夜の帳が下りて薄暗くなった海岸で、この世界の住人と初めての交流が行われようとしていた
その名誉を得る人物はさっきまで、リザードマンの死体に大興奮していた。白衣を着た老人だった。
「少佐、あの連中があの老人をどうするかをここで見物しようじゃないか」
アラノは装甲車の車体の上に座りながら部下の兵士に話し掛けた
「将軍、まずいですよ。もし彼が死んだら大変なことになりますよ」
「なぁに、あんな男木こり以下の価値しかないんだから。死んだって痛くも痒くもないぞ」
「知らないんですか将軍、あの人はトロピコで最も偉大な科学者、シェナイター・フォン・ベッカーですよ!」
それを聞いたアラノは顔が青くなりながら
「嘘だろう」
と聞き返した。
シェナイター・フォン・ベッカー 生物学兼原子力物理学の科学者。また元ナチス党員で親衛隊大佐
人道に対する罪で追われているところを、その才能を見込んだバルビエールが匿った
彼がトロピコに対してやったことは。核開発、宇宙開発、そして延命技術の三つである。
彼のおかげで、バルビエールは100歳になっても大統領として政務が出来るのである。
それほどの重要人物がもし原住民に殺されたらアラノだけではなく、彼の家族全員が処刑されるだろう
「少佐、今すぐ彼の保護をするんだ!」
とアラノは叫ぶと兵士たちを連れて原住民のところへ向かった。
当のシェナイターは三人の現状民の体見ると目を輝かせ
「ああ、少し体を確かめさせてもらってもいいかね?」
と困惑する原住民に聞いていた。
「わしらの質問に答えてくれたら、確かめてもいいが」
「それで、質問とは何なのだね。答えられる限りで答えるが?」
「おぬしたちは神の息子の軍隊かね?もし。紙の子の軍隊なら、神の子に合わせてほしい」
「神の息子だと。そんなやつがいたらすぐに解剖して・・・いや、いるぞ。わが国の総統・・・いや、大統領が神の息子と名乗っている」
それを聞いた老婆と二人の男はお互いに抱き合うと
「神に感謝を!」
と叫んだ。
ちょうどのその時。アラノたちがシェナイターのいる場所に到着した。顔が青くなっているアラノを見るとシェナイターは
「将軍どうしたのかね?まるで私の実験の前の被験者たちのような顔をしているが」
と。冗談なのか脅しなのか分からないことをおどけた声で言った。
「そ、それよりも。どうです。お体のほうは何もありませんでしたか」
アラノはさっきまでの威勢から、見ているほうが恥ずかしいほどに謙っていった。
「将軍、何を謙っているのだね。そんなことより彼らが我々の同胞なのか、抹殺すべき
異種族なのかを一緒に調べようではないか」
とシェナイターは笑いながら言った。
トロピコ島 大統領官邸
バルビエールはトロピコ島の夜景を眺めながら、自分が成し遂げた偉業の数々を思い出しながら
ラム酒を飲んでいた。
するとペヌルティーモが、そんなバルビエールの時間を壊すようにドアをあけると大声で叫んだ。
「大統領、シェナイター博士からの通信によりますと、我々の同胞が見つかったようです」
「本当か!それで彼らは何を言っているんだ?」
「なんでも、神の子に合わせてほしいとか」
「ほほう、やはり。神は私に使命を与えたのだな。ペヌルティーモ、我々の新しい同胞を迎いに行くぞ」
と言うとバルビエールは執務室から出た。
「何、大統領閣下がこの海岸にやってくるだと」
それを聞いたアラノは、装甲車に取り付けられた軍用電話叩きつけると、海岸にいる原住民を含めたすべての人間を集めると、バルビエールの訪問の準備をさせた。
あたりが完全に暗くなって、きれいな星空が海岸を覆い始めた頃
イカ釣り漁船のような明かりをつけた一艘のヨットが海岸にいる全員の目を痛めつけながらゆっくりと海岸に近づいていった。
ヨットが海岸に着くと、悪名高い大統領親衛隊の4人がしわくちゃの黒人の男と狐のような男を敬礼で迎えた。敬礼されている二人の男がバルビエールとペルヌティーモだ。
「将軍、君のためにバルビエールダイアモンド勲章を持ってきたぞ。これからもトロピコのために働いてくれ」
バルビエールが言うと将軍の背中を叩くと今度は兵士たちに向かって話し始めた
「兵士諸君、よく戦ってくれた。君たちは祖国の誇りだ。すでに特別手当を出しておいた休暇の時に家族と楽しんで来い」
それを聞いた兵下が歓喜の声をあげるとバルビエールは、リザードマンの死体いじりを再開しているシェナイターに
「博士、おみごとだな。君の勇気ある行動で私は新しい同胞を見つけられた。感謝する」
と言いながら、バルビエールはリザードマンの血で汚れたシェナイターと握手をすると。未知の
光景に戸惑っている。原住民たちに話しかけた。
「よく来た。トロピコの新しい同胞よ。私がトロピコの終身大統領にして、トロピコ陸軍大元帥ならびに、人民の守護者にして、神の息子である。バルビエーリ・アルマスだ」
と原住民たちに、自分の大層な肩書きを語った。
それを聞いた老婆はバルビエールの顔を見つめながら
「バルビエール様、わしらの部族オレを含めた。たくさんの部族は長年リザードマンたちに襲われ。奴隷にされてきました。そしてつい最近、あいつらは大挙してやってきて、わしらを襲うとわしらの部族の人間をたくさんさらっていきました。その中には私の孫も・・・」
と言うと老婆は泣き出してしまった。
「いやーつらかったろうな。よしよし。お前が言いたいことはこういうことだな。我々に奴隷達を解放することとトカゲどもを駆除することの二つだな。君達にも協力してもらうが必ずやりとげてみせよう」
と老婆を抱きながら。笑顔で原住民に語りかけていた。