暗麺麭男   作:ゆうれい

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#   epilogue

《死の宴(デスゲーム)》を終えて、

《ニンゲン》により奴隷として働かされたジャムおじさんのパン工場に戻ってきたアンパンマンとメロンパンナを《フード世界》の住人は涙を流しその生還を喜んでくれた。

生存者2名。死亡者8名(命を預けた者を含む)という最低な4日間。

皆、《ニンゲン》が作り出した巨大な鏡のモニターでその惨状のことは知っている。

しかし、アンパンマンを誰一人として攻めるものはいなかった。

いや、あの惨状を知っているからであろう。

あの現状の中で誰が攻められるというのだろうか。

誰だって自分の命が大事であるし、あの絶望の中で彼は戦った。

どれほどの激戦だったかは、彼の痛々しく失った右腕が物語っている。

ただ祈るだけだった自分達に彼を攻める資格などない。

虚ろな目でフラフラと無言を貫くアンパンマンに慰めの言葉をかけようにも、

何か喋ってしまうと余計に彼を傷つけそうで怖かったのだ。

 

生き残った住民達が、アンパンマンへどのように対応すればいいか悩んでいるとき、

外からサイレンの音が鳴り出す。

《ニンゲン》が何かあるときに呼び出す音。

元々は、ジャムおじさんのアンパンマン号のクラクションの音であるが、

それを《トム》によって、迷彩色の戦車に改造された音であった。

その音は、1ヶ月の奴隷を経験した《フード世界》の住人にとっては、

恐怖の権化であり、そして決して逆らえない隷従を告げるものでもある。

アンパンマンへの対応に緊張の面持ちだった住人に、恐怖の色が戻り、

皆、無言のまま、ゾロゾロとジャムおじさんのパン工場から外へ出る。

 

「ヒャハハハ!!!おし!皆集まったな!!!」

 

外の広場には《ニンゲン》が、どこから持ってきたのか分からない、

豪勢でありこの場には酷く場違いな椅子に座っている。

そして、その中央に座する、銀髪で双眼違う色を持つ《ヤマダ》が足を組みながら

その風に揺れる銀髪を靡かせて住人たちに喋りかける。

今日は、いつも身につけている黒い外套ではなく、黒のVネックのシャツに白蛇柄の革パンを履いていてラフなスタイルだ。

それが、今日の暖かな《フード世界》の気候に絶妙に調和が取れていて、

酷く、そう酷く美しかった。

 

「ヒャハハハ!先日の《死の宴(デスゲーム)》はご苦労だったな!皆楽しんでもらえて何よりだ。」

「さすが、《ヤマダ》の旦那が企画した遊びでヤンスね!」

「It`s so very very very exciting!!!」

 

《ニンゲン》が楽しげに語りあう様を住人はただ黙って聞く。

あれほどの地獄を見せつけられたのに。

いや、あれだけの地獄を見せつけれれたからであるか。

怒りは湧いてこない。

願うは、ただただ皆の安全と安寧。

そして《死の宴(デスゲーム)》の様な地獄を企画しないでくれという思いだけである。

しかし、この世界において《ニンゲン》は絶対者であり、

もし仮にもう1度《死の宴(デスゲーム)》を再開すると言われても、逆らうことはできないだろう。

 

「ヒャハハハ!おっと!すまんすまん!今、お前らを集めた理由はな・・・」

 

《ヤマダ》が住民たちの空気を読んでか、呼び出した本題に入る。

周りはシンと静まり、住民は一同に固唾を飲み、

緊張と不安を織り交ぜながら《ヤマダ》の口が開くのを待つ。

その様子を《ニンゲン》達は心の底から楽しむように勿体ぶる。

一分ほどたったであろうか。静寂の中に《ヤマダ》の声が広場に響いた。

 

「ヒャハハハ!いや、なにこのゲームを生き抜いた二人に褒美を与えようと思ってな!どうだ!俺って優しいだろう?」

「さすが《ヤマダ》の旦那!その慈愛は〝WTJ〟全土に響き渡ってやしたからね!」

 

その、《ニンゲン》達の言葉に住人はホッと息をついた。

何しろ、もう一度《死の宴(デスゲーム)》をしろと言われる可能性だってあった。

それが、《死の宴(デスゲーム)》で亡き者となったヒーロー達へ不敬と分かりつつも、

今回の呼び出しが、直接、命に関わることではないことに安堵する。

 

「ヒャハハハ!ほら、生き残った二人はさっさと前へでろ!何、俺様に叶えられない望みなんざ、あまりない!」

 

《ヤマダ》のその言葉に、メロンパンナ、アンパンマンは住民の中から、

一歩また一歩と《ニンゲン》達が座る玉座のもとへ歩みより片膝をつけ頭を垂れる。

一人は、屈辱に濡れた表情で。

そしてもう一人は何も写さない虚無の瞳で。

 

「ほらさっさと願いを言うでヤンス!せっかくの《ヤマダ》の旦那のご好意を無駄にするでヤンスか!?」

 

《タナカ》が痺れを切らし、空間から『悪食の巨斧(ジャイアント・クロタ)』を取り出し、その刃部分を二人に向ける。

不気味なほど黒光するその斧の刃はまるで、巨人が大口を開け齧り付く様な錯覚を覚えるほどだ。その巨大な重圧感に耐えながらも、メロンパンナが恐る恐る上目遣いで《ニンゲン》に向けて口を開いた。

 

「あ・・・あの・・・、本当に何でもいいのでしょうか・・?」

「ヒャハハハ!ああ!何せ生存率が限りなく低いゲームからの帰還者だ!それなりの褒美をあたえなくてはな!」

「さすが!《ヤマダ》の旦那は太っ腹でヤンスね!」

「なら・・・・私たち住人を開放してはくれないでしょうか・・・!?」

 

メロンパンナがそう発した瞬間、《タナカ》と《トム》から物凄い殺気が飛んできた。

それは、先ほどまでの重圧が可愛く思えるくらいである。

パン工場、周りの樹木が揺れ、その木に止まっていた鳥たちが一斉に羽ばたき、

続けてくる静寂が広場を支配した。

住民の中には気絶するものも現れるくらいである。

 

「ヒャハハハ!訳を聞こうか」

 

この場には合わない楽しげな声で《ヤマダ》がメロンパンナに問う。

メロンパンナは、その濃密すぎる死の気配を、強く強く拳を握り締め耐え

瞳に浮かべた涙を悟られることがない様に下を向き答える。

 

「ニ、《ニンゲン》様達の強大な力の前に脆弱な私たちは身が持たないのです・・。その尊大なお力の前では、私たちなど奴隷として扱ってもらうことも失礼にあたるのではないかと・・」

 

いつもなら、随分と苦しい言い訳だなと苦笑いの一つでもするところであるが、

この殺気めいた状況の中で、メロンパンナにとってそれが、全てであった。

後は、《ヤマダ》次第である。

《タナカ》と《トム》の殺気をあてられ意識を失っていない住人全てがメロンパンナの交渉を固唾を持って見つめていた。

 

失敗して差し出すのは、命。成功すれば一時の自由を得られる。

悪魔の取引きとも言うべきであろうか。

その悪魔はメロンパンナに微笑んだ。

 

「ほう・・・下等生物の癖に中々わかっているではないか!ヒャハハハ!許す!許すぞ!今日をもって貴様らを開放してやろうではないか!」

「《ヤマダ》の旦那!?」

「WHAT`s!?」

「ヒャハハハ!ちょうど、こいつらにも飽きてきたことだしな。また新しいオモチャを探せばいい。それに俺は約束を守る男だぜ?」

 

《ヤマダ》の発言に住民たちが一喜一憂しなければならないのは、《ニンゲン》がこの世界で絶対者である所以であろう。

住民たちは、《ヤマダ》の奴隷解放の宣言を受けても喜びを表にはだせない。

何故なら新しいオモチャを探すとその場で言ってるからだ。

自分たちは、未来もこの絶対者の影に怯えながらも暮らしていかなければならない。

その事が酷く不安であった。

そう、契約した悪魔は一時の自由しか与えてくれないのである。

 

「ヒャハハハ!で?お前はどうすんだ?丸顔」

 

《タナカ》や《トム》の殺気にあてられても空虚な瞳から色が戻らないアンパンマンに

《ヤマダ》が問いかける。

 

「いや・・・僕は何も望みません」

 

アンパンマンは何も持っていなかった。

自らの思いも、欲も全てあの《死の宴(デスゲーム)》においてきた。

失くしてしまった。

故に彼は何も望まない。

 

しかし、それに《ヤマダ》は快く思わない

 

「ああ!?何も望まないだと?」

 

《ヤマダ》は今まで、そう言われたことはなかった。

 

〝Welcome to Jamrock (通称:WTJ)〟

《ヤマダ》達《ニンゲン》が大いに嵌っていたmmoRPGである。

基本無料でアイテム課金性であるこのゲームで、《ヤマダ》は5本の指に入るであろう課金者であった。このゲームでは、強い武器や防具は必ずと言ってもいいほど課金ガチャでのみでしか手に入らない。だから、強いプレイヤーほど課金額も大きいと考えてもいいだろう。

そんな超課金プレイヤーとして、名の知れた《ヤマダ》だ。周りには《ヤマダ》の課金力を利用してお零れの課金アイテムを得ようとするネットスラングでは〝乞食〟と呼ばれるプレイヤーが多くいた。それを《ヤマダ》自らの人気であると勘違いし、多くのアイテムを無料に近い形で配っていたのだ。

だからこそ《ヤマダ》は、今のアンパンマンの様な者への対応を知らない。

 

《ヤマダ》は、アンパンマンを見つめる。

空虚な瞳で何も映し出さないその表情は、《ヤマダ》のトラウマを抉り出す。

思い出すは、信じてきた両親の顔。

アンパンマン、彼の表情に両親に失望されたときの記憶を思い出した

《ヤマダ》は、アンパンマンが必要と言えるものを与えようと必死になる。

 

こんな時どうすればいい?

このようなこと想定していない。

 

そして、《ヤマダ》はアンパンマンが右腕を失ってることに気がついた。

 

「ヒャハハハ!あるじゃねーか!必要なもんがよう!オラ!テメェの新しい腕だ!受け取るがいい!」

 

《ヤマダ》が虚空から、美しい龍の装飾が描かれる黄金の小手を取り出した。

 

〝0号課金アイテム〟『約束された黄金(ゴールデンボンバー)』

WTJにおいて、0号とは課金アイテムのレア度を現す。

一番低いもので5号。それから番数が若くなるにつれてそのレア度が増していく。

では0号はどれくらいなのか。それは《タナカ》の持つ『悪食の巨斧(ジャイアント・クロタ)』が1号認定であることから、そのレア度は伝わるであろう。

そして、その性能の方も実際凄まじく、『経験値アップ2倍』『全パラメーター上昇』

『固有スキルの所持』『ドロップボーナス1,5倍』という壊れといっても可笑しくない性能である。実際、《ヤマダ》でなければ、絶対に手放さないアイテムの一つであるといえるだろう。

 

それは《ヤマダ》の手から離れアンパンマンの右腕にぴったりと装着される。

それは、アンパンマンの空虚な瞳に驚きの色が映った瞬間でもあった。

その驚きの理由は、失ったはずの右腕の感触がある。それどころか、指1本1本が失う前より

繊細に動かせる。

 

「ヒャハハハ!どうやら気に入ったようだな!」

 

驚きの表情で自分の右腕の感触を確かめるアンパンマンを見て

《ヤマダ》は満足そうな表情を浮かべながら

 

「では、今日でお前らは開放だ!この工場は俺たちが使う!今日中にここから失せろ!ヒャハハハ!」

 

住人達への隷属の解放を宣言した。

 

 

住人たちがいなくなった工場の前でポツンと一人佇む者がいる。

ドキンちゃんだ。

《ヤマダ》がそれに気づき彼女に声をかける。

 

「ヒャハハハ!どうした?お前はいかないのか?」

 

《ヤマダ》のその問いにドキンちゃんは虚ろな目で答えた。

 

「あの・・・最後にアタシにもいいですか・・?」

「ヒャハハハ!なんだ?言うだけ言ってみろ!」

「最後に・・最後にもう一度、《ヤマダ》様の抱擁を・・」

 

その答えに《ニンゲン》達は大いにウケた。

それに《ヤマダ》も上機嫌で答える。

 

「ヒャハハハ!いいぞ!」

 

そして、《ヤマダ》とドキンちゃんは抱き合う。

それは別れを惜しむように熱く強い抱擁だった。

《ヤマダ》は解けかけていた己の『異性への魅了(ニコポ・ナデポ)』のスキルがまだ

有効だったと思い、今一度、己の持つ絶対的な力に満足する。

故に油断していた。

 

「グガァァァァ!?イテェ!!!!!!」

 

見ると、ドキンちゃんの背を貫通して、三股の赤い槍が《ヤマダ》の腹に刺さっている。

《ニンゲン》達はそれに大いに慌て、すぐにドキンちゃんと《ヤマダ》の血まみれの抱擁を引き剥がしていた。

満足そうな顔のドキンちゃんは既に絶命していた。

 

何故、彼女がこのような行為に至ったのか?

それは、メロンパンナからしょくぱんまんのコアを受け取り、

己の気持ちを、忘れていたしょくぱんまんに恋をしたということを思い出したからだ。

そして、募らせる《ニンゲン》への憎悪。

『異性への魅了(ニコポ・ナデポ)』が解けた彼女にとって、

《ニンゲン》は、特に《ヤマダ》は殺意の対象でしかなかった。

しかし、《ニンゲン》はガードが硬い。

真正面からぶつかれば1ヶ月前の二の舞になってしまう。

故に、彼女はこの手段を取った。

自らの命をもってしても、自らの恋を、思い出を汚されたという事が

どうしても許せなかったのだ。

 

 

「グアアア!!イテェ!!イテエ!!!!」

 

《ヤマダ》の今日の服装がラフな格好だったのも悪かったのであろう。

《ヤマダ》は思いのほかダメージをうけていた。

だがそれだけだ。元々、《ヤマダ》の肉体スペックはWTJのときの《ヤマダ》である。

ドキンちゃんの命を賭した攻撃でも、《ヤマダ》の命に別状はない。

しかし忘れていた。

 

「イタイ!?イタイ!?そうか!ヒャハハハ!」

 

そして思い出す。

《イタイ》という感情。

 

「ふぅ・・・皆、聞いてくれ。俺はまだここがゲームの延長線だと思っていたらしい」

 

既に刺されていた腹の傷は回復している。

落ち着きを取り戻した《ヤマダ》が《トム》と《タナカ》に語りかける。

 

「だが・・・今の痛みで気づいた。ここは紛れもない現実だったんだ。」

 

いつになく真剣な表情の《ヤマダ》に二人の《ニンゲン》は聞き入る。

 

「だったら・・・やることは一つだよな。終わってしまったゲームなら、また作り直せばいい!俺たちが〝Welcome to jamrock〟を再現するのだ!この地で!この場所で!そして俺たちは〝WTJ〟の世界の王になる!!ヒャハハハハ!!!!」

 

《ヤマダ》のその宣言と共に、空に大規模な魔法陣がいくつも現れる。

 

〝課金魔法〟『大地の恵み』

〝0号課金アイテム〟『全モンスター図鑑(ルーブルさんの大図鑑)』

〝課金魔法〟『異界への扉』

〝2号課金アイテム〟『魔の砂時計(魔王じいさんの砂時計)』

〝課金魔法〟『連続召喚』

 

《ヤマダ》は己の力を出し惜しみせず使い続ける。

先ほどまで晴れていた空は《ヤマダ》の魔法により曇り空になり雨をふらせる。

 

〝課金魔法〟『魔法廃合成』

 

そして、その一言とともに空にうかんだたくさんの魔法陣は重なりあい、

一つの虹色の魔法陣が完成した。

 

〝オリジナル合成魔法〟『Welcome to jamrock』

《ヤマダ》が嵌っていたゲームと同じ名前のその魔法は、

《フード世界》に虹をかけた。

 

この日を持って、《フード世界》に〝モンスター〟と呼ばれるものが現出し、

この世界は『Welcom to jamrock』の世界に色を変えることになる。

 

 

 

 

解放された住人達の行動は速かった。

皆が一時間を待たずに、逃げる様に工場から出て行った。

行き先はそれぞれだ。おかしの国や、フラワーランド、

中には、森の中でひっそりと余生を迎えたいと言ってた者もいた。

そんな、村の住人達と別れ、アンパンマンは一人、目的もなくブラブラ歩く。

そして、無意識の内に辿りついた場所は、《死の宴(デスゲーム)》の戦地であった

暗がりの森だった。

かつて、暗がりの森と称されるほどに樹木が生い茂り、昼でも薄暗いほどであったのに

あの激戦で、もうその面影はなく半分以上が更地になり、太陽が森全体を明るく照らしている。

その森の中心に位置する場所に、《死の宴(デスゲーム)》で散ったヒーロー達が弔われている。

 

「なぁ・・・皆。俺はどうすればいい・・・?」

 

アンパンマンは皆が眠る墓に語りかける。

 

わからなかった。

何故、自分がここまで期待されるのかが。

自分の心は弱い。

意思だってすぐに砕ける。

正義が何かがわからない。

そんな、俺に何を期待する?

 

そんな中、暗がりの森、アンパンマンのもとに駆ける者がいた。

 

「見つけたよ!アンパンマン!」

 

カバオくんだ。

思いっきり走ってきたのだろう。ハァハァと肩で息をしながら、

アンパンパンマンに一枚の手紙を渡した。

 

「バタコさんが・・・。最後にこれをアンパンマンにって。」

 

渡すカバオくんの顔は、死んでしまったバタコさんの事をおもいだしたのか

瞳に涙を貯めていた。

 

アンパンマンはそれを受け取るとすぐに中身を覗く。

 

〝貴方は何故、自分の顔がパンで作られたのかと思ったことはありますか?〟

〝それは、正義のヒーローとして戦う貴方にとって欠点になってるでしょう〟

〝でも、私たちは思うのです〟

〝正義の味方とは、戦うよりも先に、飢えた者たちにパンを与えてあげる者〟

〝そして、それが敵や味方などの区別などなくなればどれほど素晴らしいことでしょう〟

〝正しい行いをする場合、必ず報いられるわけではないです〟

〝逆に傷ついてしまうこともあるでしょう〟

〝だからこそ、パンをあたえましょう〟

〝一人で抱え込まないで皆で助け合いましょう〟

 

手紙はここで切れていた。

バタコさんは自分が殺される直前まで、

アンパンマンの事を、そして皆の事を考えいててくれた

アンパンマンは涙が止まらなかった。

今までの自分がほんのちょっと許されたような気がして。

 

それにつられて、カバオくんも、そして先ほどまで快晴だった空までが涙を流す。

2人は、わんわんと大声をあげて泣き続けた。

 

 

 

1時間ほどたったであろうか。

アンパンマンは涙でグシャグシャになった顔のまま立ち上がる。

その顔をアンパンマンは『約束された黄金(ゴールデンボンバー)』が装着された右腕で擦る。

すると、瞬く間に濡れていた顔がもとに戻った。

 

「行くの?」

「うん。」

「僕もついて行っていいかな?」

「いいよ。でも相当きつい旅になると思う」

「それは《ニンゲン》を倒す旅?」

「いいや───パンをあげる旅さ!」

 

 

アンパンマンはぎこちなく笑う。

それにつられて、カバオくんも笑った。

 

泣いていた空は、いつの間にか太陽が笑っていて、

彼等の旅路を祝福するかの様に虹がかかっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これにて1章終わりです。
読んでくれた方に感謝。
2章はWTJ編です。

※ドキンちゃんはアンパンマン初期までは槍を使っていたらしいです。
初めて知りました

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