劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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一人に負担が多そうな組み合わせ


IFデートルート 真由美・香澄・鈴音編

 自分からくじで順番を決めようと言い出した手前、我が儘を言うわけにはいかないと頭では分かっているのだが、自分たちより先に他のグループがデートをしていくのを、真由美は面白く思っていなかった。

 

「お姉ちゃん、少し落ち着いたら?」

 

「あら香澄ちゃん。私が落ち着いていないって言うのかしら?」

 

「だってさっきから歯ぎしりに貧乏ゆすり、舌打ちなんかもしてるし」

 

「香澄さん、真由美さんのそれは普段からですから、あまり気にしない方がよろしいかと」

 

「そんなこと無いわよ! というか、リンちゃんだって面白くないでしょう?」

 

「私は真由美さん程子供っぽいことを言うつもりはありませんし、次回は私たちなのですからそこまで気にしておりません」

 

 

 あと一回我慢すれば自分たちだと分かっているのにもかかわらずイラついている真由美に対して、鈴音は極めて冷静な対応を繰り返す。それが真由美から冷静さを奪っていると分かっていてやっているので、鈴音も相当性格が悪いのかもしれない。

 

「そもそも真由美さんがくじで順番を決めると言い出したのですから、その結果を素直に受け止めるべきではないでしょうか? それとも、自分が納得いかないからもう一回くじをやると言えば良かったのではないですか? まぁ、そんなことを言ったところで相手にされなかったでしょうけども」

 

「分かってるわよ……というか、私を苛めて楽しんでない?」

 

「そんなことはありません。ですが、香澄さんを巻き込むのは可哀想だとは思いました」

 

「あの、ボクは大丈夫ですよ? お姉ちゃんが子供っぽいのは昔から知ってますし」

 

「そんなことないもん! というか、香澄ちゃんはお姉ちゃんの味方じゃないわけ?」

 

「いや、今のお姉ちゃんの味方をする人なんていないと思うよ……どう考えても鈴音さんが言ってる方が正しいし」

 

 

 普段猪突猛進気味な香澄ではあるが、双子の妹である泉美や、姉である真由美が暴走気味だと冷静に対応出来るので、今の真由美に味方することはなかった。

 

「というか、達也先輩だって忙しい合間を縫って時間を作ってくれてるんだから、贅沢言ってる場合じゃないと思うけど」

 

「それは……そうかもしれないけど」

 

「それに、ボクたちだってちゃんと相手にしてもらえるんだから、お姉ちゃんももう少し我慢した方が良いと思うよ」

 

「まさか香澄ちゃんに諭される日が来るとは……」

 

「それ、どういう意味さ!」

 

 

 真由美の嫌味にカチンと来た香澄は、冷静さを失い掛けたが、鈴音の冷ややかな視線を感じて瞬間湯沸かし器のような行動を堪える。

 

「兎に角、真由美さんも香澄さんも、あと一回の辛抱なのですから、今日くらいは大人しくしていてくださいね? お二人に巻き込まれる形で、私まで達也さんとの時間を奪われるのは避けたいので」

 

「「はい……」」

 

 

 鈴音に言われ、真由美と香澄は揃って肩を落としながら頷く。他のグループの邪魔をしたら今後デートの機会はないというルールが存在するので、真由美も香澄も鈴音に言われるまでもなく邪魔をするつもりは無かったのだが、暴走しかかっていたのは事実なので、素直に鈴音の注意を受け容れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 待ちに待ったデート当日。真由美は達也の部屋へ突撃しようとして鈴音に捕まり、大人しく時間まで過ごした。

 

「達也くん、遅いわよ」

 

「時間通りのはずですが」

 

「ゴメンなさい、達也先輩。お姉ちゃん、こういう時だけは待ち合わせ前に行動するから」

 

「普段から五分前行動よ!」

 

「いや、今日は一時間以上前から待ってたじゃん」

 

「それどころか、達也さんの部屋に突撃しようとさえしていましたね」

 

「それは達也くんには内緒だって言ったじゃない!」

 

 

 香澄や鈴音が言うまでもなく、達也は真由美が一時間以上前から待ち合わせ場所にいたことも、自分の部屋に突撃しようとしたことも知っている。だが達也が存在を探れることを失念しているようなので、そのことを口にすることはしなかった。

 

「兎に角出かけましょうよ。待ちくたびれちゃって」

 

「それはお姉ちゃんだけだって」

 

「香澄ちゃんだって随分と待ってたんだし、私だけってわけじゃないと思うけど?」

 

「ぼ、ボクはそれ程待ってないよ」

 

「そうだったかしら? 何時もみたいなボーイッシュな恰好じゃなくて、泉美ちゃんから年相応な女の子の服を借りてるみたいだし、楽しみにしてたんじゃないの~?」

 

「お二人とも、そこまででお願いします。これ以上姉妹喧嘩をするのなら、私一人で達也さんとデートに行かせてもらいますが」

 

「「それはさせない!」」

 

 

 しれっと抜け駆けしようとする鈴音に、七草姉妹は鋭い視線を向けると、鈴音は楽しそうな表情を浮かべていたことに気付いた。つまり、からかわれていたのだ。

 

「さて達也さん、お二人とも落ち着いたみたいですので、そろそろ出発しましょうか」

 

「そうですね。先輩が騒々しいのはある意味いつも通りですが、香澄まで加わるとは思いませんでした」

 

「それ、どういう意味かしら?」

 

「多分言葉通りだと思うよ、お姉ちゃん……」

 

 

 達也は真由美のことを子供っぽいとは思っていないのだが、今の遣り取りはそう思わざるを得ない。香澄は達也に子供っぽいと思われたことを恥ずかしく思い、デート中は大人しくしていたのだった。




仲が良いのか悪いのか……

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