巻かなかった俺の話   作:fftghy

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深夜のテンションで書いて、見直したのは少しだけ、なので変な部分があるかもです


第24話

「んっ・・・・・・暗い」

 

水銀燈は目が覚めると、自分が最後に記憶した場所と異なっているのに気が付く。寝心地の良さから、とっさに鞄の中だと気が付いた

 

そこから徐々に今までの記憶が思い起こされる

 

未来の世界に来たこと、紫陽花と呼ばれる未知の人形を真紅と戦ったこと。不覚にもくん君に嵌まってしまったこと、最後に残っている記憶では、突然目の前が真っ暗になったことだ

 

最後の記憶の前後の記憶がはっきりしない。簡単に言うと思い出せないのだ。記憶がないと言うのは、人形たるローゼンメイデンにとってあってはならないことだ。人間の様に脳に負担があっても人形では耐えられるし、衝撃を受けても傷を負わないのがローゼンメイデンだ

 

簡単に記憶は消えない。つまり簡単ではない方法で記憶が消されたのだ

 

鞄を開け外にの様子をうかがう。どうやら真紅や未来のジュンたちの姿はないようだ

 

念のため人工精霊のメイメイに命令し水銀燈では見れない周囲の様子を見てもらう

 

―ピカピカピカ

 

「そう・・・・・」

 

どうやら本当に誰も居ないようだ

 

「はぁ・・・・」

 

誰もいないせいか気を抜いて溜息をつく。ここ2日くらいは未来のジュンに振り回されっぱなしだった。まさか本能的に逆らえない人間が存在するなんて、想像もつかなかった

 

身体が金縛りにあったかのような、自分の中のもう一人の自分が未来のジュンに従っているような、不思議な感覚だった

 

またあの感覚を味わいたいような、あのまま縛られ続けて欲しいという自分の一瞬の感情を『はっ』と我に返って、忘れようとする水銀燈はお腹が減っていることに気が付いた

 

無意識のうちに最後の記憶に残っているの未来のジュンが作ったご飯が食べたいと思ってしまう

 

「はぁ・・・・」

 

「どうかしたのかしらぁ?」

 

「っ・・・・・・・・・・・・金糸雀っ」

 

いつのまにか部屋の窓からこちらを上目遣いで覗いていた金糸雀が水銀燈に話しかけてきた

 

いつからそこにいたのか

 

窓から不思議そうにこちらを上目遣いで見ている金糸雀を見ていると、何かを忘れてしまったことがあるような気がするのはなぜだろうか。なにか大切なことを忘れたような、忘れたらまずいことになるという謎の思考が水銀燈に働くが、忘れたのならそれ程重要ではないと感じ、今は気にしないことにした

 

「私の前にのこのこ現れるなんて、金糸雀は本当におバカさんなんだからぁ!」

 

水銀燈の黒い羽が金糸雀めがけて飛び掛かる

 

恥ずかしい所を見られた恥ずかしさからか、それとも元々出会い頭に攻撃するのがあいさつだと思っているのか、水銀燈は金糸雀に攻撃する。若干頬が赤くなっているのは寝起きだからだろう

 

しかし、金糸雀はよける素振りも防ぐ素振りも見せない

 

水銀燈が内心不振がっていると水銀燈の攻撃は何かに阻まれていることに気が付いた

 

それはガラスだった

 

普通のガラスでないのは水銀燈の攻撃で証明されている。ガラスなんて簡単に壊せるはずなのに壊せなかった

 

水銀燈は若干落ち込んだ

 

それを表に出さないように再度攻撃を試みるもまた塞がれた

 

それを見ていた金糸雀は水銀燈を嘲笑っているように水銀燈には見えた

 

一瞬怒りが沸くが、水銀燈ははっとした

 

いつものイツワリの笑みではない

 

真紅達の前で演じていた偽りの笑みではなく、双子人形が作られる以前の、水銀燈でさえ戦うのに躊躇する『金糸雀』の本来の笑み

 

つまり今、水銀燈の目の前にいるのは正真正銘の『金糸雀』なのだ

 

ただそれだけで目の前にいる金糸雀があの頃に戻っているのか判断が付かない水銀燈は、とりあえず聞いてみることにしたかったが、なぜかいつもの意地っ張りが発動し、わざわざ鎌をかけるような言い方になってしまう

 

「っっ・・・・・・・・・久しぶりね『金糸雀』」

 

水銀燈は緊張し、身体が若干震えるのを騙して金糸雀に声をかける。暗に隠さなくてもいいのかしら?という意味も含ませて

 

「久しぶりと言うのは違うのかしらぁ」

 

「ふん。・・・・貴方が真紅たちの前で本当の顔を見せたことがあるのかしら?少なくとも、双子が作られた時には、貴方は仮面を被ってたじゃない」

 

「カナはいつもカナなのかしら、どんな仮面でもそれはその人のもう一つの側面なのかしら。ふふ、水銀燈。貴方、隠せてないのかしら?」

 

金糸雀はそう言ってガラス越しにも関わらず、ガラスをすり抜けあっという間に水銀燈の目の前まで来ていた

 

一応どんなことが起きても対処できるようにしていた水銀燈は訳が分からない顔になる

 

「あなた、そんな奇抜なことできたの?」

 

なんとか声を絞り出すも、昔一度だけ争ったことがある水銀燈は、また当時の再現をされると思うとぞっとする。それを何とか押し殺し、声をだす水銀燈だが、金糸雀は気づいているのか、無視しているのか部屋の中を見て回っていた

 

「ここが、未来のジュンの部屋なのかしら」

 

なぜ金糸雀がここを知っているのか知らないが、彼女はどうやら未来のジュンを訪ねて来たらしい

 

ある程度、金糸雀のプレッシャーに慣れた水銀燈は、彼女が自分に意識を割いていない事が分かると少し余裕が出きてきた

 

「残念ながら私は知らないわ。自分でもなんでこうなってるのか分からないのだもの」

 

水銀燈は自分の現状をかなり端折って金糸雀に話しかける

 

それを気にかけた様子は金糸雀には見られない

 

「水銀燈は、彼について考えたことはあるのかしら?」

 

金糸雀は本棚を物色しながら水銀燈に話かける。こっちから話しかけても無反応だったなのに・・・・とか水銀燈は考える

 

「貴方たちがこっちのせかいに来る時、私もこっそりこっちに来たのかしら。勿論雪華綺晶の事もあったんだけど、カナにはどうしても知りたいことがあったのかしら」

 

「・・・・・・それは何かしら?」

 

「ジュンの正体」

 

「??」

 

「カナはジュンに逢った時から不思議な感覚を覚えたのかしら。まるで懐かしい雰囲気を感じたのかしら。カナはジュンにお父様に近い何かを感じたのかしら」

 

水銀燈は鞄の中でこの話を聞く気に慣れず、鞄から這い出てキャスタの付いた椅子に座る。ちゃんと椅子の上を払いハンカチを乗せるところを見ると、中身は真紅に近いようだ。どちらかと言うと、真紅が水銀燈を真似たともいえる

 

「でも、そんなことを感じるのはほんの一瞬だけ。でも感じることが出来る。お父様がマエストロでジュンがマエストロに到達できるとか関係ないと思うのかしら。元の根が似てるからかもしれない。カナはそう思ったのかしら」

 

「だからいい機会だし、雪華綺晶もこっちにいるから超えてきたのね?」

 

「かしらかしら」

 

「でも、貴方が探している未来のジュンは雪華綺晶と一緒よ?どうするつもり?」

 

「あ・・・・・・・・・考えてなかったのかしら・・・」

 

「はぁ・・・」

 

さっきまであんなに警戒していた自分がバカみたいではないかと、思い始める水銀燈だった

 

だが、金糸雀の話を聞いて水銀燈はひとつ気になる点があった

 

こっちのジュンはとっくにマエストロを卒業していると言っていたのを覚えている。どれくらいむかしに卒業したか、本当にマエストロに至ったのか知らないが、彼は短時間に2体もの人形を作って見せた

 

その腕は確かなようだが、どこでそれ程の技術を身に着けたのか、数年では足りない数十年なんて軽く超えてくる時間が必要なはずだ

 

実際、ローゼンは自身が錬金術者と言う事もあって自身の寿命を延ばしたりして水銀燈を作ったのだ

 

それを見た目二十歳に見える未来のジュンが至ったというのは信じがたい

 

彼の謎はさらに深まるばかりだった

 




少し書き方を変えてみました(今回だけかも)

一か月ぶりの更新w



今更ですが、随分前に遊戯王の小説書くとか言ったけど、書いた途端にルール改定したので搔き上げるか検討中。スッゴイ前だな。

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