劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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漸く原作に戻れた


前日の電話

 師族会議前日、達也は真夜から連絡を受けていた。内容はもちろん、師族会議の会場に同行するかどうかだ。

 

「せっかくのお誘いですが、学校がありますので」

 

『まぁそうよね。一緒に来たところで、会議の内容を聞けるわけでもないし、退屈なだけだものね』

 

 

 最初から答えが分かっていた質問だったので、真夜もつまらなそうに達也の答えに返事をした。

 

『十文字の次期当主なら、補佐役として同行するのも分かるけど、たっくんはあくまでも次期当主ってだけだもの。会議室に入ることは出来ないでしょうしね』

 

「テロリストが師族会議を狙う可能性がありますので、同行しても良いのですが、その場に現れるか定かではないですからね」

 

『何かあってもたっくんたちなら大丈夫だと思うけど、一応気を付けておいてちょうだいね。師族会議ではなく、魔法科高校を狙う可能性だってあるのだから』

 

「崑崙方院の生き残りが恨みを抱いているのは、四葉家だけでしょうが、日本の魔法師全体に恨みを抱いていてもおかしくは無いですからね。無差別に魔法師を狙う、という可能性も考えられますから、十分に注意はしておきます」

 

『それでこそたっくんね。そうそう、顧傑とかいう生き残りだけど、貢さんに探させたのだけど、何処にも見当たらないらしいのよね。もしかしたらまた、古式魔法師に匿われてるかもしれないわ』

 

 

 真夜の報告は、奇しくも先ほど、独立魔装大隊から知らされた通りの内容だった。四葉と独立魔装大隊とで結果が同じなら、これはもう確定と思って良いと達也は思っていた。

 

「日本にも、十師族を快く思ってない集団がいると言う事でしょう。もしくは、その顧傑が人心を操ることが出来る類の魔法を得意としているか、ですかね」

 

『まだたっくんが気にする段階ではないわよ。今はUSNA軍に好きに探させておけばいいのよ』

 

 

 そう言って真夜は、実に楽しそうに笑った。こんな表情を普段から見せていれば、もっと真夜に陶酔する人物が増えるだろうと思いつつ、そうなったらそうなったで面倒だなと達也は余計な事を考えていた。

 

『そう言えば、水波ちゃんの代わりはどうかしら?』

 

「ミカエラ・ホンゴウですか? 別に問題なく働いてくれてますが」

 

『深雪さんと水波ちゃんは? 彼女に家事をやらせることに納得はしているのかしら?』

 

「母上の計らいですので、納得するしない以前に、あの二人にその決定に異議を申し出る度胸はありませんよ」

 

 

 最初から分かっていただろう、と言外に告げると、真夜は先ほどとは別の笑みを浮かべ達也の問いかけに答えた。

 

『勝成さんにああいった手前、本家当主となるたっくんのお嫁さんに水波ちゃんを推薦する事は出来ないからね。早めにたっくんから離しておきたかったんだけど、深雪さんのガーディアンと言う事は、結局たっくんの側にいる事になるのよね……水波ちゃんの気持ちを知ってるから、出来る事なら叶えてあげたかったんだけど』

 

「そうですか。では母上、くれぐれも顧傑の動きにはお気をつけて」

 

『師族会議中に襲われても、他の皆さんが動いてくれますから大丈夫よ。それに、いざとなったらたっくんに捜索してもらうから、接触出来るのなら好都合よ』

 

 

 そう言って真夜は、先の二つとは別の笑みを浮かべ、そのまま通信を切ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 師族会議当日、第一高校二年A組では、深雪が登校してきた事でざわめきが起きた。

 

「おはよう……深雪、どうして学校に来たの?」

 

「あら、何時の間に私はいじめられていたのかしら? 学校に来ちゃいけなかった?」

 

「いや、そうじゃなくて……」

 

 

 話しかけてきたほのかに、深雪が冗談めかして返答すると、ほのかは気まずげに視線を逸らした。

 

「冗談よ。みんな、今日は私が来ないと思ってたのでしょう? 師族会議だから」

 

「でも、良かったの? 十師族の関係者が普通に学校に来て」

 

「師族会議と言っても、参加するのは現当主だけだもの。次期当主であるお兄様や、三高の一条くんも同行すらしてないわよ」

 

「そうなの?」

 

 

 会話に割って入ってきた雫に、深雪は微笑みを浮かべ頷く。

 

「十文字先輩は、お父様がご病気らしいから参加したことがあるかもしれないけど、七草先輩は参加した事はないはずよ」

 

「そうなんだ……意外と知らない事が多いね、十師族って」

 

「当然よ。当事者だって、知らない事があるんだから」

 

「そんなものなんだ」

 

 

 深雪たちの会話を遠巻きに聞いていたクラスメイト達も、納得したように頷いた。どうやら全員が今日は深雪が来ないものだと思っていたらしいと、その反応だけで深雪は理解したのだった。

 二年A組で行われた会話は、達也が在籍するE組でも行われていた。教室に達也が入ってきた途端、ざわめきのような声が上がったのを、達也は不審に思ったのだった。

 

「おはよう……達也くん、学校に来て良かったの?」

 

「何だいきなり……」

 

「ほら、今日は師族会議でしょ? 次期当主なら参加するのかなと思って」

 

「参加するのは現当主だけで、同行しても会議の内容が聞けるわけじゃないからな。暇を持て余すくらいなら授業に参加した方が有意義だと思わないか?」

 

「あたしは堂々とサボれるなら、そっちが良いけど……」

 

 

 達也の問いかけに視線を逸らしながらエリカが答えると、クラスメイトの千秋もエリカの答えに賛同した。

 

「確かに、私もサボれるならそっちが良いな」

 

「サボったところで、後で補習を受ける事になるんだ。結局は一緒だと思うが」

 

「相変わらず真面目だね、司波君は」

 

「ところで、師族会議って何を話し合うんだ?」

 

 

 エリカの背後から姿を見せたレオが、根本的な質問をしてきたので、達也はその事を説明し始める。彼の説明はレオだけではなく、他のクラスメイトも真剣に聞いていた。その姿を見た達也は、意外と知られていないものだなと心の中で呟いたのだった。




追いつくかもと思って脱線してましたが、とりあえずは流れが戻りました

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