ハイスクールD×D~最強男の娘の転生物語~   作:三元新

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間に合ったよ!それでは短めだけれど、ゆっくりしていってね!


13話 さぁ、反撃開始だよ

あれからしばらく。イッセーはリアスさん達と涙の再開をしていた。俺はそれを遠くで見ながら微笑んでいる。……だってしかたがないじゃないか。普通だったら死んでいたと思われていた想い人がこうして本人が約束した通りに自分の下へと帰って来たんだから。

 

 

「うわぁぁぁぁぁっ! このバカ野郎ォォォォッ! 俺はな! お前が死んだって聞いてたから、俺はなぁぁぁぁッ!」

 

 

匙の鳴き声が数十メートルも離れているはずのここにも聴こえてくる。どれだけ大声で泣いているのだろうか?

 

おろ? サイラオーグも来たようだ。少しボロボロだが誰かと戦っていたのだろうか?

 

 

ドサッ!

 

 

ふと背後に気配を感じると同時に何か重いものを落とす音がしてきた。その方へ視線を向けるとそこにいたのは、肌が黒いガチムチの巨漢の大男が、大男と比べるとそこそこのガチムチの男を地面に落としていた。

 

落とされている男を見ると、見覚えがあった。そう、彼は英雄派の1人のヘラクレスだったのだ。

 

そして同時にこの巨漢の大男にも見覚えがある。何たって光輝兄さんの部隊で数少ない英雄の一人なんだもの。

 

「あなたでしたか……ヘラクレスさん」

 

「…………」フシューッ

 

赤く目を光らせ、口から白い息を機関車のように勢いよく出している大男。

 

「(…………このヘラクレス(笑)さんは、生きているのでしょうか? おそらくは手加減されているのでしょうけれども……それでも虫の息でしょうね、これ)」

 

 

まぁ、文字通りの英雄と英雄の血が流れているだけのただの人では、勝負にすらならないのは明確ですよね。

 

 

「あっ!」

 

 

ふと声が上がったほうを見ると、ジャンヌが虚をつかれたような表情を浮かべていた。

 

 

「悪いね。イッセーくんの登場で隙だらけだったから、子供は解放させてもらったよ」

 

 

少し離れた場所で木場が子供を抱えていた。

 

 

「……へぇ、木場。どうやらジークフリートと戦ったのかな? 随分と気に入られているみたいじゃないか。魔帝剣グラムに」

 

俺は木場の腰に刺されたグラムを見ながらつぶやく。あの剣はジークフリートが持っていたはずなんたけどね。

 

すると、ジャンヌは懐からピストル――の形をした注射器と小瓶に入ったフェニックスの涙を取りだす。

 

「イッセーくん、気をつけて!あれは神器(セイクリッド・ギア)能力を格段にパワーアップさせるものだ!」

 

 

木場が叫びながらそう説明をしてくれる。……まぁ、大体は情報で入ってきてるからなぁ。わかってはいますとも。情報戦は命ですよ

 

 

ジャンヌは首もとに針を向ける。

 

 

「……二度目の使用は相当命が縮まるけれど、使わざるを得ないわ」

 

 

 

そう口にしたあと、ジャンヌは涙で傷を癒し、針を首に撃ち込んでいく。瞬間、ジャンヌの体が大きく脈動を始める。体から放たれるプレッシャーが増大し、顔に血管が次々と浮き上がっていく…。

 

 

 

ジャンヌは体を大きくよろめかせながらも笑う。

 

 

 

「……これでいいわ。力が高まっていくのがわかる!!」

 

 

 

ジャンヌが吼えると同時に足下から無数の聖剣が出現していく。そして、眼前に降臨したのは――聖剣で創られた一匹の巨大なドラゴンではなく、蛇だ。ただ、頭部にジャンヌが上半身だけ露出している状態だ。下半身は巨大な蛇と同化しているが…。

 

 

 

『うふふ、この姿はちょっと好みではないけれど、強くなったのは確実よ。曹操が来るまでの間、これで逃げさせてもらうわ!』

 

 

 

さーて、どう止めるかなぁ…。…………あぁ~、そう言えば"ヘラクレス"さんがいるなら、"あの人"がいてもおかしくはないのか……。なら、俺が動かなくてもいいかな

 

 

 

「へい!そこのジャンヌのおっぱいさん!いったいこれからどうするんだい?」

 

 

 

すると、イッセーが例の『乳語翻訳(パイリンガル)』を発動して、ジャンヌの胸――心を読み取っているようだ。

 

 

 

「――ジャンヌは路面を壊して、下水道に逃げるつもりだ!!」

 

 

みんなが動こうとするが、俺はそれをスルーする。……だって

 

 

「聖女様が来たからね」

 

 

 

 

 

―――紅蓮の聖女(ラ・ピュセル)!!

 

 

 

 

女性の声が空に響き渡ると同時に聖剣の化け物となったジャンヌは炎に包まれた。

 

『きゃぁぁぁあぁぁぁぁっ!!!』

 

炎に包まれてしまったジャンヌは悲鳴を上げながら、そのまま消滅していき、全てが燃え尽きた場所には服が所々焦げているジャンヌが仰向けに倒れていた。……どうやら、気絶してしまったみたいだ。

 

みんなが呆気に取られている中、俺は"彼女"に近づいていった。

 

「ジャンヌさん。いいタイミングでした、ありがとうございます」

 

俺は頭をさげながらジャンヌさんにお礼をする。彼女は京都での英雄派との初戦闘時でもジャンヌを倒したお人だ。

 

「いえ、私の子孫の不始末は私自身がかたをつけなければなりません。聖女たるもの、人を導く存在が世界に混沌を招いては元も子もありませんから」

 

 

終始笑顔でそう言う彼女だが、目が笑っていないのとオーラから怒りがヒシヒシと伝わってくるあたり相当ご立腹のようだ。

 

「……あはは。…ところで彼女、生きています? さっきからピクリともしていませんけども」

 

俺は倒れているジャンヌに指を指しながら聞く。

 

「ええ、大丈夫です。生きていますよ。ただ、前の時にお話したはずなのですが、それを無視して今回の事件を起こし挙句の果てには子供を人質にとるという、聖女云々の前に人としてやってはいけない事をしてしまったので、少々お急を添えました」

 

………………ご愁傷さまです。ジャンヌだった人さん。

 

「さて、私は他の仲間たちの所へと行ってきます。助けを求める人はまだまだ大勢いますので」

 

どうやらオルレアンの乙女様はまだまだ働くようだ。

 

「はい。お願いします。……無理をせず、気をつけて下さいね?ジャンヌさん」

 

「ツバサこそ。気をつけてくださいね?」

 

「ご心配ありがとうですよ、ジャンヌさん。俺も気をつけますよ、こんな所で死ぬわけにはいきませんから」

 

「ならいい事です。それでは私はこれで」

 

そう最後にジャンヌさんは転移して、どこかへと行ってしまった。

 

俺はふと視線に気がつき周りを見ると、みんながこちらを見ていた。

 

 

「つ、ツバサちゃん。さっきの女性は? それに後ろの大男も」

 

みんなの代表でか、イッセーが指を指して聞いてくる。

 

「……あぁ〜、説明はこの戦いが全て終わってからにしましょうか。いまは戦いを終わらせることに集中しましょう」

 

 

俺は手をパンパンと叩きながらみんなに聞こえるように、声を張り上げて言う。みんなも納得したのか頷いて気を引き締めた表情をしていた。

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

「オーフィスの力を借りて……グレートレッドの体の一部で肉体を再生させた!?」

 

 

素っ頓狂な声をあげるのは…ロスヴァイセさんだ。

 

 

ジャンヌを縛り、さらに追い討ちで魔法と程度の能力を使い眠らせてイッセーたちのところに戻ってみてすぐ、みんながイッセーの口から大よその経緯を聞いたが、改めて思うと本当におかしいよね。イッセーの肉体を作っていた時は、イッセーを死なせたくないという思いでいっぱいだったから深く考えていなかったけれど、こうして落ち着いて考えるといろいろやらかしたかなぁ〜なんて思っちゃったりしてる俺がいる。

 

 

 

…それにしても……ここまでくると…イッセーがどれだけドラゴンに縁があるのがよくわかるよね。赤龍帝とはいえ、恐らくだけど歴代のどの赤龍帝の所有者よりもドラゴンや龍という存在に関わりを持つ人はいないと思うよ? それも、ただのドラゴンではなく伝説クラスのね

 

 

 

「――強者を引き寄せる力、ここまで来ると怖いな。首都リリスを壊滅させるモンスターという情景を見学しにきたら、まさか、グレートレッドと共にキミが現れるなんてね」

 

 

 

――第三者の声が、俺たちに向けられる。

 

 

 

振り向けばそこには――曹操がいた。

 

 

 

「……わずかな間で超えられたというのか。異常なるは、グレモリー眷属の成長率……。ヘラクレスはともかく、ジャンヌは『魔人化(カオス・ブレイク)』を使ったはずなのだが……いや、これは二度使ったか。二度使うと弊害がでるというのかな……」

 

 

仲間の心配というよりも仲間がやられた理由を独りごちながら模索しているようだった。彼らしいといえば彼らしいな。

 

 

すると、急に俺のほうを見る曹操。

 

 

次に曹操の視線がイッセーに移る。……以前のように興味に彩られたものではなく、異質なものを見ているかのような目つきだ。

 

 

 

「……帰ってきたというのか、兵藤一誠。旧魔王派から得た情報ではシャルバ・ベルゼブブはサマエルの血が塗られた矢を持っていたと聞いていたのだが」

 

 

「ああ、喰らったぜ。体が一度ダメになっちまったけど、グレートレッドが偶然通りかかったようでさ。力貸してもらって肉体を再生させた。……先輩たちやオーフィスの協力、ツバサちゃんの力があってこそだったけどな」

 

まぁ、イッセーみたいな人を死なせるなんてことは絶対にさせないけどね。

 

そんなイッセーの台詞を受けて、皮肉めいたものを返すのかと思っていたが……曹操は目元をひくつかせていた。初めて見るね、曹操のそんな表情。

 

 

「……信じられない。あの毒を受けたら、キミが助かる可能性なんてゼロだった。それがグレートレッドの力で体を再生させて、自力で帰還してくるなど……っ!グレートレッドとの遭遇も偶然で済ませられるレベルではないんだぞ……っ!」

 

まぁ、そのグレートレッドも俺が呼んだからなんだけどね。……イッセーの場合だと、呼んでいなくても遭遇していそうだけどね。だって、それだけ普通のから伝説級のドラゴン達に遭遇しているんだもの。それも高確率でさ。

 

「リアス、俺をもう一度あなたの眷属にしてください」

 

するとイッセーがリアスさんの目を見ながら強くそう言った。

 

リアスさんはそんなイッセーの顔を見て手元の駒をイッセーに向ける。……すると、駒はイッセーの前でいっそう輝きを増したあと、静かに体の中に入っていった。

 

そんな場面をマジマジと見ていたら、リアスさんがイッセーの唇に自分の唇を重ねた。――つまりキスしたのだ。

リアスさんにキスされたイッセーはそのままリアスさんを抱き寄せる。

 

――二度と、この女の元を離れてやるもんか。俺はこのヒトと生きるんだ。

 

……そう、強い想いが詰まっているかのような、傍から見てもわかるほど力強く抱きしめていた。リアスさんも嬉しいのか強く抱き返している。

 

「――私と共に生きなさい」

 

微笑む彼女の言葉を受けてイッセーは衝撃が走ったかのような表情となる。

 

「はい、俺はリアスと共に生きます。――最強の『兵士(ポーン)』になるのが夢ですから」

 

イッセーも負けじとそう強く宣言する。

 

俺はそんな二人のやり取りを見ながら、やっとここへ帰ってこれたんだなぁ…と、実感が湧いてくるのだった。

 

「……さぁ、反撃開始といきましょうか」

 

俺はそう呟きながら、曹操を睨むのだった。


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