劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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個々でもやりますが、せっかく集まってるんだからやっちゃいます


IF美少女ルート沖縄編 その1

 達也たちが思いがけず沖縄滞在を延長したお陰で、雫とほのかは我慢していた分思いっきり達也に甘える事にした。

 

「達也さん、こっちで一緒に遊びましょうよ」

 

「ここにいる人たちは達也さんの事情を知ってるから、水着になっても大丈夫だよ」

 

「達也様の肉体を有象無象に曝すのは避けたいですが、一緒に泳げるならそれで構いません」

 

「何で深雪まで達也さんを誘う側にいるの?」

 

「私だって、せっかくのチャンスを不意にしたくないのよ」

 

 

 一緒に生活している深雪ですら、達也の裸体――というか肉体は滅多に見る事が出来ないのだ。だから雫やほのかがいる事が気に入らないなりにも、深雪はこの状況を楽しもうと決めていたのだ。

 

「達也さま、せっかくの機会ですから、ごゆっくりなされては如何でしょうか? 周辺の警戒は、私がしておきますので」

 

「いや、水波もせっかくだから一緒に泳いだらどうだ」

 

「そうよ。水波ちゃんも一緒に泳ぎましょう」

 

「……かしこまりました」

 

 

 達也と深雪に誘われてしまったら、水波に断るという選択肢は無くなってしまう。水波は一旦プールサイドから引っ込み、水着に着替えて再び現れた。

 

「後は達也さんだけだね」

 

「達也さん、一緒に泳ぎましょうよ」

 

 

 雫とほのかの誘いに、達也も覚悟を決め羽織っていたパーカーを脱ぎ捨てプールに入る。

 

「こうして達也さんと泳ぐのは、一年生の時の夏休み以来ですね」

 

「あの時は、ほのかの水着のトップがめくれて大変な事に――」

 

「雫! 余計な事言わないで!」

 

 

 意識しないようにしていたほのかだったのだが、雫の所為であの時の事を思い出してしまい、思いっきり顔を赤らめてしまったのだった。

 

「達也さん、あの時どこまで見ました?」

 

「ほのか、貴女何を聞くつもりなのかしら?」

 

 

 ほのかの自爆攻撃は、深雪の横槍によって未遂で終わった。

 

「とりあえず、達也さんもゆっくりしてね。ここは警備システムも最新のものを使ってるし、もう敵はいないんでしょ?」

 

「とりあえずは撃退したが、まだ油断出来る状況ではないのは確かだ」

 

「大丈夫ですよ、達也様。敵はすべて国防軍の方が捉えたんですし、達也様が敵意を見逃すはずがありませんから」

 

「達也さん、気配とかそう言うのに敏感ですものね」

 

 

 互いに牽制しながらも、達也の周りに集まる三人を、水波は少し離れた位置で眺めていた。

 

「そういえば、水波は泳げるの?」

 

「一応は問題なく泳げますが、何故そのような事を?」

 

「あんまり運動が得意そうには見えなかったから」

 

「確かに、水波ちゃんは運動より家事だものね」

 

「でも、深雪だって家事の方が得意そうだけど?」

 

「まぁ、私も運動よりは家事の方が好きだけど、そんなに鈍そうに見えるかしら?」

 

「そんなこと言ってないよ!」

 

 

 深雪が冗談めかしてほのかを睨むと、ほのかは冗談だと受け取らなかったようで、大慌てで両手を左右に振った。

 

「ほのか、深雪は冗談で言ってる」

 

「へっ? ……びっくりした」

 

「ゴメンなさい。でも、そんなに慌てられると、もしかして本当に私の事を鈍いとか思ってるのかもって思っちゃうわよ?」

 

「だから、思ってないって。深雪より、よっぽど私の方が鈍いもの」

 

「ほのかだってそれほど鈍いってわけじゃないでしょ?」

 

 

 楽しそうに話す三人から距離を取り、達也は水波に話しかける。

 

「お前も混ざってきたらどうだ?」

 

「私はこの場所で十分です。私よりも達也さまがお側にいられた方が深雪様や光井様、北山様はお喜びになられると思いますが」

 

「表面上は喜んでるようだが、隙あらば抱きつこうという考えが渦巻いてるからな。俺がいない方がゆっくり出来るとは思うが」

 

「達也さん、何話してるの?」

 

「いや、大したことではない。それより、どうかしたか?」

 

「ううん、何も。ただ、こうして一緒にいるんだから、もうちょっと遊びたいなって」

 

 

 無表情に見える雫だが、よく見れば少し照れているのが達也には分かった。

 

「そうだな。結局任務とかで雫たちとはあまり遊べなかったから、もう少し遊ぶか」

 

「それじゃあ、ビーチボールがあるから、達也さん対私たち四人ね」

 

「四人とは、私も含まれているのでしょうか?」

 

「当然。水波だけ仲間外れにするつもりは私にもほのかにも無い」

 

 

 三人は婚約者で、自分はあくまでも従者だと線引きしていた水波だが、雫たちにはそんな線引きは存在しなかった。少し動揺している水波の手を引っ張って、雫はほのかと深雪の側に移動した。

 

「本当なら達也さんと誰かもう一人がペアになるはずだったんだけどね」

 

「それだとアンフェアだという事になって、私たち四人で達也様と戦う事になったの」

 

「達也さまと戦うと言われましても、そこまで本気でやるのですか?」

 

「お遊びだけど、四人なら達也さんに勝てるかもって事になったの」

 

 

 いくら数で攻めてからといって、達也に勝てるとは水波には思えなかった。もちろん、明確なルールは無いし、勝ち負けの概念など人それぞれ違うだろうが、それでも達也に勝つ未来が水波には見えなかったのだ。

 

「隙あらば抱きつこう、なんて考えは起こさないようにね?」

 

「分かってる。深雪こそ、抜け駆けは許さない」

 

「二人とも、今はチームなんだから、もう少し仲良くしようよ」

 

 

 ほのかの言葉に、水波も頷いて同意する。発言権が無いと思い込んでいる水波が言えなかった事をほのかが行ってくれたので、水波はほのかに目礼をしたのだった。

 

「とりあえず、打倒達也さん」

 

「楽しむのが目的でしょ」

 

「楽しみつつ、達也様に勝てるように頑張りましょう」

 

 

 深雪までもが達也に勝つつもりだと分かり、水波はこっそりとため息を吐いたのだった。




水波が居辛そうですけどね

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