ハイスクールD×D~最強男の娘の転生物語~   作:三元新

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大変長らくお待たせしました。……本当に、長いこと開けてしまい申し訳ありません。

言い訳をさせてもらうと、今月は予想以上に忙しく、更にこの頃暑すぎるせいで夏バテをしていて、全くやる気が起きなかったからなのです。

でも、気づけばお気に入り件数が555件もあり、作者の三元新はとても感謝感激でございます!

さてと、そろそろ早くしろと思うでしょう。ですので今から物語を始めます。何時も様にごゆっくりしてくださいね。

と……いうわけで、ゆっくりしていってね♪


7話 乳龍帝と変態の神様?

―ツバサside―

 

あれから、翌日。俺たちはイッセーの家に集合していた。

 

「オーディンの爺さんからのプレゼントだとよ。――ミョルニルのレプリカだ。ったく、クソジジイ、マジでこれを隠してやがった。ミドガルズオルムの野郎、よくこんな細かいことまで知ってたな」

 

「そんなに凄いものなんですか?」

 

イッセーが訝しげに訊くと、アザゼルが再度言い直してくる。

 

「北欧の雷神トールが持つ武器のレプリカだ。それには神の雷が宿っているのさ」

 

「はい、オーディンさまはこのミョルニルのレプリカを赤龍帝さんにお貸しするそうです。どうぞ」

 

ロスヴァイセさんがイッセーに形が日曜大工の金槌を渡す。

 

「オーラを流してみてください」

 

ロスヴァイセさんに言われるまま、イッセーはミョルニルにオーラを流す。

 

カッ!っと一瞬の閃光のあと、ミョルニルはどんどん大きくなっていき――。

 

ゴスッ!

 

床に落とした。

 

「おいおいおい。オーラを纏わせすぎだ。抑えろ抑えろ」

 

アザゼルが嘆息しながら言う。

 

イッセーはオーラの量を減らす。すると、ミョルニルは徐々に小さくなっていき、両手で触れるサイズまで縮小された。―――が。

 

「オモイィィィィ!!」

 

イッセーは持ち上げようと躍起になるが、一ミリたりとも持ち上がらないミョルニル。

 

……そして、そんなイッセーを見て俺の後ろで必死に笑いを堪えている光輝兄さんと、そんな兄さんをジト目で見ているレイジ兄さん。

 

…………はぁ、光輝兄さんのバカ。

 

「……ねぇ、イッセー。それさ、またあとで練習したら?先に作戦を立てた方がいいと俺は思うのだけど…」

 

俺はイッセーに聞いた。

 

イッセーは俺を見ると、頷いてミョルニルを元の大きさに戻した。

 

アザゼルが咳払いをして全員に言う。

 

「あー、作戦の確認だ。まず、会談の会場で奴が来るのを待ち、そこからシトリー眷属がロキとフェンリルごと違う場所に転移させる。転移先はとある採石場跡地だ。広く頑丈なので存分に暴れろ。ロキ対策の主軸はイッセーとヴァーリとツバサ。二天龍で相対し、ツバサが隙をついて大技で攻撃をしつつ二天龍の二人のサポートをして、三人で仕留める。フェンリル相手は他のメンバー――グレモリー眷属とヴァーリチームと光輝とレイジのチームで鎖を使い、捕縛。そのあと撃破してもらう絶対にフィンリルをオーディンのもとに行かせるわけにはいかない。あのオオカミの牙は神をも砕く。主神オーディンといえど、あの牙に噛まれれば死ぬ。何としても未然に防ぐんだ。だからといって、他のメンバーも気を付けろよ!特にイッセーとヴァーリはな!流石に、フェンリルの牙や爪をくらえば大ダメージは必須だからな。…………約1名を除いてな。」

 

そう言いながら、ジト目で光輝兄さんを見るアザゼル。

 

……うんうん。その気持ち凄くわかるよ。アザゼル総督!

 

「……まぁ、もしもの時は俺が盾になるさ。あんな犬っころの攻撃程度で殺られるほど弱くはないからな。はははははは!」

 

もう、いいや、どうせ光輝兄さんだし。

 

……まぁ、俺はイッセーとヴァーリのサポートをしつつ、ヴァーリの“お願い”とやらを手伝うとしますかねぇ~。

 

「ひとまず解散だ。あとは各自、作戦開始時間までゆっくりしていろ」

 

こうして一度解散するのだった。

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

さて、此処は現在自分の実家だ。ここでは光輝兄さんや俺を含めた結城家の兄弟姉妹のメンバーとアリアさんやアイラさん、黒歌やレイナーレ達もリビングに集まっていた。

 

「みんなすまんな、急に集まってもらってよ」

 

光輝兄さんが喋りだす。

 

「別にいいわよ。どうせ、私たちに手伝って貰いたいのでしょ?今回の戦いで」

 

光輝兄さんの言葉に皐月姉さんが言った。

 

「……あぁ、そうだ。お前たちには俺たちが戦うための強力な結界を張ってもらいたい。何故ならどんなに無人の場所で戦うとはいえ、俺達三人が戦うと、何が起きるかわからないからだ!」

 

……確かにそうだけどさ…、それ、殆ど光輝兄さんのせいだよね? あっ!ほらぁ~、レイジ兄さんだって頭を抱えてるじゃんかぁ~!

 

「……なにかバカにされた気がするが……まぁ、いい。いまはそんな暇はないからな。」

 

あぶねぇー!?光輝兄さんなんでそんな事だけ鋭いのさ!?

 

「そう、わかたっわ。どうせ最初から付いて行こうと思っていたしね。光輝やレイジ…それにツバサちゃんが戦うもの。絶対に無事じゃないでしょうからね。……………その場所が(ボソ」

 

「おぉ!本当か?それはいい!ありがとうな」

 

「別にいいわよ。ねぇ、みんな?」

 

『えぇ』

 

うんうん、家族っていいよね。本当に心の底からそう思うよ。でも、皐月姉さんの最後の言葉は光輝兄さんには聞こえてないようだね。はぁ、本当に光輝兄さんが暴れすぎないようにレイジ兄さんと二人で頑張って見張っとかないとね~……はぁ~。

 

「……頑張って、ツバサ」

 

「そうよ、頑張りなさい、ツバサ」

 

「……うん、ありがとう。優子姉さん、ナツル姉さん」

 

優子姉さんとナツル姉さんに励まされる俺だった…。

 

 

――――――――――――――――――――――

 

さて、とうとう時間がやって来ましたね。俺たちはさっきリビングにいたメンバー全員を引き連れてイッセーたちと合流し、オー爺ちゃんと日本の神々が会談をする都内のとある高層高級ホテルの屋上にいる。

 

周囲のビルの屋上にシトリー眷属が各々配置され、待機している。ただ、匙はグリゴリで特訓中とアザゼルから聞いていた。

 

アザゼルは会談での仲介役を担うためにオー爺ちゃんの傍にいる。

 

遥か上空にはタンニーンが飛んでいるが、人間に視認されないよう、術をかけているようだ。

 

ヴァーリたちは少し離れたところで待機している。

 

因みに、俺と光輝兄さんとレイジ兄さん以外の結城家メンバーはソーナさんシトリー眷属の護衛兼結界強化の為に残る事になっている。……流石に、姉さん達を巻き込むわけにはいかないからね。……おもに光輝兄さんの攻撃とイッセーの変態の余波にねぇ~。

 

「――時間ね」

 

リアスさんが腕時計を見ながら呟く。

 

会談が始まった時刻だ。

 

さてと、残すはあのロキが来るのを待つだけだね。

 

「小細工なしか。恐れ入るね」

 

ヴァーリが苦笑した。その瞬間、ホテル上空の空間が歪み始め、大きな穴が開いていく。

 

そこから姿を現したのは――悪神ロキとフェンリルだ。

 

「目標確認。作戦開始」

 

バラキエルさんが小型通信機でそう言うと、ホテル一帯を包むように巨大な結界魔方陣が展開され始める。

 

ソーナさんを中心とし、シトリー眷属がこの屋上にいる者全員を戦場に転移させる。

 

ロキは結界を感知しているが、不敵に笑むだけで抵抗を見せない。

 

周囲が光に包まれる。少しして目を開けると、そこは大きく開けた土地だった。

 

ここは古い採石場跡地。今現在は使われていない場所だ。

 

近くには大きな湖のようなものもある。

 

周囲を確認すると、先ほど板屋上での全員の立ち位置が変わっていない。

 

前方にロキとフェンリル。確認したところでイッセーは禁手(バランス・ブレイカー)のカウントを開始した。

 

「逃げないのね」

 

リアスさんが皮肉げに言うと、ロキは笑う。

 

「逃げる必要はない。どうせ抵抗してくるのだろうから、ここで始末した上であのホテルに戻ればいいだけだ。遅いか早いかの違いでしかない。会談をしてもしなくてもオーディンには退場していただく」

 

「貴殿は危険な考えにとらわれているな」

 

バラキエルさんが言う。

 

「危険な考え方を持ったのはそちらが先だ。各神話の協力などと……。元はと言えば、聖書に記されている三大勢力が手を取り合ったことから、すべてが歪み出したのだ」

 

「……むぅ、平和はとてもいいことなんだ。お話が通じない奴なんて―――」

 

俺はスキマから一本の槍を取り出した。……それは、“必中と勝利の神槍『ガングニール』”だ。

 

そしてそれを俺は………

 

「――こうだ!」

 

ブゥゥン!!

 

  投げた。

 

『Welsh Dragon Balance Breaker(ウェルシュ ドラゴン バランス ブレイカー)!!!!!!!!』

 

『Vanishing Dragon Balance Breaker(バニシング ドラゴン バランス ブレイカー)!!!!!!!!』

 

俺が投げると同時に、赤と白の光が二人を包み込み、鎧を身にまとうイッセーとヴァーリ。

 

「これは素晴らしい!二天龍がこのロキを倒すべく共同するというのか!こんなに胸が高鳴る事はないぞッ!」

 

そう叫びながらガングニールを難なく避けるロキ。

 

まぁ、そもそも当たるなんて微塵も思っていなかったけどね。…………ただ、ちょっとくらいカスって欲しかったけども。

 

「さ~てとぉ~。俺も戦うとしますかね~。」

 

パチンッ

 

俺が指を鳴らすと手元にはガングニールが戻ってきていた。

 

「地球連邦軍 特殊部隊特別調査班 総隊長 結城 翼 いざ参ります!!」

 

ダンッ!

 

俺は一気にロキの懐まで駆け寄り、ガングニールを突きだす。

 

ヒュン!

 

「おっと…。早いな、結城翼。流石はあの地球連邦軍の総隊長クラスだ。いまのは危なかったぞ」

 

そう言いながらも俺のガングニールの攻撃を軽々と避けているロキ。…………内心、少し余裕そうなドヤ顔にムカついている自分がいるのは内緒だ。

 

「……流石はトリックスターとも呼ばれているロキ。神様なだけあってこの程度の攻撃では当たりませんかぁ~…」

 

「ふん、身の程をしれ人間。いくら地球連邦軍の物とはいえ、所詮は人の子よ。神であるこのロキに傷を付けるなど永遠に無理な事だ」

 

……ふぅ~ん。無理…ねぇ~。

 

「じゃ~これはどうかな?」

 

俺は一枚の紙を取り出した。

 

「スペルカード発動『絶対必中の槍 ガングニール』!!」

 

ドンッ!!

 

ガングニールは赤く光輝き、先程のスピードとは比べ物にならないくらいの速さで飛んでいった。

 

「むぅん!」

 

流石に驚いたのか、大きく避けぞるロキ。……でもね?

 

ブゥゥゥン!

 

ズバンッ

 

「ぐ、ぐぁぁぁ!?」

 

ロキが避けたガングニールはすぐに反転してロキの方へと飛んできて、ロキの肩を貫いた。

 

ロキは突然の事と大きく避けていた事によってバランスを崩していたため、避けきれず肩を負傷した。

 

それでも肩を負傷した程度で済んだロキは、さすが神様なんだなと実感した。

 

「き、貴様ぁぁ!ただの人間風情が!!」

 

激昂したロキが俺に向かって怪我をしていない片手を向けてくるが………

 

「オオオオオオオオオンッ……。」

 

「――フェンリル、捕縛完了だ」

 

俺達が戦っている別の場所で、バラキエルさんが身動きのできなくなったフェンリルを見て、そう口にしていた。

 

「我が息子が!……くっ、スペックは少々落ちるが――」

 

ロキがなにかを言うと、ロキの両サイドの空間が激しく歪みだし、灰色の巨体の狼が現れる――。

 

「スコルッ!ハティッ!」

 

ロキの声に呼応するように、天に向かって吠える二匹の狼。

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!」

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!」

 

二匹の狼は感情の籠もっていない瞳で、俺たちを見据える。

 

「みんな!あれはスコルとハティ!そこにいるフェンリルの子供だよ! フェンリルよりかは神殺しの牙が弱くなるとはいえ、フェンリルの名は伊達じゃないから気を付けてね!!」

 

そう、あれはスコルとハティ。ロキが作り出したもう一匹の神殺しの獣だ。

 

「ヤルンヴィドに住まう巨人族の女を狼に変えて、フェンリルと交わらせた。その結果生まれたのがこの二匹だ。親よりも多少スペックは劣るが、牙は健在だ。十分に神、貴様らを葬れるだろう」

 

ロキが二匹の狼に指示を出す。

 

「さぁ、スコルとハティよ!父を捕らえたのはあの者たちだ!その牙と爪で喰らいちぎるがいいっ!!」

 

ヒュッ!

 

風を切る音と共に一匹がリアスさん達へ、もう一匹が鎖を出したであろうヴァーリチームの方へ駆け出した。

 

「「殺らせると思うなよ?駄犬がぁ!」」

 

スコルとハティの前に光輝兄さんとレイジ兄さんが立ちふさがった。

 

ドゴン!ガキィン!

 

光輝兄さんがスコルを殴り飛ばし、レイジ兄さんがハティの爪を相棒で愛刀の雪姫で防ぐ。

 

「なんだと!?」

 

その様子にロキが困惑していた。

 

そんな隙だらけなロキをイッセーとヴァーリが攻撃しようとして、先にヴァーリがロキの背後に回り込み、手に大きな魔力を込めていた。

 

だが、ロキへ一撃を当てる寸前――。

 

「ぐはっ!!」

 

神速でヴァーリに喰らいつく何か。それは、神を殺せる牙がヴァーリの白銀の鎧を貫通していた。

 

「ふははははっ!まずは白龍皇を噛み砕いたぞ!!」

 

嘲笑するロキ。

 

ヴァーリを咥えているのは、子のフェンリルではなく……親のほうだ!

 

俺は先ほどまで親フェンリルがいたであろう場所を見ると、鎖が砕けていた。いつの間にか、戦闘をしている最中で壊されていたようだ…。ロキの方を見るとロキは薄く笑みを浮かべていた。……どうやらロキにしてやられたみたいだね。

 

「ついでだ。こいつらの相手もしてもらおうか」

 

ロキの足下の影が広がり、そこから体が細長いドラゴンが複数現れる。

 

「ミドガルズオルムも量産していたかッ!」

 

タンニーンが憎々しげに吐いた。

 

量産型のミドガルズオルムが沢山出てきた。

 

「何体いるんだよ!!」

 

イッセーが声を上げた。

 

むぅ~、だいたいざっと見て五、六十匹ってところかな? まぁ、何体来ようが関係ないけどね!!

 

かなりの量のミドガルズオルムが上空へ上がり、一面をミドガルズオルムが覆う。

 

ゴバァァァァンッ!!

 

タンニーンが容赦なく、ミドガルズオルムの群れへ炎を吐く。

 

「おりゃぁぁぁ『絶対貫通 ガングニール』!!」

 

俺はスペルカードを発動し、ガングニールを思いっきり投げる。

 

すると、ガングニールはまるで生きているかのように次々と量産ミドガルズオルムを貫いていく。

 

「はぁぁ!“零式秘技 清”!」

 

「覇道破壊拳!」

 

レイジ兄さんは三日月の様な形の斬撃をいくつも飛ばし、光輝兄さんは10mを超えるであろう巨大な拳型の気弾を飛ばしてミドガルズオルムを殲滅していった。

 

「オオオオオオオオオンッッ!!」

 

「オオオオオオオオオオンッッ!!」

 

二匹の子フェンリル咆哮が響き渡る。

 

ヴァーリチームとリアスさんの眷属の全員が子フェンリルと死闘を繰り広げていた。

 

一方で分担して子フェンリルと量産型ミドガルズオルムの撃破に当たっている光輝兄さんとレイジ兄さん。

 

……それにしても、あの空にある魔方陣のせいで中々減る気配のない量産型のミドガルズオルム。ムカつきますね…あれ。

 

そんなことを思っていたら、光輝兄さんから通信が入ってきた。

 

『つばさ、ヴァーリに作戦変更だと伝えてくれ。ここにいるミドガルズオルムとそこにいるフェンリルの子供は俺達に任せて、その親フェンリルをどうにかしろと伝えてくれ!いいな!』

 

「わかったよ。ヴァーリ!!」

 

俺は親フェンリルに噛まれているヴァーリに声をかける。

 

「光輝兄さんから作戦変更だって。いますぐ、あそこで戦っている金華たちを連れて行って、その親フェンリルをどうにかしろだって!それと、量産型のミドガルズオルムと二匹の子フェンリルは俺達が引き受けるから、存分にやれってさ!」

 

「……っ」

 

一瞬、ヴァーリの表情が驚いていたが、すぐに笑みを浮かべた。

 

「……計り知れないね。わかったよ、ありがとうつばさちゃん……兵藤一誠」

 

ヴァーリがイッセーに言う。

 

「……ロキは、キミに任せるよ?」

 

イッセーの頭に?が浮かんでいるように見えるが、頭の中では浮かんでいるのだろう。

 

「この親フェンリルは――私が確実に殺そう」

 

そう言うヴァーリ。それを耳にしたロキが笑う。

 

「ふははははははっ!どうやってだ!すでに瀕死ではないか!強がりは白龍皇の名を貶めてしまうのではないか?」

 

「――天龍を、このヴァーリ・ルシファーを舐めるな」

 

ヴァーリは静かに口ずさみだす。それと同時に鎧の各宝玉が七色に輝きだした。

 

「我、目覚めるは――」

 

〈消し飛ぶよっ!〉〈消し飛ぶねっ!〉

 

「覇の理に全てを奪われし、二天龍なり――」

 

〈夢が終わるっ!〉〈幻が始まるっ!〉

 

「無限を妬み、夢幻を想う――」

 

〈全部だっ!〉〈そう、すべてを捧げろっ!〉

 

「我、白き龍の覇道を極め――」

 

「「「「「「「「「「汝を無垢の極限へと誘おう――ッ!!」」」」」」」」」」

 

『Juggernaut Drive(ジャガーノート・ドライブ)!!!!!!!!!!!!』

 

フィールド全域を照らし出す、大出力の光がフェンリルの口から溢れ、フェンリル自身をも呑みこんでいく。

 

「金華!作戦変更だよ!!私とフェンリルを予定のポイントに転送してッ!そして、すぐにみんなも来てっ!!」

 

光り輝くヴァーリが叫ぶ。金華がそれを聞いてにんまり笑い頷くと、ヴァーリに向けて宙で指を動かした。

 

すると、巨大な光と化したヴァーリとフェンリルを魔力の帯が包み込み、しだいに両者は夜の風景に溶け込み、この場から消えていく。

 

消える前に親フェンリルにガングニールを突き刺し、一気に体力を奪った。

 

実は俺の造ったガングニールには特殊機能が付いていて、そのひとつが吸収だ。俺はガングニールをフェンリルに突き刺し、そのまま体力だけを吸収して弱くしたのだ。……少しでもヴァーリの力になれたらいいなぁ~っと思ってね

 

ヴァーリに続いて転移する金華と美猴とアーサー達。追撃しようとした子フェンリルの間に入り込んで妨害する。

 

「お前たちの相手は俺だよ!イッセー!ロキはよろしくね♪」

 

俺は、スキマからピンクに近い色で赤く光り輝く鎖を何本も出した。

 

「スペルカード『次元の鎖』!」

 

次元の鎖は俺が造ったオリジナルの神具だ。次元の力を借りて、その力だけで出来た鎖だ。神や神竜すらも縛る鎖で、ギルメガッシュが使う『天の鎖』や『グレイプニル』よりも強力で頑丈だ。……おそらく鎖系の武具で一番強力な物に仕上がっているだろう。

 

「さぁ、此方に来なよ!」

 

俺は鎖を子フェンリルの片割れスコルに巻いてそのまま引っ張り天高く上げて一気に降り下ろし、地面に叩きつけた。

 

ズドォォォン………

 

かなりの音だが、たいしたダメージをおっていないだろうな。なんせいまでもすぐに立ち上がろうとしているし。でも、ヴァーリ達の転移の時間稼ぎにはなったかな?……それに――

 

『妹を頼むにゃ――』

 

あの、金華さんに頼まれたんだから確り守らなくちゃね。なんせここには金華さんと黒歌の妹 白音ちゃんがこと小猫ちゃんがいるからね。頑張らないと!

 

「グルルルルルッ!」

 

どうやら、いまの一撃で俺を危険人物と認識したみたいだね。でも――

 

「まぁ、今更警戒したところで遅いんだけどね!」

 

俺がスコルに突撃しようとした………が。

 

―――俺たちのもとに叫び声が聞こえた。

 

「朱乃!」

 

リアスさんの悲鳴だ!そこにはもう一匹の子フェンリル…ハティに噛まれようとしている朱乃さんの姿があった。

 

――まずい!?

 

『JET(ジェット)!!』

 

イッセーの鎧から音声が発されると同時に、イッセーが間合いを詰めだす。

 

「隙ありだな!!」

 

ロキが魔術を撃ち出そうとしていた。

 

「そうはさせん!」

 

「その通りです!」

 

タンニーンとロスヴァイセが援護弾をロキに向けて撃ち出していた。

 

見れば、量産型ミドガルズオルムも残り一体となっていて、その最後の一匹は光輝兄さんとレイジ兄さんに追いかけられ物凄く逃げ回っていた。

 

………なんか、あの量産型ミドガルズオルムが可愛そうに見えてきた…。

 

―――って、こんなことをしている暇じゃない!?

 

「獣変幻!『モード“金塵龍 ガルバダオラ”』!!」

 

俺の足元に魔方陣が出てきて輝き、背中から金色の翼に翼の間接部分の各箇所に青い水晶の様なクリスタルが生えて?いた。尻尾も同じく金色だった。頭からはガルバダオラ独特の形をした角が生えていて、全身からは風を纏っている。

 

「…………」

 

ガシッ

 

俺は無言でスコルの尻尾を持ち――

 

「てい!」

 

ブゥン!!

 

そのままスコルをハティに向けて投げた。

 

イッセーに殴られたハティは怯んでいたところで、俺が投げたスコルが飛んできてそのままぶつかり、二匹は吹っ飛んだ。

 

「はぁぁ!!……“旋風・風神脚”!!!」

 

俺は両足を合わして真っ直ぐにし、回転しながらコークスクリューの様に蹴りを放つ。

 

その時に纏っていた風のせいか横に伸びるドリルの様な竜巻ができていた

 

「「ギャウンッ!?」」

 

ズドゴォン!!!

 

かなり鈍い音をたてながらスコルとハティが回転しながら吹っ飛んだ。

 

煙が止んだあと、二匹は地面でのたれていた。

 

息を確認したが、息はしていたので、どうやらただ気絶しているだけのようだ。

 

俺は一息して休もうとすると……

 

『私は姫島朱乃のおっぱいではありません。――私はおっぱいの妖精です』

 

――いきなり頭に響く謎の女性の声。あまりの突然な出来事に頭を振って正気を戻そうとしたけど……。

 

『――つばさ……私にも聞こえているわ。どうやら、あの赤龍帝の所持者、兵藤一誠がまた変態としての力を発揮したみたいよ』

 

ルーツがそう言ってきた。……はぁ~、またイッセーなの?

 

『えぇ、赤龍帝を通して受信しているみたいね。別にあなたがおかしくなったわけではないわ。

(……あとでドライグと兵藤一誠にはお仕置きしないとね。あんな変な異世界の神?と妖精?を呼ぶなんて…なんていったらいいのかしら?)』

 

俺はため息をつきながら、イッセーの近くまで神速で移動した。

 

『落ち着いてください。私はこの娘のおっぱいを介してあなたに話しかけているのです』

 

頭の中で響く声、ミドガルズオルムをいじめていた兄さん達が近づいてきた。……ボコボコにされたミドガルズオルムと一緒に…。

 

『私は全てのおっぱいを司りし神――乳神さまに仕える精霊です。あなたの頑なまでのおっぱいへの渇望が私を呼び出したのです』

 

…………えぇ~。

 

『(…………なに?異世界の神や妖精ってこんなんがいるの? それよりも、胸を司る神ってなによ!?どんだけ変態な神なのよ!!)』

 

なんだかルーツが悶えている気がする。

 

「お、おっさん!!」

 

「なんだ!また何か起きたのか!?また乳なのか!?」

 

以外にも鋭いタンニーン。あ、流れ的にはそうなるのか…な?

 

「乳神さまって、どこの神話体系の神さまだ!?」

 

イッセーの問いかけに別の場所で戦っていたタンニーンは、開いた口がふさがらない様子だった。

……いや、この場にいる全員が間の抜けた表情で戦闘を中断させ、イッセーに視線を集中させた。

 

うん。すごくみんなの考えてる事が心を見なくてもわかるよ。ナンデダロウネ~

 

一泊開けて、タンニーンが叫んだ。

 

「―――ッ!!リアス嬢ぉぉぉぉッ!あいつの頭に回復をかけてやってくれぇぇっ!!致命傷だぁぁぁっ!!!」

 

「イッセー、しっかりして!幻聴よ!あぁ、なんてこと!フェンリルの毒牙が赤龍帝の精神にまで!!」

 

完全に勘違いをしているリアスさんとタイニーン。

 

イッセーが弁解を図ろうとして、逆にバラキエルさんを怒らせてしまう。

 

『い、いや、皆聞いてくれ。確かに俺にも乳の精霊とやらの声が聞こえる……。俺の知らない世界の力を感じる。残念な結果だが、こいつは異世界の神を呼び寄せてしまったらしい』

 

ドライグがイッセーの弁明をする。

 

「バカな!」

 

「そんな!」

 

「ドライグまでダメージを!!」

 

……現実は残酷だね~。皆、イッセーはわかるけども……まさか、あのドライグの言葉も信じていないなんてね~。可愛そうにドライグ。

 

『うおおおおおおんっ!!どうせおっぱいドラゴンの声なんて誰も信じちゃくれないんだ!俺は悪くないぞ!相棒が、相棒がぁぁぁぁぁぁ!!』

 

泣き叫ぶドライグ。

 

ぱあっ!!っと、アーシアがイッセーの鎧の宝玉に回復の光を届ける。

 

「俺にもその乳の精霊とやらの謎の声を聞こえたぞ」

 

「あぁ、確かに変な奴の声が聞こえたな。……なんだよ乳神と精霊って」

 

『わしにも聞こえたぞ?……とても変な者だな。今代の赤龍帝の所持者は…』

 

『確かに聞こえた…。乳を司ると言う奴の声が…』

 

兄さん達とその相棒のアンノンとミ・ルも聞こえたようだ。

 

『安心しなさい、ドライグ。あなたの言ってる事は正しいわ。だから、確りしなさい。かりにも二天龍の片割れでしょう』

 

「そうだよ、ドライグ!俺もしっかり聞こえたから元気だして!さぁ、ファイトだよ!」

 

『うぅ…すまない。ルーツさん。つばさ。他の皆よ…。』

 

どうやらドライグはそうとう深いダメージを負っているようだ…。

 

頑張って…ドライグ…。

 

『よく聞きなさい、乳龍帝よ』

 

あはは~、そのネーミング…異世界の使いにも言われるんだね~。

 

『この巫女の本音を聞くことで、乳神さまの力をここに降臨させるのです』

 

何だかとんでもないことが起きる予感がしてきたんだけど?

 

『おっぱいを求める者に乳神さまは慈悲深いご加護を与えます。きっと役に立つでしょう』

 

なんだか、変な事が起きそうなので―――

 

『――では、この娘の思いを聞きなさい』

 

俺は無意識を操り、意識をシャットアウトした。


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