ハイスクールD×D~最強男の娘の転生物語~   作:三元新

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学園祭のライオンハート
1話 決意


京から帰宅して数日後、俺はサーゼクスんから受けたオファーのために冥界の旧首都、ルシファードにある大型コンサート会場のステージにイッセーたちと来ている。

 

「ずむずむいやーん!」

 

「「「「「「「「ずむずむいやーん!」」」」」」」」」

 

ステージに立っているイッセーの掛け声に、客席の子供たちが元気な声で反応している。

 

もちろん、「乳龍帝おっぱいドラゴン」のヒーローショーだ。その近くで俺は護衛として立っていた。

 

いまは、暇をもて余して待機している。

 

「いくぜ、ドラゴンキック!」

 

「「「「「「「「キ―――――――ックッ!!」」」」」」」」

 

イッセーの掛け声と共に子供たちの歓声と舞台装置による爆発の演出がされてステージは盛り上がっている。

 

子供達も楽しそうでなによりだ。

 

「何だかんだいっても、やっぱりイッセーは大人気だね~。これもドラゴンの力なのかな?」

 

『それは違うわよ。あれはイッセー本来の力でしょうね。いままでの所持者は子供好きもいたけれども、子供にはなつかれていないもの』

 

俺の独り言にルーツが反応した。ルーツは最近神器から出てきて、人間の娯楽を楽しんでいる。なので、最近は人間の状態でいるときが多いい。

 

そんな他愛のない話を暫くしていたら、ヒーローショーが終わっていたようでクイズコーナーがはじまっていた。

 

『……では、おっぱいドラゴンのクイズコーナーです』

 

「「「「うおおおおおおおおっ!ヘルキャットちゃぁぁぁぁぁぁぁんっ!!」

 

舞台ではクイズコーナーの司会をする白音に、大きなお友達の声援が向けられている。

 

「……ハハハ、人間界も冥界も平和だな」

 

俺は苦笑しながらそう言った。

 

『同感ね』

 

同じく、呆れながら嘆息するルーツ。

 

冥界の未来のために盛り上げたいと言っていたサーゼクスさんの仕掛けは当たりを引いたようだ。

 

そういえば、冥界メディアではロキ襲来や京の事件などをニュースなどで報じており、そこで作戦に参加していたイッセーたちグレモリー眷属のことを大々的に報道していた。

 

そのせいか、イベントなどで冥界を訪れた際に、マスコミ関係の方々に囲まれてフラッシュをたかれる羽目になっていた。

 

そんなわけで、俺が護衛としているのだ。

 

目立った戦も無くなった悪魔業界にとって、俺たちが遭遇する事件は珍しい…らしい…。

 

『おっぱいドラゴン!またもお手柄!!』みたいな感じで報道されている隣で兄さん達のことは、『おっぱいドラゴンの窮地のときに味方増援か!?』のような感じに報道されていた。

 

つまりは、テレビの中の『おっぱいドラゴン』と実際のイッセーの行動が混同されているので子どもたちの人気が若干増えてきているようだ。……でも、あきらかに若干どころじゃない気がするのは俺だけではないはずだ…。

 

そんな事を思いつつ、俺はトイレに行こうと通路を歩いていたら、通路先で何やら話し声が聞こえてきた。

 

サッと物陰に隠れた俺は、頭を少しだけ出して声のする裏口の様子を伺ってみる。

 

「すみません。握手とサイン会の整理券配布はすでに終わってまして……」

 

「そ、そうなんですか……。もう終わっちゃったんだって」

 

「やだぁぁぁぁっ!」

 

スタッフの男性が謝り、母親が子供に告げるとその子どもは涙をためて泣き叫ぶ。

 

「どうかしたんですか?」

 

通路の隅から赤い閃光を発した直後にマスクを収納した状態のイッセーが現れた。

 

その声に母子とスタッフが振り返る。

 

「おっぱいドラゴンだっ!」

 

子供は一転して笑みを見せた。スタッフがイッセーに説明する。

 

「あ、兵藤さん。いえ、こちらのお母さんとお子さんがサイン会の整理券配布に間に合わなかったようでして……」

 

確認を取ったイッセーは子供の前で片膝をついて訊く。

 

「キミ、名前は?」

 

「……リレンクス」

 

「リレンクス、俺に会いに来てくれてありがとう。えーと、何か書くものものありますか?」

 

イッセーがスタッフに訊くと、

 

「あ、ありますが……」

 

マジックペンを取り出して手渡した。

 

「この帽子。俺のデザインが入った帽子、これにサインしてもいいかな?」

 

イッセーがリレンクスの帽子を指さすと、リレンクスは三度もうなずいた。

 

帽子にサインを書き、そのままリレンクスの頭に被せるイッセー。輝くような笑顔でリレンクスは帽子を何度も脱いでは被っていた。

 

「ありがとうございます!」

 

母親がお礼を言う。イッセーがリレンクスの頭に手を置いて告げた。

 

「リレンクス、男の子が泣いちゃダメだぞ。転んでも何度でも立ち上がって女の子を守れるぐらい強くならないとさ」

 

そう言ったあと、イッセーは立ち上がってスタッフと共にその場をあとにする。

 

『……へぇ~、普段とは違い、確りやるじゃない』

 

どうやらルーツのイッセーに対しての評価が上がったようだ。

 

まぁ、確かに、普段のイッセーの行動を見ていたら忘れがちなんだけども、イッセーはすごく優しいからこんな事でも嫌々やらずに、一生懸命やるんだね。

 

イッセーとスタッフが立ち止ったのを確認して、俺は能力を使い完全に気配を消した状態で物陰に身をひそめた。

 

「格好良かったわよ、さすが私のイッセーね」

 

イッセーの近くに現れた紅髪の影――リアスさんだ。

 

「少し軽率だったけれど、それでもあの子の夢をあなたは守ったわ」

 

「部長……」

 

イッセーが涙目で感動しているところに気配が二つ近づいてくる。

 

俺は状況を判断しながら、イッセー達の所わを確認をしていた。

 

「あら?ごきげんよう、リアス、一誠さん。ここで何をしているのかしら?」

 

イッセー達の目の前に現れた人物は――ヴェネラナ夫人だった。ということは、傍にいるのは……ミリキャスだね。

 

「お、お母さま!ミリキャスまで!いらっしゃっていたの?」

 

リアスは素っ頓狂な声を上げて驚いていた。

 

「リアス姉さま、イッセー兄さま、イベントとても楽しかったです!」

 

ヴェネラナ夫人の隣で立っているだろうミリキャスが元気に言った。

 

ヴェネラナ夫人は言う。

 

「えぇ、一度、グレモリーが主催するイベントを直に見ておきたかったものですから。ミリキャスも見たいと言っていたのです。一誠さん、盛り上がっていましたわね。良いショーだったと思いますわ」

 

どうやらイベントの会場に来ていたらしい。……全く気づかんかった。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

イッセーが礼を口にした。

 

「一誠さんを模した特撮番組は我がグレモリー家の財産を担う大切な産業となることでしょう。そして、冥界の子供たちにとっても大切なものになっていますわ。これからもグレモリーの一員として、冥界のため、我が家、我が娘のために奮闘してもらえると助かりますわ」

 

「もちろんです、部長のお母さま!粉骨砕身の精神でがんばりたいと思います!」

 

「『粉骨砕身』、日本の成句だったわね。良いお言葉ですわ。さすがグレモリー家の男子です。けれど、『部長のお母さま』というのは、いただけないわね。私のことは『部長のお母さま』ではなく、お義母さまか、母上と呼ぶこと」

 

――あ~ぁ、始まってしまったようだ……ヴェネラナ夫人の説教…。

 

俺は聞こえる声を聴いて内心そう思った。……がんばれ、現代の赤龍帝よ。俺は物影から笑いを耐えながら見ていてやろう。

 

「…し、しかし、失礼のような……」

 

どうもイッセーは現状を理解していないらしい。あの冥界での儀礼といい、イッセーはまだ自覚いていないようだ……少しは勘付いてはいるもののねぇ…。この鈍感野郎めー!!

 

「リアス、教えがなっていないのではなくて?」

 

ヴェネラナ夫人の声音が低くなり、リアスが答える。

 

「申し訳ございません、お母さま。ですが――」

 

「そこで『ですが』が入るだなんて……。伴う男子を入れるのですから、そこをちゃんとしないでどうするの?それと例の順番は決めたのかしら?少なくともアーシアさんとゼノヴィアさんはそうなのでしょう?」

 

……例の順番?…なにそれ?。

 

『貴方はまだ知らなくてもいいわよ』

 

――ルーツに言われたので思考をその場で停止させた。

 

「殿方がそれを望むのだから、そこを管理するのも当主たるあなたの役目です。他にも増えるとしたら、いまからちゃんとしなければダメよ。お父さまのときはきちんと私が手綱を握ったものです。強く魅力的な殿方に他の女性が心を奪われるのは世の常。サーゼクスは魔王ゆえにグレイフィアのみでしたが、彼は別に魔王を目指しているわけではないのよね?ならば問題もないでしょう。……まさか、まだ決め手を欠いているのかしら?もう、強引なところは私に似たと思ったのに、最後の最後で詰めが甘いだなんて……。一度そういう関係になれば周囲の女性の主導権を得られるでしょう。リアス、最後まで私やグレイフィアが介入しなければ進められないのですか?」

 

不満を爆発させたヴェネラナ夫人のマシンガントーク。グレイフィアと同様にイッセーとリアスの仲に不満を抱いているようだ……。

 

コホン、とヴェネラナ夫人は軽く咳払いをしたあと、「まぁ、いいわ」とお説教モードを終える。

 

「イッセーさん。あなたもあなたですわね。まずはグレモリー家の者を呼ぶところから自覚してもらわないといけません。私はともかく、リアスのことです。いつまでも『部長』だなんて……。そこが一番大事なことだわ」

 

俺はそっと物陰から覗いていると、ヴェネラナ夫人がイッセーの鼻先に指を突きつけて物申していた。

 

「リアスのことは好き?」

 

「は、はい!もちろんです!!尊敬していますし、俺の大事な方です!命に代えても終生お守りするしだいです!!」

 

イッセーの言葉にヴェネラナ夫人がうんうんとうなずく。イッセーの隣にいるリアスさんは顔を真っ赤にしている。

 

「あ~、無自覚にプロポーズしやがったな…」と、何時ものイッセーに心のなかで突っ込みを入れる俺をよそに、ヴェネラナ夫人は続ける。

 

「よろしい。麗しい主従関係は確認しました。それなら、もう一歩踏み込んでみなさい。プライベートでのリアスはあなたにとって、どういう存在なのか、それを改めて考えてやりなさい」

 

そんなヴェネラナ夫人の言葉に、イッセーは考え込んでいた。

そして、ヴェネラナ夫人がミリキャスと共にその場をあとにしていく。

 

リアスさんがコホンと軽く咳払をしたのが聞こえた。

 

「……さ、さて、帰ったら学園祭の準備再会よ」

 

「はい!」

 

二人は何かを話しながらこの場を去っていった。

 

「――さ~てとぉ、俺も戻りますかね~」

 

俺は物陰から出たあと、舞台裏へと戻ってきた。

 

「(俺も、もっともっといま以上に頑張らなくちゃ。平和の為にも…ね)」

 

そんな決意と共に―――


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