鬼畜な独裁者の物語   作:おは

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遭遇

バルビエールが人類帝国を建国してから10年後

 

もともととトロピコ島に住んでいた住んでいた住人にとっては、やけに子供が生まれやすくなったことを除けば。トロピコ共和国が人類帝国に変わろうが別段変わりのない日々に過ぎなかった。しかし移転してからトロピコ共和国に加わった原住民達にとってはすべてが劇的に変わった激動の十年であった。

 

人類帝国首都バルビエールシティ 科学アカデミー

 

「博士、私に見せたいものとは何だね」

 

バルビエールはシェナイターに呼び出され科学アカデミーの実験室までやってきた。そこは半分に切った脳、目、輪切りにされた胴体などホルマリン漬けにされたシェナイターの実験サンプルが所狭しと並べられていた。

 

「総統...皇帝陛下、ついに魔法を抑制することができる装置を開発することに成功したぞ。これでお前の野望の大きな助けとなるだろうよ」

 

「ついに完成したか、それでもう一つのほうの実験はどうなっているんだ」

 

「魔力を肉体に付与するところまでは成功した。問題はより強力な魔力を与えようとすると、とたんに情緒不安定になって数日で廃人なるのだよ」

 

「博士分かった、近いうちに大量のサンプルを手に入る。それがお前の手助けになればいいな」

 

2時間後

 

バルビエールシティ 皇帝宮殿

 

「シェナイター博士から魔法を抑える装置の開発が成功したとの知らせが入った。そこで私はここにエルフどもの殲滅をする事を決めた。まず手始めに装置の量産を待っているあいだエルフどもの国を越えた場所にある人間国々

ハルケギニアと本格的に交流することからはじめよう。空軍大臣例の物の準備はできているか」

 

バルビエールは二万個もの宝石をちりばめた帝冠を頭に載せて担当者達に話し掛けた

 

「もちろんです陛下、ビバ・バルビエール号はいつでも出撃できます」

 

青い服に勲章をつけた空軍大臣は右胸を叩いてバルビエールの質問に答えた。

 

 

一週間後

 

ハルケギニア上空 トリステイン・ゲルマニア連合艦隊 戦列艦レドウタブール

 

スティックスとマニコルヌは当直の交換のさいに談笑をかわしていた。そこにアルビオンから立ち込める白い雲を割って一隻の灰色の巨大な三角形の物体が悠々と艦隊を見下ろしていた。

 

「スティック先輩、僕は寝ぼけているですかね。目の前に変な三角形が浮かんでいますけど」

 

マニコルヌは目を何度も何度もこすりながらスティックにたずねた。

 

「マニコルヌ君、僕にもアレが見える」

 

その質問にスティックは目を見開いて真っ青になった顔でこれが本当の出来事であることを伝えた。

 

 

 

トリステイン・ゲルマニア連合艦隊 旗艦ヴュセンタール号

 

「何だねアレは...アルビオンがあんなものを持っているなぞ聞いておらんぞ」

 

総司令官のド・ポワチエは狼狽していた。いや彼も含めてそう司令室にいるすべてのものが、いきなり現れた三角形の物体のせいで精神錯乱状態に陥っていた。しかしそれも無理はないアルビオン艦隊最大の戦列間であったレキシントン号の優に五倍はあろうなぞの物体が艦隊のすぐ目の前に浮かんでいるのだから。

 

「ポワチエ卿、まだアレがアルビオンの船とは決まってはおりませんぞ」

 

総指令室内ではまだ冷静さが残っていたハルデンベルグがド・ポワチエの冷静を取り戻そうと言ったとき

 

「アルビオン艦隊より通信!内容は『あの船はそちらの艦隊か?』とのことです」

 

総司令室の扉を開けて伝令が急いで駆けつけるとアルビオン艦隊からの通信を伝えた

 

「...伝令、アルビオン艦隊に伝えろ一時休戦だとな!」

 

 

ド・ポワチエからの通信を聞いたアルビオン艦隊の総司令官は直ちにそれを了承。こうして本来ならば会戦に入るはずだった。アルビオン艦隊とトリステイン・ゲルマニア連合艦隊は共同してなぞの物体に対処することを決めた。

 

人類帝国空軍 空中攻撃空母ビバ・バルビエール号

 

あぁ...ちくしょうなんで陸軍大将にもなって、なんで小間使いみたいな扱いを受ける羽目になるんだ。あそこにいるやつらもこんなよく分からない目にあって大変だろうなぁ同情するよ。ただもう少し欲を言うならばこんなところに艦隊を浮かべないで欲しかったな。そうすれば娘の卒業式の生の映像が見れたのに

 

「閣下、彼らに語りかけてください」

 

空軍士官がアラノに語りかけてきた。

 

 

トリステイン・ゲルマニア連合艦隊 旗艦ヴュセンタール号

 

「サイト、アレ一体何なの?あんななもの聞いたことがない」

 

そういってルイズは才人の胸に抱きついていた。いつものルイズだったらそんなこと頼まれてもしなかったろうが

いきなり現れた巨大な物体のせいで現れた不安が、日ごろのしがらみからルイズを解放していつも自分を救ってくれた。気になる少年に甘えることができるようになった。

 

「地球で見たSFの見た戦艦みたいな船だなぁでもルイズ。俺はどんなことがあっても守る」

 

才人は自分の思い人が自分に甘えている嬉しさと目の前にある脅威の結果。才能に恵まれていなかった詩的な言葉が口から出た。

 

その言葉を聴いたルイズは高鳴る鼓動が命じるままに静かに目を閉じて才人のキスを待っていると、雰囲気をぶち壊す声が部屋の中に入ってきた。

 

 

『...私の名前はアラノ・シルベストレ人類帝国の陸軍大将だ。なぜここまでやってきたかという陛下は、君たちハルケギニア諸国と交流するためだ』

 

放送が終わったとき、ルイズの胸の中にあったのは安心感とそれより大きな雰囲気を壊した放送に対するげんなりとした気分だった。そして放送が終わってキスの続きをしようとする空気の読めない才人に

 

「アンタ遅いのよ!」

 

といって鉄拳制裁を下した。

 

 

神聖アルビオン共和国首都ロンディニウム ハヴィランド宮殿

 

「ミス!ミス・シェフィード!どうすればいいのですか!どうすればいいのですか!」

 

神聖皇帝オリヴァー・クロムウェルは自分の秘書官であるシェフィードの足に子供のように抱きついて泣いていた。その様子はアルビオン王家を断絶させ、自分の帝国を築き上げた男の威厳などまったく無かった。野心家にあるまじき姿だがそれは仕方のないことだ。なぜならクロムウェルが皇帝に即位できたのはガリア王ジョセフの暇つぶしと即位させられたのだから。

 

「司祭殿、少しは自分の頭で考えたらどう」

 

シェフィードは不甲斐無いクロムウェルの頭を踏みながら言った。

 

トリステイン王国首都トリスタニア王宮殿

 

「陛下、ド・ポワチエ将軍から緊急連絡です。内容は『わが軍、人類帝国攻撃空母ビバ・バルビールにより士気崩壊、現在同様の状態のアルビオン艦隊と一時休戦状態にあり』とのことです」

 

マザリーニ枢機卿は内心では信じられない思いを抱きながらも、自分が仕える年若き女王のために内心の動揺を隠してド・ポワチエ空の報告を伝えた。

 

「枢機卿、あなたも冗談を言うことができるのですね」

 

黒衣に身を包んだアンリエッタは恋人を失った悲しみで頬を濡らしてマザリーニのほうを向いていった。

 

「いえ、陛下これは冗談ではありません」

 

マザリーニは冗談であれば本当に良かったのにと思いながら、年若き女王の言葉を直した。

 

ゲルマニア帝国首都ウィンドボエナ

 

「人類帝国だとなんだこのふざけた名前はこの名前をつけた奴はとんだばか者だな」

 

ゲルマニア皇帝アルブレヒト3世はゲルマニア側の総司令官ハルデンベルグからの報告書を読みながら、おかしな名前をつけた人物をバカにしていた。

 

「陛下、問題はそのバカな名前をした国が恐るべき戦力を持っていることです」

 

彼の隣に立つ宰相が腰を引くしてて苦々しげな顔で言った。

 

「人類帝国の統治者が何の目的で動いているのかまったく分からんそれを知る時間。時間が必要だ!」

 

そう言うとアルブレヒト3世は玉座の肘掛をおもっきり叩いた

 

ロマリア皇国ロマリア大聖堂

 

「ジュリオ報告ありがとう。遂にバルビエールが動き始めたみたいだね。方針は前に君に話したとおりバルビエールとはエルフと戦うまでは協力する。そのあとはやつを殺すことだよ」

 

教皇エイジス32世ヴィットーリオ・セレヴァレは最も信頼できる手駒ジュリオと魔道具を使った遠距離通信で報告を受けていた。ロマリアは3年前に場違いな工芸品の発掘のときに人類帝国と接触交流を続け、子供のメイジと武器の交換を三度行なった。人類帝国からわたされた武器はロマリアの地価墓地に格納され、いざというときの戦力として大事に保管してある。そして人類帝国にわたったメイジはシェナイターの手によって実験され。貴重なデータとともにホルマルン漬けされて保管されている。

 

ガリア王国首都リュティスヴェルサルテイル宮殿

 

「ビダシャールこれがお前が言っていた世界の破壊者バルビエールの軍勢か、あの戦艦が一隻でハルケギニアの全軍は灰燼に帰すだろうな」

 

ガリア王国国王ジョセフは右手にワインを握りながらこの異常な事態にもかかわらず上機嫌だった。

 

「ジョセフ、奴はお前が思っている以上に危険で狂った男なんだぞ、評議会全体が保障している」

 

ビダシャールはそんなジョセフに忠告を言うと

 

「分かっている。お前がそこまで言う男ならさぞ張り合いがあるのだろうな」

 

シャルルよ、もしかした俺はお前に変わる存在を見つけられたかもしれない、エルフに狂っていると言われて自分のことを神と呼ばせている男なら思う存分楽しめるだろう、だからせいぜい失望させるなよバルビエール


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