劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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普通にやれば家が吹き飛ぶ……


実力者同士の戦い

 お喋りを終えて店を出た三人は、家に帰る為に個型電車で最寄り駅まで移動し、ゆっくりと辺りを見回しながら家に帰ってきた。

 

「ただいま戻りました」

 

「あら泉美ちゃん。お帰りなさい」

 

「泉美はこの家に住んでるわけじゃないから、お帰りって言って良いのか分からないけど、とにかくお帰り」

 

「何かあったのですか?」

 

 

 屋敷内が何やら騒がしい事に気が付いた泉美は、首を傾げながら真由美と香澄に問う。問われた二人は、少し興奮した様子で泉美に説明を開始した。

 

「実力者同士の魔法訓練が見たいって平河千秋先輩が言って、それだったら達也先輩とリーナさんが適任だろうってお姉ちゃんが言ったら、本当にその二人が戦う事になって。条件は僕たちと七宝が戦った時と同じで、再起不能になるような攻撃の禁止とノータッチルール」

 

「それで結果は?」

 

「達也くんの圧勝よ。リーナさんの攻撃は悉く達也くんに打ち消されて、後は達也くんお得意の無系統魔法による波の合成でリーナさんの意識を刈り取ってお仕舞。深雪さんは分かると思うけど、はんぞー君と同じ技よ」

 

「達也様でしたら、あの程度の魔法は簡単に出来ますからね。ましてやあの時以上に魔法力が高い達也様による波の合成では、さすがにリーナも立っていられませんでしたか」

 

「見学者も驚いていたもの……感受性の高い柴田さんは、リーナさんが倒れた想子の波を感じ取って少し具合が悪そうだったけど、もう回復してるみたいよ」

 

「ですが、あの技は相手を定めて放つ技ですので、美月が気分を悪くするとは思えないのですが」

 

「私たちは自分の想子をうまくコントロールして何ともないけど、柴田さんはそこまで想子のコントロールが上手くできないみたいね」

 

「そういう事でしたか」

 

 

 確かに美月は想子のコントロールが苦手で、自分の目にも悩まされるくらいだ。少し強い想子の波を受けたら、気絶するまではいかなくても想子酔いくらいしてしまうのも納得出来た。

 

「私たちも見学したかったわね」

 

「そうですね。達也さまが戦うお姿など、めったに拝見できるものではありませんし」

 

「あらそうなの? 私、結構見てきた気がするんだけど」

 

「それだけ先輩が事件を起こしてきたという事ではありませんか?」

 

「私が原因みたいに言わないでくれる!? そもそも達也くんが巻き込まれ体質だから、私まで巻き込まれてきたんだと思うけど」

 

「まるで達也様が事件を吸い寄せてると言っているように聞こえますが、達也様は基本的に面倒事を嫌いますので、好き好んで巻き込まれたり吸い寄せたりはしません」

 

「それは分かってるわよ。達也くんって、意外と面倒臭がりなんだって、何度思った事か」

 

 

 真由美も達也が率先して事件を起こしたり、首を突っ込んだりしているわけではないと理解しているので、深雪が本気で機嫌を損ねる前に話題を変えることにした。

 

「それにしても、リーナさんもかなりの実力者なのに、それを全く相手にしない達也くんの強さには驚かされたわね」

 

「司波先輩って、それほどまでに強かったんですか? 技術者のイメージが強すぎるので、私の中ではそれほど強いという印象は持っていなかったのですが……もちろん、格闘などがお強いのは聞いていましたし、最強の対抗魔法・術式解体が使えるという事も聞いたことがありましたが……」

 

「達也さまの強さは、私たちが束になってかかっても勝てないほど次元が違うものですから。泉美さんが見たこと無いのは、あまり表立って戦う事をしませんので」

 

「そういう事でしたか。そういわれて思い返せば、司波先輩が戦いになられている姿を拝見した事がないかもしれません」

 

「それだけ達也くんが戦わなければいけない時が、私たちだけでは手に負えない時って事よ。詩奈ちゃん誘拐未遂事件の際は、達也くんが動くほどの事じゃなかったって事よ」

 

「まぁ、千葉先輩たちが力を貸してくれましたし、司波先輩も知恵をお貸しくださいましたから何とか詩奈ちゃんを救出出来ましたが、司波先輩が動いていれば、もっと早く解決出来ていたのではありませんか?」

 

「達也くんが動いてたら、詩奈ちゃんを攫った人たち全員、この世から消え去ってたかもしれないわよ」

 

「どういう事ですか?」

 

 

 達也の真の魔法を知らない泉美は、真由美が大袈裟に表現したのだろうと思ったが、深雪や水波の顔が引きつってるのを見て、あまり言ってはいけない事なのだろうと理解し、それ以上深く聞くことは諦めた。

 

「とにかく、それだけ達也くんの強さは別次元って事よ。噂では戦略級魔法師ですら倒せるんじゃないかって言われてるくらいだし」

 

「それ、何処で言われているんですか?」

 

「ん? この間ウチのタヌキオヤジと兄が話してるのを、たまたま耳にしただけで、本当かどうかは分からないけど」

 

 

 達也が戦略級魔法師であることは、七草家の関係者である真由美には知らせていないので、まさか本当に戦略級魔法師を倒せるなどと思っていないのだろうなと、深雪は複雑な笑みを浮かべながらそんなことを思っていた。というか今さっき戦っていたリーナも戦略級魔法師なので、それを倒した達也の実力は、まさに戦略級なのだ。

 

「とにかく、さっきの戦いはかなり興奮するものだったわよ」

 

「私も見てみたかったです」

 

「また今度、機会があれば見られるんじゃないかしらね」

 

 

 その機会があればいいけどと、泉美は半ば諦めた気持ちで真由美の言葉に頷いたのだった。




見たい気もするが、巻き込まれそうで嫌だな……

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