それでは、どうぞゆっくりしていってね!
1話 豪獣鬼(バンダースナッチ)
―光輝 side―
イッセーがいなくなったあの日から2日がたった。……あれ以来、突然倒れて気絶したツバサは、まだ目を覚ましていない。恐らくだが、コピー能力の中でも、トップレベルで力や体力を使う、『メルキオス』『ヒスイ』『リゼ』『ララ』『ナドレ』こいつらの"どれか"を使ったのだろう。
こいつらの力はまさに『天災級』。ひとりひとりが世界を破滅させるだけの力はある、馬鹿げた人物達だからな。それを使えば、それだけの負担はある……。だが、今回はどうやらそれだけではないようだ。何かは分からんが、この"コピー能力"以外にも、力を使ったみたいだな。……まぁ、もうしばらくは目を覚まさないだろう。予想だが、どんなに早くても目覚めるのは明日だな。
ふと考え事をしていたそのとき、フロアに備え付けられている大型テレビの音声が耳に入ってきたのでそちらを見た。テレビにはトップニュースとして、進撃中の巨大な魔獣を映し出していた。
『ご覧ください!突如現れた超巨大モンスターは歩みを止めぬまま、一路都市部へと向かっております!』
魔動駆動の飛行船やヘリコプターからレポーターがその様子を恐々と報道している。
あの戦闘時に、シャルバが冥界に出現させた『魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)』の巨大な魔獣は全部で十六体――。百五十メートル級の巨大モンスター達だ。ただ、あの空間で一体は俺たちが倒したがな。
テレビにもそれらすべての様子が克明に報道されている。チャンネルごとに各魔獣の様子が見られるような状況だ。
あの疑似空間で見たときの姿は人型で黒オーラを放っていた。それが、冥界に出現してから姿が変わったらしい…。人型の巨人タイプもいれば、四足歩行の獣型のタイプもいる。姿かたちは統一していないようだ。
人型は二足歩行であるものの、頭部が水生生物になってるものや、眼がひとつだったり、腕が四本も生えているものもいる。一言で表すなら合成獣――そう、キメラのようだ。
魔獣どもはゆっくりと一歩ずつ歩みを止めずに進撃を続けている。
そして厄介なのは、この魔獣どもが進撃を続けながらも小型のモンスターを独自に生みだしているところだ。魔獣どもの各部位が盛り上がり、そこから次々と肉を破って小型モンスターが誕生していく。大きさは人間サイズだが、とにかく数が多い。一度で数十から百体ほど生みだされるようだ。
魔獣どもが通ったあとは、何も残らないという凄惨な状況だった。
――と、ここでテレビの画面が変わって速報が入った。
『た、ただいま入りました情報によりますと――都市の外れにある山のふもとで、一体目の『豪獣鬼(バンダースナッチ)』を倒したとのことです!』
画面が切り替わって映し出されたのは――山のふもとに横たわって黒炎に包み込まれている魔獣の姿があった。その周囲には、分裂した百以上の人サイズの魔獣どもが倒れていた。
「総司令官! 全部隊、準備整いました! いつでも動けます!」
「そうか、わかった」
俺は、部下から報告がきたので、全階層の全フロアに聴こえるように放送と音量を繋げ、口を開いた
「みんな、聴こえているな? 地球連邦軍 総司令官、結城光輝だ。」
「いま現在、冥界にて百五十メートル級の『豪獣鬼(バンダースナッチ)』が暴れている。我々、地球連邦軍は、この驚異を排除するため冥界に向かい、奴らに強襲をかける!」
ザワザワと気配が室内から感じる。部隊の隊員全員の闘気がざわりざわりと徐々に高まっているのが肌で感じる。
「初戦は俺とレイジを主力とした第一強襲部隊を筆頭とし、『豪獣鬼(バンダースナッチ)』を強襲。第二強武装部隊は第一強襲部隊の援護、第三武装衛生部隊及び第四機動戦隊は第一第二部隊の周りの警戒にあたり、負傷者の救助回復に、逃げ遅れた民間人の救助に当たってくれ。」
「本作戦の目的は、冥界に存在する『豪獣鬼(バンダースナッチ)』の驚異の排除、そして、それぞれの都市の防衛機能の回復に民間人の救助だ」
「各自、心して作戦にかかってほしい――満身は禁物だ」
ザワザワザワ!
くくく――全員、早く戦いたいようだ。とても心地よい闘気だな。――みなのヤル気は充分か
「さぁ!全部隊、全隊員よ! 地球連邦軍の真の力――奴らに魅せてやろう!!!」
『うおおおおおおおおおおおおお!!!!!』
――さぁ、戦の始まりだ!!!
――――――――――――――――――――――
〜BGM ウルトラマンダイナ ワンダバダバ〜
『GP-01 GP-02 飛行準備、完了 』
「GP-01 いつでもどうぞ」
「GP-02 いつでもどうぞ」
『了解。離陸、開始してください!』
「GP-01 了解」
「GP-02 了解!」
シュゴォォォォ――!!!
2機の戦闘機が離陸する。それに続いて次々といろいろな戦闘機が離陸し、空へ飛び立った。
空へ飛び立った戦闘機は、空に浮かぶ巨大な魔法陣へと突っ込んでいき次々と姿を消していく。
そんな、空を、5人の人影が見ていた。
「さて……ここから先は本当の戦闘だ。ディオドラ・アスタロトの時のような雑魚の戦闘じゃなく。完全に、厄災級の異変だ。下手すれば、簡単に命を落とす。……それでも、お前達は行くのか?」
「……ふっ。何をいまさら。俺たちは地球を守り、弱き者を助ける――そうして長い年月地球を護ってきた『地球連邦軍』じゃないか。覚悟は――遠くの昔にできている!」
「そうね、レイジ兄さんの言う通りだわ。私も同じく覚悟はできている。覚悟なくして、地球連邦軍の総隊長をやってるもんですか!」
「私も同じだよ! 争いが嫌いな私だけど……力がない人達を護る為なら――この命、捨てる覚悟だってできている!覚悟が無いものに、地球連邦軍の名を名乗る資格なんて無いわ!」
「そうよ、私達は覚悟も勇気も持っている。覚悟も勇気もなかったら、私…いや、私たち地球連邦軍の部隊員は皆、最初からこの場にいないわよ! 覚悟も勇気も…全てあるからこそ、こうして――ここに立っているのよ!」
レイジ、皐月、ナツル、優子の4人が光輝に向かってそう言った。
「……ふっ、そうか。聞く必要もなかったな――よし! なら、全員戦闘準備だ!! 準備が整いしだい俺達も『豪獣鬼(バンダースナッチ)』討伐作戦に参加する。―――行くぞ! 」
「「「「了解!」」」」
――――――――――――――――――――――
ここは、冥界。そこには巨大な身体をもつ合成獣――通称『豪獣鬼(バンダースナッチ)』が小型の同じ身体をしたモンスターを何百と連れてゆっくりと、確実に進行していた。
応戦にきた、悪魔、堕天使たちは豪獣鬼(バンダースナッチ)へと攻撃をくらえるが、肝心の豪獣鬼(バンダースナッチ)は全く効いてないのかビクともせず、進行をどんどんと進めていた。
「――くそっ!? 俺たちの攻撃が通用しねぇ! なんつー硬さだ!!」
「こっちも同じだクソッタレぇ! このままじゃ、俺たちの街が潰されちまう! どうすれば止められるんだ!!」
「これじゃ無理だ。一旦諦めて退散しよう」
「なに言ってやがる!! ここで止めなくていつ止めるんだよ!? まだ何かあるはずだ考えろよ!」
「知るかよ! このまんまじゃ俺達が先に死ぬんだぞ! 俺達が死んでちまったら誰があの街を守るんだよ!!」
「ならどうすればいいんだよ!?」
2人の若い悪魔が言い争っていると、どこからか声が聴こえてきたのふと下を見ると、子供が1人取り残されたのか、燃える村に泣きながら彷徨っていた。
「うわ〜〜ん。おと〜さ〜ん!おかぁ〜さ〜ん! ……どこにいるのぉ」
それを見つけたその悪魔2人は慌てていた。
「おい! 彼処に女の子が1人いるぞ!? 逃げ遅れたのか!!」
「た、大変だ!早く助けないと――っ!? やばい! 『豪獣鬼(バンダースナッチ)』がもうすぐそこまで来ているぞ!? くそっ! 小型の『豪獣鬼(バンダースナッチ)』が子供に気づいた! いまからじゃ間に合わないぞ!」
1人の青年が叫んだ先には、少女に気づいたのか数体の小型の『豪獣鬼(バンダースナッチ)』が少女の方へ走ってきていた。
少女から悪魔と堕天使の間には距離がかなり開いており、小型の『豪獣鬼(バンダースナッチ)』のスピードと合わせると到底間に合いそうになかった。
「ふぇ〜〜〜ん」
親とはぐれ、泣く少女の背後から――
『――GEEEEEYAAAAAAAAaaaaaaaa』
その命を狩らんと豪獣鬼(バンダースナッチ)が少女を襲う!
「ちくしょ〜!間に合わねぇ!?」
1人の悪魔が叫ぶ。
そう、誰もが少女を助けられないと諦めたその時――
『――GEEEEEYAAAAAAaaaaaa!?』
ドゴンっ!!
突然、豪獣鬼(バンダースナッチ)が吹っ飛び木々を巻き添えにしながら、遥か遠くへと消えていった。
『は?』
突然の事に困惑する悪魔と堕天使勢。
すると、徐々に煙が晴れていきそこには人影があった――
「……ふぅ。何とか間に合ったな。――おい、レイジ。少女は無事か?」
「ああ、無事だ。転けた拍子か膝を擦りむいているようだが、それ以外の怪我は見当たらない。だが、もしもの可能性もあるから、後で衛生班へと連れていく。いいよな?」
「ああ、構わない。そこはお前の判断で任せる。――おい! そこの悪魔と堕天使勢ども! 俺の声が聞こえているか!」
少女を助けたのはどうやら、地球連邦軍 総司令官と副総司令官である光輝とレイジのようだ。
結城光輝は、空に飛んでいる悪魔と堕天使勢に声を上げる。それに気づいた悪魔 堕天使達は光輝へと視線を向けた。
「俺の声が聞こえているのならそのまま聞け! ここは俺達『地球連邦軍』が引き受ける! お前達はそのまま街へ後退。街に後退したあとは、避難民の救助に力を注いでくれ! ここは――俺達が何としても食い止める!!! そら!時間はないんだ! さっさと行け!」
光輝の叫びに怯みながらも、満身創痍で自分たちの力が通じない相手をしていたので、正直有難かった。だが、やはり自分達の街を守りたいが、やはり力のない自分自身に、他人に任せないと守るべきものを守れない自分たちに歯痒い思いをしながら、後退していった。
「…………すまない。あとは…任せた……」
1人の悪魔が帰り際に悔しそうに申し訳なさそうに言う。
「――ああ。任された!」
光輝は後ろを向かず、敵を見ながら、後退していく者に向かって親指を立ててそう言った。
しばらくすると、数分もたたないうちに悪魔 堕天使勢は姿を消して、その場には光輝 レイジを含めた、一部の地球連邦軍の部隊だけが残った。
「さぁ、作戦開始だ。―――全員、かかれぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!」
『うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!』
ドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!!!!
200人もの銃などを武装した兵士が豪獣鬼(バンダースナッチ)へと雪崩込む!
「うぉぉぉかかれぇぇぇ!!」
「地球連邦軍の力を舐めるなよ! 化け物がぁぁ!」
「フォーーーー!!! 激ってきたぞぉぉぉ!!」
「アバタゲソバブタホアリャクゼタハノガラヘヤァァァァァァ!? キェェェェェ!!」
「ヒャッハーーーー!!! 汚物は消毒だぁぁぁ!!!」
いろんな意味不明な奇声を上げながらどんどんと、豪獣鬼(バンダースナッチ)を駆逐していく地球連邦軍の戦士達。
しかし、減るのは小型の豪獣鬼(バンダースナッチ)だけであって、大型の豪獣鬼(バンダースナッチ)は健在だった。
しかも、いくら小型を倒しても、母体である大型の豪獣鬼(バンダースナッチ)を倒さない限り、小型種はどんどんと増えていく。所謂、無限ループと言うやつだった。
「怯むな! 撃て撃て! 弾が尽きるまで撃て! 弾が尽きても己の肉体が動かなくなるまで戦い続けろ!!」
「こっから先へは絶対に通しやしないぞ!」
「うおおお!!!」
そんな彼らとは別に、光輝と少女を衛生兵へと送り届けたレイジは大型級の豪獣鬼(バンダースナッチ)と相見えていた。
「覇王剛拳!」
「零式刀技『砕』!」
光輝が気で強化した拳で顔面をなぐり、レイジが長い刀を巧みに使い、連撃で相手を切りまくる。
『――GEEEEEYAAAAAAAAaaaaaa!!!』
雄叫びを上げる豪獣鬼(バンダースナッチ)。すると、豪獣鬼(バンダースナッチ)は光輝とレイジを潰さんと巨大な腕を振り下ろす。
「ふんっ!?」
「でりゃ!!」
だが、光輝とレイジはいとも容易く腕を受け止めてはじき返した。
「……ちっ! 思ってた以上に厄介だ。これじゃ、人手が足りん。まさか大型級の『豪獣鬼(バンダースナッチ)』が3体もいようとわ……一人一殺。レイジ!右隣はお前に任す!目の前と左隣の奴は俺に任せろ」
「わかった。……だが、2匹同時に相手するつもりか? 流石に時間がかかると思うが。」
「……ふっ。なに、大丈夫さ。――これを使えばな」
そう言って懐から小さなカプセルを取り出した
「――そ、そいつは!?…………ああ、わかった。なら、そっちの2体は任せるぞ?」
「言われなくてもわかってるさ」
その会話を最後に、光輝とレイジはそれぞれの獲物へと別れた。
「さ〜て、ツバサの作り出した『怪獣カプセル』その新作をとくと見よ!」
光輝は懐から先ほどの小さなカプセルを取り出し投げた。
「こい!『サイバーゴモラ』!!」
地面に落ちる瞬間、そこから光が溢れ出し、形を形成していく。光が落ち着きそこにいたのは――
青い体に特徴的な大きな角。腕には鉤爪のような物が付いており、胸にはXの様なものも。全体的にメカメカしく。まさにサイバー化したモンスターといえる。
「さぁ、かの敵を討ち滅ぼせ! 戦え『サイバーゴモラ』!!」
『ゴアァァァァァァォ!!!』
光輝が命令すると、従う様に声を張り上げ大型級 豪獣鬼(バンダースナッチ)へと突撃していった。
ドゴォォン!と鈍い音と共に殴り合いが始まる2体の怪獣。これぞ正しく怪獣大決戦とも言うべき戦いである。
「さて、俺もさっさと目の前の倒して、他の場所に行かなきゃな!」
そういい、光輝も目の前の敵へと駆け出した
今回、主人公のコピー能力で出てきた人物名の『メルキオス』『ヒスイ』『リゼ』『ララ』『ナドレ』。これは全員、ブレフロのキャラです。俺の持ってる主力キャラでしたので出しました!
あと、怪獣カプセルは知ってる人は知ってると思います。本来の使用とは異なり主人公完全オリジナルの怪獣カプセルなのです。
それでは次回、またお会いしましょう!バイバ〜イ(* ̄▽ ̄)ノ~~ マタネー♪