ハイスクールD×D~最強男の娘の転生物語~   作:三元新

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10話 京都大決戦(後編)

あれから、光が止んで、みんなの姿が見えてきた。

 

「どうせ俺も変態ですよぉぉぉおおっ!」

 

――すると、イッセーの叫び声が聞こえてきた。

 

「いくぜぇぇぇぇぇぇぇぇええっ!!ブーステッド・ギアァァァァァアアアッ!!!」

 

イッセーの気合に反応し、体を包む赤い閃光は極大のオーラを辺り一帯に解き放ち始めていく…。

 

『Desire(デザイア)!』

 

『Diabolos(ディアボロス)!』

 

『Determination(ディターネイション)!』

 

『Dragon(ドラゴン)!』

 

『Disaster(ディザスター)!』

 

『Desecration(ディシクレイション)!』

 

『Discharge(ディスチャージ)!』

 

『DDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDD!!!!!!!!!!!』

 

イッセーの方から壊れたかのように『D』を連呼する音声が聞こえてくる。

 

「行くぜ!ドライグ!!」

 

『おう!!』

 

イッセーは高らかに叫ぶ!!

 

「モードチェンジッ!『龍牙の僧侶(ウェルシュ・ブラスター・ビショップ)』ッ!!」

 

イッセーの両肩から背中にかけて赤いオーラが集まりだし、形を成していく。

 

出来上がったのは背中のバックパックと、大口径のキャノン砲だ。

 

ブゥゥゥゥゥン……。

 

静かなる鳴動が始まり、赤龍帝の力がキャノンの砲口へ集まっていく。

 

「……あれは、マズイな…」

 

曹操がぼそりとつぶやく。イッセーのキャノン砲に集まっていく膨大なエネルギーを察知したようだ。

 

――すべてを破壊するのが赤龍帝の力。それがドラゴンの本来の力だ!ほんと、ここの結界を強化していて正解だったよっ!!

 

キャノン砲にエネルギーが溜まり終える――。

 

『Boost(ブースト)Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost BoostBoost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost!!!!!!!!!!!!!!!!!』

 

重なり響く宝玉の音声……。

 

「吹っ飛べェェェェェェェェェッ!ドラゴンブラスタァァァァアアアアアアッッ!!」

 

ズバァァァアアアアアアアアアアッ!!

 

「おもしれぇ、受けてやるぜ、伝説のドラゴンさんよォッ!!」

 

すると、ヘラクレスが前方に立ち塞がり、イッセーの馬鹿げた一発を受けようとするが――。

 

「受けるなッ!避けろッッ!!」

 

曹操が叫び、聖槍の石突きでヘラクレスをその場から吹き飛ばす。曹操たち他のメンバーもイッセーの出した一撃から素早く避けていく。

 

外した一撃は、遥か遠くに飛んでいき――。

 

ドォォォォオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!

 

空間を震わせる大爆発とともに、背景の町並みを丸ごと巨大なオーラに包み込んでいった。

 

……拡散したエネルギー。それが止むと、そこに残ったものは――何もなかった。

 背景は丸ごと消失しており、このフィールドにまでダメージを与えたようだ……空間自体が歪みだしているのがその証拠だ。

 

「……町ごと風景がふっ飛びやがった!こんなのを立て続けに放たれたらこの空間が持たんぞ!!」

 

ヘラクレスはイッセーの一発の威力をようやく理解したらしい。

 

「疑似空間の町が歪む、か。ここはかなり強固に創られているんだけどね。……なんて威力だよ」

 

ジークフリートも笑みを止め、目を細めている。

 

「……ふむ。中々の威力だ。あれをくらえば俺も只ではすまないだろうな」

 

光樹兄さんもそう言った。―――嘘つけいッ!

 

「曹操ォォォォォォッッ!!」

 

イッセーは曹操の名を叫び、龍の翼を広げて高速で駆けだした。背中のキャノンをパージし、鎧の各部分をパージしていく――。

 

「モードチェンジッ!『龍星の騎士(ウェルシュ・ソニックブースト・ナイト)』ッ!!」

 

ほとんどの装甲をパージしたイッセー。スリムなフォルムと化していた。

 

その速度の領域は――神速へ入っていた。

 

――さて、俺もうかうかしてられないね!!

 

「――俺も行くよッ!!『禁手化(バランス・ブレイク)! 祖龍の鎧』」

 

俺は、鎧を纏いイッセーの後を追うように神速で駆け出す。

 

「ふっ飛べやぁぁぁぁッッ!!!」

 

ヘラクレスが禁手(バランス・ブレイカー)になり、体中にできた突起物――ミサイルを俺目がけて乱射してくるが――。

 

「ふっ、笑止ッ!」

 

ドゴォォォォォォン――…

 

光樹兄さんがお得意の気功拳でミサイルを撃墜した。

 

「こっから先へは通さん!お前は先に行けい!ここは俺が引き受けた!」

 

光樹兄さんがヘラクレスに相対する様に立った。

 

ミサイルが相殺されたことに驚愕するヘラクレスをよそに、ジークフリートが前に出て一本の魔剣を振るってくる!

 

「ダインスレイブッ!!」

 

氷の柱が多数出現し、襲いかかってくる――が。

 

「零式刀技“焔”!」

 

ゴウゥ!

 

炎の斬撃が連続して氷の柱を切り刻み蒸発させてゆく。

 

「ここは俺に任せろ。お前はイッセーの所に急ぐんだな!」

 

『レイジの言う通り、ここは私達に任せるのだ!』

 

レイジ兄さんがかっこ良く刀――“雪姫”を構えながら、レイジ兄さんと雪姫さんがそう言ってきた。

 

「ここから先へは行かせないわ♪くらいなさい!『断罪の聖龍(ステイク・ビクティム・ドラグーン)』ッ!!」

 

聖剣で形作られたドラゴンをけしかけてきた!

 

「――よっと!!」

 

俺は龍翼を出して、急角度で垂直に上空へ急上昇すると、それについてくる聖剣のドラゴン。しかし――

 

「主よ、この身を委ねます―――

 焼きつくせ!紅蓮の聖女(ラ・ピュセル)!!」

 

紅蓮の炎が聖剣で形作られたドラゴンを飲み込んだ。

 

ドォォォォォオオオオンッッ!!!!

 

そして、爆風と爆炎と共に地面へ聖剣のドラゴンを叩きつける。

 

――爆風が静まると、儚く散る聖剣のかけらが宙を舞い、地面は広範囲において一つの巨大なクレーターができていた。――そこには、ジャンヌが横たわっていた。

 

「間に合いましたね。ツバサ様。」

 

すると、隣から女性の声が聞こえてきた。

 

――そこにいたのは……

 

「ありがとうございます。ルーラー――いえ、ジャンヌ・ダルクさん」

 

そう、ルーラーことジャンヌ・ダルクさんだった。

 

この人はセイバーことアルトリアさんと同じく、十英雄の一人で、いま吹っ飛ばした英雄派の一人、ジャンヌ・ダルクの祖先の初代ジャンヌ・ダルクだ。

 

「私のお馬鹿な子孫は私がお相手をするので、ツバサ様はお先にどうぞ、行ってください」

 

そう言われたので、俺はお言葉に甘えて行くことにした。

 

「ありがとうございます。――おっとそうだ。ジャンヌさん、これを」

 

俺はスキマから一振りの聖剣を出した。

 

「――これは?」

 

「こいつの名前は聖剣デュランダル。氷属性を持っている聖剣デュランダルです。もちろん、俺のオリジナルですよ!

 流石に、なにも装備なしではあれですので、これを使ってください。元々、ジャンヌさんに使って貰うために作ったのですから。」

 

「ありがとうございます。ありがたく使わせてもらいますね」

 

「はい!それでは、ここをよろしくお願いします」

 

俺はジャンヌさんにデュランダルを渡したあと、急いでイッセーのもとまで走っていこうとした。

 

――すると

 

バジッ! バチッ!

 

空間を震わす音が鳴り響く――。

 

「どうやら、始まったようだな」

 

三人の近くに曹操が立っている……そして、俺の横にはイッセーが通常の鎧の状態で肩で息をしながら立っていた。

 

「あの魔方陣、そしてキミたちの膨大なパワーが真龍を呼びよせたのかもしれないな」

 

曹操が皮肉気に言う。

 

「ゲオルク、『龍喰者(ドラゴン・イーター)』を召喚する準備に取りかかって――」

 

曹操はそこで言葉を止めて目を細くする。次元の裂け目を見て、疑問が生じた表情となった。

 

「……違う。グレートレッドではない? ……あれは、それにこの闘気……ッ!」

 

オオオオオオオォォォォォンッ!!

 

空間の裂け目から姿を現したのは――十数メートルほどの、東洋型のドラゴンだ。

 

――あ、あのドラゴンは…

 

曹操が叫んだ。

 

「――西海龍童(ミスチバス・ドラゴン)、玉龍かッ!」

 

――玉龍(ウーロン)……やはり、あの人が「最強の助っ人」ってことになるのか…。

 

その背中に乗っている人影は高さなぞまるでないように飛び降りて地上へと降り立つ。

 

「大きな『妖』の気流、それに『覇』の気流。それらによって、この都に漂う妖美な気質がうねっておったわ」

 

小さな背丈の人影は年老いた男性の声音で一歩一歩ゆっくりと歩いてくる。

 

俺はその人影――片手に長い棍棒『如意棒』を持ち、首には玉の一つ一つが大きい数珠をかけ、サイバーなサングラスにキセルを吹かしながら不敵な笑みを浮かべている。

 

「おー、久しい限りじゃい。聖槍の。あのクソ坊主がデカくなったじゃねーの」

 

老人は曹操にそう言う。曹操は目を細めて笑んだ。

 

「これはこれは。闘戦勝仏殿。まさか、あなたがここに来られるとは。各地で我々の邪魔をしてくれているそうですな」

 

「坊主、イタズラが過ぎたぜぃ。儂がせっかく天帝からの使者として九尾の姫さんと会談しようと思っていたのによぉ。拉致たぁ、やってくれたもんだぜぃ。ったく、関帝となり神格化した英雄もいれば、子孫が異形の業界の毒なんぞになる英雄もいる。『覇業は一代のみ』とはよく言ったもんじゃ。のぅ、曹操」

 

「毒、ですか。あなたに称されるのなら、大手を振って自慢できるものだ」

 

……曹操が畏敬の念もって接している。

 

「お久しぶりです、初代のお爺さん」

 

「ツバサじゃな、久しい限りじゃ。マスクを下ろさんかったら気づかんかったぜぃ」

 

俺はマスクを格納して、初代・孫悟空のお爺さんと挨拶を交わした。いまから、13年ほど前に、お祖父様が連れてきたご友人がこの人だったのだ。

 

「……ツバサちゃん、その猿のような爺さんは?」

 

イッセーが疑問の声を上げるので――。

 

「初代、孫悟空のお爺さんだよ。イッセー。」

 

俺は軽く紹介した。

 

「しょ、しょ、しょ、初代の孫悟空ぅぅぅぅぅううううっ!?その猿の爺さんがが西遊記で有名な……ッ!!」

 

初代の孫悟空はイッセーを見ると、口元を笑ませる。

 

「赤龍帝の坊や。よーがんばったのぉ。いい塩梅の龍の波動だ。だが、もう無理はしなくていいぜぃ?儂が助っ人じゃい。あとはこのおじいちゃんに任せておきな。それにツバサもじゃ。その鎧、いま大分気を削っておろう。集中が途切れれば意味をなさんのじゃろ?――玉龍(ウーロン)、九尾を頼むぜぃ」

 

初代の爺さんが空を舞う玉龍(ウーロン)に指示を出す。玉龍は大声で不満を漏らしていた。

 

『おいおい、来た早々龍使いが荒いぜ、クソジジイ!オイラ、ここに入るだけでチョー疲れてんですけど!てか、白龍皇の仲間の魔女っ子に手助けしてもらったんだけどよ!って、そこの人間のなかにいるのミラ・ルーツじゃね?封印されってんのかよ!おわっ!つーか、ヴリトラだ!おいおいおい、狐と戦ってんのヴリトラだよ!どれぐらいぶりだぁ?』

 

テンションの高い玉龍に初代の爺さんは煙管を吹かしながら言う。

 

「あとで京料理をたらふく食わせる。それでよかろうて」

 

『ファッ○ンジジイ!!あとで絶対たらふく食わせろよい!オラオラオラ!!龍王さまを舐めんなよ!狐の姉ちゃん!オイラは強ェェぞ!!』

 

文句たらたらに玉龍は八坂さんと対峙する。

 

「あらあら、随分と暴れているのね」

 

突然空に女性の声が響いた。みんな辺りを警戒するが見つからない。それは当たり前だ――だって…

 

「紫さん。声だけ出さずに普通に出てきてください」

 

俺がそう言うと、みんなの視線が俺に集中した。

 

「あら、面白味が無くなったじゃないの…。つまらないわ」

 

そう言いながらスキマから上半身だけをだして、つまらなそうな顔をしている紫さんが現れた。

 

慣れた俺や光樹兄さん達は反応していないけれども、これで2回目のイッセーや、初めての曹操達と孫悟空さんはスゴく驚いていた。

 

「……その気…。もしかしてお前さんは――八雲紫かのぅ?」

 

孫悟空さんが紫さんに聞いた。

 

「えぇ、八雲紫よ。闘戦勝仏殿――いえ、初代・孫悟空さん」

 

「ほっほっほっ!まさか、『妖怪の賢者』殿に会えるとはな。長生きしてみるもんじゃわい」

 

「私も、伝説のお猿の妖怪さんに会えて嬉しいわ。――あっと、そんな呑気なことを話している場合じゃないわ。藍、あなたの出番よ」

 

すると、紫さんの隣に一際大きなスキマが出てきて、そこから藍さんと橙が出てきた。

 

「八坂……なんて痛々しい姿になって……」

 

藍さんは辛そうな瞳で八坂さんを見ていた。

 

「橙、私は八坂を止めにいくから、あなたは紫様と一緒にいなさい。紫様、橙をお願いします」

 

「えぇ、わかったわ。藍、気を付けていきなさい」

 

「藍さま!頑張ってください!」

 

藍さんは紫さん橙を預けたあと、紫さんと橙が藍さんにエールを送って、藍さんは暴走した八坂さんの所に飛んでいった。

 

「ツバサ、いったい隣にいる女性は誰かな?」

 

すると、曹操が此方を見ながら聞いてきた。

 

「ん?あぁ、この人は、八雲紫さん。『妖怪の賢者』と言われていて、文字通り最強の妖怪さんですよ。ちなみに、優位つ光樹兄さんを倒すことのできる数少ない人です。――あなたが程度の力では、勝てませんよ~」

 

俺の言葉に驚く曹操。まぁ、真実しか言ってないけどね~。

 

『うぉぉぉぉっ!おい、クソジジイ!この狐、強ぇぞぉぉぉぉっ!!』

 

八坂さんの九本の尾で締められている玉龍(ウーロン)。

 

「気張れい。龍王じゃろうが」

 

嘆息しながら初代の爺さんが言う。

 

『オイラは龍王のなかで一番の若手なんだぞ!まだピチピチでい!!』

 

「よく言うわな。その若手が目立った戦が終わった瞬間にいの一番で引退なんぞしおってからに。同じ九尾の嬢ちゃんも頑張っておるんじゃ。若さで乗り切れぃ」

 

『………………わかったよ、がんばりたい!』

 

――アハハ、なんだかおもしろい龍王だね玉龍(ウーロン)は。

 

それにしても、九尾の嬢ちゃんか……、一応、あれでも孫悟空さんよりは歳上だったはずだよね?

 

すると、ゲオルクが八坂さんを捕らえていた魔方陣を解き、初代の爺さんに手を突き出す。

 

「――捕縛する。霧よッ!」

 

初代の爺さんを包み込むように霧が集まるが――。

 

「――天童、雷鳴をもって龍のあぎへと括り通す。地へ這え」

 

トンッ!と地面を一度如意棒で突くと、霧は霧散していく。

 

「――ッ! あの挙動だけで我が霧を……ッ! 神滅具(ロンギヌス)の力を散らすか!」

 

ゲオルクが仰天する。

 

「槍よッ!」

 

隙を突いたかのように曹操が聖槍の切っ先を伸ばし、初代の爺さんを奇襲しようとする。

 

初代の爺さんは指先ひとつで槍を受け止めた。最強と謳われし神滅具(ロンギヌス)をその動作だけで。

 

「……良い鋭さじゃわい。が、それだけだ。まだ若いの。儂の指に留まるほどでは他の神仏も滅せられんよ。――貴様も霧使いも本気にならんで儂にかかろうなどと、舐めるでないわ」

 

初代の爺さんの一言を聞き、曹操は笑みを引きつらせる。

 

「……なるほど、バケモノぶりは健在のご様子ですな……。周囲に広く認知されているのは若いころの強さだと聞く。いまは如何ほどですかな?」

 

曹操の問いかけに初代の爺さんは不敵に肩をすくめるだけ。

 

ジークフリートが曹操の傍まで行き…告げる。

 

「曹操、ここまでにしよう。初代孫悟空は『禍の団(カオス・ブリゲード)』のテロを何度も防いでいる有名人だ。それに、結城家の兄弟姉妹も強い……多種多様の技を使い、俺たち三人を圧倒した。これ以上の下手な攻撃はせっかくの人材が傷つくよ。俺も爪が甘かった。――強い」

 

それを聞き、曹操も聖槍を下ろす。

 

「退却時か。見誤ると深手になるな」

 

バッ!

 

英雄派メンバーが素早く一カ所に集結し、ゲオルクが足下に巨大な魔方陣を展開し始める。

 

「これは、置き土産だ!」

 

すると、曹操が魔方陣を出した。そこから出てきたのは――――――体長が10mを越えるアンチモンスターだった。

 

「ここまでにしておくよ。初代、グレモリー眷属、赤龍帝、地球連邦軍、再びまみえよう。」

 

魔方陣が輝きを増してきた。

 

そのとき、俺の横にいたイッセーが左手にキャノン砲を生み出してオーラを練り込みだす。

 

ブゥゥゥゥン……。

 

静かに鳴動しながら、籠手のキャノン砲にオーラを装填した。

 

イッセーの様子を見て初代の爺さんが笑う。

 

「儂の役目、坊やがやるかぃ?まぁ、あの坊主にお仕置きしてみぃ。一時だけ、力が出るよう、おじいちゃんが手伝ってやるわい」

 

初代の爺さんが如意棒の先端でイッセーの鎧をコツンと軽く叩く。

 

――途端、イッセーの体中からオーラが噴出してきた。

 

イッセーは曹操にキャノン砲の狙いを定めた。

 

「――お咎めなしで帰れると思うのか?こいつはお土産だッ!!」

 

パシュゥゥゥゥゥゥンッ!!

 

籠手のキャノン砲から濃縮された魔力が打ち出された。

 

「しゃらくさい野郎だ!」

 

曹操の盾になろうとヘラクレスとジークフリートが前に出るが――。

 

「曲がれェェェェェッ!!」

 

イッセーが叫ぶ!刹那――。

 

バシュッ!!

 

軌道を変えたキャノン砲の一撃がヘラクレスとジークフリートを飛び越えて、曹操の顔面を捉えた!!

 

「ぐぅぅぅぅ……ッ!!」

 

赤い煙を上げながら、曹操が顔を手で覆う。

 

――へぇ…イッセーのやつ、魔力の玉を曲げれるようになったんだね!いつの間にか知らないけれども、それでも鍛錬の成果が出ているようだね。

 

曹操は右目から鮮血を散らしながら、こちらに顔を向ける。

 

……顔面が赤く染まっていた。

 

「……目が…。赤龍帝ぇぇぇぇっっ!!」

 

聖槍をかまえると、力強い言葉……呪詛を唱えだした。

 

「――槍よッ!神を射抜く真なる聖槍よッ!!我が内に眠る覇王の理想を吸い上げ、祝福と滅びの――」

 

ジークフリートが急いで曹操の口と体を手で押さえた。

 

「曹操っ!!唱えてはダメだ!『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』の禁手(バランス・ブレイカー)――いや、『覇輝(トゥルース・イデア)』を見せるのはまだ早いッ!!」

 

その声に曹操は激情を収め、深く息を吐く。

 

「――退却だよ。『魔獣創造(アナイ・アレイション・メーカー)』レオナルドもさっきのモンスターで限界だろう。さすがにこれ以上の時間稼ぎは外のメンバーでもできないだろうしね。各種調整についてもこれで十分データを得られるし、いい勉強になったよ」

 

ジークフリートは初代の爺さんを睨めつけている。

 

曹操が左眼でイッセーを捉えている。

 

「わかっているさ。初代殿、結城光樹殿、そして赤龍帝――否、兵藤一誠。ここいらで俺たちは撤退させてもらおう。まったく、ヴァーリのことを笑えないな。彼と同じ状況だ。キミはなぜか土壇場でこちらを熱くさせてくれる」

 

魔方陣がいっそう輝きを増す。曹操が消える間際に言った。

 

「――兵藤一誠、もっと強くなれ。ヴァーリよりも。そうしたら、この槍の真の力を見せてあげるよ」

 

そう言ったのが最後に、曹操達は消えた。

 

「ふむ、逃がしたか。――やはり、あの場で魔方陣を壊して置くべきだったか…」

 

すると、光樹兄さんが物騒なことを言ってきた。

 

「止めてよね。流石に、かっこ良く決めていた曹操が可愛そうだよ。――まぁ、この俺が更に付けた結界内で転移系の魔法を使えば、魔方陣が狂って何処に飛ぶかわからなくしているんだけれどもね~」

 

……いまごろ、何処にいるんだろうね~。

 

「………お前のほうが酷い気がするのは俺だけか?」

 

光樹兄さんが呆れた目を向けてきた。

 

「しかたがないよ。だってあのアホ達は九重ちゃんに八坂さん、さらに藍さんを悲しませたんだ。それぐらいの―――いや、寧ろその程度で終わった事に感謝をしてほしいよ。……俺はいま物凄く怒っているのだから。

 ――それにしても、随分とあっちのジャンヌはボロボロだったね。なにしたの?ルーラーさん」

 

俺はジャンヌさんに聞くと、ジャンヌさんがニッコリと微笑んで言った。

 

「いえ、ただ、お話しをしたまでですよ」ニコッ

 

…………その笑顔に恐怖を抱いた俺は悪くないと思う…です。

 

「…………ところでよ、何時まであの巨大モンスターを放置するつもりだ?さっきから瓦礫が飛んできてウザいんだが…」

 

なにがパラパラと飛んできてると思ったら、瓦礫だったのかよ…

 

「――はぁ、流石にウザいね。……消し飛びなさい『神竜の裁き』ッ!!」

 

チュドォォォオォォォォォォン――…

 

アンチモンスターが意図も容易く消し飛んでいった。

 

「……えぇ~…お前なぁ~」

 

「うるさい、光樹兄さん。べつにいいじゃん。面倒なんだし…」

 

「いや……………まぁ、いっか。」

 

こうして、俺たちの戦いは終わった。

 

――――――――――――――――――――――

 

英雄派が逃げて、アンチモンスターも葬ったあと、残ったのは俺たちとイッセーたち、助っ人の初代の爺さんと玉龍(ウーロン)。そして九尾の八坂さんと九重だった。

 

『あー、しんどかった。ヴリトラたちがいなきゃ、辛かった……』

 

玉龍(ウーロン)が地に降り、大きく息を吐いていた。

 

九尾化した八坂さんは玉龍(ウーロン)やヴリドラ化した匙、本気モードの藍さんが止めた。

 匙は元の姿に戻った直後に気を失い、藍さんが運んできてアーシアの治療を受けている。

 

その八坂さんは九尾化した状態…瞳は洗脳の色を浮かべたまま。

 

「母上!母上!」

 

『…………』

 

九重は泣きながら八坂さんを呼んでいるが……反応がない。

 

「八坂!目を覚ましなさい!私の声と自分の大切にしてきた娘の声が聞こえないのか!?」

 

藍さんも叫んでいるが……やはり、反応はなかった

 

「……心さえ引っ張り出せれば、八坂さんは我に返ることができるんだが…」

 

光樹兄さんがボソリと言った。

 

「そうだ!ツバサ、古明地さとりの能力があっただろう!それでなんとかできないか!?」

 

「できなくはないけれども、あくまでも心を見るだけで、後はトラウマを甦らすだけか。……いまの状態では少々いろいろとリスクが有りすぎて危険だね。だからむり」

 

イッセーの隣では初代の爺さんが煙管を吹かしながら思慮していた。――と、何かに気がつき、イッセーのほうに視線を向けた。

 

「赤い坊や。おまえさん、女の胸の内を聴ける能力があったよなぁ?」

 

「え、ええ、ありますけど」

 

「そうか、儂が協力するんでな、そこのお嬢ちゃんとあの九尾の姫さんに術をかけてくれんか?」

 

初代の爺さんの言葉に小さくうなずいたイッセーは、目を瞑って集中しだす。

 

「いけぇぇぇっ!『乳語翻訳(パイリンガル)』ッ!!」

 

カッ!と開眼したイッセーは九重と八坂さんに向けて技の名を叫んだ。

 

それを確認した初代の爺さんが如意棒をくるくると回して地面を叩く。瞬間――、妙な空間が発生し、俺たちを包み込こんだ。

 

周囲がうねっているように見えるが…、目には異常はなかった。

 

「赤い坊やの術の応用ででな、心に直接語りかけられるようにしたぜぃ。小さなお嬢ちゃん、心のなかでおかあちゃんに語りかけてみな」

 

初代の爺さんが九重にそう言う。九重はうなずき、瞑目した。俺の心に声が聞こえてくる…。

 

『……母上、……母上、聞こえますか、母上……』

 

九重の声だな。

 

「母上……どうか、元に戻ってくだされ……どうか、どうか……」

 

『…………』

 

しかし、八坂さんは反応しない。

 

すると、光樹兄さんが俺の目を見てきた。

 

――はいはい。了解ですよっと!

 

「コピー能力発動『心の中を見る程度の能力』」

 

俺は能力を使って、更に隣にいた藍さんに繋げた。これで、九重ちゃんの声と藍さんの声が八坂さんの心に直接響くことができる。

 

『……もう、わがままは言いません。……嫌いな魚も食べます。夜中に京都に飛び出すことも止めます……。……だから、どうか、いつもの母上に戻ってくだされ……。九重を……許してくだされ……。母上……』

 

『お前は、自分の愛しの我が娘を一人にするつもりか…。あれほど喜んでいたお前はこの子を一人にして苦しめるつもりか!帰ってこい!お前の居場所はそこじゃない。この娘の隣であろうが!』

 

九重は何度も謝り続け八坂さんに語りかけ、藍さんは叱りつつも優しく語りかける。

 

そのとき――。

 

『……く、の、う……』

 

かすかだが、確かに聞こえた。その声に九重は顔を上げ、再び心の中で叫ぶ。

 

『母上!九重はここです!!また歌を歌ってくだされ!また舞を教えてくだされ!九重は、九重は良い子になります!!また一緒に母上と……京都を!この都を歩きたいのです……ッ!!』

 

パァァァァァ――。

 

やさしい光が九重を包み込み、八坂さんも淡い光に包まれていく。その体は光を発しながら、徐々に、徐々に小さくなっていく。

 

光が止んだとき、そこにいたのは人間サイズの八坂さんだ。

 

「……ここは?」

 

八坂さんはふらりふらりとおぼつかない様子だが、意識のほうは取り戻しつつあるようだ。

 

九重が八坂さんに駆け寄り、その胸に飛び込んで泣き叫んだ。

 

「母上ぇぇぇっ! 母上ぇぇぇっ!」

 

八坂さんはやさしく九重を抱き、頭をなでる。

 

「……どうしたのじゃ、九重。おまえは、いつまで経っても泣き虫じゃな」

 

俺の瞳から透明の滴が頬を伝う。

 

隣を見てみれば、イッセーが涙を溢れさせて男泣きしていた…。

 

「…………まったく、世話のやける妹だ…」

 

藍さんはそう言っているが、その瞳からは涙が溢れていた。……とっても嬉しそうだ。

 

紫さんや橙もそして他の合流してきた優子姉さんとグレモリー眷属のみんなも涙を流していた。

 

そんな感動のワンシーンを確認した初代の爺さんが締めの言葉を言った。

 

「ま、何はともあれ、解決じゃい」

 

―――――本当、そうだよね♪




どうでしたか?やっと終わりましたよ京都編。長かったなぁ~。

さて、今回出てきたデュランダルですが、このデュランダルのモデルは緋弾のアリアにでてくるジャンヌ・ダルクの持っていたデュランダルです。わからない人はググってみてね~。

それでは次回!またお会いしましょう!

――バイバ~イ!

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