ハイスクールD×D~最強男の娘の転生物語~   作:三元新

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5話 英雄派 襲撃

俺達はいま、謎の結界内に入ってしまった。

 

「――こ、この霧は…」

 

イッセーが不思議そうに霧を眺めていたので俺はそれの説明をしようと思いイッセーに近づいた。

 

「イッセー、それはおそらく『絶霧(ディメイション・ロスト)』の結界でしょうね。ざっくり言いますと、閉じ込められたようです」

 

俺の言葉に驚くイッセーたち。すると、空から羽音が聞こえてきた。

 

「おまえら、無事か?」

 

宙からの声。そこには黒い翼を羽ばたかせているアザゼルがホバリングしていた。

 

すぐに着地するアザゼル。翼をしまいながら言った。

 

「俺たち以外の存在はこの周辺からキレイさっぱり消えちまってる。俺たちだけ別空間に強制的に転移させられて閉じ込められたと思って間違いないだろう。……この様子だと、渡月橋周辺と全く同じ風景をトレースして作り出した別空間に転移させたのか?」

 

「うん、アザゼルの言う通りですね…。空間自体遮断されていて、外とは連絡が取れないみたいだよ…

 さっきから光輝兄さん達に連絡がとれないや…」

 

俺は地球連邦軍が使う小型の耳に付ける通信機を使うが、うんともすんともいわない。完全に外と遮断してあるのだろう。

 

――でも、光輝兄さん達の事だ…。俺が消えた事はわかっているんだろうなぁ~。今頃探していたりして~。まぁ、流石にないかな?

 

でもさぁ~、確かに通信機は使えないけれどもなぁ~……。結界としてはなんだかな~。

 

それにしても、この程度が結界なの?……はぁ、バカじゃないのかな~これ。この程度が結界なんなら、俺の見てきた他の結界はどうなっちゃうんだろうね~。

 

「ここを形作っているのは悪魔の作るゲームフィールドの空間と同じものですか?」

 

俺が別の考えをしていたらイッセーがアザゼルに訊いていた。

 

「あぁ、三大勢力の技術は流れているだろうからな。これはゲームフィールドの作り方を応用したんだろう。――で、霧の力でこのトレースフィールドに転移させたというわけだ。 『絶霧(ディメイション・ロスト)』の霧は包み込んだものを他の場所に転移させることができるからな。…ほとんどアクション無しで俺とおまえたちを全員転移させるとは……。神滅具(ロンギヌス)はこれだから怖いもんだぜ」

 

と、アザゼルは言った。

 

イッセーの横にいる九重が震える口を開く。

 

「……亡くなった母上の護衛が死ぬ間際に口にしておった。気づいた時には霧に包まれていた、と」

 

俺が九重ちゃんの言葉を聞いていたら、不意に気配を感じた。

 

俺は気配を感じ取った瞬間に、イッセーたちの前に出た。

 

その気配の持ち主は渡月橋のほうから出現する。薄い霧のなかから複数の気配と共に複数の人影が近づいてきて、俺たちの前に姿を現す。

 

「はじめまして、アザゼル総督、赤龍帝。そして、結城 翼」

 

俺たちの名前を呼んで挨拶してくれた者は――学服を着た黒髪の青年だ。

 

その学服の上から漢服を羽織っている。しかも、そいつの手には槍――最悪の代物を持っている。

 

その青年の周囲には似た学服をきた若い男女が複数人いる。歳は俺たちとさほどの差はない……ざっと同年だとみる。

 

アザゼルが一歩前に出て訊く。

 

「おまえが噂の英雄派を仕切ってる男か」

 

アザゼルの問いに中心の青年が肩に槍の柄をトントンしながら答える。

 

「曹操と名乗っている。三国志で有名な曹操の子孫だ。――いちおうね」

 

――やっぱり…。『禍の団(カオス・ブリゲード)』の“英雄派”の連中を仕切っている、曹操じゃん…。

 

「みんな、気をつけてね~。アイツがもっているぶきは、神をも貫き殺すことができる神滅具(ロンギヌス)最強の槍…『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』だからさぁ~。特に、イッセーとかには大ダメージ必須だよ~。なんせ、聖なる力も凄いからね~。」

 

『――っ!!』

 

俺の言葉にイッセーたちが酷く狼狽していた。

 

「あれが天界のセラフの方々が恐れている聖槍……っ!」

 

イリナが口元を震わせて言う。ゼノヴィアも低い声で言った。

 

「私も幼い頃から教え込まれたよ。イエスを貫いた槍。イエスの血で濡れた槍。――神を貫ける絶対の槍っ!」

 

「あれが聖槍……」

 

『見てはダメよッ!』

 

「見ちゃダメだよ…アーシア…。帰れなくなるからね…」

 

うつろな双眸で聖槍を見つめるアーシアに、ルーツが警告して、俺がアーシアの無意識を操り聖槍から視線を外して俺の後ろに立たした。

 

すると、バッとアザゼルがアーシアの両目を素早く手で隠した。

 

「アーシア。信仰のある者はあの槍をあまり強く見つめるな。心を持っていかれるぞ。聖十字架、聖杯、聖骸布、聖釘と並ぶ聖遺物(レリック)のひとつでもあるからな」

 

そう、これはとても危険な代物…。信仰が深ければ深いほど、聖遺物はその者の精神を飲み込んでゆく…

 

え?俺は大丈夫なのかって?――ふん。あんな程度の聖槍で精神が飲み込まれるほど柔な体と精神をしていませんよ!

 

あの程度の聖槍で呑み込まれては、伝説と呼ばれる武具たちを扱うことなんか、できるわけありませんもの。

 

すると、九重が憤怒の形相で曹操に叫ぶ。

 

「貴様!ひとつ訊くぞ!!」

 

「これはこれは小さな姫君。なんでしょう?この私ごときでよろしければ、なんなりとお答えしましょう」

 

曹操の声音は平然としているが、明らかに何かを知っているふうな口調だ。

 

「母上をさらったのはお主たちか!」

 

「左様で」

 

「母上をどうするつもりじゃ!」

 

「お母上には我々の実験にお付き合いしていただくのですよ」

 

「実験?お主たち、何を考えておる?」

 

「スポンサーの要望を叶えるため、と言うのが建前かな」

 

それを聞き、九重は歯を剥き出しにして激怒している。目にはうっすらと涙が溜まっていた。悔しいのだろう……母親をさらわれた上に、実験に利用されそうなのだから…。

 

――それに、俺の怒りもまた溜まっちゃったじゃないか♪

 

「スポンサー……。オーフィスのことか?それで突然こちらに顔を見せたのはどういうことだ?」

 

アザゼルが問い詰める。

 

「いえ、隠れる必要も無くなったもので実験の前にあいさつと共に少し手合わせをしておこうと思いましてね。俺もアザゼル総督と噂の赤龍帝殿と『黒き疾風の破壊者』にお会いしたかったのですよ」

 

アザゼルは手元に光の槍を出現させる。

 

「わかりやすくてけっこう。九尾の御大将を返してもらおうか。こちとら妖怪との協力提携を成功させたいんでね」

 

アザゼルが戦闘体勢をとった瞬間に、全員が戦闘体勢に入った。

 

俺は、光輝兄さんの事が気になり転移しようとして…

 

「転移魔法…リレミト!」

 

だが、魔法は発動しなかった……

 

「無駄ですよ。ゲオルクの創ったこの空間では、こちら以外の転移系のものはすべて使えませんからね」

 

……む?そうなのか?――なら…

 

「転移系の“魔法”じゃなければいいんだね?」

 

「それはどういu――」

 

ブゥゥン!

 

俺は曹操が何かを言い切る前に、目の前の空中にスキマを開いた。

 

「―――は?」

 

「んじゃ!ちょっと外を見てくるね?」

 

俺はスキマの中に入り…

 

「――ちょっとm……」

 

そのまま外に出たのだった。

 

―side out―

 

―アザゼル side―

 

俺達はいま、物凄く面倒な事に巻き込まれていた。

 

とうとう、今回の黒幕である『禍の団(カオス・ブリゲード)』の英雄派の連中が動きだし、俺達を結界内に閉じ込めたんだ。

 

そこで、英雄派を仕切る曹操と名乗る奴と対面していたんだがぁ…

 

「な…なんなんだあの子は………神滅具(ロンギヌス)である『絶霧(ディメイション・ロスト)』の結界をこうも簡単に脱出するなんて…あ、あり得ないぞ…」

 

そう、さっきまでいた結城 翼が空中に謎のスキマを開いたと思えばそこに入りそのまま消えたのだった。『外にちょっと行ってくるね~』なんて言っているかぎり、此方には直ぐに戻って来るのだろう。

 

ましてや、ツバサ――いや、結城家の人間には常識というのは通用しない…。何故なら、奴等は不可能はないと言われるほどの“非常識”ならぬ“異常識”をやってくるので、どうせここの結界も“この程度が結界なの?……はぁ、バカじゃないの?”なんて思っているのだろう。

 

そんな事を思っていたら、またスキマが出てきて、そこからツバサが落ちてきた。

 

スタン…

 

「ただいまぁ~。外の様子を見てきたよ~」

 

どうやら本当にちょっと見てくるだけだったようだ。

 

「どうだったんだ?」

 

俺がツバサに聞くと……

 

「うん。なんか戦っていたよ?」

 

ツバサがそう言ったとたん、曹操が割り込んできた。

 

「そうだろう。こちらも、向こう側にも我ら英雄派の戦闘兵を送り込んでいるのでね。いまごろは――」

 

「いや、なんか全滅してたよ?あの“雑魚兵”ども」

 

曹操が言い切る前に、ツバサはとんでもないことを言い切った。

 

「―――は?……な、なんだと!?そんなバカな!奴等は俺たち程ではなくても、英雄派の中では禁手化(バランス・ブレイク)をしているエリート達だぞ!そんな奴等が送り込んでから十分もたってないのに――」

 

「だって、そもそもあんな程度の奴に俺の部下が殺られるわけないじゃん。ましてや、今回俺と一緒に来ていた奴は、俺の部隊の中でも最強の部隊と呼ばれている『伝説の7人衆』と呼ばれている内のひとり。二つ名は『砂の覇王』なんて呼ばれているね~。ちなみにだけど、その人は見た目は人だけどね?――とある古龍種の龍と人との間に生まれた半人半龍なのですよ。

だからね?それを含めて全ての実力が違うあなた方程度に殺られるほど…、甘くはないのですよ?

――――――英雄様?♪」

 

―――と、ツバサは挑発するように曹操に言った。

 

本当に、人をわざと怒らせて、冷静な判断をさせないのが上手いんだよな…こいつは…

 

―side out―

 

―ツバサ side―

 

俺は、さっき曹操を怒らせるような事をしてみたが、曹操は少し眉を上げるが何時もの冷静な顔になった。

 

――むぅ~、この人以外と冷静な人なんだね~。あまり効果はないようだ。……でもまぁ~、内心ではかなりイラついているようだし?――成功なのかな?

 

――すると、曹操の横に少年が並ぶ。曹操がその少年に話しかけた。

 

「レオナルド、悪魔用のアンチモンスターを頼む」

 

それだけを頼むと、少年表情もなく、コクリと小さくうなずいた。――途端。少年の足下に影が現れて広がる。

 

影はさらに広がり、渡月橋を包むほどになる。すると、その影が盛り上がり、形を成していく――。

 

腕や、足や、頭が形成されていき、目玉生まれ、口が大きく避けた。その異形は百を優に超している。

 

「ギュ」

 

「ギャッ!」

 

「ゴガッ!」

 

耳障りな声と共に、そいつらは影から現れた。

 

全身は黒くてぶっとく、二本足で立っている。肉厚な上に、爪は鋭く、牙はむき出しで、大きさはざっと三メートル越えがザラリといる。

 

アザゼルがつぶやいた。

 

「魔獣創造(アナイアレイション・メイカー)か!?」

 

曹操がアザゼルの言葉に笑んだ。

 

「ご名答。そう、その子が持つ神器(セイクリッドギア)は『神滅具(セイクリッドギア)』のひとつ。俺が持つ『黄昏の聖槍(トゥルーロンギヌス)』とは別の意味で危険視されし、最悪の神器(セイクリッドギア)だ」

 

イッセーがちんぷんかんぷんのようで、見かねたアザゼルが説明を始めた。

 

「あの男児が持っている神器(セイクリッドギア)はおまえのと同じ『神滅具(ロンギヌス)』だ。神滅具(ロンギヌス)は現時点で確認されているもので十三……いや、もしかしたら増えるかもしれない――。それと、グリゴリにも神滅具(ロンギヌス)の協力者がいるが……。その神滅具(ロンギヌス)の中でもあの神器(セイクリッドギア)の性質――能力が赤龍帝の籠手や白龍皇の光翼よりも凶悪なんだよ」

 

「お、俺のよりも強いんスか?」

 

「直接的な威力ならおまえとヴァーリの神器(セイクリッドギア)のほうが遥かに上だ。ただ、能力がな……。祐斗の『魔剣創造(ソード・バース)』、あれはいかなる魔剣も創り出せる能力だった。それはわかるな?」

 

「は、はい」

 

「『魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)』がそれと同様だ。いかなる魔獣も創りだすことができる。自分の意志でこの世に生みだすことができる。自分の想像力で好きな怪物を創りだせるとしたら、最悪極まりないだろう?そういう能力だ。使い手しだいじゃ、一気にそんなバケモノを数十、数百の規模で創りだせるんだよ。『絶霧(ディメイション・ロスト)』と並ぶ、神器(セイクリッドギア)。システムのバグが生んだ最悪の結果とも言われている。『絶霧(ディメイション・ロスト)』も能力者しだいでは危険極まりない。霧を国家規模に発生させて、国民すべてを別次元――次元の狭間辺りに送り込めば一瞬で国ひとつ滅ぼすことなんてことも可能だろうからな」

 

「どっちも世界的にヤバい神器(セイクリッド・ギア)じゃないですか!」

 

イッセーの言葉にアザゼルが苦笑した。

 

「まぁ、いまのところ、どちらもそこまでの事件は前例がない。何度か危ない時代はあったけどな。しかし、『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』、『絶霧(ディメイション・ロスト)』、『魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)』。……神滅具の上位クラス四つのうち、三つも保有か。それらの所有者は本来、生まれた瞬間に俺のところか、天界か、悪魔サイドが監視態勢に入るんだが……。二十年弱、俺たちが気づかずにいたってのか……。」

 

アザゼルが忌々しそうに曹操達の方を見ていて、固まった。

 

―――何故なら…

 

「へぇ~、これが『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』ですかぁ~。……確かに随分と聖なる力をもっていますよね~」

 

俺が曹操の手元に握っていた神滅具(ロンギヌス)を持って触っていたからだ。

 

「……ん?―――ッ!?返せ!」

 

曹操がこっちに手を伸ばしてきたので…

 

「はい。どうぞ?あ、あと見せてくれてありがとうございました、曹操さん♪」

 

俺が曹操に頭を下げながら丁寧に返すと…

 

「あ、いやいや、それはどうも…………って、なにしてんだ!」

 

曹操は釣られて頭を下げながら、俺から丁寧にロンギヌスを持つが、意識が戻ってきてロンギヌスをこっちに横凪ぎに振ってきた。

 

「よっと~……むぅ~、いきなり危ないじゃないですか~。あんまりカッカしていると、ストレスで剥げちゃいますよ?」

 

俺がそう言うと、曹操からブチッと音がしたが、曹操は咳をゴホンと吐いて肩にまた、トントンと聖槍で叩いていた。

 

「なぁ~んだ。怒らないのか~。折角わざと珍しく俺が挑発してたのになぁ~。……つまらないよまったく~」

 

シュン…

 

俺は、静かにそして一瞬でアザゼル達の所に戻った。

 

「……何か、現世に限って因果関係があるのか? もともとの神滅具(ロンギヌス)自体が神器(セイクリッドギア)システムのバグ、エラーの類と言われているからな……。ここにきてそれらの因果律が所持者を含めて独自のうねりを見せて、俺たちの予想の外側に行ったとかか? それはカンベン願いたいところだが……、イッセーの成長を見ていると、現世の神滅具(ロンギヌス)全体に変調が起き始めていると感じてしまっても不思議はないな……。バグ、エラーの変化、いや、進化か? どちらにしろ、神器(セイクリッドギア)研究や神器(セイクリッドギア)システムを司っているわりに俺も含め、お互い甘いよな、ミカエル、サーゼクス」

 

アザゼルが自問自答を始めていた。……この人の自問自答は一度でも始まると長いからなぁ~…。

 

「先生、その凶悪神器(セイクリッドギア)の弱点は?」

 

すると、イッセーがアザゼルに質問してきた。

 

そのおかげで、アザゼルが自分の世界から帰ってきた。

 

「本体狙いだ。――まぁ、本人自体が強い場合もあるが………そこのツバサを含めた結城家の兄弟姉妹とその部隊の連中がまさにいい例だな。――それでも、神器(セイクリッドギア)の凶悪さほどじゃないだろう。それに『魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)』は現所持者がまだ成長段階であろうってのも大きい。やれるならとっくに各勢力の拠点に怪獣クラスを送り込めているはずだからな。――倒すなら成熟していない今だ」

 

アザゼルがそう言いきった。

 

確かに、アザゼルの言う通り、いまの所持者はまだ子供。だから、いろんな意味で成熟していないからいまのうちに芽を取っておくのがいいことだろう。

 

――でも、そう簡単にいかないのが、世の中なんだよね~。

 

すると、曹操が作り出したモンスターに近づきながら喋りだした。

 

「あららら。なんとなく『魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)』を把握された感があるな。その通りですよ、堕天使の総督殿。この子には過去の所持者ように、まだそこまでの生産力と想像力がない。――ただ、ひとつの方面には大変優れていましてね相手の弱点をつく魔物――アンチモンスターを生み出す力に特化しているんだな、これが。いま出したモンスターは対悪魔用のアンチモンスターだ」

 

曹操が手を――フィールドに存在する店の一つに向けた。

 

ビィィィィィィィィッ!

 

一条の光線が放たれた刹那――。

 

ドオオオォォォォォンッ!!

 

店が吹き飛び、強烈な爆発を起こした。

 

「光の攻撃ね~――これは対悪魔様のモンスターかな?」

 

俺がそう言うと、アザゼルは何かに気づいたように総督を睨み付けた。

 

「曹操、貴様!各陣営の主要機関に刺客を送ってきたのは、俺たちのアンチモンスターを創りだすデータをそろえるためか!」

 

爆風の中、アザゼルが怒鳴り散らしながら叫んだ。

 

「半分正解かな。送り込んだ神器(セイクリッド・ギア)所有者と共に黒い兵隊もいただろう?あれはこの子が創った魔物だ。あれを通じて各陣営、天使、堕天使、悪魔、ドラゴン、各神話の神々の攻撃をあえて受け続けた。雑魚一掃のために強力な攻撃も食らったが、おかげでこの子の神器(セイクリッドギア)にとって有益な情報を得られた。」

 

「――あの黒い怪人でデータを収集していたのか!」

 

なるほどね…。だから、毎回五,六人はあの変な黒い怪人がいたのね。

 

「禁手(バランス・ブレイカー)使いを増やしつつ、アンチモンスターの構築もおこなった。おかげで悪魔、天使、ドラゴンなど、メジャーな存在のアンチモンスターは創れるようになった。――悪魔のアンチモンスターが最大で放てる光は中級天使の光力に匹敵する」

 

なるほどね~…。神器(セイクリッドギア)所持者の禁手(バランス・ブレイカー)使いを増やすのと同時にアンチモンスターを創りだすためのデータを収集していたんだね。

 

……それにしても、まさかそこまでのアンチモンスターを創りだしていたんだ。でも――。

 

憎々しげに睨むアザゼルだが、一転して笑みを作り出した。

 

「だが、曹操。神殺しの魔物だけは創りだせていないようだな?」

 

「…………」

 

アザゼルの一言に曹操は反論はしなかった。

 

「どうしてわかるんですか?」

 

イッセーが訊くとアザゼルはにやけながら答える。

 

「やれるならとっくにやってる。こうやって俺たちに差し向けてくるぐらいはな。各陣営に同時攻撃ができた連中がそれを試さないわけがない。それに各神話の神が殺されたら、この世界に影響が出てもおかしくないものな。――まだ、神殺しの魔物は生み出せていない。これがわかっただけでも収穫はデカい。

 ましてや、もしも俺らと同じ戦力を潰すなら、真っ先に潰す所がある。それは―――」

 

すると、アザゼルが俺の方を見てきて指をさした。

 

「ツバサが所属する部隊――“人間代表”でもある。“地球連邦軍”だ。

 この部隊は文字通り世界最強の軍隊だ。コイツらだけで最早一つの国として数えられているんだからよ。何処にも所属せず、何処にも味方せず、常に中立をもって世界平和のためだけに動いているまさに“世界の警察”だな。

 現に、コイツらの誰かが一度でも戦場で姿が見えると、何年も何十年も内戦をしていた国同士が一瞬で和平を結ぶほど危険視されている……と、光輝から聞いたことがあったからな。

 だからこそ、人間界でもっとも戦力を持っている“地球連邦軍”を真っ先に潰すことをまず俺はするな。」

 

そんなアザゼルの言葉に曹操は黙っていた。

 

「……確かに、最初はそう思った。だからこそ、俺は真っ先に地球連邦軍を潰すために先行部隊と“対人間”様のアンチモンスターを――500も送り込んださ。……でも、帰ってきた通達は……“全滅”だった。精鋭の神器所持者とアンチモンスターを合わせて500もの部隊が、たった一夜で全滅だ。――しかも、地球連邦軍には全くダメージがない状態でな…。

 だから、俺はまず神器所持者の禁手(バランスブレイカー)の使いを増やすのと同時にアンチモンスターの強化の為にデータを収集することを始めたんだよ。それに―――」

 

すると曹操は聖槍の切っ先をこちらに向けた。

 

「神はこの槍で屠るさ。さ、戦闘だ。――始めよう」

 

それが開戦の言葉となった――。

 

『ゴガァァァァァッ!!』

 

一斉に襲ってくるアンチモンスター達。それをイッセー達が向かいたった。

 

「曹操、おまえは俺がやらしてもらおうか!」

 

アザゼルが龍玉――ファーブニルの宝玉を取り出して、素早く人工神器(セイクリッドギア)の黄金の鎧を身にまとって、十二枚の黒い翼を展開すると、高速で曹操に向かっていく。

 

「これは光栄の極み!聖書に記されし、かの堕天使総督が俺と戦ってくれるとは!」

 

曹操は桂川の岸に降り立つと、不気味な笑みで槍を構え――槍の先端が開き、光り輝く金色のオーラが刃を形作る。

 

「さぁ~てと……俺も魔物狩りへといっちょ暴れますかねぇ~」

 

俺は右手に“妖刀・『村雨』”を持って魔物の中へと駆け寄った。




どうでしたか?今回は久しぶりの活躍?なのですよ。

さてさて、始まりました戦闘シーン。今回はツバサちゃんは、ちょっとはっちゃけちゃいました。

ツバサ「うん。だって、最近はお兄ちゃんがお仕事で暴れすぎたせいでイライラしてたのに、この修学旅行で思いっきり楽しんで、このイライラを発散しようとしたら、また面倒事に巻き込まれて、あいつらバカのせいでまたイライラが溜まっちゃったんだもん。
―――溜まったものは確りと吐き出さないとね~」

あ、そうだったんだ…。

さて、今回もチートなツバサちゃん。あの『絶霧(ディメイション・ロスト)』ですら、『なんだ…この程度の結界ですか…』なんて程度で終わらしました。流石ですね~。

ツバサ「ふふ、まぁ~ねぇ~。あんな程度の結界ごときに俺が捕まるわけないもの。俺を結界で捕まえられる人なんて、ナツル姉さんと霊夢と紫さんの三人だけだもん。……まぁ、この3人は本当に結界や封印系の事には強くて、最早チートだよねあれ…。本気で抜け出せたことが一度もないんだもの…。あんなの無理だよ、絶対無理!」

そ…そんなになんだ…あの3人の結界って…。

「そうだよ?霊夢は博麗の巫女としての才能が恐ろしくピカ一で結界系は最強の一言だし、紫さんはそんな霊夢を育てた張本人だし、ナツル姉さんは魔法関係は俺たち結城家の中でも一番強いもの。だから、結界封印系の魔法はナツル姉さんの十八番でもあるしね。
 そんな3人に扱かれた俺は、嫌でも結界・封印系が上手くなるよ…」

なるほどね~。だから、結界・封印系は強いんだね。

ツバサ「うん。それに、修行相手には、光輝兄さんやレイジ兄さんの様に“結界?なにそれおいしいの?”って言うみたいに簡単に破壊したり切り裂いたりしてくる馬鹿げた常識外れの人がいたからね。そんな人たちに対抗するために強化と新たに創るのを繰り返していたら、光輝兄さんやレイジ兄さんの能力等による攻撃耐えられる、文字通り“最強”の結界が出来ちゃったってわけなの。――強度と耐久力なら誰にも負けないよ?」

――うわぁ~……ナニソレコワイ…。そんなの無理じゃん。あの二人の攻撃(能力付き)を防ぐとか…突破できないじゃんか…。

ツバサ「……まぁ~、そうだね。その事に関しては、感謝してるけどね~」

そうなんだ。……さて、次回は戦闘の続きです。このツバサちゃんがどんな活躍を見せるのか!それとも見せないのか!乞うご期待です!

ツバサ「ちゃんと、書いてよね。……じゃないとオシオキダヨ?」

――サー、イエッサー!!

ツバサ「……まぁ、もう時間だしここで終わろっか?」

そ、そうだね…ゴホン。それでは、皆様。また次回でお会いしましょう!

ツバサ&作者「「バイバ~イ♪」」

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