劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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話題にするのは不特定多数


達也の話題

 達也が退院したことは、海の向こうでも話題になっているのだから、国内で知られていないわけがない。新居では達也が退院したことで真由美と鈴音が話をしていた。

 

「達也さんもようやく自由に動けるようですね」

 

「隠れてやらなきゃいけなかったことが終わったということでしょうね。まぁ、達也くんのことだからまだまだ面倒事に巻き込まれるんだろうけども」

 

「達也さんにとっては嫌なのでしょうが、面倒事の方が達也さんに近づいてくる運命なのでしょう」

 

 

 達也が聞けば顔を顰めそうな話題だが、真由美も鈴音も笑いながら話している。

 

「お姉ちゃん、達也先輩が退院したんだってね」

 

「あら香澄ちゃん、お帰りなさい」

 

「泉美がたまにはお姉ちゃんも実家に顔を出して欲しいって言ってた」

 

「光宣くん捜索のときは帰ったでしょう? それに、お父さんと顔を合わせると喧嘩になりそうだし……」

 

「お姉ちゃんとお父さんって、ここまで険悪だったっけ?」

 

「裏でいろいろとやってたって知っちゃったし、達也くんの邪魔をしようとしてたんだから、私がお父さんに嫌悪感を懐いても仕方がないでしょう?」

 

「でもさすがに、恒星炉プラント実験にはちょっかいは出さないと思うよ? あれは魔法師の未来を守る結果につながる研究だって、先生たちも言ってたくらいだし」

 

 

 達也の研究は同じ魔法師だけではなく、魔法師ではない人間からも注目されているくらいのものであり、それを邪魔しようとすれば集中砲火を浴びることは想像に難くない。ましてやそれが、達也と同じ魔法師、十師族の一員ともなれば火を見るよりも明らかである。

 

「でもねー……お父さん以外にも兄とも会いたくないし」

 

「真由美さん、ご家族とは上手くいっていると思っていたのですが、意外とそうでもなかったのですね」

 

「上手くいってたはずなんだけどね……ほら、達也くんと婚約して、四葉殿からウチとの確執の原因だったりを聞いちゃったから……」

 

「同じ十師族でもそれぞれ違いがあって当然なのに、お父さんは四葉家の秘密を探って上に立とうとして失敗、それがバレて責められてからは表面上は友好的だったって聞かされた時は、ボクも恥ずかしかったよ」

 

「まぁ、達也くんが気にしないのなら、七草家の娘である私たちも問題なく迎え入れてくれると仰ってくれて、本当に良かったわ」

 

 

 達也がそのようなことを気にするはずがないと真夜も分かっていたが、自分から七草家の娘を迎え入れたとなると、弘一が何か言ってくるかもしれないと考え、達也を間に挟んだのだ。

 

「兎に角、これで達也くんに会いに行ける可能性が出てきたわね。もちろん、邪魔にならないタイミングでだけど」

 

「そもそも真由美さんが行けば、確実に邪魔をするでしょうから止めておいた方が良いのでは?」

 

「どういう意味よ!?」

 

 

 鈴音の毒に、真由美は割かし本気で抗議したが、実妹の香澄ですら鈴音の意見に同意するくらいだから、真由美も自覚しているのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 真由美たちとは別の部屋、同時刻。ほのかと雫はエリカに部屋に招かれお茶を飲んでいた。本当なら共有スペースでお茶をしようとしていたのだが、真由美の姿が見えてエリカが場所を変更したのだ。

 

「別に一緒に話しても良かったんじゃない?」

 

「なんとなくよ。七草先輩は兎も角、市原先輩とはそれ程話したことがないし」

 

「そうだね。生徒会で付き合いがあったのは達也さんと深雪だけだし、九校戦の時もそれ程話さなかったしね」

 

「そもそもあたしは九校戦のメンバーじゃないしね」

 

 

 真由美とはそれなりに会話をしたことがあるが、鈴音とは数える程度しかない。なので一緒にいたら気まずさがどちらにも出てしまうかもしれないと考えて場所を変更したのかと、ほのかは感心したが、エリカの本音は単純に真由美と一緒にいたくなかっただけなのだ。

 

「そんなことより、達也くんが退院してホッとしたわ」

 

「偽装入院だけど、堂々と出てきたということは面倒事は片付いたのかな?」

 

「どうだろう……達也さんのことだからまだまだ忙しそうな気がする」

 

「ほんと、達也くんと一緒にいると退屈しなくて良いわ」

 

「エリカはそれでいいかもしれないけど、私たちは心配だよ……また達也さんが大怪我を負うかもしれないと思うと……」

 

「達也くんなら大丈夫だって。それにあの島には深雪がいるんだし、リーナだっているし。達也くん以外にも強い人はいるんだから、達也くんだけに集中して攻撃してくるわけじゃないと思うわよ。まぁ、攻撃されないのが一番なんだろうけども」

 

 

 エリカの中では、ほぼ確実に巳焼島は襲撃されると考えているようで、ほのかの顔がショックに染まる。彼女もこのまま大人しくしているとは考えていなかったようだが、達也が襲われるとまでは考えていなかったようだ。

 

「ほのか、私たちが行っても達也さんの邪魔になるだけだから、万が一敵が攻めてくるって分かってもヘリは出さないからね」

 

「わ、分かってるよ、それくらい……エリカなら兎も角、私じゃ達也さんのお手伝いはできないだろうってことくらい……」

 

「いやー、あたしでも難しいと思うわよ……達也くんと敵対しようとする相手だもの。並大抵の相手じゃないわよ」

 

 

 それこそ戦略級魔法師がでてくるんじゃないかとすら思っているエリカは、自分が加わっても戦力にならないと、冷静に分析したのだった。




分かっていても後で突っ込むくせに……

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