が早鐘のようにうってて今にも胸が張り裂けそうだよ」

 

俺は胸に手を当ててゆっくりと深呼吸を繰り返す。

やばいよマジで。

過呼吸も起こしてたんじゃないか俺。

 

マキさんの峠攻めは凄まじかった。

まさかヘアピンカーブで車体をギリギリまで傾け、膝が地面にかするとは思わなかった。

二人乗りであんな攻め方をするか普通。

 

「あ~・・・・・・」

 

愛さんも姉ちゃんも途中流石に諦めたらしく、何度かカーブでドリフトし続けていたら姿が見えなくなった。

何か消える直前に変な違和感があったけれど、まぁ考えすぎだろう。

 

取り敢えず呼吸を正した後、現在地を確認するために用意していた地図を開く。

 

さて、ここはどこだろうか。

実の所凄まじい速度を出すマキさんにしがみつく事に必死になりすぎて道筋など見てなかった。

その為地図を見てもどこの方向に進んだのかすら判らない。

既に周りを見ても山々山の大自然。

完全に360度山に囲まれている。

 

「ねぇねぇマキさん。ここどこだかわかります?」

「しらねーよ。適当に走ってたらここに来たし」

 

まさか、俺達はこのどこかも判らない峠で迷子になったのだろうか。

 

何だろう、一瞬薄ら寒い感じがした。

 

「なぁダイ」

「ん、どうしたんですか」

 

呼びかけに答えるも、マキさんは何も言わない。

ただ、マキさんは黙って指を差した。

その先には一つの旅館が存在していた。

 

「あんな旅館、さっきまであったか?」

 

マキさんは不思議そうに旅館を見つめる。

・・・・・・不思議だ。なんだか知らないけどあの旅館から変な感じがする。

そこに見えるのにそこに存在しないような。

 

「まあいいや。疲れたし今日はあそこに泊まっていこうぜ。

 今日は山の中でのんびり過ごすことに決定だ、いいよな」」

「ちょ、マキさん」

 

呼び止めるもマキさんは聞く耳持たず旅館へ歩いて行った。

流石に置いていかれるのは嫌なので慌てて後を追う。

だが、その背中を追う途中、一度足を止める。

 

俺はマキさんの背中から目を離して、もう一度少し離れたところにポツンと建っている旅館をみた。

 

「何なんだろうな、この違和感」

 

そこにあるのにそこに存在しないような。

存在自体が朧げなような。

それでいて悪い雰囲気は感じない。

 

不思議な出で立ちな旅館だ。

ボロくもなく、けれど新しくもない。

ただ、存在の不思議さだけがそこにあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようこそいらっしゃいました」

 

俺達が旅館の門をくぐり、古ぼけた扉を開くとまるで俺達が来ることを知っていたようにお婆さんが待っていた。

 

扉をくぐる前にこの旅館の看板を見てみたが、名前が薄ぼんやりと書かれていた。

あまりに摩耗が激しすぎてちゃんとあっているのか自信はないが、『夢枕』というのがこの旅館の名前らしい。

 

「すいません、予約はとってないんですけど宿泊ってできます?」

「はいはい、勿論大丈夫でございますよ」

 

マキさんは特に違和感を覚えていないらしく、キョロキョロと内装を見渡すものの不安がる様子はない。

俺はマキさんから少し目を離し、婆さんに宿泊の手続きを取る。

 

「ほっほ、それではこの用紙に名前だけを記入して頂けますか?」

「え、名前だけですか?」

 

住所や電話番号を記入しなくていいのか?

というよりも名前だけとか、それでは防犯対策が成り立つのか?

 

「ええ、名前だけで構いません」

 

・・・・・・何か引っかかるものはあるものの、女将さんがいうのならそれでいいんだろう。

俺はスラスラと用紙に『長谷大』と『腰越マキ』の名を書き込む。

そしてそれをお婆さんに提出するが、その用紙を受け取って名を確認した途端、お婆さんの目がマキさんに向けられた。

 

「そこの方、ちょっとよろしいですか?」

「あ? 私か?」

「えぇ、左様です。少々名前の事でお聞きしたいことが」

 

はて、もしかして俺は腰越という文字を間違えていたのだろうか。

それとも名前表記でカタカナはダメだったのだろうか。

何にせよマキさん本人が訂正してくれるのならそっちのほうが確実だ。

俺は後のことはマキさんに任せ、マキさんと交代するように内装を見る。

 

別になんてことはない、普通の旅館だ。

ちょっと古い雰囲気だけど、これはむしろ年を重ねて貫禄がある出で立ちの内装だ。

ただ、やっぱり変だ。

だが何が変なのか言葉にできない。

 

漆塗りの柱。少し色あせたカーペット。

田舎にある木造建築特有の自然の香り。

なんて事はない、普通の隠れ家旅館だ。

 

俺がおかしいのだろうか。

勘の鋭いマキさんが違和感を覚えていないのなら多分俺の考えすぎなだけかもしれない。

 

・・・・・・胸の奥に僅かな引っかかりはあるものの俺は深く考えない事にした。

 

俺がそうこう考えている間にマキさんは宿泊の手続きを終えたらしい。

笑顔で合流した。

 

「ほほほ、それではこの旅館について説明させて頂きます」

 

マキさんと話を終えたらしいお婆さんは柔かに説明する。

その横にいるマキさんは何やら訝しげな顔をしていた。

 

「現在の時刻は正午三時。申し訳ありませんが昼食の時間は過ぎているため次の食事は七時となります」

 

それならば問題はない。

一応俺が食事を用意している。

元々旅館に泊まる予定すらなかったのだ、晩御飯は事前に作っていたのだ。

とてもマキさんが満足する量とは思えないけれど、まあ腹ごなしはできる。

 

「浴場のことですが、これは六時から深夜三時までの開放となっております。

 露天、屋内。どちらからもこの山を見渡せる絶景でございますよ」

 

へぇ。

確かにこの場所は山頂付近の筈。

ならばここから見渡す景色は壮観だろう。

 

「混浴とかあるのか?」

「マ、マキさんちょっと」

「照れんなって、一応訊いてるだけで他意はないっつーの」

「う、そうでしたか」

 

恥ずかしい思いをした。

まるで俺がスケベ男のようだ。

否定はできないけれど。

 

「ほっほ、申し訳ありませんが混浴はありません。

 ですが、個室風呂ならあります。これは十時から一二時の間ならば入れますよ。

 好きな方とどうぞ好きなようにご入浴ください」

 

お婆さんの含みある笑いに俺とマキさんは顔を赤くする。

いや、別に俺とマキさんはそういう関係ではないのだけれど。

 

「食事場所や浴場の位置はお部屋にある見取り図でご確認できますので。

 それではお部屋まで案内させて頂きます」

 

そう言ってお婆ちゃんは鍵を片手に歩き始める。

俺達はその背中を追いながらも興味深く旅館内を眺めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元々少ない荷物を俺達は部屋に置き、夕食までの時間つぶしとして外に出た。

特に外に用事はないのだが、ここがどういう所なのかという確認だ。

 

旅館から離れる時、俺は何度か振り返りその姿を確認する。

 

「どうしたんだダイ、さっきからやたら振り返って」

「いや、特に理由はないんだ」

 

嘘だ。

あの旅館、目を離すとなぜか消えてなくなりそうな気がしてならない。

まるで本来そこにない建物のような、そんな感覚がある。

 

しかし何度振り返ろうとそこに旅館はある。

俺が気にしすぎるだけなのだろうか?

 

「お、あそこに小川があるぜ。行ってみよう」

「マキさん、あんまりはしゃぐとつまづいたりして転倒しちゃいますよ」

「私はガキかよ・・・・・・」

 

他の服がないためライダースーツのままのマキさんと楽しく話しながら歩き、

あっという間に小川の続く比較的穏やかな坂の獣道にたどり着く。

 

『大和、あんまり動いて体力無駄に使うなよ。

 これじゃあ何のための休暇かわかんねーだろうが』

 

どこからか、女性の声がした。

 

どこだろうと見渡す。

すると俺達が向かう先である小川にいたらしく、三十代と二十代の境目くらいの男性と女性がいた。

どうやらあの二人もあの旅館の宿泊客なのだろう。

 

俺らと同じく時間を潰すついでに自然浴を堪能している様子。

 

『ん、川魚か。そういやまだ昼食済ませてなかったよな』

『そうだね。俺はそれほど腹減ってるわけでもないけど、あずみさんはどう?』

『あたいは、そうだな。腹減ってないと言えば嘘になるな』

『そっか、それじゃあ一匹だけ殺生させてもらうかな』

『そんな魚に悪いと思うような前置き言うなよタコス』

 

男性はしゃべっている間に一瞬で川で泳ぐ魚を掬い取った。

凄い、遠目だったから何となく見えたけど本当に手慣れた感じだった。

もしかして普段からサバイバル生活でもしてるのだろうか。

 

「あの二人・・・・・・」

 

マキさんが何やらあの二人を興味深そうに見ていた。

 

「あの人達と知り合いなの?」

「いや、そうじゃないけど・・・・・・あいつ等多分かなりできるぞ。

 今の魚取った動きとか身のこなしが明らかに洗練されてる」

 

マキさんが言うならそうなのだろう。

っていうか素人目でも今の動きを見たら只者じゃないというのはわかる。

 

「しかしあの人達もあそこの旅館に泊まってる人なんですかね?」

「夕飯がどうとか言ってたしそうなんじゃねぇの」

 

そんな事を言いながら俺達は二人の近くに進む。

別に二人に用事があるわけでなく、単純に元々俺たちもこの小川に用があるだけなのだ。

 

急な斜面を降りれば徐々に清流に近づく。

 

どうやらマキさんはこういう獣道になれているようで、軽快な動きで少し急でしかも荒れている坂道を軽やかに滑り降りる。。

俺も僅かに早足で斜面を下ろうとする。

だがそれがいけなかった。

 

足元の苔に気づかず俺は盛大に滑る。

 

「あ、ヤバ」

 

こりゃ拙い。

 

「馬鹿! 何やってんだダイ!」

 

思い切り後ろ向きに滑った。

受身も取れそうにない。

 

マキさんは気づいてくれて慌ててこちらにダッシュしてくれているが多分間に合わない。

これは後頭部をしこたま強く打ち付けるぞ。

 

俺は他人事のようにそう思っていると、不意に後ろから誰かが支えてくれた。

 

「お前、大丈夫か?」

 

凛々しい声。

その鈴が鳴るような澄み切った声の主は誰かと振り返る。

 

「ありがとうございます、危ないところでした」

「ああ、山は街中と比べれば少々足場が悪い。

 次からは急ぐにしても足元を文字通り掬われないようにするんだぞ」

 

俺はその声の主を見て驚いた。

 

「え、マキさん?」

 

いや、そんなはずはない。

マキさんなら俺の少し下の坂道で驚き顔で踏みとどまっているのだ。

 

「マキ? 誰のことだ、私は鉄乙女というものだが」

 

人違いなのはわかる。

だが、何というかやはり一目見て俺が間違えたように彼女の造形がマキさんそっくりだった。

マキさんの髪型がちょっとキレイに整えられて、目つきを少し柔らかくすれば本当に瓜二つになるだろう。

 

「乙女さん、ちょっと待ってよ。速いって」

 

鉄さんの後を追うようにして一人の男性が続いてきた。

見た所俺と同年代のようだ。

彼は旅館から走ってきたのか息を切らせている。

 

「だらしないなレオ。このくらいで汗を流すようでは最後まで付いてこれないぞ」

「いや、今日はもう特訓じゃなくて普通に宿泊ついでに観光しようって約束したじゃない」

 

レオさんや鉄さんはどうやら俺達と同年代らしい。

見た感じ若い。

向こうの川の方にいる二人は俺たちよりも年上みたいだけど、女性の方は凄く若く見える。

 

どうやら旅館の宿泊客が3セットここに揃ってしまったようだ。

 

「む、そうだな。確かに今日はそういう約束だった」

 

鉄さんは僅かに目を伏せる。

・・・・・・もしかしてこの二人は付き合っているのだろうか。

いや、こんな山奥の旅館に二人で泊まるくらいだ、そういう関係なのだろう。

 

「じゃあレオ、あそこの川で魚を採ろう。

 鍛錬と遊び、どちらも味わえるぞ」

「鍛錬から離れようよ乙女さん・・・・・・」

 

どうやらこの女性に苦労しているらしい、レオさんは疲れたような顔をしていた。

ただ、それでも彼の顔は全然彼女を嫌っていない。

むしろ大好きなのだろう。

そういう雰囲気を二人の間から感じる。

 

「おいアンタ」

「うん? なんだ」

 

マキさんが不意に鉄さんに話しかける。

 

「いつまでアタシの弟を抱っこしてんだ。さっさと離しやがれ」

「・・・・・・なんだと?」

 

明らかに不良の良くないところを出したマキさん。

拙い、これじゃあ折角親切に俺を助けてくれた鉄さんに悪い。

 

慌てて仲裁に入ろうとする。

だが鉄さんは俺をゆっくり離すとそのままマキさんに詰め寄る。

完全にガンを付け合っている状態だ。

 

「あ~、すいませんレオさん。マキさんが失礼なことを言ったようで」

「いや、似たような怖い後輩や吠えまくる甲殻類がいるから慣れてるよ」

 

俺は取り敢えずレオさんに詫びた。

穏やかというかニュートラルな人のようですんなりと許してくれた。

しかしマキさんと鉄さんはまだ睨み合い続けている。

 

いつ殴り合いない発展してもおかしくない、そう思い冷や冷やするが隣のレオさんは落ち着いたものだった。

 

「お前、名前はなんという?」

「腰越マキだ。そういうテメェは鉄乙女だっけか、さっきの話聞いた感じだと」

「ああ、それで合っている」

 

マキさんは完全に喧嘩モードだ。

やばいぞこれ。

 

「腰越、そこを動くなよ」

「あぁ?」

 

そう言って黒鉄さんは両手でマキさんのライダースーツのファスナーを掴む。

 

「激しい動きをしたからか蒸れるのか知らんが胸元をさらけ出しすぎだ。

 それでは枝や雑草などで擦りむいて細かい傷ができるぞ」

「な、何を・・・・・・」

 

鉄さんはマキさんのファスナーをゆっくり上げると次はしゃがみこみ、マキさんの足についた砂や葉っぱをハンカチで払う。

そして軽く目でマキさんの服装をもう一度確認すると満足げにうなづく。

 

「これでよし。元気がいいのは大変よろしいが、それが行き過ぎると余計な敵を作りかねない。

 そういうのは自分だけならいいが、近くにいる彼にも迷惑がかかる事を忘れるな」

 

鉄さんはまるで親のように優しい目でマキさんを見る。

そんな目で見られたマキさんはというと

 

「お、おう」

 

素直にうなづく。

 

「うむ、素直でよろしい」

 

鉄さんも満足げに頷く。

そして振り返りレオさんを見て口を開く。

 

「それでは私達も行くか。ほらレオ、手を繋いでやるからついてこい」

「乙女さん、人の前で子供扱いしないでよ恥ずかしい」

「何を言う。お前は私の子供ではなく、私の彼氏だろう」

「そ、そうだけど」

 

何というか、とても仲のいいおふたりだった。

 

「それでは私達は失礼する。そこのお前、くどいようだが次から山道を歩くときは足元を注意するんだぞ」

「はい、助けてくれてありがとうございました。あと俺の名前は長谷大といいます」

「ほぅ、中々感じのいい奴だ。レオも見習え、あそこまで礼儀正しい奴はそういないぞ」

「やめてよ乙女さん」

 

レオさんと鉄さんは手をつないで急斜面を結構な速度で下っていった。

なにげにあの鉄さんに手を引かれながらもついていけてるあたりレオさん自身も結構鍛えられてるみたいだ。

 

置いていかれた俺達は二人の背中を見送る。

マキさんは特に鉄さんを注視していた。

何か気になることでもあるのだろうか。

 

「鉄乙女・・・・・・確か四天王の一人も同じ名前と性別だったような」

 

四天王?

一体何の話だろうか。

 

「いや、まさかな。

 確か鉄って奴はもう成人してて二十代中盤くらいだろうし、あの女はどうみても二十未満だ。

 私の勘違いか」

 

何やら自分の疑問に自己回答したらしい。

マキさんは特に引きずるものもなく、鉄さんから視線を外す。

 

「おいダイ、私達も早く下りるぞ。

 あそこでそのリュックの中の弁当食べようぜ」

「あら、中身気づいてたんですね」

「当たり前だ、私の鼻なめんな」

 

そう言ってマキさんも前の二人のように俺の手を握る。

 

「また転びそうで不安だし私が手を繋いでてやるよ。

 それじゃ行くぞ」

「うん」

 

 

 

 

 

 

 

「君達はどういう経緯であの旅館見つけたの?」

 

清流にて三組の男女はそれぞれ男組と女組で別れた。

別に俺たちもレオさん達も互いに用があったわけではない。

だが、なぜだろうか。

近くにいるから挨拶やら軽い会話を繰り返しているとすぐに男連中は気が合い、俺を含めて三人共が固まった。

 

その後、話だけなのも何なので交流ついでにバーベキューをする事になった。

 

その準備の最中、俺達はここにきた経緯を話し合う。

 

「俺達は休日のトレーニングで山を登ってたら見つけたんです。

 で、逆に帰り道がわからなくなって・・・・・・仕方ないから今日はあの旅館に泊まることに」

 

大体俺と同じ理由だった。

 

「俺も同じ感じです。

 ドライブしてたら来た道も進む道もわからなくなって。

 そしたらポツンとあの旅館があったんですよ」

「・・・・・・そうか、全員同じってわけだね」

 

という事は直江さんも似たような理由みたいだ。

 

「俺やあずみさんも休暇だからドライブしてたらここに来たんだ。

 別に変な道を通ったわけでもなかったんだけどね」

 

現状を相談し合っても全員がワケのわからぬままここへ来てしまったという。

つまり未だ帰る道筋は見つからないというわけだ。

 

俺一人だったらこの事実に愕然として、多少慌てるだろう。

けれど俺にはマキさんがいる。

きっと彼女がいれば大丈夫だ、マキさんはそういう安心感をくれる。

 

「この花は綺麗だな。腰越、お前も摘んでみたらどうだ」

「あ~、その花なんだっけな。

 と、トリ・・・・・・トリアタマ?」

「アホかよ、トリカブトだろ。っていうかなんでこんな所に咲いてんだよこの毒草」

 

女性陣はというと三人仲良く自然探索していた。

 

「何にせよ食えない花なんて興味ないわ、私は食えそうなモン探してんだ。

 お、ヨモギ見っけ」

「こいつはやたら食物探しが上手いなオイ」

 

直江さんの話を聞いたところ、あずみさんはもう四〇代手前らしい。

年齢をうっかりバラした瞬間あずみさんにどつかれてた。

ともあれ、その事実に二人以外は大いに驚いた。

どう見ても二十代にしか見えないのだが。

 

「あずみさん、このキノコは食べられるのですか?」

「・・・・・・こんなカラフルで極彩色のキノコを食べられると思うテメェの頭は既に毒に侵されてるんじゃねぇのか?」

「むぅ、昔山篭りした時はこれと同じ色のキノコを食べた事があるのだが」

 

乙女さんはというと、どうやら大学一年生らしい。

彼女はただひたすらに純粋なようで、人の言うことは大体信用する。

礼儀も弁えており、年上であるあずみさんや直江さんには敬語だ。

 

マキさんはというと。

 

「お~い、いい匂いしたから辿ってみたらマツタケ見つけたぞ~」

「・・・・・・やたら鼻のいいやっちゃ」

 

野生児のように既に山に適応していた。

あの人ならもうここから帰れなくても生き続けられるんじゃないだろうか。

 

「あずみさん、足でも怪我してるんですか?」

 

山に慣れているのだろうか、勝手に動くマキさんや鉄さんを常に視界から離さず

かと言ってサボるわけでもなく要領よく食べられる木の実や野草などをちゃっかり手に入れている。

だが、決して大きく動こうとはしない。

 

俺の質問に直江さんは少し照れくさそうに笑う。

 

「いや、あずみさんのお腹には赤ちゃんがいるんだ。

 だから激しい運動は止められててさ。

 まだ目に見えて大きくはなってないけど」

 

つまりその赤ちゃんは直江さんの子でもあるわけで。

 

「元気な子供が生まれるといいですね」

「ああ、ありがとう」

 

レオさんの言葉に直江さんは嬉しそうに礼を言う。

俺も心からそう思う。

 

「おいダイ、これ調理しといてくれよ」

「はいはい・・・・・・って、何か多くない?」

 

マキさんが両手いっぱいに野菜や木の実、キノコなど様々な山の幸を持ってきた。

毒があるものもあるのではないかと一瞬思ったが、それはいらぬ心配だ。

鉄さんやあずみさんは山に生る植物などの毒の有無の知識があるらしい。

さらにマキさんもどうやら臭いやら様々な野性的感覚でわかるらしい。

 

そのため男性陣が調理班となり、女性陣が食材調達係となった。

 

因みに調理方法だが、元々直江さん夫妻はキャンプ予定だったらしく車にバーベキューなどで使う道具が一式あった。

これをお借りして料理する事になったわけだ。

 

「川の水も凄く綺麗だし、本当にキャンプするにはいい環境ですね」

「そうだね。でも俺は乙女さんがさっきから心配でならないよ」

 

レオさんがそわそわしながら鉄さんを見る。

 

「野菜ばかりでは物足りないな。

 よし、ここは私が肉を調達してこよう」

「一応聞くが、どうやって調達する気だお前」

 

あずみさんが訝しげに鉄さんに尋ねる。

 

「ん? 勿論熊や猪からに決まっているでしょう」

「・・・・・・兎ならまだしも熊と来たか」

 

参ったような顔をするあずみさん。

なるほど、レオさんの気持ちがわかった気がする。

中々に純粋で豪快な人のようだ。

 

「それでは行ってきます」

「待てコラ――――ちっ、人の静止も聞かないで行っちまいやがった」

「お、確かに肉が足りねぇな。私も付き合うぜ」

「おいテメェもか!」

 

俺とレオさんは癖の強いマキさんと鉄さんを何だかんだ文句いいながらも面倒見てくれているあずみさんに感謝しながら料理の下準備を続けた。

直江さんはというと

 

「あずみさん、少し疲れただろうしあそこで休んでてよ。

 食材集めは俺が交代するからさ」

 

やはり子を身篭っているあずみさんが心配で仕方ないらしく、しきりに話しかけていた。

だがその度に必要ないやらあっち行ってろやら言われてこちらに戻ってくる。

今回も同じ展開なのだろうか?

俺達は直江さんを眺める。

 

「大和、あんまりそうやってこの子を甘やかすと我侭に育っちまうぞ」

 

皮肉を言うあずみさん。

だが大和さんはその言葉に朗らかに返答する。

 

「確かにお腹の子も心配だけど、同じくらいあずみさんも心配なんだ。

 もしかして俺がお腹の子ばかり気にして言ってるのだと思ってたの?」

 

決して責める語気ではなく、ただたしなめるように言う。

そんな事を言われたあずみさんはというと。

 

「思ってるわけねーだろ。

 大和があたいを大切に思ってくれてるのは十年以上も前から知ってるよ」

 

何だかんだで凄く仲のいいお二人だった。

どうやらあずみさんが直江さんに冷たかったのも単純に照れ隠しらしい。

 

「少し二人だけにしてあげましょうか」

「それがよさそうだ。じゃあ俺たちはもう少し離れた所で作業しよう」

 

というわけで俺とレオさんは二人から距離を置くことにする。

 

取り敢えずマキさんが置いていった山の幸を二人がかりで担いで小川へ近づく。

 

「結構あるけどこれだけでお腹一杯になるんじゃ」

「いや、乙女さんならこれ全部一人で食べちゃうかも・・・・・・」

 

ああ、なるほど。

つまりマキさんそっくりの鉄さんは胃袋まで似ていると。

だったら確かにこれだけじゃ足りないかもしれない。

 

とはいえ俺達が山に繰り出しても毒物の知識がないため役に立たない。

 

それにマキさん達に任せておけばきっと大丈夫だろう。

俺達はそう結論づけて草や野菜の泥落としを始めた。

 

 

 

 

 

 

 

「いたーきます!」

「こら腰越。ちゃんと手を合わせないか」

「うっせぇな。そんな堅苦しい真似毎回してられっかよ」

 

時刻は五時。

実の所夕食まであと二時間しかないのだが、俺達は完全現地調達でバーベキューをする事になった。

 

「あ~・・・・・・あたいはいいわ。あんま食欲ねーし」

「じゃあその分私が食ってやるよ。ラッキー」

「おい腰越、そういう言い方はあずみさんに失礼だろうが」

 

やんちゃな妹を窘めるように言う鉄さん。

見た目も相まって本当の姉妹のようだ。

 

マキさんは小言をいう鉄さんを差し置いてガツガツと串にさした松茸やら野菜を平らげる。

それに追随するように鉄さんも食べる。

余りの二人の食いっぷりに男三人は呆気にとられた。

 

「結構な食いっぷりだね、君達二人の連れ」

「お恥ずかしい限りで」

「全くです、本当に。げ、マキさんちょっと鉄さんの分までとっちゃいけません!」

 

目を離したらやんちゃなことばかりするマキさん。

そんなマキさんに鉄さんは決して怒ることはない。

ただ、相応にお説教をするだけだ。

 

「お前は本当に落ち着きがないな。

 少しはお前の弟を見習ったらどうだ」

「うっせーな。メシぐらい好きに食わせろよ」

「む、反抗的な態度・・・・・・これは少し教育的指導が必要か」

 

前言撤回。

怒り出した。

 

「へぇ、やってみろよ。

 さっき熊をぶっ倒した時も思ったが、お前かなりできるし楽しめそうだ」

 

マキさんも相変わらずと言った具合で鉄さんを挑発。

鉄さんは激高こそしないものの、静かな威圧を放ち出す。

やばいやばい。

俺とレオさんは慌てて二人の間に入ろうとする。

 

「・・・・・・いや、やっぱいいや」

 

不意にマキさんが殺意をひっこめた。

 

「そうだった、もう喧嘩はしないって約束したの忘れてたわ」

 

頭をかきながらそう言うマキさん。

おお、覚えていてくれたのか。

感動する。

 

「悪かったな、鉄。もうお前の分までとらねぇよ」

 

そう言ってマキさんは再び食事に戻る。

で、完全に取り残された鉄さんはというと。

 

「・・・・・・反省したのなら良いだろう」

 

彼女も話がわかる人のようで、相手に敵意がないとわかるとすぐに引いてくれた。

 

「おいレオ、こっちにこい。

 お前の分もとってやる」

「え、あ、うん」

 

そして表情を優しげなものに変えてレオさんを呼び寄せた。

 

「全く、お前は私や伊達がいない時はいつもジャンクフードやインスタントで済ませているのを知っているぞ。

 今日は普段足りていない野菜を摂取する方向でいくからな」

「うへぇ、こんなに野菜ばっかり食べられないって」

 

レオさんの分の取り皿には山盛りの野菜が。

これひと皿で満腹になりそうなレベルだ。

 

「駄目だ、全部食べろ。

 食べられないというのなら私の手で食べさせてやるから。

 ほら、口を開け」

 

そう言って鉄さんは自分のお箸でレオさんの皿の野菜をつまみ、レオさんの口元に持っていく。

 

「ほら、あーん」

「恥ずかしいって、乙女さん」

「いいから素直に口を開け」

 

有無を言わさない。

頑固な鉄さんだ、多分レオさんが食べない限り手を引っ込めてくれないだろう。

レオさんもそう思ったらしく、次第に諦めて最後には顔を真っ赤にして口を開いた。

 

その口に鉄さんは箸を入れ、食べさせる。

 

「全く、お前は私がいないと駄目だな」

 

そう言う鉄さんは凄く幸せそうだった。

 

「若いっていいなぁオイ」

「俺やあずみさんもまだまだ若いよ。

 何ならこの子が生まれたあとスグに二人目なんてどうだろう」

「人前で恥ずかしい事いってんじゃねーよタコス。

 ・・・・・・まぁ、大和が欲しいなら何人だって孕んでやるけどよ」

 

何だかんだで目の前の四人は凄く仲が良かった。

微笑ましく見ていると横に気配が。

 

誰か? 当然マキさんだ。

 

どうやら先ほどいた場所から俺の隣に移ってきたらしい。

 

「ダイ、あーん」

 

マキさんが俺に向かって口を開く。

どうやら鉄さん達のをみて真似がしたくなったらしい。

ただあっちと違って男の俺が食べさせてあげる側だけど。

 

「はい、どうぞ」

「ん、さんきゅ」

 

要求通りにマキさんが好きそうな謎肉(多分、信じたくないが熊肉)を口に運んであげた。

 

「ん、やっぱちょっと固くて臭いわ。

 そりゃ食用に作られてる牛肉と比べれるわけもねーか」

 

どうやらあまり美味しくなかったらしい。

 

「でもまぁいいや。ほら、もっと食わせてくれ」

 

そう言って再び口を開くマキさん。

俺は続いて松茸を口に運んだ。

 

そんなやり取りをほか四人は微笑ましいものを見る目でこちらに視線を向けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。
今回の話は何となくひらめいた突発的ネタです。
元々は本編が終わったあとに書こうと思っていた話なのでしたが、ちょっと前倒しにしました。
尚、なぜあずみと乙女さんを選んだのかというと特に理由はなかったり。
でも薔薇従者大和やあずみは書いてて面白いですね。
それでは。

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