ハイスクールD×D~最強男の娘の転生物語~   作:三元新

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さてさて、階段から滑り落ちて両腕を骨折していたアホ駄作者ですよ〜♪

うぅ、寝ぼけながら階段下りるのってダメだね。うん。

てなわけで、しばらく腕が使えなくて投稿できなかった話を完成させ、やっと投稿できました!

くっ、こんな事になるのなら、階段降りる前に完璧に完成させ予約投稿するべきだったぜ……orz

まぁ!すぎたものはしかたがないよね……それじゃ〜改めまして!

それでは、ゆっくりしていってね♪


5話 龍喰者(ドラゴン・イーター)

俺たちはホテル内のレストランを飛び出した。金華やオーフィスたちを含めた、レストランにいた全メンバーがこの場にいる。

 

俺たちは強制的に転移させられたようだ………まぁ、つまりはそういうことだろうね。

 

「……間違いないな。これは霧使いの神滅具(ロンギヌス)によるものだな」

 

俺の隣でレイジ兄さんがつぶやいた。

 

……ふぅ、面倒なことをしてくれるものだね

 

イッセーの隣に位置したゼノヴィアが叫ぶ。

 

「イッセー、これはまさか!」

 

「あぁ、ゼノヴィア。だろうよ。忘れたくても忘れられない霧だった!!」

 

レストランから広いロビーに到着する。俺たち以外に人の気配が感じられないロビー、その近くに備えられた黒いソファに堂々と座る二人の影がみえた。

 

瞬間、俺たちのもとに複数の火球が飛びこんでくる。

 

「ふん!」

 

「せやっ!」

 

「シッ!」

 

バンッ! シュパッ! パシュッ!

 

光輝兄さんが拳で、レイジ兄さんが愛刀で、俺が蹴りでそれぞれ火球を消し飛ばした。

 

そのうち、消せなかった火球はアーシアとイリナに向かっていったが――当たることなく打ち消された。

 

…どうやらオーフィスが二人の壁になって、火球を打ち消してくれたようだ。

 

「あ、ありがとうございます」

 

「…………」

 

アーシアの礼にオーフィスは無反応だった…。

 

俺は視線をソファに戻す。

 

見覚えのある学生服にローブを羽織った青年と同じく学生服の上から漢服を着た黒髪の青年がこちらを見据えている。

 

漢服の青年は座ったまま槍を肩にトントンとすると俺たちに向けて言う。

 

「やあ、久しいな、赤龍帝、結城家、それにアザゼル総督。京都以来だ。いきなりの挨拶をさせてもらった。先日のデュランダルのお返しだ」

 

「……曹操っ!」

 

イッセーはしぼり出すようにその男の名を呼んだ。

 

最強の神滅具(ロンギヌス)を持ち、『禍の団(カオス・ブリゲード)』英雄派のリーダー。そして京都で襲撃してきた張本人だ。

 

撤退間際、イッセーが負わせた目の傷は無くなっていた。

 

……ふむ。あの一撃は失明していたレベルだったのに……相当いい治療が出来るやつがいるようだね。もしくは、それとは別の何かかな?

 

俺はふと、曹操の"気"を感じ取り、その中で不自然な気を感知した。それは目だった。

 

………そう、曹操の目から、とても嫌な邪気をまとっているのだ。

 

『……ツバサ。あの曹操とか言う小僧の目から、とてつもない邪気を感じるわ。気をつけなさい』

 

いまは俺の中にいるルーツがそう忠告してきた。ルーツは肉体を持ってからというもの、よく外に出て自由にしている。最近なんて、天界のミカエルさんたち熾天使(セラフ)がいる所に遊びにいっていたほどだ。

 

そんな自由なルーツが、いまは俺の中にいるんだけど、……曹操のことを小僧って……なんか、すごいキレてません?

 

『キレてなんかいないわ。私の可愛いつーくんをバカにした、クソ餓鬼なんて知らないわね』

 

……やっぱり怒ってる…。

 

――パチパチパチ

 

そんな時、曹操は拍手してきた。

 

……あぁ、哀れなり曹操。あらゆる龍の頂点にして祖の龍に嫌われて。

 

「この間のバアル戦、いい試合だったじゃないか。禁手(バランス・ブレイカー)の鎧をまとった者同士の壮絶な殴り合い。戦闘が好きな者からすれば聞いただけで達してしまいそうな戦いだ。改めて賛辞の言葉を贈ろう、グレモリー眷属。若手悪魔ナンバーワン、おめでとう。いい眷属だな、リアス・グレモリー。おそろしい限りだ」

 

「テロリストの幹部に褒めてもらえるなんて、光栄なのかしら?複雑なところね。ごきげんよう、曹操」

 

リアスさんは最大なまでに警戒しながらも皮肉な笑みを見せていた。

 

「ああ、ごきげんよう。京都での出会いは少ししかなかったから、これが本当の初めましてかな。あのときは突然の召喚で驚いたが。いやー、なかなかに刺激的だった」

 

「言わないで!……思い出しただけでも恥ずかしいのだから!!」

 

リアスさんは手を前に突きだして「やめて!」と最大限に強調する。

 

……まぁ、それもこれもイッセーが悪いのだから…どうしようもないけどね。

 

「それで、またこんなフィールドを別空間に作ってまで俺たちを転移させた理由はなんだ?どうせろくでもないことなんだろ?……曹操(笑)どの?」

 

アザゼルが馬鹿にしながらそう訊くと曹操は視線を俺たちの後方に向けた。

 

俺達の後方にいるのはそう――オーフィスだ。

 

「やあ、オーフィス。ヴァーリとどこかに出かけたと思ったら、こっちにいるとは。少々虚を突かれたよ」

 

オーフィスの前に金華が立つ。

 

「にゃはは、こっちも驚いたにゃ。てっきりヴァーリのほうに向かったと思ったんだけどねー」

 

「あっちには別働隊を送った。今頃それらとやりあっているんじゃないかな」

 

怪訝な様子のイッセーたちを前にルフェイが笑顔で挙手する。

 

嬉々と説明をしだした彼女ルフェイ。それと同時に俺の影から灰色の毛並みの狼が現れてルフェイの隣に立つと、曹操たちを鋭くにらみだした。

 

…………何処かに行ったのかと思ったら、俺の影の中にいたのね。……って、スコルにハティ。君たちも影の中にいるのかよ…

 

「えーとですね。事の発端はふたつありました。ひとつはオーフィスさまが赤龍帝『おっぱいドラゴン』さんに大変ご興味をお持ちだったこと。それを知ったヴァーリさまが独自のルートで『おっぱいドラゴン』さんとの出会いの場を提供されました」

 

電撃訪問のことだね。アザゼルから聞いたときは結構驚いてしまったよ。

 

ルフェイは一本だけ出していた指を二本にする。

 

「ふたつめ、オーフィスさまを陰で付け狙う方がいるという情報をヴァーリさまが得たので、確証を得るため、いぶりだすことにしたのです。運が良ければオーフィスさまを囮役にして私たちのチームの障害となる方々とも直接対決ができる――と。……えーとつまりですね」

 

遠慮がちにルフェイが曹操たちに指を突きつける。

 

「そちらの方々がオーフィスさまと私たちを狙っているので、ヴァーリさまがオーフィスさまをアジトからお連れして動けば、そちらも動くでしょうから、狙ってきたところを一気にお片付けしようとしたのです。ただ、オーフィスさまを危険に晒すこともないので、美猴さまが変化された偽にせのオーフィスさまをヴァーリさまがお連れして、本物のオーフィスさまは『おっぱいドラゴン』さんのお家うちにお連れしたのです」

 

ルフェイの説明で、俺のなかにあった疑問が解けた。

 

…もうひとつ残ってはいるのだけれど、それは様子を見てから判断することにしようかな。

 

曹操はルフェイ話を聞き、うんうんとうなずいている。

 

「ま、ヴァーリのことだから、オーフィスをただ連れ回すわけもないと踏んでいた。どうせ俺たちと相対するためにオーフィスを囮にするんだろう――と。だが、ヴァーリのことだ、オーフィスを無闇に囮にするはずもないと思った。オーフィスが今世の赤龍帝と白龍皇の変異に興味を抱いているのも知っていたものだから、もしやと思って二手に分かれて奇襲をかけることにした。一方はヴァーリを追う。そして俺とゲオルクは赤龍帝側に探りを入れる。――案の定、こちらにオーフィスがいたときた。それで、このような形でご対面を果たすことにしたんだよ」

 

ヴァーリは偽のオーフィスを囮に曹操を誘きだそうしたようだが、曹操はヴァーリの行動に疑念を抱いて、オーフィスはこちら側にいるときた結果…見事当たりを引いたというところだろう。当のオーフィスはここにいるからな…。

 

オーフィスが静かに口を開く

 

「曹操、我を狙う?」

 

「ああ、オーフィス。俺たちにはオーフィスが必要だが、いまのあなたは必要ではないと判断した」

 

「わからない。けど、我、曹操に負けない」

 

「そうだろうな。あなたはあまりに強すぎる。正直、正面からやったらどうなるか。――でも、ちょっとやってみるか」

 

曹操は立ち上がると聖槍を器用に回す。

 

ビィィィンッ!!

 

槍の先端が開き、まばゆい光の刃が現れる。

 

フッ!

 

曹操の姿が消えるが、光輝兄さんが瞬時に闘気の塊を正拳突きの形で飛ばした。だが、曹操はそれを綺麗に避けて、オーフィスの眼前にたどり着いてしまった。

 

ズンッ!!

 

曹操の槍は、オーフィスの腹部を深々と貫く。

 

そのまま曹操は槍を持つ手に力を込めて叫ぶ。

 

「――輝け、神を滅ぼす槍よっ!!」

 

カァァァァァァァッ!!

 

突き刺したと同時に膨大な閃光が溢れ出していく。

 

「これはマズいにゃ。ルフェイ」

 

金華がそう言うと、ルフェイと共に何かをつぶやきだす。

 

――刹那、俺たちの周囲に闇の霧が発生しだした。

 

「光を大きく軽減する闇の霧です。かなりの濃さなので霧をあまり吸い込まないでくださいね!体に毒ですから!でもこれぐらいしないと聖槍の光は軽減できません!」

 

「しかも私とルフェイの二重にゃ」

 

その瞬間、聖槍から発生する光の奔流がホテル内に広がっていく。

 

この霧の中でも聖槍が放つ光のまばゆさは凄まじい。

 

聖槍の光が止み、闇の霧も消え去る。皆が視線を曹操とオーフィスに向けた。

 

腹部に聖槍を深々と刺されたままのオーフィス。

 

曹操は槍を引き抜き、呆れ顔で言う。

 

「悪魔なら瞬殺の攻撃。それ以外の相手でも余裕で消し飛ぶほどの力の込めようだったんだが……。この槍が弱点となる神仏なら力の半分を奪うほどだった」

 

曹操がイッセーに視線を向ける。

 

「見たか、赤龍帝?これがオーフィスだ。最強の神滅具(ロンギヌス)でも致命傷を負わすことができない。ダメージは通っている。――が、無限の存在を削るにはこの槍を持ってしても届かないということだ。そこにいる片割れも同じ」

 

一瞬だけ視線をイッセーから龍巳に変えた曹操。すぐに視線を戻して続ける。

 

「攻撃をした俺に反撃もしてこない。理由は簡単だ。――いつでも俺を殺せるから。だから、こんなことをしてもやろうともしない。グレートレッド以外、興味が無いんだよ、基本的にな。グレートレッドと結城家を抜かした全勢力のなかで五指に入るであろう強者――一番がオーフィスであり二番めとの間には別次元とも言えるほどの差が生じている。無限の体現者とはこういうことだ」

 

そう、曹操は言った。

 

「……む? 俺達ってそんなにおかしなほど強かったか?」

 

『うん』

 

光輝兄さんの言葉にアザゼルやグレモリー眷属、ヴァーリーチームの2人を含め俺やレイジ兄さんも頷いた。

 

金華とルフェイの足下に転移型らしい魔方陣が展開していた。金華がにんまり笑みながら言った。

 

「にゃはは、余興をしてくれている間に繋がったにゃ。――いくよ、ルフェイ。そろそろあいつを呼んでやらにゃーダメっしょ♪」

 

魔方陣の中心にフェンリルが位置すると、魔方陣の輝きはいっそうまばゆくなっていき――弾けていく。

 

光が止んだとき――そこにはフェンリルの姿はなく、代わってヴァーリが姿を現していた。

 

「ご苦労だった、金華、ルフェイ。――面と向かって会うのは久しいな、曹操」

 

ヴァーリと対峙する曹操は苦笑する。

 

「ヴァーリ、これはまた驚きの召喚だ」

 

ルフェイが魔法の杖で宙に円を描きながら言う。

 

「フェンリルちゃんとの入れ替わりによる転移法でヴァーリさまをここに呼び寄せました」

 

ヴァーリが続く。

 

「フェンリルには俺の代わりにあちらにいる美猴たちと共に英雄派の別働隊と戦ってもらうことにした。曹操がこちらに赴くことは予想できたからな。保険はつけておいた。――さて、おまえとの決着をつけようか。しかし、ゲオルクと二人だけとは剛胆な英雄だな」

 

曹操が不敵に笑む。

 

「剛胆と言うよりも俺とゲオルクだけで充分だと踏んだだけだよ、ヴァーリ」

 

「強気なものだな、曹操。例の『龍喰者(ドラゴン・イーター)』なる者を奥の手に有しているということか?英雄派が作り出した龍殺し(ドラゴンスレイヤー)に特化した神器(セイクリッド・ギア)所有者か、新たな神滅具(ロンギヌス)所有者と言ったところだろう?」

 

そんな中、俺は『龍喰者(ドラゴン・イーター)』という名が気にかかっていた。

 

……何処かで聴いたことが…………あ。ま、まさか!?――いや、ありえない。"奴"は冥府の最下層に封印されている者。故にここに存在するはずがないのだが……もしも、もしもそれが本当だとすれば……かなりヤバイぞ!

 

俺が考え込んでいる間、ヴァーリの言葉に曹操は首を横に振る。

 

「違う。違うんだよ、ヴァーリ。『龍喰者(ドラゴン・イーター)』とは現存する存在に俺たちが付けたコードネームみたいなもの。作ったわけじゃない。すでに作られていた。――『聖書に記されし神』が、あれを」

 

――『聖書に記されし神』…俺は感づいた。……やはり、『龍喰者(ドラゴン・イーター)』――"奴"がいるのか!!

 

『……ツバサ。気をつけなさい。』

 

ルーツがいつになく真剣な声で忠告してきた。

 

……うん。わかってる

 

「曹操、いいのか?」

 

「ああ、頃合いだ、ゲオルク。ヴァーリもいる、オーフィスもいる、片割れもいる、赤龍帝もいる。無限の龍神二体に二天龍だ。これ以上ない組み合わせじゃないか。――呼ぼう。地獄の釜の蓋を開けるときだ」

 

やめて、そいつを出さないで……。

 

「了解だ。――無限を食うときがきたか」

 

口の端を吊り上げたゲオルクが後方――広いロビー全体に巨大な魔方陣を出現させる。

 

ズォォォォォォォオオオオオオオオオオオオ……ッ。

 

ホテル全体を激しい揺れが襲う。

 

「――ッ!?この気配…!――ツバサ!レイジ!!」

 

「「わかってる!!」」

 

光輝兄さんが気配を感じ取り、俺とレイジ兄さんに声を上げるが、俺もレイジ兄さんも既に動いていた。

 

「零式秘儀――"響"!!」

 

「祖龍の――咆哮ぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

レイジ兄さんが飛ぶ斬撃を、俺が口から白き豪炎を飛ばした。

 

パキュン――

 

「――なっ!?」

 

「うそ…だろ……?」

 

俺とレイジ兄さんの攻撃が、まるで目に見えない壁に当たるかのように、消えてなくなった。

 

……そんな。消し去ることができなかった。

 

そいつのドス黒く禍々しいオーラは目に見えていなくとも、強烈なものだった。

 

『……ツバサ、この気配は…ドラゴンに向けられた悪意、神の呪いよ。――まさか、"アイツ"がこんな所に現れるなんてね…』

 

ルーツも感じ取っているようで、さらに警戒した声音でそう言う。

 

禍々しいオーラを放つ魔方陣の上には、巨大な頭部と胴体…背中には黒い羽のある"モノ"が十字架に張り付けられた状態で出現している。

体を強烈なまでに締め上げている拘束具。その拘束具が体中に絡められている状態であり、不気味な文字が浮かんでいる。その隙間からは血涙が流れている…。

 

下半身は長細い東洋のドラゴン、上半身が堕天使、下半身がドラゴン。両手、尾、全身のあらゆる場所――堕天使の羽にも無数の太い釘が打ち込まれている。

 

『オオオオオォォォォォオオオオオオオオォォォォォォォオ……』

 

その者の口から、不気味な声が発せられていく。牙むき出しの口からは血と共に唾液が吐き出される。

 

苦しみ、妬ねたみ、痛み、恨うらみ、ありとあらゆる負の感情が入り交じった低く苦悶に満ちた声音…。

 

「――ぐぅ!!」

 

その圧倒的な負のオーラは俺の体を蝕んできた。

 

『ツバサ!!』

 

「――だ、大丈夫。……まだ、こんな程度、かの『タタリ神』に比べれば、軽い、ものだよ」

 

実際は、結構キツイけど、まだ、大丈夫。

 

『……嘘おっしゃい。でも、いけるのは本当のようね。絶対に無理しちゃダメよ?』

 

「うん」

 

ルーツの声はかなり心配してくれているようだが、俺は無理してでも、今回ばかりは闘わせてもらうよ。

 

「――波動拳!」

 

光輝兄さんが闘気の球体をアイツに向けて投げた。

 

しかし、闘気球は"奴"のオーラでかき消された。

 

……なるほど、レイジ兄さんのも俺のも、あの負のオーラが打ち消していたわけか。

 

俺は冷静に曹操に問う。

 

「……ねぇ、曹操、コキュートスの封印を解いたの?」

 

曹操は一歩前に出て答えるように口ずさみだす。

 

「――曰く、『神の毒』。――曰く、『神の悪意』。エデンにいた者に知恵の実を食わせた禁忌の存在。いまは亡き聖書の神の呪いがいまだ渦巻く原初の罪――。『龍喰者(ドラゴン・イーター)』、サマエル。蛇とドラゴンを嫌った神の呪いを一身に受けた天使であり、ドラゴンだ。そう、存在を抹消されたドラゴン――」

 

拘束具をつけられた堕天使ドラゴン――サマエルの名を聞いて、イッセーたち一部の者以外の誰もが驚愕の表情となる。

 

「……ツバサ様、あの生き物は一体……。」

 

俺の後方に立っていたカンナが訊いてくる。

 

「カンナ、アダムとイブの話は知ってる?」

 

「え、えぇ…それぐらいは知っていますが…」

 

俺はイッセーたちにも聞こえる声量で説明する。

 

「蛇に化け、アダムとイブに知恵の実を食べさせるように仕向けたのがあの堕天使ドラゴン。それが『聖書に記されし神』の怒りに触れた。神は極度の蛇――ドラゴン嫌いになってしまった。あいつはドラゴンを憎悪した神の悪意、毒、呪いというものをその身にすべて受けた存在。本来、神聖な神の悪意はあり得ない……それだけ猛毒なんだ。ドラゴン以外にも影響が出る上、ドラゴンを絶滅しかねない理由から、コキュートスの深奥に封じられていた。あいつにかけられた神の呪いは究極の龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)なんだ」

 

「……ツバサ様達の攻撃が効かなかったなんて、相当危険なものですね、」

 

俺の説明で理解したようで、カンナたちは先ほどより警戒を高めていた。

 

アザゼルが怒号を発する。

 

「冥界の下層――冥府を司るオリュンポスの神ハーデスは何を考えてやがる……?――ッ!ま、まさか……っ!」

 

アザゼルの得心に曹操が笑む。

 

「そう、ハーデス殿と交渉してね。何重もの制限を設けた上で彼の召喚を許可してもらったのさ」

 

「……野郎!ゼウスが各勢力との協力態勢に入ったのがそんなに気にくわなかったのかよッ!」

 

アザゼルは憎々しげに吐き捨てる。

 

……あの骸骨神、魂ごと封印してやりたいぐらいだっ。

 

俺は怒りを露わにしかけたが、冷静を保つように深呼吸して落ち着く。

 

「……ぁんの骸骨爺ぃ〜!! 魂ごと封印――いや、消滅させてやろうか!?」

 

俺の右前方で、光輝兄さんが怒りをあらわにしていた。全身から攻撃的な赤い闘気(オーラ)をだして、周りの地面が悲鳴を上げひび割れていた。

 

曹操は聖槍をくるくると回して矛先を俺たちに向ける。

 

「というわけで、アザゼル殿、ヴァーリ、赤龍帝、そして結城家の者達。彼の持つ呪いはドラゴンを食らい殺す。彼はドラゴンだけは確実に殺せるからだ。龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)の聖剣など比ではない。比べるに値しないほどだ。アスカロンは彼に比べたらつまようじだよ、兵藤一誠」

 

…あぁ、確かにつまようじと大差ないだろうが…俺の内にいるルーツには効果はない。

 

……でも、神龍の力を持つ俺には効果はてきめんだ。この力を授けてくれた師匠、神竜マスタードラゴンは確かに滅龍系統の技や力は効かない。むしろ、逆にそれで自身を強化したり回復したりするほどだ。

 

でも、俺は違う。俺の力はあくまでも借物であり"神竜"とは別の"神龍"だ。

 

マスターやルーツ程の力がない俺には龍殺しの力は絶大だろうね。

 

「それを使ってどうするつもりだ!?ドラゴンを絶滅させる気か!?……いや、おまえら……オーフィスを……?」

 

アザゼルの問いに曹操は口の端を吊り上げる。そして指を鳴らした。

 

「――喰らえ」

 

ギュンッ!

 

俺たちの横を高速の物体が通り過ぎる。

 

俺は危険直予知感で瞬時に"亜空穴"という技を使い瞬間移動を発動させた。

 

むろん、その先は――。

 

ドンッ!

 

俺はオーフィスの近くにいた龍巳の眼前に飛び、龍巳を勢いよく突き飛ばした。

 

「――キャッ!」

 

龍巳の悲鳴があがったが、いまは謝っている余裕もないだろうね。

 

バグンッ!!

 

その直後、オーフィスがサマエルの舌らしきものに包まれ――俺もその舌に包み込まれてしまった。

 

……やっぱり、狙いはオーフィスと龍巳の力だった。

 

俺は先ほどまで繋がらなかったピースをいつもの如く勘で埋めて、曹操の目的を見出すことができたようだ。

 

「オーフィス!ツバサちゃん!返事してくれ!!」

 

包み込まれた俺とオーフィスに話しかけてくるイッセー。

 

……だけど、俺は返事をする気力もなくなっていた。

 

そんな俺は遠退いていく意識のなか、禁術を発動させた――。




遅れて大変申し訳ございませんでしたーー!

前書きでも、説明したどおり、両腕が使えなくて投稿できませんでした。楽しみに待っていてくださった方々。本当に申し訳ありません。次からは体調管理などいろいろと気をつけていきたいとおもいます!


それではまた次回! バイバーイ!

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