劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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面倒だったので二人まとめて……


新・IFルート 平河姉妹編

 珍しく独立魔装大隊の訓練も無ければ、FLT開発第三課で新デバイスの開発会議も無い休日だったので、たまには深雪と出かけようと思っていた達也だったのだが、生憎と深雪は生徒会の仕事で登校しなければならなかった。

 

「申し訳ありません、お兄様」

 

「仕方ないさ。頑張っておいで」

 

 

 自分も手伝おうかと提案したのだが、深雪は達也に仕事を押し付ける事を善としなかった。深雪の気持ちとしては、達也の仕事を自分に押し付けられる方が納得出来るのだ。

 

「さて、如何過ごすか……」

 

 

 地下に潜ってCADの調整でもしようかと思ったが、生憎それは昨日の夜に済ませてしまっている。それに今日一日は研究も訓練もしないと決めてしまったので、今更それを撤回してまで予定を組むのは面倒だと感じてしまった。

 

「仕方ない、何処かテキトーにぶらつくか」

 

 

 ヘルメットを手に取り出かける事にした達也。もともと深雪と出かける予定だったのだから、一人で出かけても家にいるよりは暇をつぶせるだろうと考えたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 街をブラブラしていた平河姉妹は、見知った相手が正面にいる事に気がついた。

 

「お姉ちゃん、あれって司波君だよね?」

 

「そうみたいね。制服じゃないと随分大人びた雰囲気が増すのね」

 

 

 私服姿の達也に、一瞬誰だか気付けなかった二人だが、小春が代表を辞退するか如何かの時に一度達也の私服姿を見ていたのですぐに気がつけたのだった。

 

「こんにちは」

 

「ん? あぁ、小春さんに千秋か。二人でお出かけですか?」

 

 

 小春が声を掛けると、達也は視線を二人に向け立ち止った。別段する事が無かったので、二人との遭遇は達也にとっては絶好の暇つぶしとなるだろう。

 

「一人なの? 妹さんは?」

 

「深雪は生徒会の業務があるからと学校だ。それと千秋、俺と深雪だって別行動くらいするぞ」

 

 

 普段からワンセットと見られてる事に辟易としている達也は、千秋の発言に顔を顰める。だが千秋は気にした様子もなく言葉をつづけた。

 

「そっか。司波君がシスコンなんじゃなくて、妹さんがブラコンなんだね」

 

「……こら千秋。司波君と司波さんに失礼でしょ」

 

 

 注意が一拍遅れたのは、小春もそう思っていたからだろうか。達也は呆れた視線を千秋と小春に向け、千秋は気にしなかったが小春は盛大に焦り始めた。

 

「べ、別に私もそう思ってるとかじゃないからね!?」

 

「……そうですか。ところでお二人はここで何を?」

 

 

 墓穴を掘った事に気づいてない小春の為に、達也は無理矢理話題変更を試みた。その横では千秋が笑いを堪えているのだが、焦っていた小春はそれに気付けなかった。

 

「今日はね、お姉ちゃんとお買いものなんだ。そうだ! 司波君も付き合ってよ」

 

「俺が? ……まぁ構わないが」

 

「迷惑じゃないの? 司波君だって予定があるでしょ?」

 

「いえ、俺はただ暇つぶしで街に出ただけなので」

 

 

 実際その通りだったので、達也は隠す事無く予定が無い事を告げる。彼の返事に小春も千秋も妙に嬉しそうに見えたのはきっと錯覚だろう、と達也は自分の中で納得し二人に付き合う事にした。

 

「それにしても千秋、あの事件の後から妙に司波君と仲が良いじゃない」

 

「だって。お姉ちゃんを助けてくれたし、敵に騙されてた私まで救ってくれたんだもん」

 

「……確かにそうね。今こうして私が千秋とおしゃべりしたりお買いものしたり出来てるのは、全部司波君のおかげなんだもんね」

 

 

 内容がアレなだけに、二人の声は次第に小さくなっていく。それでも達也にはしっかりと聞こえているのだが。

 

「お姉ちゃんを助けてくれて、その上で勘違いで恨んでた私まで救ってくれてんだから。私は今まで司波君に向けていた敵意の分以上に感謝しなきゃいけないんだもん。出来るだけ司波君といて恩返ししなきゃね」

 

「別に無理する必要は無いぞ。千秋が反省してるならそれで俺は構わないからな」

 

 

 少し落ち込んでいた千秋の頭を、少し強引に撫でる。初めは驚いていた千秋だったが、次第に達也のテクニックで気持ち良くなってきたのか、目を細めうっとりしている。

 

「そういえば司波君。今更だけどありがとうございました」

 

「私からも、ありがとうございました。お姉ちゃんと私を助けてくれて」

 

 

 急に姉妹に頭を下げられて、達也は周りを見渡してしまった。事情を知らない人間がこの光景を見れば、美少女姉妹にいきなり頭を下げさせたインテリヤクザだと思われる可能性だって無いわけではないのだから。達也の見た目が普通の高校生でないから特にだ。

 

「気にしなくていいですよ。俺に出来る事をやっただけですから」

 

 

 言外にさっさと頭を上げてくれと言った達也の意図を理解した小春が、もう一度お礼を言ってから頭を上げた。姉に習うように千秋も頭を上げ、少し恥ずかしそうに笑ったのだった。

 

「さて、それじゃあお昼にでもしましょうか。お腹空いちゃったわよ」

 

「私も。司波君も一緒に行こ!」

 

 

 まるで兄にじゃれるかのように無邪気な千秋に、達也と小春は顔を見合わせて苦笑いを浮かべた。ついこの前までは、まるで親の仇でも見てるかのような視線を向けていたというのに、この変わり身の早さはある意味称賛に値するだろう。

 

「そういえば司波君って七草会長たちの誰かと付き合ってるの?」

 

「は? 別に誰とも付き合ってはいないぞ」

 

 

 いきなりの質問に困惑したが、達也は事実のみを簡潔に伝えた。

 

「それじゃあ一科生の誰かとは?」

 

「だから俺は誰とも付き合ってない」

 

「そっか……良かったね、お姉ちゃん」

 

 

 急に話題を振られ真っ赤になる小春。だが千秋はそんな姉にお構いなしで話を続ける。

 

「ねぇねぇ、じゃあお姉ちゃんと付き合ってよ! そうすれば私も自然と司波君の傍にいられるし!」

 

「千秋!」

 

 

 自分の想いを妹にバラされて、小春は出せる最大の声で千秋を怒鳴った。だが千秋はそれにも動じずに達也の顔を覗きこんでいる。

 

「……えっとね、司波君……私じゃ駄目かな?」

 

 

 妹に負けないくらいの上目遣いでそういった小春に、達也は負けを認めた。

 

「俺でよければ」

 

 

 深雪もそうだが、如何やら自分は妹の上目遣いに弱いようだ。そう達也は思い小春を抱き寄せ、千秋の頭を撫でるのだった。




妹ハーレムやー! はい、失礼しました……

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