劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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彼女たちには刺激的だったかもしれませんね……


IF三高女子ルート その2

 達也が帰ってくるまでに、荷解きなどを済ませた愛梨たちは、今日の夕飯の支度は誰がするかを話し合う事にした。

 

「順番でする、と言う事だけ決めておりましたが、誰がやるかは決めてませんでしたわね」

 

「初日はかなり重要。達也さんの印象を決める基準になると思う」

 

「そうなるとやはり今日やったほうが有利なのかもしれんが、そんな気力が残っておらん」

 

「食材の買い出しもしてませんし、今から買いに行くと言っても、私たちはこの街に土地勘がありませんからね」

 

 

 自信満々で達也を見送ったのはいいが、最初から問題山積みの同居生活に、四人はそろってため息を吐いたのだった。

 

「仕方ありませんわね。今日は端末で場所を調べて、明日から本格的に料理を作ると言う事で」

 

「それが一番現実的でしょうね。それじゃあ、誰が買い物に行く?」

 

「じゃんけんで負けた二人で良いじゃろ。一人で行って迷子になるのも馬鹿らしいからの」

 

「異論ありません」

 

 

 四人が頷きあい、公平なじゃんけんの結果、買い出しに行くのは沓子と香蓮の二人に決まった。

 

「それでは、お願いしますわね」

 

「私たちは台所の整理と、お茶の用意をしておくから」

 

「やれやれ、言い出しっぺが負けるというのは、現代においても変わらないのじゃな」

 

「こればっかりは運ですからね」

 

 

 買い出し担当になった沓子と香蓮は、愛梨と栞に見送られ部屋から外へです。

 

「して、ここから一番近い店は何処なんじゃ?」

 

「ちょっと待ってくださいね……出ました」

 

 

 香蓮が端末で店の場所を調べ、二人は徒歩で店まで向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何をどれくらい使うのか聞いていなかったので、二人は必要最低限と思われる量を購入し、そして後悔した。

 

「存外多いもんじゃの……」

 

「こんなだったら、家から少し持って来ればよかったですね」

 

 

 調味料なども購入したため、荷物は思いの外多くなり、二人で運ぶには少し厳しい量になっていた。

 

「さて、どうしたものかの……」

 

「増援を頼みますか?」

 

「しかし、二人と決めてじゃんけんしたのじゃし、どちらかを呼んでも来てくれるかどうかわからないぞ」

 

「困りましたね……」

 

 

 途方に暮れていた二人の前を、見覚えのある人影が通り過ぎた。

 

「達也殿か?」

 

「どうかしたのか」

 

 

 達也の方は完全に気づいていたので、呼び止められるまでもなく立ち止まっていた。

 

「丁度いいところに来てくれた。ちと買い過ぎての、運ぶのを手伝ってはくれないじゃろうか」

 

「それは別に構わないが……随分と買い込んだな」

 

「アレもこれも必要だってやっていたら、いつの間にかこんな量に……」

 

「宅配サービスを使えばよかったんじゃないか?」

 

「わしらの住みかの住所を失念しての。頼もうにも頼めなかったのじゃよ」

 

「……愛梨か栞に電話して、住所を聞けばよかっただろうに」

 

 

 達也のツッコミに、二人は恥ずかしげに視線を逸らした。まったくその事に気付かなかったことを恥ずかしがったのか、それとも別の事で恥ずかしがったのかは、達也には分からない。

 

「そ、それにしても達也殿。用事というのはもう済んだのか?」

 

「一応な。思ってたより早く終わったからよかったが、もし俺が通りかからなかったらどうするつもりだったんだ」

 

「最悪愛梨か栞に来てもらおうとは思っておったので大丈夫じゃ。まぁ、来てくれるかどうかは分からんがのぅ」

 

「とにかく、達也様が通りかかってくれて助かりました。それでは、部屋に帰りましょう」

 

 

 沓子と香蓮が一袋ずつで、達也は両手に袋を二つずつぶら下げて部屋までの道のりを歩いて帰ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 沓子と香蓮が達也と一緒に帰ってきたのを見て、愛梨と栞は何処となく敗北感を味わっていた。

 

「達也様とお買い物デート……」

 

「じゃから違うと言っておろうに……買い過ぎて途方に暮れておったところに、達也殿が通りかかってくれただけじゃと、何度言えば分かるのじゃ」

 

「それでも、スーパーから達也さんと一緒に帰ってきたのは事実。周りにはデートに見えてもおかしくない」

 

「私と沓子さんが一緒にいたんですから、事情を知らない人にはデートだなんて思えませんよ。知り合いの女子に手を貸した、くらいにしか思われてませんって」

 

 

 沓子と香蓮の説明にも、愛梨と栞は納得しようとしない。実際はただの荷物持ちだったのだが、二人にはそれでも達也と一緒に買い物をしたと言う事には変わらないのだった。

 

「じゃんけんで勝った事を喜んでましたが、勝った方が負けてたとは……」

 

「思わぬ落とし穴ですね……」

 

「二人は何を言ってるんだ?」

 

 

 膝をついて絶望に打ちひしがれている二人を見下ろし、達也が首を傾げる。

 

「達也殿、その恰好は」

 

「ああ、シャワーを浴びてたんだが」

 

 

 多少ラフな格好で、頭を拭きながらリビングに現れた達也に、四人は一斉に顔を逸らした。

 

「どうかしたか?」

 

「達也様でも、そんな恰好をするのですわね」

 

「もう出かけないし、部屋着なんてこんなものじゃないのか?」

 

「不意打ちは効きますね……」

 

「だから、何を言ってるんだ?」

 

 

 愛梨と栞だけでなく、沓子や香蓮までもが意味不明な事を言いだしたので、達也はますます首を傾げたのだった。

 

「とりあえず、俺は部屋にいるから、何かあったら呼んでくれ」

 

「分かりましたわ」

 

 

 愛梨の返事を受け、達也は首を傾げながらも部屋に戻り、四人は一旦落ち着いて停戦する事に決めたのだった。




見慣れている深雪は兎も角、達也の風呂上がりの姿は女子たちに多大なるダメージを負わせることでしょう

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