劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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今年中に南海騒擾編には入れそうにないですね……


IF女子高生ルート その3

 行く当てもなくなってしまったので、ほのかの家に遊びに行くことにしたエリカは、妙にほのかがそわそわしているのに気づいた。

 

「どうかしたの?」

 

「洗濯物しまってなくて……達也さんに見られちゃう」

 

「達也君なら気にしないと思うけど、ほのかが気になるなら外で待っててもらえばいいじゃん」

 

「何なら、私も一緒に待ってる」

 

「別に締め出しをする必要は無いけど、ちょっと恥ずかしい」

 

「別に着けてるところを見られるわけじゃないんだし、ほのかは気にし過ぎじゃない? それとも、大きいとそういうのも気になるものなの?」

 

 

 エリカの配慮も何もない質問に、ほのかは顔を真っ赤に染め上げ、巻き込み事故で美月までもが顔を赤くした。

 

「何の話だ」

 

「ほのかが、洗濯物しまう間だけ達也君に部屋に入ってほしくないんだって」

 

「分かった。なら俺は外で待っていよう」

 

「すみません! すぐに片づけますから!」

 

 

 脱兎のごとくこの場から逃げ出し、ほのかは急ぎ洗濯物をしまう為に部屋に駆け込んだ。あまりの混乱っぷりに、雫たちは呆気に取られてしまった。

 

「エリカ、ほのかをからかって遊ぶのは感心しない」

 

「そんなつもりじゃないって。でも、あそこまであからさまに反応するって事は、下着も出しっぱなしだったみたいね」

 

「ほのかのは可愛いのが多いから気にしなくてもいいのに」

 

「雫は見たことあるんだ」

 

「当然。大きかった……」

 

「き、気にする事ないですよ」

 

 

 美月が精一杯フォローするが、雫は美月の胸に視線を向け、盛大にため息を吐いた。

 

「大きい人に私の気持ちは分からない」

 

「ふぇ!?」

 

「あたしたちの周りじゃ、雫より小さいのってスバルとかエイミィ?」

 

「小さくない。周りが大きいだけで、私は普通。小さいっていうのはエイミィの胸みたいなことを言う」

 

「何気に酷くない、それ?」

 

「エリカや深雪も大きいから分からないだろうけど、普通なのに小さいって言われる屈辱は半端じゃないんだから」

 

「なんかゴメン……」

 

 

 瞳から生気が窺えなくなった雫に、エリカは素直に頭を下げた。それと同時に、達也の脚が視界に入り今の話を聞かれていたと漸く気づく。

 

「達也君、今の聞いてた?」

 

「この距離で聞こえないと答えられるほど、俺は耳が遠くないんだが」

 

「達也さんは私の胸、どう思う?」

 

 

 なんとも答えにくい質問だと、聞いていたエリカと美月は思ったが、一般の男子高校生とは違い、何事にも動じない心を持つ達也は、思ったことを素直に告げる。

 

「雫も知ってるとは思うが、俺は別に大きかろうが平均だろうが気にしない。むしろ何故女子はそこまで気にするのかが分からないのだが」

 

「周りに大きい子がいるとどうしても気になるのは仕方ないんだよ……むしろ普通の男子の方があからさまに大きさを気にしてる気がするけど」

 

「残念ながら普通の男子とはあまり交流が無くてな。レオはそういったことに無関心だし、幹比古は……な?」

 

 

 一瞬だけ美月に視線を向け、すぐに雫へ視線を戻す達也。それだけで達也が何を言いたかったのかを理解した雫とエリカは、大きく頷いたのだった。

 

「とにかく、そんなに気にする必要は無いと思うぞ」

 

「そうだね。そのうち達也君に揉まれて大きくなるだろうし」

 

「エリカちゃん……前も言ったけどちょっと下品だよ」

 

「えっ? 何がよ」

 

 

 将輝が一高に来た日、エリカは「深雪のお尻を追いかける」的な発言をしたのだが、どうやら本人は覚えていないようだ。

 

「お、お待たせしました」

 

「ほのか、私たちまで締め出さなくても」

 

「ゴメン、忘れてた」

 

「それでほのか、可愛い下着は何処にしまったの?」

 

「え、エリカ!?」

 

 

 ほのかの気持ちなどお構いなしに尋ねるエリカに、達也が非難の目を向ける。達也に怒られてると自覚し、エリカは小さく舌を出して頭を下げた。

 

「冗談だから、そんなに気にしないで」

 

「気にするから! まったく、エリカってば!」

 

「だからゴメンってば! とにかく、部屋に入ってもいいんでしょ?」

 

「漁っちゃ駄目だからね!」

 

「分かってるってば! てか、そんなことしないわよ」

 

 

 イマイチ信用されていないということを実感し、エリカは少し己を省みる事にしたのだった。

 

「いまお茶を淹れますから」

 

「あっ、手伝いますよ」

 

「大丈夫だよ、美月。ここは私の家だから、美月はゆっくりしてて」

 

「ですが……いえ、ではお言葉に甘えて」

 

 

 自分が何もしないでいるのが申し訳なかった美月だったが、これ以上はほのかの気遣いを無駄にしてしまうと理解し大人しく引き下がった。何せ今日は二回も具合を悪くして心配をかけたのだから、ここは大人しく休ませてもらった方が良いのだろうと思えたのだ。

 

「そう言えば、私まで達也さんに奢ってもらってしまいましたね」

 

「気にするな。美月の分だけ払わないなんてケチな事はするつもりは無かったし」

 

「そうそう、ミキならともかく達也君はお金持ちだからね。遠慮なく奢ってもらっちゃいなさい」

 

「エリカちゃんは少し遠慮した方が良いんじゃない?」

 

「何時も奢ってもらってるわけじゃないし、そもそも達也君と一緒に出掛ける事自体久しぶりだったんだから。まぁ今日は偶然会っただけだけどね」

 

 

 高校生のスケジュールではない達也と一緒に出掛けるのは難しいと、他の婚約者たちも理解しているし、抜け駆けをすれば集中砲火を受けると理解しているので、なかなか独り占めという事は難しいのだ。

 

「達也君、もう少し何とかならないの?」

 

「努力はするが、難しいと思うぞ」

 

「まぁ、期待しないで待ってるわ」

 

 

 素っ気ない返事ではあるが、自分たちの為に努力してくれるという事はかなり嬉しい事だと、エリカと雫は表情を変えずに喜んでいたのだった。




気にする人は気になるんでしょうね……

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