劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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漸く原作本編に入れました


試験結果

 一科生も二科生も、テスト終了の開放感は同じだろう。それはこのカフェテリアの賑わいを見ても明白だった。

 

「うっわー。やっぱ此処じゃ無理そうね」

 

「何時もの場所で良いだろ」

 

「そうね、アンタの意見ってのは気に入らないけど、あそこなら静かに過ごせそうだしね」

 

「何でオメェは一言多いんだろうな……」

 

 

 定期試験終了と勉強会の打ち上げを兼ねてお疲れ様会をしようとしてたのだが、生憎学園ではそれが出来そうでは無かったので、何時ものカフェで開催する事にした。

 

「それじゃあ達也君から一科生の皆に知らせてもらわなきゃね」

 

「そうだな。達也以外はちょっと気まずいだろうし、何より司波さんが居るしな」

 

「そうそう、深雪に伝えてもらえば確実だろうし、達也君を餌にすれば絶対に来るでしょうしね」

 

「ワリィ女だ」

 

 

 苦笑いを浮かべながらも内心レオもそう思ってるので何時ものように嫌味ったらしくは無い。

 

「それじゃあ早速達也君に伝えてもらいましょう!」

 

「騒がしいヤツ……って! 置いてくんじゃねぇよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所を移して無事にお疲れ様会を開く事に成功したエリカは、満足そうにケーキを頬張っている。

 

「それにしても、達也に教わった箇所が出た時はガッツポーズしそうになったぜ」

 

「確かに、教わってなかったら答えられなかっただろうしねー」

 

「エリカちゃん、口の中のものを飲み込んでから話そうよ」

 

 

 ニュアンスで何を言ったかは全員が分かっていたのだが、確かに美月が指摘したように行儀はよろしくは無い。

 

「ホント、達也さんのおかげで私も上位が狙えるかもです!」

 

「エイミィは理論が苦手なの?」

 

「三人と比べちゃうとねー。実技も理論もそんなに上位では無いと思うよ」

 

「でも、エイミィだって九校戦のメンバーに選ばれてる」

 

「……今からでも辞退出来ないかな」

 

 

 入試成績と授業で取ったデータなどを加味し、既に九校戦のメンバーの大体は決まっている。新人戦に参加するメンバーも大よそ決まっていて、此処に居る四人はメンバーに決まっているのだ。

 

「頑張ってね、応援には行くからさ!」

 

「そうですよ、私たちの分も頑張って下さいね」

 

「俺も応援に行くぜ! 達也は如何するんだ?」

 

「俺か? 野暮用が無ければ応援には行けると思うが、それでもまだ分からないな」

 

 

 深雪が出場するのだから絶対に応援に行くものだと全員が思いこんでいたので、達也のこの発言はかなり衝撃的だった。

 

「お兄様、今年も忙しいのですか?」

 

「如何だろう。今のところは特にスケジュールが埋まってる訳では無いんだが、何時緊急の用事が出来るかも分からないしな」

 

「達也君って去年の夏休みは何してたの?」

 

「去年……知り合いの道場で修業してCADの調整をしたり、後は深雪の家庭教師で大半は埋まってたな」

 

「……中学生の夏休みのスケジュールじゃネェな」

 

 

 レオのつぶやきに頷く他のメンバー。だが当人である達也と、その妹の深雪だけは首を傾げていた。この二人にとってそれが当たり前であり、他の可能性など考えようが無かったのだから。

 

「それじゃあ予定が無かったら一緒に応援に行きましょうよ!」

 

「良いなそれ! 俺一人じゃ相手に困るところだったぜ」

 

「レオ君はそんな事気にしてないような気もするけど」

 

 

 二科生メンバーは既に応援の事で頭が一杯のようだが、達也と一科生メンバーはそうは行かない。

 

「達也さんはエンジニアとして参加しないんですか?」

 

「ほのか、俺は二科生だからな。反感の出そうな人選はしないだろ」

 

「でも、達也さんなら実力で黙らせる事が出来そう」

 

「雫の言う通り! 達也さんなら一科生相手でも大丈夫でしょ!」

 

「雫、エイミィ……俺はこれ以上悪目立ちはしたく無いのだが……」

 

 

 達也の本心を知っている深雪は、自分のCADの調整を頼みたいのだがこれ以上迷惑を掛ける訳にも行かないと内心葛藤しているのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後、達也が指導室に呼ばれたと聞いて、深雪以外のメンバーが達也を迎えに指導室まで向かった。一科生と二科生が一緒に行動しているので元々目立っているのだが、それ以外の理由でもこのメンバーは目立っているのだ。

 エリカ、ほのかは深雪と並び誰もが美少女と認めるだろうし、雫やエイミィも十分美少女のラインだし、美月はその大人しい性格から先輩たちからの人気が高い。そしてレオも彫りの深い顔立ちと日本人離れした顔立ちでそれなりに人気があるのだ。このメンバーがゾロゾロと歩いていれば、やはり相当目立つのだ。

 それでもまだ、絶世の美少女と評される深雪と、色々と有名人な達也が居ない分騒がしくはなって無いのだが……

 

「失礼します」

 

 

 指導室から出てきた達也を見つけて、一斉に達也の許に駆け出す6人、それを気配で感じ達也は振り向きざまに呆れた声を出した。

 

「如何したんだ皆、そんな大勢で……」

 

「如何したはこっちのセリフだぜ達也。指導室に呼び出されるなんて何があったんだよ」

 

「実技試験の事で尋問を受けていた」

 

「尋問? 随分と穏やかじゃないわね」

 

「それで、如何して達也さんが尋問されなきゃいけなかったんです?」

 

「簡単に言えば、手を抜いたんじゃないかと疑われた」

 

 

 一高では試験成績優秀者を学内ネットで発表するのだが、総合成績は深雪、ほのか、雫が上位を占め、実技の成績でも深雪、雫、ほのかが上位を独占した。だが理論になるとちょっと様子が違ったのだ。

 一位はこのメンバーの予想通り達也だったのだが、その点数が驚きだった。全教科満点のぶっちぎりトップ、二位の深雪と平均点で10点以上の差をつけての一位だったのだ。

 

「理論には一科生と二科生の差が無いとは言え、トップ3に二科生が二人も入ってるのは教師陣も驚きだったようだな」

 

 

 深雪の下、三位には二科生で達也たちのクラスメイトの吉田幹比古と言う男子がランクインしている。ちなみにほのかが四位、雫が八位、美月が十二位でエリカが十七位、エイミィが二十位と勉強会に参加したメンバーでレオ以外が上位二十位に名を連ねているのだ。

 

「良かったわねーレオ、賭けしなくて」

 

「ウルセェ!」

 

 

 達也を心配してきてるのに、相変わらずの二人に、周りのメンバーは生暖かい視線で見守ってるのだった……




全員ちょっとずつ点数を上げました。森崎? そんなヤツ居たっけ……

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